nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #100「死闘の行方(大会編)」

――魔界統一トーナメントAブロックの二回戦・第二試合

 

武威(ぶい)
×
桑原(くわばら) 

 

――選手たちの休憩所

 

ほぼ互角となり、激しい死闘を繰り広げている桑原と武威を躯と時雨は静かに見ていた。

 

「今のところは互角といったところか」

 

「ですな。しかし桑原の霊気が急激に上昇したのは驚きましたぞ」

 

「フッ、あの劣勢の中で霊気を上げるとは面白い男だ」

 

「桑原に一体何があったのでしょうか?」

 

「さあな。それは俺も知りたいところだ」

 

武威の開放した力の前に圧倒されていた桑原だが、霊気の急激な上昇によって、互角までに力を上げた理由を躯達はもちろんの事、幽助達ですらその理由が分かる者はいない。

急激な霊気の上昇の秘密が、まさかの雪菜の念信による愛の告白が原因とは、当人達と棗以外は知るよしがなかった。 

 

「時雨、状況が変わってほとんど互角となった今の状態では、お前はどっちが勝つと見ている?」

 

「躯様、弟子の勝利を信じない師がどこにいましょうか。拙者は桑原が勝つ事を信じております」

 

躯、ニコリ。

「そうか」

 

時雨はスクリーンに映る桑原を観る。

(桑原、お前が一回戦で見せた拙者の最強の技を使うのだ。あの技と御主の次元刀が合わさればあやつを必ず倒せるはずだ)

 

――Aブロック

 

桑原は武威と力がほぼ互角になったので、消耗の激しい次元刀ではなく霊剣を選択していた。

武威も再び巨大な斧を振り回して応戦していた。

 

「チクショー!中々、決定的な一撃を与えられねー」

霊剣で武威を攻撃しながらも、次元刀を出すタイミングを狙っていた。

 

「さっきはお前にかなりのダメージを与えたはずだが、ダメージを感じさせないその動きには驚かされる」

 

桑原、ニヤリ。

「それは愛の力だ」

 

「訳の分からない事を」

 

ビューーーーン!!!!!


巨大な斧で桑原の腹部を狙う。

攻撃を瞬間的に察知。

 

ブォォォォォ!!!!!

 

霊気を一気に霊剣に集中させる。

 

ガッ

 

巨大な斧より、遥かに小さな霊剣でその攻撃を受け止めた。

 

「オリャァァァァ!!!!!」

 

ドガッ!!

 

巨大な武威の斧を弾き飛ばした。

 

(!)

 

ズン!!!

 

弾かれた武威の斧が地面にめり込む。

 

「むっ!」

自分の獲物より小さい桑原の霊剣に弾かれたことに少し驚く武威。

 

「やっと巡ってきたチャンス!次元刀!!!!!」

桑原は一瞬で霊剣から次元刀に切り替えた。

 

ビューー!!!

 

そして素早く次元刀で斬りつける。

 

「チッ」

 

このタイミングでは、防御不可能の次元刀をかわせないと判断した武威は両手を十字にクロスさせた。

 

ズバァァァ!!!!

 

次元刀が武威のクロスさせた腕に食い込む。

腕に食い込んだ次元刀を通して血が溢れ落ちる。 

 

「何!?」

 

「甘いわ!!」

 

武威は次元刀を自身の腕に食い込ませたままで桑原をその腕の力で身体ごと持ち上げた。

 

「うおっ!?なんかヤベーぞ!次元刀を消さねーと」

 

シュゥゥゥゥゥ……

 

桑原は直ぐに武威の腕に食い込んでいる次元刀を消し去る。

 

バッ!!

 

桑原は次元刀が消えると同時に武威から離れる為に後ろにジャンプした。 

 

「遅い!!」

 

武威は素早く両手を合わせると武装闘気を集中させた。

 

「ハァァ!!!」

 

ズドォォォォォン!!!!


巨大な衝撃波が桑原の身体を包み込む。

 

「うわァァァァァァ!!!」

 

ドーーーーン!!!!!

 

桑原の身体が上空に吹き飛ばされた。

 

「ウォォォォ!!!」


バッ!!!

