nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #101「回想と決戦(大会編)」

――選手たちの休憩所

 

「どこから話そうか……」

 

凍矢達の前で、蔵馬は武威の事を語り始めた。

 

――蔵馬の回想

 

幽助は雷禅、飛影は躯の国に赴き、修行に励んでいた頃に時は遡る。

 

幽助、飛影の後を追う形で黄泉の誘いに応じて魔界に赴いた蔵馬だったが、当時の蔵馬はまだ黄泉の国のNo.2にはなってはおらず、黄泉の国のNo.2は軍事総長の鯱という妖怪だった。

この時の蔵馬の立場は黄泉の参謀の様な立場。

巨大な妖力を持つ雷禅と躯と黄泉の三国の国王。

三国は互いに牽制しあって均衡していた。 

だが、長年に渡る三国の均衡が崩れようとしていた。

雷禅がおよそ1000年もの間、エネルギーの源である人間を食べるのを絶っている為、もうすぐ死を迎えるのだ。

蔵馬は雷禅が死んでしまう事で魔界の均衡が崩れてしまう事を恐れていた。

魔界の均衡の為に蔵馬の内に秘めた策を実施する為に、ある行動を起こし始めていたのだった。

 

――人間界のとある喫茶店


一人の青年が喫茶店に入って来た。

 

「待たせたな蔵馬。久しぶりじゃな」

青年は人間の姿になったコエンマである。

 

「ええ」

 

蔵馬は喫茶店にコエンマを呼び出していた。

霊界にある頼み事をする為に。

 

「コエンマ、忙しい所をすみません」 

 

コエンマ、ニコリ。

「気にするな。今は特に忙しいという訳でもないしな」

 

「職務の方には戻られたのですか?」

 

仙水忍との魔界の扉を巡る戦いの中、魔族へと覚醒した浦飯幽助を危険な者として抹殺を特防隊に指示したコエンマの父・エンマ。

コエンマはその指示に逆らって幽助をかばった。

その為に表面上の咎めはなかったものの、一時的ではあるが職務から外されていた。

 

「うむ。先日、復帰したぞ」

 

「そうですか。意外と早く職務に復帰出来ましたね」

 

「まあな。忍の事件以来、霊界で問題視されていた幽助、それに力をつけてきたお前と飛影が魔界に行った事がワシの早期の復帰に繋がったのだがな」


やれやれといった顔をするコエンマ。

 

「そうかもしれませんね」

 

「それで、ワシに用とは何なのだ?」

 

「コエンマに一つ頼みがあるんですよ。霊界の情報網で、ある妖怪達を探してもらいたいんです」

蔵馬は真剣な顔で本題を切り出した。

 

「妖怪?霊界の情報網なら捜すのは簡単ではあるが、何の為にだ?」

 

「訳は後で話しますよ。この紙に書かれた者達の居場所を調べて欲しいんですよ」

 

スッ

 

そう言うと蔵馬は一枚の紙をコエンマに差し出した。

その紙には八匹の妖怪の名前が記載されていた。

 

・鈴駒
・酎
・陣
・凍矢
・吏将
・鈴木
・死々若丸
・武威

 

コエンマは紙に書かれていた名前に驚いた。

 

「これは暗黒武術会でお前達が闘った者達の名前ではないか?」

 

「ええ」

 

コエンマは真面目な顔で蔵馬に問いかける。

 

「蔵馬、お前は一体何を企んでおる?」

 

蔵馬、ニコリ。

「それは企業秘密です」

笑顔で答える蔵馬。

 

「おいおい………」


蔵馬の答えに困った顔をするコエンマ。

 

「フフ、いずれお話ししますよ」

 

「……まあ良かろう」

 

蔵馬の表情から何か深い考えがある事を察したコエンマはこれ以上聞くことを止めた。 

 

「すみませんコエンマ。宜しく頼みます」 

 

