nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #095「動き出した陰謀(大会編)」

――大会を一望出来る崖の上

 

駁が難しい顔で比羅の隣にやって来た。

「おい比羅、砂亜羅の気が途切れて随分経つが大丈夫なのか?」

 

「確かにな。外部に魔光気が漏れないように結界を張っているのだろうが、少し時間がかかり過ぎだ」 

 

「砂亜羅の気がこれだけ時間が経っても途絶えたままだということは、あいつの身に何かあったのではないのか?」

 

駁は砂亜羅が心配でたまらないようだ。

そんな、駁の様子を見た比羅が動いた。

 

弥勒!」

同じ十二魔将の一人であり、参謀の弥勒に声をかける。

 

「何だい?」

金髪の男が比羅の隣に歩いて来た。

 

弥勒は短い金髪の細身の体型。

その容姿はハンサムではないが特徴のある顔つきで優しげな顔をしている。


「お前も砂亜羅の気が途絶えたのは分かるだろう?私はあいつの様子を見て来る。私が戻るまではここの指揮はお前に任せていいか?」


「分かったよ。ここは大丈夫だ。安心して行っておいでよ」

 

比羅、ニコリ。

「すまんな。直ぐに戻る」

 

フッ

 

比羅の姿が消え去った。

消えた後を見ながら駁が溜息をつく。

「やれやれ、勝手な行動を許すからこんな事になる」

 

弥勒、ニコリ。

「あの比羅も妹には甘いさ」

 

弥勒は大会の方を見た。

穏やかな顔が一転、厳しい顔になった。

 

(何故だか分からないが胸騒ぎがする)

 

杞憂であって欲しい。

心の中で砂亜羅の無事を祈った。

 

――選手たちの休憩所

 

桑原と武威の試合を見ている幽助と飛影の下に、電鳳との試合を終えた蔵馬が戻ってきた。

 

「武威は凄い妖気だな」

 

「蔵馬」

戻って来た蔵馬を幽助が笑顔で出迎えた。

 

飛影が蔵馬の身体の状態を見た。

「その身体では次の試合がかなり厳しくなるだろう。あの瑠架とかいう女の所で傷を治してこないのか?」

 

「そのつもりだ。だけどその前に気になる試合があってね」 

 

「桑原の試合か?」

 

「桑原君の試合はもちろんだが、俺が気にしているのはDブロックの鈴木の試合だ」

 

「鈴木?そっか鈴木が勝てばおめーと三回戦で当たるんだっけな」

 

「違う。鈴木ではない」

 

「あいつは」

スクリーンに映し出されているDブロックの試合に視線を移した飛影が驚く。

 

「何を驚いてんだ飛影?」

幽助もDブロックの方に視線を移した。

 

「あ、あの野郎は!?」

幽助も飛影と同様にスクリーンに映る男の姿に驚いた。

 

「蔵馬、あいつって戸愚呂チームにいた爆弾男じゃねーか」

幽助の言葉に頷く蔵馬。

 

「鴉か。武威に続いてこの男まで出てくるとはな」

飛影は少しうんざりした様子。

 

「武威はともかく、あいつは蔵馬と戦って死んだはずだぜ。何で生きてんだ?」

 

「それは俺も気になる。他人のそら似ではない。さっきあいつと接触したが、その時感じた感覚は鴉その者だった」

 

幽助の目が真剣になる。

「この大会は何が起こるか分かんねーな」

 

――Dブロック

 

鈴木と梟。

対峙する両者。

 

鈴木が梟に向かって口を開いた。

「梟っていうからどんな奴かと思ったらお前だったんだな鴉」

 

梟は何も答えずに黙っている。

 

「暗黒武術会の決勝で蔵馬に殺されたとばかり思っていたぜ。まさか生きていたとはな。驚いたぜ」

 

上空から天海が鈴木と梟を見つめる。

 

「それではDブロックの第二試合の鈴木選手対梟選手の試合を始めます」

 

鈴木と梟の試合が間もなく始まろうとしていた。

 

――Aブロック

 

鎧を纏うことで抑えつけていた、自分自身で制御すら出来ない武装闘気をついに開放した武威。

目に見えてしまう程の巨大な武装闘気が全身を包み込んでいた。

 

武威、ニヤリ。

「この力を開放するのがお前とは思わなかったぞ」

 

ザザザ

 

桑原は武威の武装闘気に圧倒されて思わず後ずさる。


「マジかよ……。こ、こんなにスゲー妖気とは思わなかった…」

 

「どうした桑原?身体が震えているぞ」

 

「ば、馬鹿を言うんじゃねー!!誰が震えてるってんだコラァ!!!」

 

「そうか?今のお前は本能的に俺を恐れている」


武威の言葉に桑原の顔色が変わった。

 

「俺はてめえなんかを恐れてねーーー!!!」

 

桑原は手に持っていた強化版の霊剣を宿した試しの剣を強く握り締めると武威に向かって駆け出した。

武威の言葉を否定する為に。

 

「オラァァァァァ!!!!!!」

 

ビューー!!!