 

武威も高くジャンプする。


「チクショー、強烈な衝撃波だぜ!!」 

 

衝撃波で上空まで飛ばされた桑原の身体は、ある程度の高さまで上がって止まった。


(!)

 

ヒューーー

 

今度は徐々に桑原の身体は地上に向かって降下していく。

 

「こ、このままじゃあ地面に思いっきり叩きつけられちまうぜ」

(この勢いで落ちるとかなり痛てーぞ……)

 

地上に向かって下降する桑原の視界に武威の姿が目に入った。

 

(!!)

 

「くらえ桑原ァァァ!!!」

 

ビューン!!!

 

空中で鋭いパンチを桑原に向かって放ってきたのだった。

 

ドゴォォォォ!!!

 

武威の強烈な一撃が桑原の腹部に入る。

 

「ぐわッ・・・!」

 

まともに直撃する武威の一撃。

 

武威、ニヤリ。

 

フッ

 

腹部に一撃を入れて直ぐに武威の姿が桑原の目の前から消える。

 

「クソッタレ……!」


フッ

 

そして武威は桑原の真上にその姿を現した。

 

「フン」

 

ズガァァァァァン!!!!


さらに叩きつけるような強烈な一撃で桑原の背中を激しく攻撃。

 

ヒューーー!!!

 

一撃を背中に受けて勢いを増した桑原の身体は、地上に向かって急降下。

 

「ぬわァァァァァ!!!!!」

 

ドッガァァァァァン!!!

桑原の身体は思いっきり地面に叩き込まれた。

 

「痛てて……」

身体を地面に叩きつけられてかなりのダメージを受けた。

 

シュルルルルル!!!!!


(ゲゲッ!!)

 

飛んできたのは、小型の斧である。

先程から続く武威との死闘の中で、桑原を苦しめたあの小型の斧が、地面に叩きつけられて起き上がろうとしていた桑原をめがけて飛んできたのだ。 

 

「クソッ!」

ギリギリで攻撃をかわした。

 

シュルルルルル!!!

 

さっきまでと同じくブーメランの様に戻ってくる斧。


「野郎!マジで容赦しねーな。だけどよー、俺はこのぐらいでやられたりしねーぞ!!」

 

ジジジ……

 

素早く右手に霊気を集中。

 

「剣よ、飛べ!!!」


ビュー!ビュー!ビュー!


桑原は素早く右手から霊剣手裏剣を飛ばして迎撃。

 

ズガガガガ!!!!

 

霊剣手裏剣によって小型の斧は上に弾き飛ぶ。

 

バッ!!

 

ダメージを感じさせない動きで素早くジャンプ。

弾いた武威の小型の斧に向かう。

桑原はジャンプと同時にその右手に霊剣を作り出していた。

 

「さっきみてーに返すぜ武威!!」

 

ガキーン!!!

 

霊剣で小型の斧を武威に向かって打ち返した。

 

シュルルルルル!!!

 

斧が武威に向かって飛んでいく。

 

パシッ

 

だが、桑原が弾き返した自身の斧を右手で受け止めた。

桑原は地面に着地。

 

桑原、ニヤリ。

「今のを受け止めやがったか!!いいキャッチャーになれるぜ武威」

 

(………)

 

――選手たちの休憩所

 

梟の勝利で終わったDブロックの二回戦の第二試合。

倒された鈴木は緊急治療室に運ばれて行った。

 

鈴木の容態を心配する蔵馬。

「凍矢、鈴木は大丈夫だろうか?」

 

「今、鈴駒と陣が鈴木の様子を見に行っている」


「そうか……」

 

「……あいつは悪運だけは強い男だ。こんな事ぐらいで死んだりしないはずだ」

暗黒武術会の前から鈴木を知る死々若丸は、仲間達の中では一番鈴木の事を心配していた。

 

凍矢も蔵馬の状態を確認。

「蔵馬、お前も電鳳との戦いで受けた傷が酷い。早いうちに治療を受けた方がいい。次のお前の相手は鈴木を倒したあの梟だぞ」


蔵馬の身体に受けたダメージはかなりのものであったが、それ以上に勝つ為に自分自身の体内で育てた毒死草の後遺症の方が大きかった。

 

「ああ、分かっている。桑原君の試合が終わったら行くよ」

 

