nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #049「回想・黄泉vs孤光②(大会編・前章)」

――魔界統一トーナメント

 

四回戦

黄泉

孤光

 

黄泉の右手には炎が燃え盛っている。

孤光がどこから仕掛けてくるのか、彼女が発している足音を聞き分けている。

 

ダッ!ダッ!ダッ!

 

ダッ!ダッ!ダッ!

 

独特のテンポの足音が静かな闘場内に響いている。

黄泉は冷静に孤光を探している。

そしてついに黄泉は、孤光の位置を察知した。

孤光の足音が僅かながら近くに感じたのだ。

つまりそれは孤光が黄泉に攻撃を仕掛ける為に接近したことを示していた。

 

黄泉はこの機を逃さない。

「とらえたぞ」

 

瞬時に振り返る。

「お前はそこだ!!」

 

孤光の姿が黄泉の目の前に現れた。

孤光、ニヤリ

「よく分かったね」

 

孤光は姿を現すと同時に一撃を放つ。

 

ガシッ

 

黄泉の左手が孤光の拳を受け止める。

受け止められた孤光は驚く。

(!?)

 

孤光の拳を強く握り締めた。

捕まえた孤光を離さない。

黄泉は孤光の身体を自分の方に引き寄せた。

 

「魔古忌流炎裂撃!!!」

 

ビューン!!!

 

最強の一撃を孤光に放った。

それはまさに完璧なタイミングであった。

 

ーー選手たちの休憩所

 

幽助は食い入る様にスクリーンに釘付け。

「スゲーよ。あのスピードの孤光を捕まえた。あれはかわせねー」

 

蔵馬は冷静に黄泉と孤光の動きを見ている。

「いや、駄目だ。孤光は俺たちの想像を上回っている」

 

ーー闘場

 

炎裂撃を放った瞬間、僅かだが、掴んでいた孤光の拳を握る力が緩んだ。

その僅かな緩みを孤光は逃さなかった。

下半身を素早く振り、掴んでいた黄泉の左手を蹴り上げたのだ。

孤光を掴んでいた黄泉の手が離れる。

その所為で、完璧なタイミングで放たれた黄泉の炎裂撃の軌道がズレた。

 

「残念だったね、黄泉」

孤光は黄泉の炎裂撃を間一髪でかわした。

 

ーーメイン会場

 

黄泉の息子の修羅が父の戦いを見守っていた。

 

「あいつパパの一撃をかわした」

父の戦い方を熟知している修羅は、今の黄泉の放った一撃は完璧だと思った。

それをかわした孤光の凄さを理解した。

だが、今はそれよりも修羅には気になることがあった。

 

「あのパパが早いうちに炎裂撃を出した。

もしかしたらパパは…」

 

修羅は父に何か異変を感じずにはいられなかった。

(パパ……)

 

ーー闘場

 

炎裂撃をかわした孤光は再び姿を消した。

だが正確には姿は消したわけではない。

あまりにも速く動いている為、その姿が誰の目にも見えないのだ。

 

これまで冷静だった黄泉に若干だが焦りが見える。

(今のをかわしたか。しかし何てスピードだ!)

 

目が見えない黄泉は聴覚が発達している。

この黄泉でなければ、さっきの様に孤光をとらえること

は簡単には出来なかっただろう。

再び聴覚を研ぎ澄まし、消えた孤光を探す。

 

ダッ!ダッ!ダッ!

 

(この音は…。来る!!)

音の違いを感じ取った黄泉は孤光が仕掛けてくると、

分かった。

 

フッ

 

黄泉の前に孤光がその姿を現した。

現れた彼女は黄泉に接近し、完全に黄泉の間合いに入っていた。

狙いは黄泉の腹部。

「くらいな」

 

ビューン!!

 

鋭い一撃が黄泉の腹部を狙って放たれた。 

 

「魔古忌流煉破防御壁」

 

ピキーン!!!

 

黄泉は孤光が仕掛けるのが分かっていた。

既に呪術の詠唱を終えていた。

瞬間的に物理的な攻撃を防ぐ防御壁を張った。

 

ガキーン!!

 

孤光の一撃を防いだ。

弾かれる孤光の拳。

 

弾かれた衝撃で後ずさる孤光。

「これは妖気で作った壁か!!」

 

ボォォォォ!!!

 

燃え盛る黄泉の右手。

 

「ハァッ!」

 

ビューン!!!

