nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #094「第二ラウンド(大会編)」

――魔界統一トーナメントのDブロックの二回戦・第二試合

 

武威(ぶい)
×
桑原(くわばら) 

 

――Aブロック

 

実力を見せつける武威。

対する桑原の右手には次元刀がその姿を現した。

 

「こいつでおめーを鎧ごとぶった斬ってやる」

 

「初めて見たな。今までと違う剣だ。だが所詮はさっきのように霊剣に威力が増しただけの話しだろう」

 

武威の表情は兜を被っている為に分からないが、余裕を感じさせる声だ。 

 

桑原、ニヤリ

「見てろよ!威力だけじゃねーってとこも見せてやるぜ」

 

スッ

 

次元刀を武威に向けて構える。

 

――選手たちの休憩所

 

ようやく次元刀を出した桑原を見て幽助が溜息をついた。

「やっと次元刀を出したな桑原の奴。あいつにはマジでヒヤヒヤさせられちまうぜ」 

 

隣の飛影は無表情。

「最初から次元刀を出しておけばいいものを」

 

――Aブロック

 

「行くぜ!」

 

桑原は武威に向かって駆け出した。

武威は最初の時と同じ様に桑原を待ち構える。

 

バッ

 

「トォォォ!!!」

 

武威の少し手前でジャンプ。

空中で次元刀を構えた。

 

「オリャァァァァァ!!!!!」

 

ビューー!!!!

 

大きな掛け声と共に次元刀で思いっきり斬りつける。


「フン」

 

ビューーーーーン!!!!


次元刀を防ぐ為に斧で迎撃。

ぶつかりあう次元刀と斧。


ガッ!!!!!

 

武威の斧は桑原の次元刀を受け止めていた。

 

「残念だったな桑原。その剣でも俺には通用しなかったぞ」

 

だが、桑原はニヤリ。

「手応えあり」

 

武威に攻撃を受け止められたにもかかわらず桑原は不適な笑みを浮かべた。

 

(これは!?)

 

シュパーン

 

次元刀によって空間が切り裂かれていた。

 

「何!?」

 

ズバァァァァ!!!

 

「ぬォォォォォ!!!!」

吹き出る鮮血。

胸から腹部にかけて鎧ごと、桑原の次元刀によって切り裂かれていた。

武威の足が斬撃によってぐらつく。

 

「何故斬られたのだ!?俺の斧はお前の剣を完全に抑えていた筈だ」

 

地面に着地した桑原は驚く武威に解説し始めた。

 

「悪いな武威。俺の剣は次元刀。空間ごと斬らせてもらった。おめーは斧で俺の攻撃を受け止めたつもりかもしれねーが、空間を斬る俺の次元刀には防御は意味ねーぞ」 

 

「空間を切り裂く剣か……。防御不可能とは恐ろしいな」

 

ポイッ

 

武威は武器である斧を後ろに投げ捨てた。 

 

ズン!!

 

斧がその重みで地面にめり込む。

 

「俺はお前をどうやら甘く見ていたようだ。防御不可能ならお前に接近されると厄介だな」

 

スッ

 

ジジジ……

 

武威は右手を高く上げると妖気を集中し始めた。

 

「あいつは武器の斧を捨てて何をするつもりだ?」

 

武威の右手には妖気で作られた小型の斧が出現。


「また斧かよー!しかも今度は小せーし」

 

「ウォォォォォォ!!!!!!」

 

武威は大きな声で叫ぶと桑原に向けて小型の斧を投げつけた。

 

シュルルルルル!!!!!!!!

 

(!?)

 

シュパッ

 

小型の斧が桑原の左頬をかすめた。

 

桑原から斬られた頬の血と共に、額から冷や汗が流れ落ちた。

斧の凄まじいまでの速度に一歩も身体を動かす事が出来なかったからだ。

 

「なんてスピードだ!?殆ど見えなかったぞ」

 

シュルルルルル!!!!!!!!

 

パシッ

 

斧は武威の手元にブーメランの様に戻って来る。

 

「今のはワザと外してやった。だが次は外さんぞ」

 

(マズイぞ。どうすっか……)

 

「フン」

 

シュルルルルル!!!!!!!!

 

再び桑原めかげて斧が放たれた。

 

「クソーッ」

 

バッ

 

右に素早く飛んだ。

 

ズバァァァ!!!