 

真っ正面から向かっていき、試しの剣で武威の頭部を狙って斬りつけた。


パシッ

 

だが、武威は試しの剣を右手で軽々と受け止めた。

 

「さっきは俺の腕に傷をつけたその剣だが、冷静さを欠いたな桑原。俺に確実に攻撃を当てるなら次元刀を選択すべきだ」

試しの剣を素手で受け止めているのにかかわらず、その手には傷ひとつついていなかった。

 

グググ……

 

「何で斬れねーんだよ!!!」

 

「開放した俺の武装闘気が形のない鎧となっている。鎧を纏っていた時の俺と同じだと思うな」

 

ブォォォォォ!!!!!!


武威は受け止めている試しの剣に妖気を伝え始める。


ピシッ!

 

桑原の握っている柄の部分に亀裂が入った。

 

(け、剣が!!)

 

「フン」

 

ブォォォォォ!!!!!

 

さらに試しの剣に妖気を伝える。

 

バチバチバチ

 

「熱っ!!」

 

試しの剣を握っている桑原の右手にまで武威の妖気が伝わってきた。

桑原はその衝撃で思わず試しの剣を放してしまった。 

 

パラパラパラ……

 

桑原の手を放れると同時に、試しの剣は粉々に砕け散った。

 

「た、た、試しの剣が!?」

 

フッ

 

驚く桑原の目の前から武威の姿が消え去る。

 

(消えた!!)

 

ポンポン

 

何者かが背後から桑原の肩を手で叩いた。

 

(!!!!)

 

血の気が引いて固まる桑原。

恐る恐る振り向くとそこには武威が立っていた。

 

ビューーーン!!!!!

 

武威の鋭い一撃が放たれる。

 

ドゴォォォォォォォ!!!!!!!

「ガハッ!!!!!」


大量の血を口から吐き出す。

武威の拳が桑原の腹部にめり込んだのだ。

 

バキィィィィィ!!!

 

腹部に一撃を受けて苦しむ桑原の顔面を追い討ちをかけるように殴りつけた。

 

(くっ!!)

 

ヒューーーーー!!!!!


ズガガガガァァァァァァ!!!!!!!

 

桑原の身体は地面を削りながら叩きつけられた。

 

「うっ……、ゲホッ!!ゲホッ!」

血を口から再び吐き出した。

武威は桑原を涼しい顔で見ている。

 

「どうした桑原?この程度の攻撃でその様か?そんな事では仇討ちなど出来ないぞ」

 

(つ………強すぎる……)

 

――選手たちの休憩所

 

「桑原君!?」

 

「ヤベーぞ!!殺られちまう!!!桑原の手に負える相手じゃねー!」

 

「まさかここまで強くなっているとはな。御堂の洞窟でもう少し戦えば良かった」

 

幽助たちも開放された武威の強さに驚いていた。

 

――Aブロック

 

ググ……

 

ゆっくりと桑原が立ち上がった。

 

「もうかかって来ないのか?」

 

「言われるまでもねー!!」

 

ジジジ……

 

左手に霊気を集中し始めた。

 

「くらいやがれーー!!!!」

 

ビュー!ビュー!ビュー!


左手から霊剣手裏剣を武威に向かって放った。

 

「霊剣を手裏剣にして飛ばすとは器用な男だ」

 

「オリャァァァァァ!!!」

 

霊剣手裏剣を放つと今度は右手に次元刀を作り出して駆け出した。

 

「ハァァァァァ!!!!!」

 

ブォォォォォォ!!!!!


武威は妖気を高めた。

 

ビュー!ビュー!ビュー

 

霊剣手裏剣が武威に迫っていた。

 

(あいつが霊剣手裏剣を防いだ時に僅かに隙が出来るはずだ。その瞬間を次元刀で攻撃してやる。防御不可能の次元刀と今の俺の剣術なら隙が出来れば武威をぜってーに斬れる)

 

しかし桑原の思惑とは裏腹に、武威は霊剣手裏剣を防ごうとはしなかった。

 

「あいつどういうつもりだ!?」

 

「消え去れ!!!」

 

グォォォォォ!!!!!

 

武威が叫ぶと同時に武威の全身から衝撃波が放たれた。

 

シュゥゥゥゥゥ……

 

霊剣手裏剣は武威の衝撃波により打ち消された。

 

「ウォォォォォ!!!」

 

武威に向かっていた桑原も衝撃波に巻き込まれて吹き飛ばされた。

 

ヒューーーーー!!!!!


ドガァァァァァ!!!!!


