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このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #051「御堂の子(大会編・前章)」

ーー魔界2番地区

 

ここはかっては躯の支配する地域だった。

第一回魔界統一トーナメント後は、躯はそのままこの地に残り、自らの居城で生活をしている。

飛影も大会後はこの地に留まり、躯とそのかっての配下たちと一緒に人間を保護するパトロール隊の中心として活躍していた。

 

先日、人間界から黄泉の手により、桑原と共に魔界に転移された妹の雪菜を捜索をする為、一時的にこの地を離れていた。

それから雪菜の無事の確認、そして再会までしてしまった。彼の目的は無事に達成は出来たのだが、少々面倒臭い事になってしまった。

 

雪菜を助けてくれた棗という女に、飛影が雪菜の兄だという事がバレてしまったのだ。

飛影はこれからも自分が雪菜の双子の兄だということは、名乗るつもりはなかった。

だが、この件について棗は飛影にある条件を突き付けてきた。

それは飛影と棗が魔界統一トーナメントに参加して、

お互いに試合で対決して、もし飛影が棗に勝てば、棗は兄だということを雪菜には話さずに見逃がし、棗の方が勝てば、飛影は雪菜に自分が兄だと名乗らなければならないという内容だった。

 

棗と別れた後、飛影は2番地区にまで帰ってきていた。

飛影は森の中を走っている。

もう少しで躯のいる居城が見えてくる。

 

「あれは」

 

飛影の視界に黒髪の長い髪を風になびかせながら男が走っている姿が見える。 

男は飛影には気付いていない。

なにか少し慌てているようだ。

飛影は男の名を呼ぶ。

 

「氷室(ひむろ)」

 

飛影に呼ばれた氷室は足を止めた。

誰が自分を呼んだのかと周りをキョロキョロと探している。

 

「おい、こっちだ氷室」

 

もう一度呼ばれて、ようやく自分を呼んだのが、飛影という事に気付いた。

氷室は歩いて飛影のところにまでやって来た。

 

「これはこれは飛影。お疲れ様です。私を呼ぶのは誰かと思ってびっくりしましたよ」

 

飛影に氷室と呼ばれたこの男もまた、躯の直属の77人の戦士の一人。

美しく長い黒髪が本人の自慢で、色白の肌に切れ長の目。

紫色のマントを羽織っている。

その実力は直属の戦士の中で、常に十番以内に入っている実力者で、性格は北神に似た感じの真面目なタイプである。

大の人間界フリークで、霊界が張った結界が無くなってからは、頻繁に人間界に行っては、人間界の文化を堪能しているらしい。

人間を食べないタイプの妖怪なので、本人はグルメを気取っている。人間界の甘いスイーツが最近の彼のブームらしい。

 

「お前にしては珍しく慌てていたようだが、どこに行くんだ?」

 

氷室は額の汗を、人間界で手に入れたキティちゃんの柄が刺繍されたハンカチで拭きながら答える。

 

「私はこの2番地区の最南端にある、御堂という名前の洞窟に向かっていたんですよ」

 

「御堂?」

 

それは飛影が今まで聞いた事のなかった場所だった。

この地に来て飛影は4年になるが、まだまだ知らない場所はあるようだ。

 

氷室は今度は額に何か得体の知れないものをペタッと貼る。

 

「う~ん、冷たくて気持ちいい。人間界最高です」

 

後で飛影が聞いたら、これは人間界で使われている

冷えピタと呼ばれる物だった。

 

「それで、お前が慌てていたとこを見るとそこで何かあったのか?」

 

大木を背に氷室は話し始めた。

 

「禁呪法を得るために誰かが洞窟に入ったらしいんです」

 

氷室が語るには、まずは2番地区の最南端にある御堂という洞窟の中には、魔界の創世記から存在する、洞窟の名前にもなっている御堂という名前の老妖怪が住んでいるという事。

 

この御堂は妖怪としての妖力はA級妖怪程だが、類まれなる才能と能力の持ち主で、禁呪法と呼ばれるあらゆる力を編み出したのだ。

 

御堂の力は他社に自ら編み出した無数にある能力を一つだけ他者に与える事が出来るという。

だが、その能力を得るにはある試練を受けなければならない。

試練とはそれは行った者にしか分からない。

殆どの者が、その力を制御出来ずに暴走してしまう。

暴走した者は破壊と殺戮を求める存在に。

禁呪法に敗れたこの敗者を“ 御堂の子“”と呼ばれていた。

 

御堂は力は弱いが、その能力はあの躯でも手が出せないという。

それ故に、お互いにあまり干渉をしないという盟約を結び、御堂の住む洞窟は2番地区で唯一、治外法権が許された場所となった。

躯はこの危険な御堂の能力を禁呪法と呼んでいた。

数百年に何人かは、この御堂の存在を知り、やって来る者がいるとの事。

成功して新たな力を得た者は殆どいない。

それだけ御堂の与える試練が過酷という事だ。

 

「そういうわけで、入った者が能力を制御出来ずに御堂の子として恐らく誕生してしまうでしょうから、私が倒します」

 

氷室の話しはここで終わった。

「なるほど。大体の話しは分かったぜ」

 

氷室、ニコリ。

「では、私は御堂に向かいます。飛影、それではまた」

 

「ああ」

 

氷室は再び最南端にある洞窟の御堂に向かって走り去って行った。

その後ろ姿を見つめる飛影。

 

「禁呪法か…」

 

ーー魔界2番地区の最南端・洞窟「御堂」

 

周りを深い森に囲まれた中に不気味にその入口が顔を覗かせる。

氷室はその洞窟の入口に到着した。

既に入った者は御堂から力を与えられているだろう。

 

洞窟内では、不思議な御堂の力で妖気を限りなく制御される。

力は御堂以外の者の力をD級以下にまで下げられてしまうのだ。

躯が御堂に手を出せない理由の一つでもある。

 

氷室はここでこれまで抑えていた妖気を放出させる。

 

ブォォォォォ!!!!

 

直属戦士としての力を完全開放した。

氷室は洞窟内に入らず、自らの妖気を囮に御堂の子を外におびき寄せる作戦だ。

 

暫くすると洞窟から氷室の妖気を嗅ぎ付けた、

御堂の与えた能力の制御に失敗した者。

殺戮者“ 御堂の子”となった者が洞窟の入口に向かってきている。

 

「さあ、来ましたよ。誰かは知りませんが、全く馬鹿な真似をしますね」

 

氷室はマントの中から一本の杖を取り出した。

杖の先に妖気を集める。

 

氷室、ニヤリ。

「魔界召喚士・氷室の力を存分に味あわせてあげますよ」

 

続く

 

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