 

「ウォッ!!」

 

斧は桑原の肩を切り裂く。


ドテッ

 

飛んだ拍子に地面に転んだ。

斬られた肩を手でおさえる。


シュルルルルル!!!!!!!!

 

斧が今度は背後から桑原の首をめがけて襲ってきていた。

 

「ゲェェェェェ!!!?」

 

ガバッ

 

瞬間的に地面にはいつくばって攻撃をかわす。 

斧は桑原の髪の毛をかすめる。

 

シュルルルルル!!!!!!!!

 

パシッ

 

「堪のいい男だ。しかし俺の攻撃は殆ど見えていない様だな」

 

「こりゃマジでヤベー……」

 

恐る恐る立ち上がると次元刀をなんとか構える桑原。

動揺を隠せないのが顔に出ていた。

 

(霊剣手裏剣を放って弾くとしても、斧が殆ど見えねーから当てる事も出来ねー)

 

「桑原、お前が死ぬのは時間の問題だ」

 

シュルルルルル!!!!!!!!

 

斧が次に桑原の眉間を狙って放たれた。

 

バッ!!

 

今度は左に飛ぶ。

 

スバァァァァ!!!

 

桑原の背中を切り裂く。

 

「ぐっ!!」

 

傷の痛みで顔が歪む。

 

――選手たちの休憩所

 

剣術の師である時雨が桑原の戦いぶりを見ていた。

 

「桑原……」

 

スクリーンには、武威の攻撃を堪と持ち前の悪運の強さで必死にかわし続けている桑原の姿が映し出されていた。

 

「お前の弟子はかなり苦戦しているようだな」

躯が時雨の隣にやって来た。

 

「躯様」

 

「あの武威とかいう男からは憎悪と殺気しか感じられない。相手を殺す戦い方をしている」

 

「拙者もそれは感じました。この試合で桑原が負ける時は、月畑と同じ様な運命を辿る事になってしまうでしょう」

 

「桑原がもしここで死ぬようなことになれば、桑原を狙う者たちの企みが全て水の泡となる。魔界の維持にはそれもありだな」

それは現状の魔界の維持を願う躯の頭に描いている選択肢の一つであった。

 

「躯様……」

躯の言葉に驚く時雨。

 

時雨の顔色が変わったのを見て、躯はニヤリ。

「フッ、冗談だ。そんな顔をするな時雨。俺はあの男の事も気に入っている。生かす方向に動く。それに」

 

「それに?」

 

「あの男があの程度の攻撃でむざむざと殺される男ではないことは、剣術の師であるお前が一番知っているだろう?」

躯の言葉に笑顔を見せる時雨。

 

「確かにそうですな。桑原はこのような場所で死ぬような男ではありません」

 

スクリーンの中で必死で武威の攻撃をかわす桑原を見て心の中で時雨は呟く。

 

(こんな所で死ねばお前が拙者に命がけで剣術を習った意味がなくなる。お前の大事な目的の為に勝つのだ桑原)

 

――Aブロック

 

シュルルルルル!!!!!!!!

 

パシッ

 

ギリギリの状態で攻撃をかわし続けている為、桑原の精神力と体力がかなり消耗していた。

だが、その目には諦めの文字はない。

 

(殺られてたまるかってんだ)

 

「……中々しぶとい。流石は浦飯と同様に戸愚呂(弟)が認めていた男ではある」

 

桑原は致命傷となる大きな傷はないものの。斧を避けた時についた傷が無数に全身にあった。

 

「チクショー!このままだとジワジワとダメージが溜ってその内に動けなくなってしまうぜ」

 

「徐々に攻撃をかわすスピードが遅くなってきている。目でとらえる事が出来ない攻撃をいつまでかわし続けられるかな」

 

シュルルルルル!!!!!!!!

 

斧が桑原の腹部を狙って飛んで来る。

 

(なるほど、目でとらえるか……)


バッ

 

桑原はかすり傷を負いながらもこの攻撃をかわす。

その時、桑原の脳裏に時雨の言葉が浮かんだ。

 

――桑原の回想

 

それは躯の居城にある訓練場で修行を始めたばかりの頃。

 

ドテッ

 

「痛てて……」

 

時雨の一撃をまともに受けて倒れる桑原。

 

スッ

 

時雨は燐火円磔刀を桑原の喉元に突きつけた。

 

「桑原、目で追うだけでは拙者の攻撃をいつまでもかわせんぞ。目でとらえる事の出来ない時は、相手の気で動きを探るのだ」

 

