nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #096「雪菜の想い(大会編)」

――魔界統一トーナメントのDブロックの二回戦・第二試合

 

梟(ふくろう)
×
鈴木(すずき) 

 

――Dブロック

 

上空から天海が両者を見つめる。

 

「始め」

 

海の声が闘場に響き渡る。

 

――選手たちの休憩所

 

陣がスクリーンに映る梟を観た。

「なあ凍矢、あれはどっからどう見ても鴉だよなー?」

 

「ああ。あの姿形は鴉だ」

 

鈴木の試合を見ている凍矢たちもスクリーンに映し出されている梟の姿が鴉と瓜二つだと気付いた。

そしてDブロックの試合開始の合図が聞こえてくると蔵馬も桑原の事が気になりつつも鈴木と梟の試合に目を移していた。

 

(いよいよ始まるのか)


――Dブロック


鈴木、ニヤリ。

「お前には今大会で初披露となる俺の作り上げた最高傑作を見せてやる」

 

ゴソゴソゴソ

 

鈴木は腰にぶら下げている道具袋から何かを探し始める。

 

ズズズ……

 

鈴木の足下の土が何やら動き出した。 

 

バクッ

 

「な、何だ?」

 

足下に異変を感じる。

何者かが鈴木の足を捕まえたのだ。

鈴木の足を捕まえているのは爪のような生物。

その身体から細い一本の触手のようなものが少しずつ伸びてくる。

 

《キキキ》

 

触手は不気味な鳴き声を発して大きな目を開いた。

開いた目は不気味な一つ目。 

 

「こいつは!?」

 

《捕まえた》

 

カーーー!!!!

 

ボムッ!!!!

 

生物の身体が光るとその場で爆発した。

鈴木の右足が吹き飛ぶ。

 

「ぐわァァァァァ!!!!」

 

ドシャッ

 

鈴木は右足を吹き飛ばされた衝撃でその場に倒れた。


「クソッ!いきなりとは。油断した……」

 

鈴木の右足からは大量の出血。

 

「ハッ」

 

フッ

 

梟の声と同時に複数の羽の生えた丸い爆弾の形をした生物が姿を現した。

 

メキメキメキ

 

ギョロ

 

生物は瞑っていた目を開く。

 

「追跡爆弾(トレースアイ)」

 

《ギーース》

 

梟の作り出した爆弾の生物が不気味な鳴き声を上げると、足を吹き飛ばされて苦しむ鈴木に向かっていく。

 

「トドメだ」

 

「何!!!」

 

カーーー!!!!!

 

複数の爆弾の生物は鈴木の側に来ると一斉に身体を光らせた。

 

(!!)

 

ドガァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!


鈴木のいた場所は梟の放った爆弾の生物により大爆発を起こした。

その爆弾の爆発の威力は、かって蔵馬が暗黒武術会の決勝で鴉が使用した地下爆弾と追跡爆弾と比べても桁違いに上がっていたのだった。

 

――選手たちの休憩所

 

スクリーンに映る光景に蔵馬は言葉を失う。

(…………!)

 

死々若丸が叫ぶ。

「す、鈴木!!」


Dブロックの二回戦の第二試合は、試合開始早々に衝撃的な幕開けとなった。

 

――Aブロック

 

鈴木と梟との試合が始まった同時刻。

岩壁から出てきた桑原は次元刀を武威に向けて構える。

 

「殺られてたまるかよ」

 

苦しい表情を浮かべながらも桑原は真剣な目で武威を見る。

 

「いい目をしている。勝負を諦めた目ではないな。さっきの様に俺を恐れている感じではなくなった」

 

(悔しいがさっきの俺はあいつの妖気にびびっていた。でもびびっていたって何もならねー!武威は俺を殺しにきている。こいつを倒さねーと月畑の仇討ちどころか俺の未来はねー)


「久しぶりに俺は抑えていた力を開放したのだ。そう簡単に終わらせはしない。戦いを楽しませてもらうぞ。直ぐに死ぬなよ桑原」

 

桑原、ニヤリ。

「へっ!俺は死ぬつもりはねーぞ。この桑原様はてめえをぶち倒すのだからな」

 

「そうか」

 

フッ

 

武威の姿が目の前から消え去る。

 

(何処だ!!)