「桑原もさっきの危ない状況からよく這上がったな」

 

「そうだな」

 

凍矢、ニコリ。

「何故か分からないが、あの状況からの復活劇は吏将と桑原が戦った時の事を思い出したよ」

 

桑原は、かって暗黒武術会で凍矢や陣のいた魔性使いチームの大将であった吏将と対戦した時は、絶対絶命の状況であったのだが、土壇場で急激に力を発揮して奇跡的な逆転勝利を納めた。

この桑原の復活劇がその時の事に似ていると凍矢は言っているのだ。

 

「しかしあの武威が再び現れるとは俺達にも予想外だった」

 

「それはみんな思っているだろうな」

 

「蔵馬、お前に一つ聞きたい事があるが、聞いてもいいか?」

 

スクリーンに映し出されている武威の姿を見ながら凍矢は蔵馬に問いかける。

 

「何だ凍矢?」

 

「俺や陣、酎、鈴駒、鈴木、死々若の六名は蔵馬の誘いを受けて幻海師範の元で修行をした。俺達は幽助や蔵馬達と暗黒武術会で関わった面子だ。そして俺達と同様に蔵馬達と関わった者である武威。蔵馬、お前は武威には声をかけなかったのか?」

それは凍矢がずっと抱いていた疑問であった。

 

「俺もそれは気になるな」

 

「死々若……」

 

「暗黒武術会でお前達と関わりを持った者達の中でも、武威の強さはあの時点ではかなりのものだった。あの集まった中に武威がいなかった事に俺はずっと疑問を抱いていた」

 

死々若も頷く。

「蔵馬、計算高いお前の事、実際は武威にも声をかけていたのではないのか?」

 

蔵馬の側にいる幽助と飛影も凍矢達との話しを聞いている。

 

凍矢と死々若丸の疑問に対して蔵馬は静かに答え始めた。

 

「ああ、死々若の言う通りだ。武威にも俺は声をかけたよ」

 

蔵馬はその時の経緯をみんなの前で語り始めたのだった。

 

――Aブロック

 

「桑原、俺は今から武装闘気を込めた最大の一撃をお前に放つ」

 

(!)

 

武威の突然の言葉に一瞬、驚いた桑原であったが直ぐに真剣な顔になった。

 

「おもしれー!だったら俺もてめーをぶったおす為に最強の技をぶつけてやるぜ!」

 

ピキーン!!

 

右手に作り出していた霊剣を消して次元刀を作り出した。

 

「暗黒武術会以後に俺が見につけた最強の技だ。この技でお前の息の根を止めてやる」

 

「そういえば、てめーは暗黒武術会が終わってから、この大会まで何をやってたのか聞いてなかったな」

 

「俺を倒せたら話してやるぞ」

 

「別にいいぜ。俺はおめーをぶっ殺すのだからよー」

 

「フッ、行くぞ」

 

スッ

 

武威は両腕を後ろに引くと妖気を集中し始めた。

 

武装闘気・フルパワー!!」

 

ブォォォォォ!!!!!

 

武威の全身を包み込んでいる武装闘気が急激に上昇。


ズズズ………

 

武威の身体を徐々に変えていく。

 

「スゲー妖気だ!?それに武威の姿が変化していっている……」

 

「ウォォォォォ!!!!!」

 

カーーー!!!

 

武威の身体が一瞬、光に包まれた。

そして光の中から武威がその姿を現す。

武装闘気は物質化して武威の身体を鋼鉄化させていた。

 

武威、ニヤリ。

「待たせたな」

 

「全くとんでもねー野郎だぜ……」

 

スッ

 

桑原は少ししゃがみかげんに次元刀を構えた。

それは一回戦で牛頭を倒したあの時雨の技の構えであった。


――選手たちの休憩所

 

躯が桑原の構えに気付く。

「あれは時雨の技」

 

(桑原……)

 

――Aブロック

 

「一回戦で見せたあの技か。俺には通用せんぞ」


「武威、それはやってみねーと分からねーぞ!」


「分かるさ」

 

互いに構える。

 

桑原と武威の命をかけた闘いはいよいよ最終局面を迎えようとしていた。 

 

続く

 

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