吹き飛ばされた桑原は岩壁に叩き込まれた。

 

「悪いが中途半端の攻撃は俺には通用しない」 


ガラガラガラ

 

崩れた岩壁の中から桑原が出て来た。

満身創痍の状態だ。

 

(チクショー……)

 

――選手たちの休憩所

 

「強い」

 

「負けを認めろ桑原ァァァァ!!本当に殺されちまうぞ!!!」

幽助は大きな声でスクリーンに映る桑原に向かって叫んだ。

 

躯と時雨も想像以上の武威の強さに驚いていた。

「あれほどの妖気を鎧で抑えていたとはな」

 

時雨の額から汗が落ちる。

「このままでは桑原は……」

 

「鎧を纏っていた時ならなんとかなったが、今の桑原とあいつの力の差はあまりにもありすぎる。殺されるのも時間の問題かもしれない」

 

――大会を一望出来る崖の上

 

スクリーンに映る桑原と武威の試合を見ていた駁が顔色を変えた。

「マズイぞ!桑原が殺されそうだ!!」

 

「落ち着いてください駁」

慌てる駁をなだめる袂。

 

「これが落ち着いていられるか!!さっきまでの戦いを見ていてもヒヤヒヤさせられたが、ここまで力の差があれば桑原に勝ち目はない。確実に殺されてしまうぞ」

 

「確かに今の状態では殺されるかもね」

弥勒は冷静に試合を分析している。


弥勒、桑原が殺されてしまう前に闘場に行って桑原を奪うか?」 

 

「比羅が不在の今は貴方に私達を指揮する権限があります。私は弥勒に従いますよ」

 

弥勒は考えるように目を瞑った。

駁と袂、その他の十二魔将も弥勒に視線を向けた。

 

弥勒が目を開けた。

「ここはこのままこの場に待機する」

 

駁が弥勒にくってかかる。

「待機だと!もし桑原が殺されてしまったら俺達の目的が果たせなくなるぞ」

 

駁の肩に手を置いて宥める。

「冷静になるんだよ駁。私達が大会に姿を現せば煙鬼をはじめたとした妖怪たちと戦うはめになるよ」


「何を言っている!どちらにしろ桑原を奪うには奴らと戦う事になるんだぞ」


「忘れていないか駁?今の私達は比羅、砂亜羅、楽越、黎明の四人を欠いている。大会はまだ二回戦、煙鬼やその仲間、躯、黄泉の力はまだまだ充分だよ。戦力が落ちた今の状態で戦ったらこちらの方が敗北する可能性が高い」

 

袂が恐る恐る弥勒に質問。

「しかし弥勒、駁の言う通り桑原が殺されてしまったらどうするつもりなのですか?」

 

「万が一桑原が殺された場合の事も考えてあるよ」

弥勒は何か策を持っているような顔だ。

 

「何か策でもあるのか?」

 

「忘れていないかい駁?樹が連れて来たあの妖怪を」

 

「はっ!?」

 

弥勒の言葉に駁は何かを思い出したようだ。

 

「なるほど。奴なら桑原が死体となっていても身体さえ手に入ればその能力を吸収出来る」

 

弥勒が頷く。

「相手の能力を食べる能力“美食家”(グルメ)だよ」

 

――会場へと続く道

 

比羅は妹の砂亜羅の魔光気が消えた場所に来ていた。

痕跡から砂亜羅が何者かと戦っていたのが分かる。

 

「私が感じていた通り、間違いなくここで何かの戦いがあった様だ」

 

比羅は周辺を調べてまわる。


「う……」

 

辺りを調べていた比羅の耳に何処からか声が聞こえてきた。

 

「むっ!誰だ?」

比羅は声が聞こえた場所に近付く。

 

(!!)

 

するとそこには砂亜羅が倒れていた。

 

「砂亜羅!!」

直ぐに妹の下に駆け寄った。


砂亜羅は無惨な姿となっていた。 

身に纏っていた鎧は殆ど破壊されて全身に大きな傷を負っていた。

 

「砂亜羅しっかりしろ!!何があった!?」

 

比羅の呼びかけに砂亜羅は目をゆっくりと開けて口を開けた。

 

「あ………う…」

(こ、声が出ない。兄さ…んに…あい…つの…こと…をつ…たえない…と…)

 

「何を言っている。しっかりしろ!」

 

(兄…さん…気を…つ…けて…)

 

ガクッ

 

(!?)

 

砂亜羅の目から涙が流れ落ちた。

比羅の腕に抱かれている砂亜羅の力が抜けていく。

砂亜羅は兄の腕の中で息を引き取った。

 

「さ、砂亜羅ァァァァァ!!!」

比羅は妹の身体を強く抱きしめた。

その目から涙が溢れる。

 

「許せん!何者か知らないが砂亜羅を殺した者を見つけ出して必ず殺してやるぞ」

 

「比羅」

 

ズズズ……

 

空間から男が姿を現す。

闇撫の樹である。

 

「お前も魔界に来ていたのか樹」

 

「砂亜羅を殺した者を俺は知っている」

 

「何!?」

 

樹の話す言葉により事態は急展開を向かえる事となる。

 

続く

 

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