nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #102「勝者(大会編)」

――魔界統一トーナメントAブロックの二回戦・第二試合

 

武威(ぶい)
×
桑原(くわばら) 

 

――Aブロック

 

「オリャァァァァァ!!!!!」

 

「フルパワーァァァァァ!!!!!」

 

ぶつかり合うお互いの最強の技と技。

桑原が武威に放つ時雨の技、それは狙いを一点に集中して妖気、または霊気を最大限に剣に込める。

そして神速で動いて相手を切り裂く。

次元刀は空間ごと相手を切り裂く為に、どんな者でも防御は不可能である。

桑原の狙いは武威の腹部。

桑原の次元刀と時雨の技が合わさった一撃。

その一撃が、武威の鋼鉄の身体を切り裂く事が出来るかどうかが、桑原にとっての最後の勝負の分かれ目であった。

そして武威。

フルパワーとなり武装闘気を最大限まで放出している。

武威の鋼鉄化した身体は、突進による体当たりの攻撃力はもちろんだが、特に防御力が格段に上がっていた。

そして最大限までに放出された武装闘気は最強の鎧、そして全てを飲み込み、破壊する武器となっていた。

最後の勝負の桑原の獲物が、防御不可能の次元刀と知りながら突進して来ている武威。 

空間ごと切り裂いてしまう次元刀の前では、武器闘気の鎧は簡単に突破されてしまう事は承知していた。

そして突破される事により、武威自身の身体も次元刀によって斬られる事も覚悟の上であった。

だが、武威は鋼鉄化し、武装闘気をフルパワーで限界まで放出したその身体を、次元刀で斬られても、それを打ち破り、桑原の身体を粉々に砕く絶大なる自信を持っていたのだ。

仲間の復讐と未来への道。

相手への深い殺意と憎しみ。

桑原と武威。

それぞれの想いや狙いは違うが、相手を倒すという気迫は互角であった。

そしてこれが、死闘となってしまった桑原と武威にとっての最後の戦いとなる。

 

「ウォォォォ!!!!!」

 

ズガガガガガガ!!!!!


突進して来る武威の身体から限界まで放出した武装闘気がその周辺を全て飲み込み破壊していた。

 

「武威ィィィィィ!!!!」

 

桑原の叫ぶような大声が闘場に響き渡る。

師である時雨が得意とする必殺の一撃。

桑原にとって、この技を放つのは一回戦の牛頭戦、そしてこれが二度目となる。


シャキーン!!

 

桑原は狙いである武威の腹部を次元刀で斬りつけた。


ズバァァァ!!!!!

 

空間ごと切り裂く事の出来る次元刀が武威の身体から放出されている、その鎧ともいえる武術闘気をなんなく切り裂いた。

そして。

 

ザクッ!

 

次元刀が武威の鋼鉄の腹部に接触

だが、武威の鋼鉄の身体が次元刀を止めていた。

しかし体当たりの為に突進していた武威の身体も次元刀によって止められていた。

 

「ウォォォォォ!!!!!」

 

お互いに大声を上げる二人。

 

武威は技を止めて、両手を使って桑原を殴り飛ばす事も、突き放す事も出来た。

それは桑原も同様で、次元刀を消して武威から離れて、再び態勢を整えて技を再び放つ事も出来た。

だが、彼等はこの技で最後の勝負を決めるつもりでいた。

 

「切り裂けェェェェェ!!!!!!!!」

 

武威の腹部に刺さった次元刀にさらに霊気を込めて、完全に切り裂こうとする桑原。

 

「無駄だァァァァァァ!!!!!!!!」

 

ブォォォォォ!!!!!

 

そして桑原の攻撃を弾き飛ばし、体当たりして桑原を粉々にする為に、さらに武装闘気を高める武威。

 

ドォォォォォン!!!!!