蔵馬の頼みを受けたコエンマは直ぐに霊界の情報網を使って捜索を開始。

八匹の妖怪の居場所は直ぐに見つかった。

蔵馬は霊界の情報網によって見つかった彼等を訪ねてまわったのだった。

蔵馬は訪ねた彼等に今は亡き幻海の元での修行を誘った。

誘いにのった彼等はコエンマの協力を得て、幻海の元で修行を開始したのだった。

この蔵馬の誘いを受けたのは八匹の内の六匹。

それは鈴駒・酎・陣・凍矢・鈴木・死々若丸であった。

このメンバーの中では、死々若丸が浦飯チームに対して悪態をついてはいたが、彼は鈴木に強引に連れて来られてしぶしぶ参加。

その他のメンバーは基本的に暗黒武術会で対戦した浦飯チームのメンバーに好意的であった為に、すんなりとOKを出した。

そして蔵馬は期限を設けて妖力値が100000Pを超える者を六匹連れて来ると黄泉と約束したのだった。

それはあくまで表向き。

蔵馬は雷禅の死後に、最悪の場合はその六匹と共に自身が第三勢力として立つ事も視野に入れていた。

魔界の均衡の為に。

蔵馬の誘いに応じなかったのは吏将と武威。

吏将はそのプライドの高さと性格の悪さによって、仲間である凍矢と陣の説得も虚しく、蔵馬の誘いには応じる事はなかった。

そして武威。

リストアップした八匹の妖怪の中で蔵馬が真っ先に訪ねた男はこの武威であった。 

彼もまた蔵馬の誘いには応じなかった……。

 

――とある田舎の山奥

 

コエンマから武威の居場所を聞いた蔵馬は、武威がいるという山を訪れていた。

地元の者でさえ殆ど近付く者がいないという不気味で深く険しい山。

その山の中に暗黒武術会で戸愚呂(弟)の死後、その行方が分からなくなっていた武威がいたのだ。

 

「随分と険しい山だ。こんな場所に武威がいるとはな」

 

険しい道を少しずつ進んで行くと一つの大きな洞窟があった。

 

「ここか……」

 

薄暗い洞窟の中に入ろうとしたその時。

 

「誰だ!」

 

シュルルルルル!!!!!


背後から男の声が聞こえると、同時に小型の斧が蔵馬めがけて飛んで来たのだ。

 

(!!)

 

蔵馬は咄嗟に斧をかわした。

 

シュルルルルル!!!!

 

パシッ

 

投げた者の手元に戻る斧。

斧を投げた者は武威であった。

武威に近付く蔵馬。

 

「久しぶりだな武威」


「お、お前は!?」

 

予想外の訪問者に驚く武威。

 

「……何の用だ蔵馬?それ以前によく俺の居場所が分かったな」

 

「まあね。それより武威、お前に話しがある」

 

蔵馬は本題を直ぐに切り出して武威に話したのだった。

蔵馬の話しを一通り聞き終えた武威は口を開く。

 

「あの幻海が生きていたとはな。暗黒武術会の決勝の前に戸愚呂(弟)が殺したものだと思っていたぞ」


「ああ、幻海師範は戸愚呂(弟)によって一度は殺されたよ。忘れたのか武威?暗黒武術会では優勝者の願いが叶うという事を」

 

「なるほど、生き帰らせたという事か。昔、戸愚呂兄弟が人間から妖怪に転生したように、あの大会は優勝者は願いが叶うのだったな。左京達、大会の運営者達が死んだから不可能だと思っていたぞ」

 

蔵馬、ニコリ。

「俺や幽助達も驚いたよ。帰りの船に乗ろうとしたら、死んだはずの幻海師範が現れたのだからな」 


「話しがそれてしまったな。お前からの誘いだが……」

 

武威の声のトーンが変化したのを蔵馬は聞き逃さなかった。

 

「ああ」

 

「悪いが断る」

 

蔵馬は正直誘いを断られるとは思っていなかった。

 

「何故?」

 

断る理由を問う。

 

「俺は自分の限界を知っている。これ以上は修行をした所で無駄だ」

 

「武威、お前は自分自身で限界の壁を作ってしまっている」

 

蔵馬の言葉に笑みを浮かべる武威。

 

「他に理由を付け加えるなら、俺は目標としていた戸愚呂(弟)を超える事はおろか、お前の仲間の飛影にも敗れてしまったのだ。本当に俺が倒したかった戸愚呂が死んだ今、もはや戦う事には未練はない」

 

「武威……」

 

武威は暗黒武術会の決勝戦の第二試合で飛影に敗北。

戸愚呂(弟)以外の者によって敗北した事、そして武威自身が目標として、その命すらも狙っていた戸愚呂(弟)の死。

敗北のショックと目標を失った武威は既に蔵馬が暗黒武術会で見たあの武威ではなかったのだ。

まるで戦う事自体を拒否するような目をしていた。

 