 

孤光が後ずさったタイミングで炎裂撃を放つ。

だが。

 

フッ

 

黄泉の攻撃が空を切り、孤光の姿がまた消えた。

 

ーー選手たちの休憩所

 

話題は黄泉がこの試合で出した二つの壁。

実際に黄泉と激闘した幽助は苦笑い。

「黄泉の使う壁は、本当に厄介だったぜ」

 

蔵馬もこれに同意。

「黄泉は、妖気系の遠隔攻撃なら煉破反衝壁で吸収。物理的な攻撃なら煉破防御壁で防ぐ。守備力だけなら、恐らく今の魔界では一番なのかもしれない」 

 

ーー闘場

 

何処からか孤光の声が聴こえてくる。

 

「そういえばあんたは、そんな防御技を持っていたね。幽助との戦いで使っているのを見ていたのにすっかり忘れていたよ」 

 

ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!

 

孤光の足音がさらに速くなる。

神速と呼ぶのがまさに良く似合う。

 

「あたしの最大の武器は、全盛期の雷禅より速いって言われたこのスピードだよ」

 

「なるほど…。恐ろしい程の速さだ」

スピードが上がっても黄泉には関係ない。

全盛期の雷禅以上なら魔界一の速さだろう。

 

「お前は確かに速い。だが、忘れるな。お前の足音をとらえられる俺の聴覚は魔界一だ」

 

ビュッ!!

 

孤光の声が聴こえた先に強烈なキックを放った。

だが空を切る。

 

ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!

 

「正確に私に攻撃を出来るあんたの聴覚は凄いよ。

でもね、今のあんたに私を完全にとらえることなど出来やしないさ」

 

次々とあらゆる角度から姿を現して攻撃を仕掛けてくる孤光。

 

「チッ!」

 

ガキーン!

 

素早く防御壁を張り孤光の攻撃を防ぐ。

黄泉も突発的に反撃をするが、孤光にダメージを与える事が出来ない。

現れては攻撃をし、直ぐに姿を消す孤光の前に、

黄泉の体力と妖力はかなり消耗していた。

 

(だが本当に速い動きだ。俺のこの聴覚を持ってしても奴の動きを完全にはとらえられない)

疲労が蓄積し、顔にまで疲れが出てきた。

 

(だいぶん消耗してきているね)

孤光はこれまで黄泉と戦っていて、黄泉が万全な状態でないと気付いた。

 

序盤から出す最強の技。

それは早く勝負を決めたいという事。

これまでの黄泉の戦い方は慎重にじっくりと相手と戦うスタイルだった。

今の黄泉は明らかに勝負を焦っている。

 

「あんたは、隠しているようだけどかなり前の戦いで消耗しているようだね。私には分かるよ」

 

(見抜いていたか…)

 

「あんたは目が見えない為に、極限まで極めたその聴覚。万全の状態だったならあたしの動きをもしかしたら完璧にとらえることが出来たかも知れない。だが今のあんたはとらえたつもりでも、キレがない。どうやら幽助との戦いで精神力を使い過ぎたようだね」

 

ダッ!ダッ!ダッ!

 

ダッ!ダダッ!ダダダッ!


ダダダダダダダダ!!!

 

孤光の足音はさらに速くなる。 

 

ーー選手たちの休憩所

 

腕を組む躯。

「あそこまでのスピードを持っている者は、魔界には他にいないだろうな。あの棗とかいう女といい、雷禅の仲間たちはどいつもこいつも厄介な奴らだ」

 

この躯も二回戦で雷禅の喧嘩仲間の一人、棗と対戦。

試合には勝利したが、かなり苦戦していた。

 

「黄泉、さあお前はどうする?」

 

速度を上げた孤光の様子を見ていた煙鬼。

「孤光の奴、一気にいくつもりだな」

 

ーー闘場

 

ボォォォ!!!

 

黄泉の右手に炎が燃え始めた。

 

「それはあんたの最強の技。あんたがかなり消耗しているとはいえ、それをまともにくらえば流石の私も一発でKOされるだろうね。そろそろ決着をつけようか。私は手を抜くつもりはないよ」 

 

黄泉、ニコリ。

「来るがいいさ。俺は負けん」


(奴を倒すには、確実にこの炎裂撃を叩き込むしかない。だがどうやってあの女にこれを直撃させるか。あれだけのタイミングで放った一撃をかわす相手だ)

 

ダダダダダダダダ!!!

 

「それなら一気に決めさせてもらうよ」

 

ビューン!!!!!

 

孤光のあまりの速さに黄泉の防御壁の詠唱が間に合わない。

 

ーーメイン会場

 

修羅が叫ぶ。

「パパ!!!!」

 

ーー闘場

 

ドゴォォォ!!! 

