nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #074「桑原の初戦(大会編)」

――魔界統一トーナメントのAブロックの一回戦の第四試合が始まろうとしていた。

 

――メイン会場の観客席

 

「いよいよ和真さんの出番……」

 

巨大スクリーンにアップで映る桑原を雪菜が心配そうな顔で見ていた。

 

――Aブロック

 

牛頭(ごず)
×
桑原(くわばら)

 

桑原と牛頭が対峙している。

 

牛頭は2mを越す巨体と、鍛えあげられた鋼のような筋肉が自慢の妖怪である。

その名の通り頭が牛だった。

上空から審判が様子を見ている。

 

「始め!」

 

審判の声が闘場に響き渡った。

 

「よっしゃあぁぁぁ!!!行くぜ牛野郎」

 

ジジジ……

 

「霊剣!」

 

ギュンンン!!

 

桑原は右手に霊剣を作りだした。

 

牛頭、ニヤリ。

「やれやれ人間か、楽勝だな」

 

牛頭は桑原が人間ということで桑原を戦う前から甘く見ていた。

 

――選手たちの休憩所

 

時雨がスクリーンで桑原の試合を見ている。

 

「次元刀ではなく霊剣か……。まあ様子見といったところか」

 

躯が時雨の隣にやって来る。

 

「躯様」

 

「あの人間がいよいよ戦うようだな」

 

「ええ。この試合はおそらく桑原が勝つでしょう。あの牛頭はA級の上位クラスの力を持っていますが、今の桑原なら倒せる相手です」

 

「お前が教えた剣術をどれだけ奴が身につけているか楽しみだ」

 

「拙者もそれを実践で見るのが楽しみです」

 

――Aブロック

 

「捻り潰してくれるわ」

 

牛頭は桑原めがけて突進してきた。

2mを超える巨体。

それはまるでダンプカーのようだ。

 

「来やがれ」

 

桑原は霊剣を構えた。

 

「おらぁぁぁ!!」

 

ビューン!!

 

牛頭が桑原に向かってその巨体を活かした強烈な一撃を放った。

 

バッ

 

桑原、その場で上にジャンプ。

 

ズガァァァン!!

 

牛頭の攻撃をかわした。

狙いを外した牛頭の腕が地中にめり込む。

そして牛頭の背後に桑原は着地した。

 

「チッ!よけられたか」

 

ズボッ

 

地中にめり込んだ腕を引き抜くと再び桑原に向かって突進してくる。

 

「フン」

 

ビューーン!!

 

さっきよりさらに速い牛頭の一撃。

 

バッ!

 

またも桑原は上にジャンプ。

ジャンプすることで、牛頭の攻撃をかわした桑原は、牛頭の右肩を軽く踏んで、さらに高くジャンプした。

そして牛頭と遠く離れた位置に着地した。

 

「またかわしやがったか」

牛頭は人間に攻撃をかわされている事でイライラしてきていた。

 

「あの金髪野郎の動きに比べたら屁でもねーぜ。今度は俺の番だ」

 

フッ

 

(消えた!)

 

桑原の姿が牛頭の目の前から消えた。

 

「チッ、どこだ」

 

牛頭はキョロキョロと顔を動かして消えた桑原の姿を探す。

 

「俺はここだ」

 

フッ

 

桑原が牛頭の頭上に姿を現した。

これには牛頭も驚いた。

 

「なっ!?上か!!」


「でゃぁぁぁ!!!」


ビューン!!

 

桑原は霊剣で斬りつける。


「くそっ!」

 

ズバッ!

 

桑原の霊剣が牛頭の左肩を切り裂く。

 

「ぬうぅ!」

 

ズズズ……

 

牛頭は斬られた左肩を右手でおさえて少し後ずさる。

桑原は着地すると再び霊剣を構えた。

 

「スゲー筋肉をしてるな。流石に今の一撃では倒せねーか」

 

「チッ、人間だと思って甘く見過ぎていたようだ」

今まで桑原を侮っていた牛頭の顔が真剣な顔になる。


「本気で行くぞ」

 

グッ

 

牛頭は右手に力を強く込め始めた。

 

「うぉぉぉぉ!!!」


ボンッ!

 

牛頭の右手が大きく膨らんだ。

 

「な、何だ?」

 

「覚悟しろ。もう容赦しねー」

 

ジジジ……

 

「牛野郎の腕にめちゃめちゃ妖気が集まっている」

 

「くだばれェェェェ!!!」

 

ドーーーン!!!

 

(!)

