nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #001「それぞれの始まり・飛影(序章)」

 ――幽☆遊☆白書~2ND STAGE~

~序章~

 

世界には大きく分けて三つの世界が存在している。

 

一つは人間が住む人間界。


二つ目は死んだ人間の魂が行き着く先。

死後の世界と言われている霊界。

 

そして魔界。

 

この魔界は、邪悪な妖怪が住んでいると言われている世界。

 

障気に満たされている魔界では、普通の人間はその障気に触れるだけで、忽ち仮死状態に陥ってしまう恐ろしい世界だ。

 

本来なら、人間は魔界に立ち入ることが出来ないのだが、何かのはずみで発生する歪みによって、偶然迷い込んでしまうことがある。

 

いわゆる人間界で言う神隠しである。突然、なんの前触れもなく行方不明となっていた人間の大半は、この魔界に迷い込んでいたのだ。

 

 

迷い込んでしまった人間は、妖怪の餌となるか、無事に生きて人間界に戻されるかは、見つけた妖怪の手によって、その人間の運命は委ねられている。

 

だが、古来から続いていたこの風習も、三年前から変わった。


それは無数の小国が存在する魔界が、三年前からついに一人の妖怪によって統治されて、一つにまとまったからである。

 

その妖怪の名は煙鬼(えんき)。

 

 

 

以前、煙鬼は魔界の田舎で、妻と平凡に二人で暮らしていた。

 

その煙鬼が王になった背景には、三年前に人間界から魔界にやって来た、浦飯幽助(うらめしゆうすけ)という男の存在が大きく関わっていた。

 

浦飯幽助の発案によって開かれた、魔界の王を決める大会、魔界統一トーナメント。

 

煙鬼は無名ながらも、その実力を発揮して、見事に優勝を勝ち取ったのある。

 

王となった煙鬼は、異世界である人間界と霊界に対して、融和政策をとっていた。

特に人間界に対しては、人間に迷惑をかけないことを掲げた法律を次々と制定。

 

煙鬼の発案した法律が施行され、迷い込んだ人間を無事に保護して、人間界に帰すこととなったのである。

 

その為、魔界全土の各地区にパトロール隊が組織された。

 

そしてそのパトロール隊の隊員の多くは、魔界統一トーナメントの敗者を中心として結成されていた。

 

――魔界の2番地区(階層)


崖の上に三匹の妖怪が立っている。

 

彼らは、魔界に迷い込んだ人間を捜索するパトロール隊である。

 

崖から見える光景は、見渡す限り深い森が広がっている。

 

「飛影(ひえい)、人間は見つかったか?」

 

 

巨体の妖怪が隣にいる男に問い掛ける。

 

飛影と呼ばれたこの男は、黒いマントを纏い、小柄だが鋭い目つきをしていた。

 

彼は目を瞑ると精神を集中した。

 

彼は邪眼と呼ばれている第三の目を持っていた。邪眼は、特殊な能力で、千里の先すら容易く見る事も出来る。

 

その力を飛影は使い、人間界から迷い込んでしまった人間の居場所を探していたのだ。

 

飛影は目を開くと、巨体の妖怪の問い掛けに答えた。

 

飛影「見つけた」

 

巨体の妖怪は「流石だ」と言う言葉のかわりに、飛影の肩を叩く。

 

「ったく、今月に入ってもう四度目だぜ。何でこんなに迷い込む人間が多いのだろうな」

 

今度は長身で派手な恰好をした妖怪が、

飛影に問いかける。

 

飛影の側にいる二人の妖怪の名は、派手な妖怪が木阿弥(もくあみ)、巨体の妖怪が雑魚(ざこ)。飛影を含めた三人は、魔界最強と呼ばれている妖怪の一人である。

彼等は、躯(むくろ)の元直属の77人の戦士の一員である。

 

飛影「さあな」

 

そっけない返事を木阿弥に返すと、外していたヘアバンドを装着して、邪眼を隠した。

 