凄まじいまでの桑原の霊気と武威の武装闘気の源である妖気の柱が天に向かって放出された。

 

――選手たちの休憩所

 

妖気の柱を見て躯、ニヤリ。

「やはり命がけの真剣勝負とはいいものだ」

 

真剣勝負を好む躯は、腕を組んで二人の戦いを楽しそうに見ていた。

 

――メイン会場

 

「和真さん……」

 

観客席から立ち上がった雪菜は、胸の前で両手を組んで桑原の勝利を祈っていた。


「雪菜ちゃん」

 

棗は雪菜の組んだ手にそっと手を置いて、ギュッと握った。

棗の顔を見る雪菜。

 

棗、ニコリ。

 

棗は口では何も言わなかったが、優しいその笑顔は「大丈夫。彼を信じなさい」っと雪菜に言っていた。

 

「棗さん…」

 

スクリーンには命を賭けて、お互いの力を振り絞る二人の男が映し出されていた。

 

――Aブロック

 

「この次元刀が弾かれた時こそ、桑原お前が死ぬ時だァァァァァ!!!!!」

 

「俺は絶対におめーをぶった斬るぜェェェェェェ!!!!!」

 

鋼鉄の身体に付き刺さる次元刀が武威を完全に切り裂くのが先か?それとも次元刀を弾き飛ばして桑原の身体を粉々にするのが先なのか?

均衡した二人の戦い。

勝利の女神が微笑むのが果たしてどちらになるのか?

まさに緊迫した状態であった。

 


武威、ニヤリ。

「桑原!!お前は地獄というものを見た事があるか?」

 

武威が突然、桑原に問いかける。

 

「あ?地獄かよ!俺は高校受験に地獄を見たぜ!!!」

緊迫した状況の中で頓珍漢な答えを言う桑原。

 

「フッ、俺は見たぞ。この数年間の間に本当の地獄をな!!!」

 

「その地獄とやらが、てめえをそんな風に変えたのかよ!!!」

 

怒号にも似た声で武威に言い放つ。

 

「そうだ。俺は変わった。今の俺は昔とは違う。目の前に立ちはだかる者は全て破壊して殺す。それが今の俺の全てだ」

 

鋭い眼光で桑原を見る武威。

 

「てめえは自分の今の顔を鏡で見た事があっか?強い殺意と憎しみで顔が歪んでいるぜ!!!」

 

「笑止。強い殺意と憎しみこそが感情の中で最も強いものなのだ。これが俺の強さの源」

 

「そんな歪んだ感情を押し出して、てめえは一体何がしてーんだよ!!」

 

「お前に話した所でお前の頭の中では俺の考えは到底、理解する事は出来ないだろう」

 

激しい会話をしながらも二人の霊気と妖気はどんどん大きくなり放出されていた。

 

「へっ!俺はおめーの頭の中なんか理解もしたくねーけどな」

 

武威の顔が邪悪な顔となり激しく歪む。

 

「殺してやるぞォォォォォ!!人間界で平和な暮らしをしてきたであろうお前ごときに地獄を見てきた俺は倒せん!!!!!」

 

武威の殺意と憎しみという負の感情が爆発。

 

「野郎!!!」

 

ズズズ……

 

(!)

 

桑原の身体が徐々に押され出した。

 

「俺のこの身体は切り裂けん!!この身体に刺さっている次元刀が弾かれた瞬間にお前の身体は原形も残らない程に粉々になる!!」

 

「うぐぐ……。チクショー!!!」

 

徐々に追い詰められていく桑原。

 

その時だった。

 

《桑原》

 

《桑原》

 

桑原の脳に男の声で何者かが語りかけてきた。

 

(だ、誰だ!?)

 

《桑原分からないのか?》


(こ、この声は月畑!?まさか、おめーなのか!?)

 

桑原の脳に語りかけていたのは武威に殺された月畑であった。

 

《そうだ。この闘場で死んだ俺の魂がお前に語りかけている》

 

(月畑、俺はまだやられていねーぞ!呼びに来るにはまだまだ早いぞ)

 

《アホか!!相変わらず、とぼけた奴だ。今のお前は俺の仇討ちの気持と自分と大事な氷女の為に生きたいという強い気持が共存している》

 

(ああ、そうだな。特に月畑の仇討ちの気持はかなり強いぜ!おめーを殺した武威の野郎を俺は許せねーからな)

 

《俺の仇討ち等は考えなくていい。あの男の負の感情に復讐という負の感情で挑むな。巨大なあいつの負の感情に飲み込まれてしまうぞ。負の感情を捨てて、自分の為にだけその力を出せ桑原》

 

(!!)