 

牛頭の右手から巨大なエネルギー波が放たれた。

 

「これをくらったら流石にやべーかもな」

 

シュゥゥゥゥ……

 

桑原の右手から霊剣が消えた。

 

「あの手で行くか」

 

スッ

 

ジジジ……

 

「次元刀ォォォ!!」


ピキーン

 

桑原の右手に次元刀が出現。

 

そしてその瞬間、桑原に牛頭の放ったエネルギー波が直撃する。

 

ドガァァァァァァーーン!!!!!!

 

桑原の立っていた場所が大爆発を起こした。

 

――メイン会場

 

小兎がマイクを手に持って叫ぶ。

「あーーっと!桑原選手に牛頭選手の放った巨大なエネルギー波が桑原選手に直撃いたしましたァァァァ!!!」

 

爆発の映像を見て、雪菜は顔を青くする。

「和真さん!?」

 

――Aブロック

 

爆発後の桑原の立っていた場所に激しい砂煙が舞う。


牛頭、ニヤリ。

「へへへ、やったぜ」


牛頭は勝利を確信し笑みを浮かべた。

 

シュゥゥゥ……

 

砂煙が徐々に消えて、桑原の立っていた場所の状況が見えてきた。

 

「フフフ、奴のボロボロになった姿をじっくりと見てやるか」

 

だが、牛頭の期待通りには行かなかった。

砂煙の先にいるはずの桑原の姿が完全に消え去っていたからだ。

 

「な、何だと!?」

桑原が立っていた場所に急いで駆け寄る。

何処を見ても桑原の姿はない。

 

「い、いない。あのタイミングではよけようがないはずだぜ。一体どうなっている……」

 

「悪いな、それでは俺を倒せねーぜ」

 

突如、桑原の声が牛頭の耳に聞こえてきた。

 

「な、一体何処から!?」

 

ザシュッ!!

 

桑原は牛頭の右の胸部から左の脇腹にかけて次元刀で切り裂いた。

 

「がはァァ!!」

 

ズズズ……

 

牛頭は斬られた衝撃で後ずさる。

 

「馬鹿な!!」

 

牛頭は目の前の光景に驚く。

 

「く、空間が斬れている!!?」

 

「へっ、驚いたかよ」


牛頭の目の前の空間が斬れていた。

そしてそこから桑原の次元刀だけがその姿を見せている。

 

キーーー

 

そして静かにゆっくりと空間が円状に斬られていく。


シュパーン!!

 

空間が円の形に斬れた。

そして円の形に斬れた空間の中から桑原が飛び出してきた。

 

桑原、ニヤリ。

「桑原和真様の登場だ」

 

ピキーン

 

その手には次元刀。

 

シュッ!

 

(!)

 

次元刀で牛頭を突く。

 

「ヒッ!?」

恐怖で牛頭は怯えていた。

 

ピタッ

 

桑原は次元刀を牛頭の喉元で止めた。

 

「どうだ牛野郎?」

 

「な、何だこの剣は!?」

 

「次元刀ってやつだ」


「次元刀……」

 

「てめーの放ったエネルギー波が俺に当る瞬間、俺は目の前の空間をこの次元刀で素早く斬って、空間の中に飛び込んだんだ。だがらてめーのエネルギー波をかわせたんだぜ」

 

(まさか、そんな事が可能なのか……)

 

「そして空間の中を移動して空間の中からお前を斬ったってわけだ」

 

「まさか空間を斬り裂くような真似を人間が出来るとは

……」

 

「俺の自慢の技だ。それでどうすんだ?この状況でもまだ勝負を続けるのか?」

 

桑原は牛頭の喉元に突きつけている自らの次元刀を見ながら話す。 

 

「この状況では勝ち目がない。俺の敗北を認めるぜ……」

 

「負けを認めるなら俺の勝ちでいいんだな?」

 

「ああ。だからこの剣を下げてくれ」

 

「おうよ」

 

スッ

 

桑原は牛頭の喉元に突きつけていた次元刀を下に降ろした。

 

シュゥゥゥ……

 

そして桑原の右手から次元刀が消える。


牛頭、ニヤリ。

「ありがとよ」

 

ビッ!

 

牛頭は腹部から流れていた血を手につけると桑原の目に向かって投げつけた。

 

ベチャッ

 

「あっ!?」

 

ガバッ!

 

牛頭の血が桑原の目に入り、桑原はたまらず目をおさえた。

 

「ち、畜生ォォ!何をするんだ!きたねーぞ!!」

 

「ケッ、甘いぜ人間!勝負に汚いもくそもあるかよ」

 

グッ

 

牛頭は右手に力を込めた。


「この傷のお返しだ」


ビューン!!