 

黄泉の腹部に強烈な一撃が入った。

 

「ぐっ」

 

口から血を吐き出し、その場に片膝をつく。

 

ーーメイン会場

 

小兎が実況。

「孤光選手の強烈な一撃が黄泉選手にまともに入ったぁぁぁ!!!」

 

雷禅の喧嘩仲間たちも黄泉と孤光の試合を見ていた。

 

鉄山は孤光の一撃がまともに入ったと確信。

「いい一撃だ。完全に入ったな」

 

隣で見る電鳳も頷く。

「今のはかなりのダメージを与えた。このまま一気にいくぞ」

 

スクリーンには孤光のアップ画像が映し出されていた。

 

「ハァァァ!!」

 

孤光は強烈な一撃を黄泉に入れた後、防御をさせる暇を黄泉に与えなかった。その神速で一気に黄泉に攻撃を叩き込んでいた。

まさにラッシュ。

 

ドガガガガガ・・・!!!!!

 

ーーメイン会場

 

「こ、これは、凄い!!あの黄泉選手が孤光選手によって一方的に攻撃を受け続けています!!!」

小兎を含めた実況席は衝撃の展開に只只驚くしかなかった。

 

ーー闘場

 

バキッ!!

 

ドゴッ!!

 

ドガッ!!

 

黄泉に打ち込まれた攻撃の回数は既に数十発は軽く超えていた。

まだまだ孤光のラッシュは続く。

 

ーー選手たちの休憩所

 

蔵馬が叫ぶ。

「黄泉!!!」

 

(黄泉の奴…)

幽助は孤光の攻撃を受け続けている黄泉を黙ってじっと見つめている。

 

ーー闘場

 

バキッ!!

 

バゴォォ!

 

ドカッ!!

 

黄泉は孤光の攻撃をひたすら受け続けていた。

 

「ヤァァァ!!」

 

ブーン!!

 

孤光の高回し蹴りが黄泉の頭部を直撃した。

その衝撃で吹っ飛ぶ黄泉。

 

ドガァァァ!!

 

黄泉の身体は思いっきり岩壁に叩きつけられた。

かなりの破壊力。

岩壁が崩れ砂煙が漂う中で黄泉はどうにか立ち上がった。

 

肩で息している。

誰の目にも黄泉がかなりのダメージを受けているのが分かる。

孤光は神速で近付く。

 

「くっ!」

黄泉は咄嗟に両手を胸のところでクロスさせて攻撃を防ごうとする。

 

「ハァッ!!」

 

ドガガガガ・・・!!!

 

孤光のラッシュは黄泉の両手を弾き飛ばす。

黄泉に容赦ない攻撃を続ける。


バキッ!

 

ドガッ!

 

バゴッ!

 

試合は既に一方的になっていた。

 

ーーメイン会場

 

「孤光選手は攻撃の手を休める様子はありません!!黄泉選手がもの凄い速さで殴られ続けています。」

 

修羅「パパが防御壁を作る間すらないなんて……」

 

ーー闘場

 

バキッ

 

バゴッ

 

孤光の強烈な蹴りが黄泉の肩を直撃した。

 

ドシャッ!!

 

黄泉は地面に強く叩きつけられた。

 

黄泉は肩をおさえながらゆっくりと立ち上がる。

その身体はほとんど戦闘不能に近い状態になっていた。

 

孤光は一旦、攻撃の手を止めた。

「もう降参したら?その身体ではもうあたしに勝つことは無理よ」 

 

ーー選手たちの休憩所

 

黄泉の試合を見ていた幽助が突然大声で叫びだした。


「黄泉!!一体どうしたんだ!!相手が俺の親父の仲間とはいえ俺に勝ったんだ!!こんなとこで負けるんじゃねーぞ!!」

 

蔵馬は幽助を見てニコリ。

(幽助……)

 

ーー闘場

 

黄泉の発達した耳に幽助の声が届いた。

 

黄泉、ニヤリ。

「フッ、浦飯め。誰のせいで俺がこうなっていると思っているんだ」

(消耗しているとはいえ俺は黄泉。このまま無様に負けるわけにはいかない)

 

孤光に向かって大きな声で叫ぶ。

「俺は、この右手の一撃に全てをかける。お前も最強の一撃で来い」

 

ボォォォ!!!

 

黄泉の右手には妖気の炎が燃えている。

 

孤光の目つきが変わる。

「いいよ。やる気なら私も手は緩めないよ。

これであんたを確実に倒す」

 

ダダダダダダダ!!!

