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このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #052「魔界召喚士(大会編・前章)」

ーー魔界2番地区の最南端・洞窟「御堂」

 

洞窟の中から、大きな重量感のある足音が聞こえてきた。

そして段々、その音が入口の方に近付いてくる。

御堂の子がこちらに確実に向かって来ている。   

氷室は妖気を最大限に高めていた。

いつでもトップギアを入れた状態で戦える。

その時、入口の直前で、ズンンっと物凄い大きな音がした。

 

「うわっ」

 

氷室の足元がぐらつく。

大地が震えるほどの振動だ。

そしてそこから感じる凄まじいまでの妖気。

洞窟の入口を見る氷室の顔が険しくなる。

 

「これは凄い妖気ですね。飛影にも来てもらえば良かったかもしれません」

 

杖を握る手に力が入る。

いつでも攻撃をする準備は出来ている。

出てくるのを待ち構えていたその時だった。

 

ブーーン!!!

 

洞窟の中から何かが飛んできた。

 

「なに!?」

 

氷室は身体を後ろに反らして、間一髪で飛んできた物をかわした。

 

「危ないところでした。一体何が飛んできたのでしょうか」

 

空を見上げた氷室。

空に舞う物。

それは巨大な戦斧だった。

 

「あれは戦斧。それもかなりの大きさだ」

(あの戦斧、とてつもない重量ですよ。あれを扱える者は怪力の持ち主ですか)

 

戦斧はブーメランのようにまた戻ってくる。

狙いはもちろん氷室。

 

直ぐに態勢を立て直し、身構える。

そして妖気を杖に伝える。

氷室は聞き慣れない言語をボソボソと唱え始めた。

 

「出てきなさい。タイタン!!!」

 

氷室の大きな声と共に大地から大きな光が出てきた。

大きくひび割れる大地。

そして大地が崩れる爆音と共に巨大な大男が地面の中から現れた。

大地を司る召喚獣タイタンである。

氷室は杖の先を飛んでくる戦斧に向けると、タイタンに命令を下す。

 

「タイタンよ、あれを打ち払うのです」

 

氷室の命令を受けたタイタンは咆哮を上げた。

そして巨体とは思えないスピードで走り出した。

 

バゴォォォォォォォ!!!!

 

そしてその巨大な拳は戦斧を一撃で弾き飛ばした。

 

「タイタンよくやりました」

 

弾かれた戦斧は不自然な動きをして、洞窟の入口に向かって飛んでいく。

そして入口まで戦斧が飛んでいくと洞窟の暗闇の中から手が出てきて戦斧を受け止めた。

 

氷室、ニヤリ

「ようやくお出ましですね。御堂の子よ」

 

戦斧を持ったまま洞窟の中から現れたのは、全身を鎧に覆われた男であった。

兜を被っている為、その素顔がどんな顔しているのかは分からない。

鎧の男は戻って来た戦斧を肩に担ぐ。

鎧の男から感じる圧倒的なプレッシャー。

この戦斧にしても並の者が持てる力ではない。

 

額から流れ落ちる汗。

「これが御堂の子。正直、ここまでの妖気を持つ者とは思いもしませんでしたよ」

 

キティちゃんのハンカチをマントの中から取り出すと、額の汗を拭く。

 

「これだけの力の持ち主が殺戮者となるのなら、この地にとっても大きな災いとなります。可哀想ですが、貴方には死んでもらいますよ」

 

氷室は杖の先を鎧の男に向けた。

そして召喚獣に命ずる。

 

「タイタンよ。あの男を殺しなさい」

 

主の命令を受けたタイタンは、さっきと同じ様に咆哮を上げて鎧の男に向かっていく。

鎧の男は戦斧を横に投げ捨てた。

地面に落ちた戦斧は地面を抉る。

そして構えるとタイタンを迎え撃つ。

 

氷室のマントが風になびく。

「私のタイタンと真っ向勝負ですか。無駄ですよ」

 

タイタンの巨大な拳が鎧の男を攻撃。

まともにくらうと身体は原型を留めないほど、ぐしゃぐしゃになるだろう。

鎧の男がここで動き出した。

タイタンの拳に向かっていく。

重量物を身に纏っているとは思えないその動き。

まるで何も身につけていないかのような速さ。

どうやら攻撃を受け止めるつもりのようだ。

 

「無駄ですよ。私のタイタンは貴方を潰します」

 

鎧の男は足を止めると両手を広げた。

そして下半身に体重をかけて踏ん張る。

 

ガシッ!!!!

 

鎧の男は、召喚獣である巨大なタイタンからしてみれば、ちっぽけな存在でしかない。

そのちっぽけな存在が、巨大な拳を完璧に受け止めたのだ。

プライドが傷ついたタイタンは怒りの形相に。

無理やり力で鎧の男を押し潰そうと無理矢理押し込む。

だが、鎧の男の身体は全く動かない。

 

「な、馬鹿な!?」

 

氷室は、目の前で起きてる光景に驚く。

鎧の男は拳を受け止めている両手に妖気を集める。

 

「ウォォォォォォォォ!!!!!」

 

気合いを込めた鎧の男の声が辺り一面に響き渡った。

そしてその後にピシッと小さな音がした。

鎧の男は受け止めていたタイタンの拳から手を離すと、

背を向けた。

するとタイタンは頭を両手で抱えて苦しみ出した。

鎧の男はここで初めて声を出した。

 

召喚獣ごとき、今の俺の相手にすらならない」

 

そう言うと頭を抱えていたタイタンの両手が粉々に砕け散った。

 

「タ、タイタンが!?」

 

鎧の男は戦斧を拾うとタイタンに向かって走っていく。

ここで氷室はさらに衝撃の出来事を目の当たりにする。

 

鎧の男は戦斧を持ったまま高くジャンプすると、タイタンの頭から足元まで一刀両断。

タイタンは断末魔の叫びを上げる。

そしてその巨体は真っ二つとなり、地面に倒れるとその場から完全に消滅した。

 

鎧の男は今度は氷室の方を向くと、戦斧をその場から

一歩も動かずに、上から下に向かって振り下ろした。

氷室はこれでも躯の自慢の直属の戦士の一人。

戦士としての勘が、瞬間的に身の危険を察知して身体を突き動かした。

鎧の男は戦斧を使い、目に見えない斬撃の衝撃波を放っていたのだ。

氷室の背後にある森の木々が次々と真っ二つになっていく。

身体を動かしていなかったら氷室の身体は真っ二つに切断されていた。

 

「これはまずいですね。出し惜しみしている場合ではありませんよ。私はこう見えても偉大なる躯様の直属の戦士の一人です。むざむざ殺られるわけにはいきません。貴方を葬る為に全力でいかせてもらいます」

 

氷室は杖に妖気を込める。

最強最大の召喚獣を呼び出す為に。

氷室の妖気がより高まっていく事に鎧の男が気付いた。

鎧の男の兜の中にある見えない素顔は、不敵に笑っていた。

 

「召喚士よ、全力で来い。いい思い出にしてやる」

 

続く

 

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