幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #057「試練に挑戦①(大会編・前章)」
ーー洞窟「御堂」の内部
飛影たちの前に姿を現した御堂は、ゆっくりと飛影たちの近くまで歩いて来た。
御堂は木阿弥や雑魚と違い、全く驚いていない飛影に興味を持ったようだ。
「ほ~う。お前はワシの姿を見てもあまり驚いてないようじゃな」
飛影は軽く溜息をつきながら答える。
「お前みたいなタイプの者を既によく知っているんでな」
飛影の脳裏にある人物の姿が浮かぶ。
ーー霊界
「ハクション!!!」
コエンマが大きなクシャミをした。
クシャミの飛沫がジョルジュ早乙女の顔に思いっきりかかった。
「コエンマ様汚いですよ~」
顔にかかったクシャミをハンカチで拭きながら抗議。
鼻水をズルズルさせながらすするコエンマ。
鼻がむず痒い。
「おかしいのう。風邪ひいたんじゃろうか」
ーー洞窟「御堂」の内部
「この中にまで入ってきたという事は、ワシから能力を与えてもらいに来たわけじゃな」
御堂の言葉に一同は頷く。
そして飛影たちの力が制御されて、動きが鈍くなっている件について御堂が触れる。
「ワシは世間的には力は弱くはないが、お前たちと比べたらワシの純粋な妖力は赤子みたいな者じゃ。力を与えても試練を乗り切れない者ばかりで、失敗した者の仲間や身内から逆恨みされる事が多くてな。身を守る為に、力を制御させてもらっておる」
(こいつ、よく言うな…)
木阿弥は御堂が口ではそう言ったとしてもその力は恐ろしいと思った。
あの最強の躯でさえも、御堂の力の前では、D級妖怪クラスまで力を制御されてしまうのだから。
そして、相手の望む能力まで授けることまで出来るときたら、まさに本当の怪物だと思う。
「ワシの試練を受けて、望む能力を受けたいのは誰じゃ?もしくはお前たち全員か?」
飛影が一歩前に出て来る。
「俺だ」
御堂、ニヤリ。
「そうかお前か。いいじゃろう。お前の望む能力を授けてやる。但し、それには試練を受けてもらう必要がある」
マントをその場で脱ぎ捨てる飛影。
「構わん。その試練とやらをさっさと始めようぜ」
「せっかちな奴じゃな。知っているとは思うが、失敗したら異常なまでの殺意が浮かび、あらゆる生き物を殺す殺戮者となる。まあ、お前たちはそれを御堂の子と呼んでいるようじゃが。そして最後に待ち受けるのは死ぬさだ。それでもやるのか?」
雑魚と木阿弥が飛影の顔を見る。
「ああ。やってくれ」
飛影は頷いた。
「分かった」
御堂は地面に人差し指を向けた。
指から青い光が出ると一名程度入れるぐらいの丸い円を描いた。
そして今度は円に向けて右手の手のひらを向ける。
「開陣」
御堂がそう言うと、円は眩いばかりの光を放つ。
「これで試練の準備は完成じゃよ」
飛影に円の中に入るように手で促す。
飛影は無言で躊躇なく円の中に入った。
木阿弥と雑魚が飛影の側までやって来た。
「飛影、さっさと試練終わらせて帰ろうぜ」
「俺たちはここでお前が試練を乗り越えて戻って来る事を信じている。もちろん躯様も同じ様に思って下さるはずだ」
飛影は雑魚と木阿弥の顔を交互に見ると頷く。
彼等は笑顔で飛影を見送った。
飛影は御堂の顔を見る。
「御堂、いつでもいいぞ。始めてくれ」
御堂は両手を円の中にいる飛影に向ける。
「目を閉じて、頭の中でお前が欲しいと願う能力を具体的にイメージするのじゃ。こういう風に使いたいとか、そんな感じじゃ」
飛影は御堂に言われるまま目を閉じると、黒龍波の新たな技のバリエーション、もし黒龍波が連発出来たときの自分の姿形など、あらゆるパターンを次々と頭の中で思い描いた。
(この力があれば俺は誰にも負けん。幽助にも躯にも)
飛影の状態を観察する御堂。
「どうやらある程度イメージは固まったようじゃな。
今から試練を与えるぞ。それは心の奥底にあるお前の中の邪悪な心の全てを表にだす。殺意、憎しみ、恨み、嫉妬など。あらゆる負の感情がお前を襲う」
「御託はいい。さっさと始めてくれ。俺は描いた能力を手に入れて大会で俺は優勝する」
御堂、ニヤリ。
「さてさてそう上手くいくかのう」
いよいよ飛影の命懸けの挑戦が始まる。
続く