nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #098「イチガキ登場(大会編)」

――魔界統一トーナメントのDブロックの二回戦・第二試合

 

梟(ふくろう)
×
鈴木(すずき) 

 

――メイン会場

 

「ヒョヒョ、中々上出来だぞ梟」

 

男は薄気味の悪い笑みを浮かべた。

 

「イチガキ」

 

ズズズ……

 

男の名前を呼ぶと空間から一人の女性が姿を現した。

闇撫の皐月である。

 

「ヒョヒョ、お前さんか皐月」

 

皐月、ニコリ。

「貴方の実験体の調子はどう?」

 

「お前さんの目で見てみるがいいぞ」

 

「どれどれ」

興味深そうにスクリーンを眺める。 

 

スクリーンには鈴木が映っていた。

空中を自由自在に動き回って陣の技を駆使して梟を攻め続けていた。

 

「へ~え。貴方の実験体と戦っている男は中々強いみたいね。顔もイケメンだし」

 

「あやつは鈴木だ。暗黒武術会の時には変装をしていたがのう。あれがどうやら素顔の様じゃ。あの大会の時とはまるで別人の様に強くなっておる」

イチガキは目を細めてスクリーンに映し出されている鈴木を見る。

 

「名前は鈴木っていうのね。わりといい男だわ。私は少し好みかな。でも樹には敵わないよ」

 

「ヒョヒョ、顔が良い男が好きとは若いのう。ところで皐月よ、あの者はどうしておる?」

 

「フフッ、裏男の中にいるよ」

 

――会場へと続く道

 

何者かに瀕死の重症を負わされて比羅の腕の中で息を引き取った砂亜羅。

妹の死に怒りに燃える比羅に樹が接触してきたのだった。 

 

「樹、何者が砂亜羅を殺したのだ?」

 

砂亜羅の亡骸を強く抱き締めながら、比羅は鋭い視線で樹を見た。

樹は比羅に答えた。

砂亜羅の命を奪った者が誰なのかを。

その瞬間、強い突風が吹いた。

 

ヒューーー!!!

 

「……の……者だ」

 

樹は砂亜羅を殺した者が誰なのかを比羅に伝えた。

 

「何だと……!。何故、砂亜羅を殺すのだ?」

 

樹の答えがあまりにも予想外だったので、流石の比羅も驚いていた。 

 

「比羅」

 

スッ

 

樹は手に持っていた物を比羅に見せる。

 

「これは?」

 

怪訝そうな顔で見る。

それは幽助が霊界との連絡用に魔界に持って来ていたあの通信機であった。


――Dブロック

 

ギュウウウウウウ

 

風を操り空を駆ける鈴木は、凄まじいまでの連続攻撃をひたすら続けていた。

 

「くらえーー!!!」


ビュッ!!

 

空中からの鋭い蹴り。

だが、梟はこの攻撃を素早くかわす。

 

「クソッ、さっきからチョコマカと逃げやがって」

 

梟は鈴木から繰り出されている攻撃を全てかわしていた。

 

――選手たちの休憩所

 

蔵馬は梟の動きを観察していた。

「しかし鈴木があれだけの攻撃を仕掛けているというのにダメージを与えられないな」

 

凍矢が頷く。

「ああ。遠隔攻撃は爆弾で迎撃。直前的な攻撃は全てかわしている」

 

「それにしてもよー、鈴木のあの闇アイテムは一度受けた相手の技を使えるだけじゃなくてそれを無効にしちまうのだろう?よくあんなもんを作ったよな」

幽助は鈴木の物を作り出す技術に対して感心していた。

 

「相手の性質に合わせて作る技術にかけてはあいつは本当に天才だ。あの闇アイテムも自身の性質に合わせて作った様だ」

 

蔵馬、ニコリ。

「俺や桑原君も鈴木の作り出す道具で暗黒武術会では助けられたよ」

 

暗黒武術会では蔵馬は前世の実を液体として飲むことで妖狐の姿に戻り、格上の鴉と戦う事が出来た。そして桑原は試しの剣で戸愚呂(兄)と戦い、見事にこれを倒した。

 

「そういえばあの鈴木の闇アイテムは何て名前だ?凍矢から名前をまだ聞いてねーよな?」

 

「そういえば聞いていなかったな。何て名前なんだ凍矢?」

 

幽助たちの質問に少し困った顔をする凍矢。

幽助と蔵馬は凍矢が何故困った顔をするのか、不思議そうに顔を見合わせる。

 

「ほ、ほ……」

 

凍矢は鈴木の闇アイテムの名前をどうやら口に出すのが嫌みたいだ。

 

「ほ?」

 

「ほ……本当に強いぞ!!青き模写腕輪だ……」


(…………)

 

幽助たちは聞いた事を後悔した。

 

(鈴木よ。お前の強さと物を作る天才的な技術は認めるがネーミングセンスだけは認められない……)

凍矢が遠い目をした頃、スクリーンに映し出されている鈴木は、梟に向かって再びその凍矢の技で攻撃を仕掛けようとしていた。

 

――Dブロック

 

「お前は色々な技を持っているようだが通用しないぞ」

 

「そうかよ」

 

鈴木は空中で動きを止めると手の平に結晶を作り出し始めた。

「それはさっき使ってきた氷の技か?」 

 

「そうだ」

 

ブォォォォォ!!!

 

空中で妖気を集中。

 

ヒョォォォォォ!!!!!