 

孤光は姿を消した。

足音が辺り一面に響き渡る。


黄泉はその場で精神を集中。

(大きな賭けだが奴をを倒すには、これしかない)

 

ーー選手たちの休憩所

 

鈴駒はゴクリと唾を飲み込んだ。

「あいつ、立ち止まったぞ?動かないと孤光は、このまま一気に来るぞ」

 

幽助は、黄泉の狙いに気付く。

「あいつもしかして…」

 

蔵馬も黄泉に何か意図があるのではと感じていた。
「何かを狙っているのか!?」

 

ーー闘場

 

最強の一撃を放つべく孤光が黄泉の目の前に姿を現した。

 

「なんで動かないのさ?一気に決めちまうよ!」

孤光の目が光る。

勝負を決めるつもりだ。

 

ビューン!!!!!

 

孤光がこの戦いで初めてみせる必殺の一撃を放った。

指先に妖気を集めて、相手を貫く一撃。

 

黄泉は最後の力を振り絞る。

「来い!!」

 

ーー選手たちの休憩所

 

蔵馬は黄泉の狙いに気付いた。

「黄泉の奴、まさか!?」

 

頷く幽助

「あいつの狙いはカウンター攻撃だ」

 

ーー闘場

 

ドガァァァァァ!!

 

辺り一面に凄まじいまでの衝撃が走る。

そしてその激しい衝撃の後に辺りは静まり返った。

黄泉と孤光はお互いに見つめ合う形で立っていた。

 

黄泉の右手に宿した炎裂撃が孤光の胸部を直撃する寸前で止まっていた。

だが孤光の一撃は黄泉の腹部に決まっていた。

 

「カウンターを狙ったようだったけど惜しかったね」

 

血を吐き出す黄泉。

「消耗した俺があの速度で動くお前を倒すにはこれしかなかった。だがお前には通じなかった…」

そう言うと黄泉の身体は前に倒れる。

 

孤光が黄泉の身体を肩で受け止めた。

黄泉の耳元で話す。

「万全の100%のあんたとまともに戦っていたら私でもこの勝負、あんたに勝てたかどうか分からなかったよ」

 

黄泉は答える。
「万全なら負けないさ」

 

「だったらそれを次に私と再戦する時に証明してみせなよ」

 

黄泉、ニヤリ。

「当然だ」

 

それだけ言うと黄泉の意識は途絶えた。

孤光はゆっくりと黄泉の身体を地面に寝かした。

 

上空から試合を見守っていた審判が手を上げた。

 

「この試合、孤光選手の勝利です!!」

 

ーーメイン会場

 

実況の小兎もまだ目の前で起きた衝撃の結末が信じられないようだ。

なんとか声を出して実況する。

「な、何とここで大波乱が!?あの優勝候補に数えられていた黄泉選手が孤光選手に敗れました!!!」 

 

「嘘だろ。あの黄泉が」

 

「黄泉様が負けた…」

 

試合を見守っていた妖怪たちや、かっての部下たちは黄泉の敗北でどよめく。


修羅も父の敗北が信じられない。

「パパが負けた……」

 

ーー選手たちの休憩所


躯は無言でスクリーンを見ている。

長年争った男の敗北。

心の中で何か思う所があるのだろう。

 

蔵馬もまたスクリーンに映し出されている倒れた姿の黄泉を見ている。

「黄泉は、もしかしたら幽助との戦いで体力と精神力をかなり消耗していたのかも知れないな」

 

幽助もその隣で倒れた黄泉の姿を見ている。

「黄泉…」


孤光の夫・煙鬼はニコリ。

(ほっ、孤光が勝ったか)

 

ーー孤光の回想・終わり

 

――魔界3番地区大統領府

 

才蔵が何かずっと黙ったまま考えている孤光に声をかける。

「どうしたんだ孤光?急に静かになって」

 

孤光、答える。

「いや、別になんでもないさ。ちょっと黄泉と闘った時の事を思い出しただけさ」

 

隣にいた黄泉が孤光を見る。

(今度の大会、もしお前と再戦が叶うなら、俺はお前を次こそは完璧な形で倒す)

 

部屋の外からドアを誰かがノックする。

 

孤光と才蔵をドアを見る。

「また来客かな?」

 

「さあな」

 

煙鬼はまたかとドアを見る。

「今度は何かな?入っていいぞ」

 

「失礼します」

嵐士が部屋に入って来た。

 

煙鬼の側までやって来る嵐士。

「嵐士、今度は何だ?」

 

小声で耳打ちする。

「煙鬼様、実は、躯様の…」

 

煙鬼が声を上げた。

「何!?それは、本当か」

 

続く

 

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