雑魚「見つかったなら、二人共早く行こうぜ!この辺りは幻魔獣が多い。さっさと保護しないと人間が奴らの餌になっちまうぜ」

 

木阿弥「そうだな。行こう飛影」

 

飛影「やれやれ…」

 

三人の妖怪の姿がその場から消え去った。

 

――2番地区(階層)の森

 

深い森の中は非常に暗く、そして不気味な雰囲気を醸し出している。

 

この森には、獰猛な魔界特有の獣と幻魔獣が多く生息していた。

 

そんな魔界の森の中に、何かの歪みから迷い込んでしまった、一人の人間の女性が倒れている。

 

女性は魔界に漂う障気を吸い込み、一時的な仮死状態に陥っていた。

 

「グルルル………」

 

人間の匂いを早速嗅ぎつけたのか、獣が女性のすぐ側にまで来ていた。

 

彼女を食料とする為に。

 

獣の姿は虎のような姿をしている。ただ人間界の虎と決定的に違う事がある。それは首が二つあるということ。

 

「グガァァァァァ!!!!!!」

 

獣は女性の姿を発見すると大きな奇声を上げた。

 

そして獣が一気に駆け出して女性に襲いかかる。

 

 

カチャッ

 

何処からか、鞘から剣を抜く音が聞こえる。

 

横一直線に光が走る。

 

ズバッ!!!

 

獣を一瞬の内に真っ二つに切り裂く。

 

ドサッ!!

 

二つに分かれた獣の身体が地面に落ちる。

 

獣は断末魔の叫び声を上げる間もなく絶命していた。


獣の死骸の前に一人の男が着地した。

 

飛影である。

 

シュッっと剣を一振り。剣に付着した獣の青い血を振り落とす。

 そして鞘に剣をおさめると、倒れている女性の側に近付く。

 

「飛影!」

 

木阿弥と雑魚が、茂みの中から現れて、飛影の側に駆け寄って来る。

 

雑魚「本当にお前は速いぜ。動きについていくのがやっとだ」

 

飛影「それはお前が筋肉ばかりを鍛えているからだ」

 

木阿弥「それは言えてるな」

 

雑魚「チェッ、うるせーな」

 

 

木阿弥は獣の死骸に近付き、切断された獣の断面を見ている。

 

木阿弥「フッ、相変わらずお前の剣技には恐れ入るぜ」

 

雑魚「全くだ。飛影を敵にはまわしたくないぜ」

 

 

飛影は横目で自分が斬った獣の死骸を見る。

 

 

飛影「チッ、歯ごたえのない奴だ」

 

 

木阿弥「おい!さっさと女の状態を確認して帰ろうぜ」

 

雑魚「さて、迷い込んだのはこの人間の女か」

 

雑魚は倒れている人間の女性の状態を確認。

 

雑魚「仮死状態だ。完全に障気にやられちまっているな」

 

木阿弥「本当に人間は弱っちいな。飛影、いつも通り、この人間の記憶を消して人間界に送り帰すんだよな?」

 

飛影「ああ、そのつもりだ」

 

雑魚「よいしょっと」

 

倒れている人間の女性を肩に担ぐ。

 

飛影「まったく、うんざりだ」

 

人間の女性を見て不満を口にする。

 

 

木阿弥「フフ、お前は三年もパトロールをやっているというのに、未だに馴染めないんだな」

 

飛影「こんなくだらないものに慣れようとも思わんぞ」



雑魚「へへ、俺はパトロールをゲーム感覚で楽しんでいるんだけどな」

 

木阿弥「パトロールが嫌だったら、もうすぐ開かれる、二回目の魔界統一トーナメントで優勝して、煙鬼の作った法を廃止するしかない」

 

飛影「そのつもりだ」

 

木阿弥「フッ、その顔は自信があるようだな」

 

雑魚「もうすぐ大会だ。優勝を目指す奴ら、

はかなり修行を積んでいるだろうぜ。今度は誰が勝ち残るか全くわからんぞ」

 

木阿弥「そうだな。今回は前回以上に厳しい大会になるだろう」

 