「戸愚呂(弟)は死んだんだ。いつまでもその幻影を追いかける事は無意味だぞ武威」

蔵馬は武威の説得を何度も試みた。

 

死んだ者を追いかける無意味さ、そして魔界には戸愚呂を超える妖怪がいくらでもいる事も説いた。

だが、武威は決して首を縦に振る事はなかった。

 

「蔵馬、俺はここで静かに暮らす。もう帰ってくれ」

 

「……分かった。今日の所は帰るよ。また明日も来る」

 

(………)

武威は蔵馬の言葉に何も答えなかった。

 

その日は大人しく帰った蔵馬は武威に言った通り、翌日も武威の所に赴いたのであった。

だが、武威は既に住んでいた洞窟から姿を完全に消していた。

 

――蔵馬の回想終わり

 

「俺の話はここまでだ。その後、再びコエンマに武威の行方を探して貰ったが、彼の行方は全く分からなくなった」 

話しを終えた蔵馬。

話しを聞いていた者達の中で最初に口を開いたのは凍矢であった。

 

「それで姿を完全にくらました武威の奴は、この大会に突然現れたという事か?」

 

「ああ」

 

近くで話を聞いていた死々若丸が話しに加わる。

「戦う事を止めた武威は何がきっかけで再び動き出し、あれだけの力を付けたのか」

 

「あの妖気は並大抵の修行では身につく者ではない」

 

「姿を消して三年以上の空白の時間の中に武威に動き出す何か大きなきっかけがあった事は間違いない」 

 

「一回戦の相手を殺した時、そしてあの失敗ヅラ(桑原)に向けている殺気は凄まじいものだ」

 

「何が武威を変えたのか……」

 

飛影の脳裏に魔界での武威との出来事が浮かぶ。

 

「あの強さだけなら御堂の力が大きいだろうな」

 

「御堂??」

 

飛影が魔界での出来事についてここにいる皆に語った。

そして話しを聞き終えて、蔵馬が最初に口を開いた。

 

「御堂か。噂は聞いた事がある。試練を乗り越えた者に、望む能力を与えられる者」

 

「御堂から聞いた。あいつは試練を受けて、力を得た。だが、完全に成功したわけではなかったのだ」

 

桑原の試合の様子を見ながら話しを聞いていた幽助が声を上げた。

 

「話しはそこまでだ。おめーら試合を見てみろ!どうやらあいつら勝負を決めるみてーだ」

 

スクリーンには時雨の技の構えをしている桑原と武装闘気をフルパワーにした事によって身体を鋼鉄化した武威の姿が映し出されていた。

 

「武威の身体が変化しているぜ。そのせいか知らねーが、妖気がまた馬鹿出かくなってやがる」

 

「桑原君のあの構えは!?」

 

「時雨の技だ」

 

――Aブロック

 

「一回戦で見せたあの技か。俺には通用せんぞ」


「武威、それはやってみねーと分からねーぞ!」


「分かるさ」

 

互いに構える二人。

 

「俺のこの身体はお前の技を弾く。お前の全てを粉々に打ち砕く」

 

先に動いたのは武威であった。

 

ズンズンズン

 

武威は桑原に向かって突進した。

その身体で体当たりして桑原を粉々に砕く為に。

 

「ウォォォォォ!!!」

 

ブォォォォォ!!!

 

武威の身体から凄まじいまでの武装闘気が放出される。

 

(…………)

 

向かって来る武威を見つめながら桑原は狙いを一点に集中する。

 

「行くぜ武威!!最後の勝負だ」

 

ドーーーン!!!!!

 

桑原は突進して来る武威に向かって、ついに時雨の技を発動させた。

 

――メイン会場

 

「和真さん!!」

観客席から思わず立ち上がる雪菜。

 

棗も戦いを見入っている。

「これで勝負が決まる」

 

――選手たちの休憩所

 

「桑原ァァァァ!!」


「桑原君!!」

 

――Aブロック

 

「オリャァァァァァ!!!!!」

 

「フルパワーァァァァァ!!!!!」

 

武威は桑原を殺す為に。

 

桑原は月畑の仇討ちと自分と愛する雪菜との未来の為に、自分を殺しに来ている武威を倒して生き残らねばならない。

 

それぞれの想いを胸にお互いの最強の技がついにぶつかる。

 

続く

 

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