 

必死に武威の妖気を辿って探す。

 

フッ

 

武威は桑原の背後に姿を現した。

 

「クソッ!!」

 

桑原の耳元で武威は囁く。


「今の俺の前ではお前は無力だ」

 

ガシッ

 

桑原の頭を掴む。

 

ズガガガガガン!!!!!


武威は桑原の顔面を地面に思いっきり叩きつけた。

 

「……うぐぐ」

 

「こんなものでは終わらんぞ」

 

ガシッ

 

左手一本で倒れていた桑原の頭を掴むと、その力で軽く身体ごと持ち上げる。

 

「ぐっ……、チクショー!放しやがれ!!!」 


両足をバタバタして抵抗する桑原。

 

メキメキメキ

 

桑原の頭を力で締め付ける。

 

「グァァァァァ!!!」

 

あまりの苦痛に桑原は一切の抵抗が出来なくなる。

 

ビューーン!!!!!

 

武威は右手で桑原の背中を殴りつけた。

 

ドゴォォォォォ!!!!!


「ウァァァァ!!」

 

ゴボッ

 

口から血を吐き出す桑原。


「フン」

 

ドゴォォォォォ!!!!!


「アァァァァァ……」


ドゴォォォォォ!!!!!


身動きが出来ない桑原をさらに激しく背中から殴って痛めつけた。

 

「ギャァァァァ!!!!」

 

桑原の悲鳴が闘場に響き渡る。

 

――メイン会場

 

「おーーっと!!Aブロックでは武威選手が桑原選手を捕まえて容赦なく激しい攻撃を続けています!!!」

 

「あの人間が武威に殺されるのは時間の問題だ」

 

「そうだな。さっきまでは中々頑張っていたようだが武威とは力の差があり過ぎる。圧倒的だ。これはもう勝負あったぞ」

 

「うっ、和真さん……」

 

一方的に武威に攻撃され続けている桑原の姿がスクリーンから映し出されている。

その凄惨な光景に雪菜は思わず目を反らした。

 

「大丈夫?雪菜ちゃん」

女性が雪菜に声をかけた。

それは三回戦進出を決めた棗であった。

曲尺を倒した後、棗はメイン会場にいる雪菜の所にやって来たのだ。

 

「棗さん……」

目に涙を溜めて棗を見る。

 

「和真さんがあんなに苦しむ姿なんて…。駄目です。もう私は見られません」

棗の胸に顔を埋(うず)める。

 

「あの武威って男は、あの桑原って人間を殺すつもりでいる。彼が負ける時は間違いなく死しか残されていない」

棗は冷静な声で桑原の置かれている状況を雪菜に話した。

 

「棗さん…私、私は和真さんを失いたくないです……」

 

雪菜の目から涙が地面に溢(こぼ)れ落ちる。

 

コロンコロン

 

その涙は美しく光輝く氷泪石となった。

 

(雪菜ちゃん……)

 

スッ

 

棗は優しく雪菜の頭を撫でながら語りかける。

 

「雪菜ちゃんはあの桑原って人間が好きなのね」

 

(!?)

 

雪菜は棗の言葉にハッとなり棗の顔を見上げる。

棗は優しい微笑みを浮かべて雪菜の顔を見た。

普段は大人しくて自分の本当の気持を伝える事が苦手な雪菜。

出会ってから短い付き合いでしかない棗と雪菜だが、姉の様に棗を慕う雪菜はその想いを口に出した。

 