 

月畑の言葉に驚く桑原。

 

《俺は武威に殺された事を恨みに思って、魂がここに止(とど)まっているのではない。お前に俺と同じ様に死んでもらいたくないのだ。生きてくれ、そして俺の魂を安心させてくれ》

 

(つ、月畑……)

 

《お前とは本当に短い付き合いだったのに、俺の為に本気で仇討ちを討とうとしてくれて嬉しかったぞ桑原》

 

月畑の声がここで途絶えた。

その間、時間にして僅か数秒に過ぎなかった。

それは夢か現実だったのかは分からない。 

だが、月畑の魂の言葉は確かに桑原に届いた。

 

(ありがとよ月畑。分かったぜ!!そこで俺が勝って生き残る瞬間を見てろよ!!)

 

「これで終わりだ!!砕け散れ桑原ァァァァァ!!!!!」

 

もはや武威に次元刀が弾き飛ばされるのは時間の問題であった。 

 

鋭い目で武威を見る桑原。

「終わりはてめえの方だ!!武威ィィィィィ!!!!!!」

 

復讐という負の感情を排除して、これからの未来の為に殺しに来た武威を倒して生きるという強い正の感情を爆発させた桑原。

この試合で最大となる桑原の霊気が放出される。

 

ググッ!!!

 

武威の腹部に突き刺さって全く動かなかった次元刀が動き出す。

 

(な、何!!)

 

「ダリャァァァァァ!!!!!!」

桑原の絶叫とも言える声が闘場に響き渡った。

 

ズバァァァァァァァァァァ!!!!!!!!

 

ついに桑原の次元刀が鋼鉄の武威の腹部を完全に切り裂いた。

 

「ヌォォォォォォォォォ!!!!!!」

 

プシューーー!!!

 

腹部から凄まじいまでの鮮血が飛び散る。

 

武威を完全に切り裂いた桑原は少し離れた位置から背後の武威の姿を見た。

 

(………)

 

お互いの目が合う。

 

武威、ニコリ。

「桑原…」

 

武威は何故かホッとした様な笑顔を桑原に見せた。

 

そして。

 

ズドン!!!

 

武威の身体は仰向けに倒れた。

 

「う……」

 

ドテッ

 

武威が倒れたのを見届けると力尽きる様に地面に座り込んだ桑原。

 

「や、やったぞ……」


口からそれだけを言うのが精一杯であった。

そして桑原は空を見上げる。

空には月畑の姿が見える。


月畑、ニコリ。

月畑が安心した様に微笑んだ。

そして静かにその姿が消えていく。

 

桑原、苦笑い。

「へっ!魚ヅラが笑った顔なんか初めて見たぜ」
(ありがとよ、月畑。そしてあばよ)

 

上空から審判が桑原と武威の姿を見つめる。

 

「Aブロックの第二試合は桑原選手の勝利です!!!!」

 

審判が桑原の勝利を宣言した。

 

命を賭けた激しい激戦の末に勝利を勝ち取ったのは桑原であった。

 

――メイン会場

 

雪菜、ニコリ。

「和真さん良かった……」

 

涙を流して隣にいた棗に抱きついた。

 

そして優しく雪菜の髪の毛を撫でる棗。

 

(良かったね、雪菜ちゃん)

 

――選手たちの休憩所

 

「桑原君の勝ちだ」

 

「全く、最後までヒヤヒヤさせやがってよー」

 

「あいつにしては良くやったな」

 

幽助達は桑原の勝利に安心したのであった。

 

――Aブロック

 

桑原は立ち上がり、仰向けに倒れた武威に近付いて行く。

 

「武威……」

 

倒れている武威に声をかける桑原。

 

「見事だ桑原。俺の負けだ……」

 

笑顔を見せる武威の顔から殺意と憎しみは完全に消えていたのだった

 

続く

 

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