nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #050「あれからの桑原(大会編・前章)」

――躯の居城

 

「オリャァァァァァ!!!」

 

躯の居城の中にある訓練所で響き渡る、一際大きな声。

声の主は桑原である。

 

ガッ!!

 

桑原の霊剣は時雨に受け止められた。

時雨の激が飛ぶ。

「まだまだだ。踏み込みが甘いぞ!」

 

ガキーーン!!!

 

時雨が霊剣を弾く。

桑原の身体は弾かれた勢いで床にまで吹っ飛ぶ。

 

「こなくそォォォ!!!」

直ぐに立ち上がると時雨に向かっていく。

 

ガキーン!!!

 

霊剣を簡単に弾く。

時雨は燐火円磔刀を自由自在に操り、桑原の霊剣をこれまでも何度も何度も弾いていた。

 

「ウォッ!?」

時雨に弾かれた勢いで今度は尻餅をついた。

 

「駄目だ駄目だ!!!拙者を殺すつもりぐらいの気迫で来るんだ。そんな事では強くなれんぞ!!!」

時雨の指導にも熱が入る。

 

「行くぜ!!!」

 

桑原はその昔、飛影に剣術を教えたという時雨に、本格的な剣術を習う為、彼から厳しい修業を受けていた。

 

ガキーン!

 

またも弾かれる霊剣。

疲労が蓄積されて肩で息をする。

 

「ハァハァ・・・」

 

時雨は燐火円磔刀の刃を桑原に向けた。

「さあ桑原、もう一度だ!」

 

だが身体は疲れていても気力だけは衰えていない。

「おう!」

 

霊剣を振り回し時雨に向かっていく。

 

「よし、どんどん向かって来るがいい」

 

時雨との厳しい修行は続く。

 

それから半時が過ぎた頃、
訓練所に一人の女性が入って来た。

 

「やっているな」

ここの主の躯である。

 

「あっ、これは躯様」

 

躯が来たことに気付く。

時雨は修行の手を一旦止めると、

躯の前に片膝をつき、彼女に礼を尽くす。

 

躯が桑原に声をかける。

「桑原、頑張っているようだな」

 

桑原、ニヤリ。

「あったぼうよ。少しでも強くならないといけねーからな」

 

時雨が立ち上がると躯に尋ねる。

「躯様がこちらに来られるとは何かありましたか?」

 

「さっき、煙鬼のいる大統領府から、俺たちの担当区域内のパトロール隊を出動させて、桑原と氷女の雪菜という女の捜索をして、無事に保護するようにと指示が届いた」

 

「煙鬼から直接ですか?何故、あの者が今回に限って、名指しで桑原と氷女の保護の指示を出したのでしようか?」

 

「さあな。保護した人間の報告義務は俺たちにはないが、恐らくは桑原の捜索を、幽助か蔵馬辺りが煙鬼に頼んだのだろう」

 

時雨は顎を触りながら頷く。

「でしょうな」

 

「煙鬼の方には、桑原はこちらで保護していると伝えておいた。煙鬼の指示が出たからには、妖怪である氷女の捜索にもパトロール隊を使えるから直ぐに見つかるだろう」

 

躯の言葉に桑原、ニヤリ。
「そいつは本当に助かるぜ!雪菜さんは俺に巻き込まれた形で、この魔界に飛ばされちまったんだ。本当に迷惑をかけちまった」

 

時雨は雪菜の事を考えていた。

彼女とは面識はないが、飛影からは事情は聞いている。

(飛影の妹か。そういえば、飛影から話しを聞いただけで、実際に一度も会ったことないが、どんな者だろうな)

 

次に彼等の話題は比羅たちの事になった。

躯は比羅たちの事を警戒していた。

「桑原から聞いた、妖気でも霊気でもない気を持つ者の存在は少なからず、この魔界の現状を乱しかねないな」

 

「あの黄泉とやりあう事が出来る程の力の持ち主ですからな…」

 

時雨も謎の未知の気を操る比羅たちが危険な存在だと考えていた。

 

躯の目つきが鋭くなる。

「何者であれ、魔界の現状を乱す者ならば、俺は全力で排除する。それだけだ」

 