これまで、時雨が繰り出す目にも止まらない激しい攻撃を一度もかわす事が出来なかった。

 

「気で探るか……」

 

「拙者たち妖怪には妖気、お前たち人間は霊気を体内に持っている。攻撃をした時には大なり小なり必ず放出される。目で動きをとらえる事が出来ない時はそれを辿るのだ」

 

「気を辿ればどんな相手の攻撃でもかわせんのか?」

 

「フフッ、あまりにも極端に力の差がある相手は流石に不可能だ。例えば拙者と躯様の様にな。だが、大きな力の差がない者が相手ならかなり有効だ」

 

「分かったぜ。気で探ってかわす事をぜってーに出来る様になってやる」

 

「だったらもう一度行くぞ」

 

「おうよ」

 

こうして桑原は気で読む力を血の滲む様な修行の末に見に付けたのだった。

 

――桑原の回想・終了

 

桑原、ニヤリ。

「すっかり忘れていたぜ」

 

桑原は焦る気持を静めて冷静になり始めた。

 

「フン」

 

シュルルルルル!!!!!!!!

 

桑原めがけてまたも飛んで来る斧。

 

「おっし!!」

 

フッ

 

ここでついに桑原は妖気で作られた武威の斧を気で動きを辿り、ギリギリでかわすことに成功した。

初めて武威の投げてくる斧をかわしたのだ。

 

シュルルルルル!!!!!!!!

 

またも斧が背後から背中をめがけて戻って来る。

 

フッ

 

これも桑原はギリギリでかわす。

 

(またかわした!?)

 

突然、桑原が攻撃をかわし始めた事に武威は驚いた。


(見切ったぜ。こんな形で時雨との修行が活きてくるとは思わなかった)

 

パシッ

 

武威の手元に斧が戻って来る。

 

「反撃開始だ」

 

シュゥゥゥゥゥ

 

桑原は次元刀を右手から消すと、懐から試しの剣を取り出して霊気を集中し始めた。

 

ジジジ…

 

試しの剣による霊剣を作り出していく。

 

「あの桑原が俺の攻撃のスピードを見切ったというのか。認めんぞ」 

 

シュルルルルル!!!!!!!!

 

肩をめがけて斧を投げつける。

 

桑原の目付きが変わる。

「この鈴木の作った試しの剣は俺の気分に合わせて変化してくれる優れものだぜ!!」

 

試しの剣から放出された霊剣の形がいつもとは形状が違っていた。

なんと野球のバットの形になっていたのだ。

桑原の構えは往年の野球選手である落合博満のバッティングフォーム。 

 

「落合流首位打者剣!!」

 

シュルルルルル!!!!!!!!

 

「オラァァァァァ!!!!!」

 

ビューーン!!!!!

 

試しの剣で作ったバットで武威の斧を打ち返した。

 

ガキーーン!!!!!! 


打ち返した斧が今度は武威の頭部に向かって飛んでいった。

 

シュルルルルル!!!!!!!!!!!!!

 

その速度は武威が投げた斧の速度を遥かに上回っていた。

 

(な、速い!?)

 

バキィィィィィィ!!!!


武威はその場から一歩も動けずにいた。

斧は武威の兜を破壊。

そして斧は武威の頭部を僅かにかすめた。

兜が割れて地面に落ちた事で、武威の素顔が露になると同時に額から血が流れ落ちる。

 

桑原、ニヤリ。

「ピッチャー返しだ」


(いいだろう)

 

スッ

 

ズン!!!

 

武威は静かに身に纏っていた鎧を脱ぎ始めた。

 

「へっ、ざまーみろ!!鎧を脱がしてやったぜ」


ズン!!!

 

身に纏っていた最後の鎧のパーツを脱ぎ捨てた。

 

ブォォォォォ!!!!!!


武威が全ての鎧を脱ぎ捨てると今まで抑えていた武装闘気が開放され始めた。

 

ビリビリ

 

「なっ!!?何てスゲー妖気なんだ!さっきまでとは別人の様だぜ……」

 

武威のあまりの妖気の大きさに驚く桑原。

例えるなら背筋が凍るほどの。

そして武威の身体からは、身体が宙に浮く程の武装闘気を放出されていた。


「俺がこの状態になれば悪いが楽には死なせないぞ」

 

桑原の顔が青くなる。

「俺、マジで死ぬかも……」

 

全力の武威が桑原に襲いかかる。

 

続く

 

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