二人の会話を聞きながら、飛影は心の中で思う。

 

(優勝は絶対に俺がする。さっさとこんなパトロールは廃止してやる)

 

強い決意を内に秘め、これから戦うことになる妖怪たちの姿が脳裏に浮かぶ。

 

飛影「おい、行くぞ」

 

そう言うと飛影は駆け出した。

 

木阿弥「相変わらず、せっかちな奴だ」

 

雑魚「躯様の居城に報告にいかないとな」

 

保護した人間を保護した、飛影たち三人が向かう先は、彼らが仕えている躯がいる居城。

 

――躯の居城

 

躯の居城の中にある一室には、さっき森の中で保護された人間の女性が寝かされている。

 

 

そして飛影が女性の側に立っている。

 

 

飛影はヘアバンドを外すと邪眼を開いた。

 

「う…」

 

仮死状態に陥っていた為か、人間の女性の意識はまだ少し朦朧としていた。

 

「今からお前の記憶を消す。次に目覚めた時にはここでの記憶は消える」

 

飛影は女性にそう語りかけると、邪眼から女性の脳に向けて光を放った。

 

女性は意識を完全に失った。

そして再び深い眠りについたのだった。

 

飛影は人間の女性が眠ったことを確認すると、部屋を後にした。

 

 

部屋を出ると、直ぐにある場所に向かって歩き始める。

 

その途中で、さっきまで一緒に行動していた木阿弥と遭遇した。

 

木阿弥「お疲れ様。人間の女性の記憶は消したのか?」

 

飛影「たった今消してきた」

 

木阿弥「お前の邪眼は本当に便利だな。俺も欲しいところだが、また力が最下級の妖怪に戻ってしまうってのが嫌でな」

 

飛影「簡単な話しだ。また強くなればいい」

 

木阿弥「ハハハ。そんな面倒くさいことなんか今更出来ないぜ。ところで今からお前は、躯様の所に行くのか?」

 

飛影「ああ」

 

木阿弥「だと思ったよ。パトロールから帰ったら、お前は必ず躯様の所に行くからな。俺はさっきお会いして、人間を保護した件を報告をしてきたよ」

 

飛影「そうか」

 

木阿弥の横を通り過ぎるとそのまま歩いて行ってしまった。

 

 

木阿弥は飛影の後ろ姿を見ながら心の中で思う。

 

(躯様は以前と比べると、随分と穏やかになられた。それは飛影、お前の影響が大きいのだろうな)

 

――躯の部屋

 

数本のロウソクの灯かりが灯るだけの、暗い一室の中に、一際目立つ大きなクッションに腰をかけている女性がいる。

 

女性の名は躯。

 

※躯についてはこちらを参照してください。

nanase1500.hatenablog.com

 

無数にある、魔界の国の統治者の中でも、躯の力は抜き出ており、巨大な一大勢力を築いていた。同じく力が抜き出ていた、雷禅と黄泉の二代勢力と、様々な理由で長い年月の間、彼女は対立してきた。

 

大会が行われた時に、国は解散していたが、

彼女の配下の77人の直属の戦士や部下の多くは、大会後も躯を慕い、彼女の下に残っていた。

 

躯は悲しい過去のせいで、半身が焼けただれ、

一部を機械化しているが、焼けただれていない箇所から伺える、その顔は美しく、大人の女性としての魅力があった。

 

ボッと部屋のロウソクが一瞬ゆらめく。

 

(……)

 

躯は何者かの侵入を察知した。

 

その時だった。

 

ビューン!!

 

剣が躯の頭上から振り下ろされてきた。

 

躯はその場から動かず、右手で剣を受け止めた。

 

躯「飛影か。相変わらず物騒な挨拶だな」

 

飛影「お前に用があって来た」

 

そう言うと暗闇の中から飛影が躯の前にその姿を現した。

 

飛影と躯の住む世界である魔界。

 

壮大な物語の序章。まずは飛影から追いかける。

 

続く

 

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