(躯様は魔界を心から愛されているお方だ。魔界の現状を大きく変えようとする者には容赦しないだろう)

 

今の躯は100%の力を安定して出せる。

時雨は比羅たちがいかなる力の持ち主だろうと、躯が負けるとは到底思えなかった。

 

穏やかな顔に戻る躯。

「手を止めて悪かったな。もう俺に気にするな。お前たち、修業を続けろ」

 

「はっ」

 

「やってやるぜ」

 

カチャッ

 

時雨は燐火円磔刀を握りしめて構える。

 

桑原、ニヤリ。
「お~し。行くぜ!!」

 

ジジジ…

 

右手に霊気で霊剣を作り出す。

 

「オリャァァァ!!!」

時雨に向かって駆け出した。

 

ガキーン!!!

 

桑原の一撃を受け止めた時雨。

腕に強い衝撃。

「よしっ!いいぞ」

 

修業に励む桑原の姿を見て躯は考える。

(この人間には、狙われる程の特殊な能力があるというのか?本当にそれがあるとしたら、それが一体どんなものか気になるところだ)

 

――魔界3番地区・大統領府

 

「何!それは本当か!!」

 

嵐士が耳打ちで煙鬼に伝えた情報に声を上げた煙鬼。

才蔵と孤光は顔を見合わせる。

 

「煙鬼、何かあったのか?」

才蔵が煙鬼に尋ねる。

 

煙鬼、ニヤリ。

「良い話しだ。桑原が見つかった。躯のところで今は保護されているようだぞ」

 

孤光も朗報に喜ぶ。

「流石は躯だ。見つけるのが早かったね」

 

才蔵が嵐士に尋ねる。

「もう一人の氷女はまだ見つからないのか?」

 

嵐士は答える。

「はい。氷女の方はまだ見つかっていないそうです」

 

煙鬼は嵐士を労う。

「ご苦労だった。下がってよいぞ。また何か情報があったら直ぐに知らせてくれ」

 

「はっ。それでは失礼します」

 

嵐士は部屋を後にした。

 

「とりあえず、奴らに狙われている、肝心の桑原の方は見つかったようだな」

 

自分が魔界に飛ばした男が無事に保護された事を知り、黄泉は安心したようだ。

 

「そうだな。後は氷女の子だけだな」

煙鬼もどこかホッとした顔。

 

「修羅を待たせてある。俺はそろそろ行くぞ」

そう言うと黄泉は背を向けてこの部屋の入口に向かう。

 

煙鬼が黄泉に声をかける。

「もう行くのか?」

 

頷く黄泉。

「ああ。俺が飛ばした人間も見つかったしな。直に氷女の方も見つかるだろう」

 

孤光も引き止める。

「大会も近いことだし、息子と一緒に大会までここに滞在していったらどうだい?」

 

「あの比羅という者たちが、この魔界や他の世界に仇をなせば、この俺もお前たちと共闘するが、大会となれば話しは別だ。俺は今度の大会で優勝して、魔界を統べる王となる。悪いが、お前たちとは敵同士となる。あまりお前たちとは馴れ合うつもりはない」

 

黄泉の言葉にフゥーと溜息をつく孤光。

「やれやれ。あんたも難しい男だね~」

 

この男と打ち解けられる日は来るのかと思う。
「やれやれ。あんたも難しい男だね~」

 

「邪魔したな。大会で会おう」

それだけ告げると黄泉は立ち去った。

 

黄泉が大統領府の入口まで来ると修羅が駆け寄ってきた。

 

「パパ、桑原たちの事は分かったの?」

 

「ああ、大丈夫だ。修羅、大会は近い。最後の仕上げをするぞ」

 

父の言葉に修羅は闘志を燃やす。

「分かったよパパ!!」

 

大会までの僅かな期間で修羅はさらなるパワーアップを遂げることになる。

 

ーーその頃

 

飛影はとある洞窟の入口の前に立っていた。

彼はある目的の為にここにいる。

 

飛影は今からある命懸けの挑戦をすることになる。

 

「ここか。やってやる」

 

続く

 

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