辺り一面に吹雪が吹き荒れた。

 

ポウ

 

鈴木の右手に妖気で氷の塊を作り出す。

 

「行くぜーー!!!」


ボッ

 

手の平の氷の塊を吹く。

魔笛散弾射である。

 

ガガァァァァァ

 

氷の塊が梟に襲いかかる。


スッ

 

梟は走っていた足の動きを止めて両手を前に突き出す。

 

ボン!!ボン!!ボン!!


鈴木の放った氷の塊は梟に近付くだけで爆発して粉々になっていく。

 

「この技はさっき見せてもらった。もはや通用しない」

 

「俺もこれがお前に通用するとは思っていない。あくまでこれは囮だ」

 

ギュウウウウウ!!!!!


既に鈴木は梟に接近していた。


ピキィン

 

梟が氷の塊を防いでいる間に、鈴木は凍矢の技の一つである呪氷剣を作り出していた。

 

(!!)

 

「もらったぞ!!」

 

ビューー!!!!!

 

一気に斬りつける鈴木。

 

ザシュ!!!

 

「ガハッ!!」

 

梟は口から血を吐き出した。

そして口に着けていたマスクが衝撃で外れた。

度重なる激しい鈴木の攻撃をかわし続けていた梟。

だがついに鈴木の呪氷剣が梟の左肩から右の脇腹までを深く切り裂いた。

 

鈴木、ニヤリ。

「手応えありだ。急所はギリギリで外してやったぜ。だがその傷では戦えないだろう。さっさと負けを認めて治療した方がいいぜ」

 

「少し驚いた」

ヨロッと梟の足がふらつく。

 

(勝った)

鈴木はこの時、勝利を確信していた。

 

――選手たちの休憩所

 

蔵馬、ニコリ

「やったぞ」

 

幽助が異変に気付いてスクリーンに近付く。

「いや様子が変だ」

 

 

――Dブロック

 

「嘘だろ!?」

 

鈴木は思わず自分の目を疑った。

 

じゅるじゅる

 

呪氷剣に切り裂かれた傷が、不気味な動きをしながら塞がっていく。

そう戸愚呂(兄)の再生能力の様に。

そして何事もなかった様に梟の身体は元の状態に戻った。

 

「驚いたみたいだな」

マスクが外れた梟は不敵な笑みを浮かべる。

 

「まさか再生するとはな。それは予想外に決まっているだろう……」

全く予想していなかった梟の傷の再生に驚きを隠せなかった。

 

――メイン会場

 

皐月、ニコリ。

「あの鈴木って男、流石に再生能力には驚いているみたい」

 

「ヒョヒョ、梟にはあの男の遺伝子を加えているからのう」

 

「ああ、樹が何処かから連れて来たあの薄気味悪い男ね。あいつは何年間も一人の男の幻覚と戦い続けていたマヌケな男だよ」

 

「じゃが、あの男の再生能力は素晴らしいぞ。ワシの理想の生物兵器を作り出すには欠かす事の出来ない能力だわい」

イチガキは嬉しそうに語る。

 

「あの薄気味悪い男の話はもういいよ。今からあの鈴木って男が貴方の実験体にやられていくのだろうね。私の好みだからちょっとやられるのを見るのは嫌だな」

 

「ヒョヒョヒョ」

不気味な高笑い。

自分が作り出した梟の強さに絶対的な自信を持っていた。

 

――Dブロック

 

「一つ聞くがお前は俺の追跡爆弾を使ってきたが、一度見た技を使う事が出来るのか?」

 

「俺の作り出した闇アイテムは一度身体で受けた技を覚える。自分が使える様になると同時にその技も無効に出来る。今の俺には同じ技は二度通用しないぞ」

 

梟、ニヤリ。

「ククク、なるほどな。二度目の攻撃が効かないのならば一度目の攻撃でお前を倒せば済むことだ」

 

「お前にそれが出来るのかよ!」

 

「こおおお」

 

ズズズズズ

 

梟の髪の色が変化。

そして口から体内に火気物質を集め始めた。

 

「これは……」

 

バチバチバチ

 

梟の両手には、凄まじいまでの妖気が蓄積されている。

 

――選手たちの休憩所

 

蔵馬がスクリーンにくらいつく。

「あれはまずいぞ!」

あの技の恐ろしさは直接戦った蔵馬には分かる。


凍矢の顔が青くなる。

「マズい。あの妖気は鈴木を遥かに上回っている」

 

――Dブロック

 

バチバチバチ

 

梟の両手が起爆装置となる。

 

「ククク、死ね!!」

 

ダン!!

 

飛び上がると素早く鈴木に向かっていく。

 

「肢体爆弾(リンボム)」


(!!)

 

ドッガァァァァァァァァン!!!!!!!!

 

梟が起こしたこの爆発は大会で最大規模となる大爆発であった。

 

「ハハハハハ」

 

爆煙の中で、梟の笑い声が闘場に響き渡る。

 

――会場へと続く道

 

樹の話しを聞いた比羅は、行動を起こす為にこの場を立ち去った。

樹は比羅の立ち去った後を見ていた。

 

「上手く事が運んだ」

 

ヒューーーッと強い突風が吹き荒れる。

樹は風になびく髪を手で掻き上げると静かに呟く。

 

樹、ニヤリ。

「砂亜羅を殺したのは俺だというのに馬鹿な男だ。だが、これで矢は放たれた。一度放たれた矢はもう止められない」

樹の恐ろしい策略は一歩一歩着実に進み出していた。

 

続く

 

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