 

牛頭は強烈なパンチを桑原の腹部を狙って放つ。

 

ドゴォォォ!!!

 

「うっ!!」

 

「もう一発だ」

 

ビューン!!

 

バキッ!

 

腹部に続いて桑原の顔面にも強烈な一撃が入った。

 

「うゎぁぁぁ!!」

 

牛頭の一撃を受けた桑原は、近くの岩壁に向かって吹き飛ばされた。

 

ドガァァァ!!!!

 

ガラガラガラ

 

岩壁に桑原が突っ込んだ。

 

「痛てーな、クソったれが」

崩れた岩の中から桑原が出てくる。

 

ズン

 

(!)

 

桑原の目の前に牛頭が立っていた。

 

「死ねや!!」

 

ビューーン!

 

牛頭は桑原にパンチを放つ。

 

「やべーっ!」

 

桑原は素早く左に動き、間一髪攻撃をかわした。

 

ドガァァァン!!

 

ガラガラガラ

 

牛頭の腕が岩壁にめり込む。

桑原は牛頭の攻撃をかわすと同時に、地面を蹴って飛び上がると、両足で牛頭にジャンプキックをくらわせる。

 

「ぬおっ」

 

ドガッ!!

 

桑原のジャンプキックをくらった牛頭は10m先まで飛ばされた。

 

騙し討ちした牛頭に桑原の怒りはMAXに。
「よくも騙してやってくれやがったな!覚悟しやがれ!!」

 

ジジジ……

 

「霊剣!」

 

ギュンンン!!

 

桑原は次元刀ではなく再び霊剣を作りだした。

 

スッ

 

桑原は身体を少ししゃがみ加減にして霊剣を構えた。

 

――選手たちの休憩所

 

躯が桑原の構えが何か気付く。

「時雨、あれはお前の最強の技ではないのか?」

 

「ええ、そうです」

 

「桑原にあの技までこの短期間で教えたのか?」

 

「いえ、拙者が修行の時に、桑原に一度は見せはしましたが、教えるまでには到達していないです」

 

「ならば奴は一度見た時雨の技を自力で体得したというのか」

 

「おそらくは」

 

――Aブロック

 

「行くぜ!」

 

桑原が仕掛ける。

 

ジリジリ

 

ドーン!!

 

(は、速い!!!)

 

シャキーン!

 

ズバァァァ!!!

 

時雨が鵤を倒したあの同じ技で、牛頭の腹部を横一直線に深く切り裂いた。

 

「がっ……」

 

ドスン!!

 

牛頭は膝をつき、そしてその場に仰向けに倒れた。

 

桑原、ニコリ。

「フ~、上手くいったぜ」

 

上空から審判が桑原と牛頭の試合の様子を見つめている。

倒れた牛頭の状態を審判が確認した。

 

「Aブロック一回戦・第四試合の牛頭選手対桑原選手の試合は桑原選手の勝利です!!」

 

審判が桑原の勝利を宣言した。

 

桑原は勝利宣言を聞いて霊剣を高く掲げた。

「よっしゃあァァァァ!!!初戦突破ァァ!!」


――メイン会場の観客席

 

スクリーンに笑顔の桑原が映し出された

雪菜、ニコリ。

「和真さんが勝った……良かった……」 

 

雪菜は桑原の無事と勝利に胸を撫で下ろした。

 

――選手たちの休憩所

 

「フッ、俺たちの想像以上に、奴はお前の剣術を体得していたな」 

 

時雨、ニコリ。

「桑原め、いつの間に……。本当に大した男だ」

 

武威は休憩所の壁際で桑原の試合を静かに見ていた。

(……面白い。相手にとって不足はなさそうだ)

 

こうして牛頭を下した桑原は、月畑を倒した武威と二回戦でぶつかることとなった。 

 

他のブロックのBブロック第三試合では、鉄山が勝利。Cブロックでは第二試合を九浄が、第三試合を酎が、それぞれ勝利し、二回戦への進出を決めていた。

 

一方、蔵馬は桑原の試合後に見ていた、Dブロック第三試合の梟対眉墨の試合で、勝利した梟に目を奪われていた。 

 

「あの梟とかいう男、奴に似ている……」

 

スクリーンに梟と眉墨の試合後の光景が映し出されている。

倒れている眉墨の身体はところどころ爆発して吹き飛んでいた。

その眉墨の姿と梟の姿をもう一度見て、蔵馬は静かに呟く。

 

「そう、死んだあの鴉に」

 

続く

 

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