「棗さん……、私は、私は和真さんが好きです」


涙を流しながら雪菜は武威との戦いの中で、今にも殺されそうになっている桑原という一人の人間に対する想いを初めて口にしたのだ。

雪菜は人間界にやって来てから色々な人間と出会った。彼女をお金を手に入れる為の道具の手段として扱った垂金という人間。

故郷に残した妹と同じ年頃の雪菜が重なり、捕われていた雪菜を助けようとその若い命を落とした名前も分からない心優しい人間。

男っぽいとこがあり、一つ屋根の下で雪菜と暮らすようになってからは親身になって実の妹のように可愛いがってくれる人間の女性。

少し変わっているが異世界の住人である彼女をホームステイとして受け入れ、家族の一員として娘の様に扱い大切にしてくれる人間。

人間の良い面と悪い面の両方の姿を見てきた雪菜であったが、彼女は心から人間が好きであった。

それは沢山見てきた人間の中でもある一人の人間の影響が大きかった。

いつ終わりがくるのか分からない捕われの身になってからの辛かった日々。

そんな辛い日々から彼女をその人間は救い出してくれた。

そしてその人間は、彼女が人間界で生活する様になっても、その隣でいつも優しく温かい目で見守っていてくれていた。

その人間の名は桑原和真。

心まで凍てつかせていた生まれ故郷の氷河の国では感じる事が出来なかった心の温もり。

桑原と彼の家族の優しい心の温もりに囲まれて雪菜は人間を心の底から好きになったのだ。

不器用で素朴な温かい心を持ち、常に命がけで雪菜を守ってくれていた桑原。

雪菜はいつの間にか人間界で生活していくうちに桑原に対して異性として惹かれていたのだ。

 

「雪菜ちゃんは自分の気持に気付いたのね」

 

雪菜は頷いた。

 

「安心して雪菜ちゃん。万が一の場合は私が彼を助けるから。仮に私が行かなくても幽助君や飛影が彼を助けにいくと思うわ」

 

「棗さん……」

棗の言葉に少しホッとした顔。

 

「和真さん……」

両手を胸の前で組んで桑原の事を祈り始める。

そして雪菜は妖気を集中し始めた。

 

――Aブロック

 

「ゴホッ、ゴホッ」

 

口から血が溢れ出る。

 

「かなり霊気が弱まってきたな。死が近いな桑原よ」

 

(クソッ)

 

<<和真さん>>

 

その時、桑原の耳に女性の声が聞こえてきた。

 

(こ、この声は!!)

 

<<和真さん>>

 

(俺の脳に語りかけているのはま、まさか雪菜さんっすか!!?)

 

雪菜は念信で桑原の脳に直接語りかけたのだった。

 

<<はい、私です。和真さんの脳に直接語りかけています。和真さん、お願いです。勝って生きて下さい。私は和真さんへの自分の気持に気付きました。私は、私は和真さんが好きです>> 

 

(!!!!!!!!)

 

桑原は突然の雪菜の告白で一瞬にして顔が真っ赤になった。

 

「な、何だ?」

 

突然の桑原の変化に戸惑う武威。

 

「雪菜さ~~~ん!!!!!」

 

ブォォォォォォ!!!!!


(!!)

 

桑原は歓喜の声を上げた。

それはまるで魂の咆哮。

雪菜の名前を叫ぶと急激に霊気を急上昇させていく。

 

「放しやがれーー!!!!!」 

 

「ぐっ………」

 

桑原の急激の霊気の上昇によって武威は掴んでいた桑原の頭を放した。

桑原の身体から放出された霊気が先程までと別人の様に急激に上昇し、掴むことが出来なくなったからだ。

 

「ば、馬鹿な……」

あまりの桑原の霊気の変化に驚きを隠せない。

 

――メイン会場

 

「どうしたの彼は!?もの凄く霊気が上がっているわよ。一体彼に何が?」

驚く棗に雪菜は笑顔で答える。

 

雪菜、ニコリ。

「念信で和真さんに告白してしまいました」

舌をペロッと出して照れた顔。

 

「……雪菜ちゃんって意外に大胆な事をするわね…」

 

(まさかあの状況の彼に告白するなんて驚きよ)

 

予想外の雪菜の行動にちょっと飽きれる棗であった。

 

――Aブロック

 

武威、ニヤリ。

「何がきっかけか知らないが、お前の急激な変化には驚いた。だがこれで戦いは面白くなったぞ」

 

「もう俺は負ける気はしねーぞ武威!俺には勝利の女神様がついているからな」

 

雪菜の告白がきっかけとなる愛の力?で桑原の眠っていた爆発的な霊気が目覚めようとしていた。

 

勝負はこれからだ。

 

続く

 

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