nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #104「飛影vs周(大会編)」

――魔界統一トーナメントBブロックの二回戦・第四試合

 

周(しゅう)
×
飛影(ひえい) 

 

――選手たちの休憩所

 

Bブロックの闘場に向かう直前、躯が飛影に声をかける。

 

「今からか飛影?二回戦から強敵が相手だな」

 

「それを言えばお前も前の大会の二回戦からあの女が相手だったろう?」

 

飛影はそう言うと視線を別の方向に移す。

視線の先にはメイン会場から戻って来ていた棗の姿があった。

 

「フッ、確かにな」

 

飛影の視線に気付いた棗と目が合う。

棗は、ニコリと笑顔で返すと飛影と躯の方に向かって歩いてくる。

 

「躯、久しぶり。貴方とこうして話すのは前の大会以来よね」 

棗は近付くとまずは躯に声をかけた。

 

「ああ、そうだな。大会の組み合わせで行くと、今回はお前は俺ではなく、ここにいる飛影と当たる事になりそうだ」

 

「そうね」

棗はそう言うと飛影の顔を見る。

 

「何だ?」

 

「飛影、貴方に言い忘れていた。私と貴方の賭けだけど、私は既に三回戦に進んでいる。もし貴方が二回戦の相手である周にここでに敗れる事にでもなれば、賭けは貴方の負けよ」

 

(賭け?)

躯は賭けという言葉にピクッと反応した。

 

「いいだろう。俺は負けるつもりはないからな」

 

「大した自信ね。健闘は祈っとく」

 

「お前とはもう一度、対戦したいものだ」

 

棗、ニコリ。

「最後まで残れば戦えるわよ。決勝で待ってるわよ躯」

そう言うと棗は立ち去る。

 

躯、ニヤリ。

「お前よりあいつの方が余程、自信家だ。それに飛影、何か分からないが、俺の知らない所で面白い事になっているようだな」

 

「お前、楽しそうだな」

 

「何の事だ?」

楽しそうに答える躯。

 

そんな躯に渋い顔になる。

飛影は首にかけている二つの氷泪石を外した。

それを飛影は氷泪石を躯に手渡す。

 

「おそらく激戦となる。預かっておいてくれ」

 

「分かった」

 

命と同じぐらい大切な氷泪石を躯に預けるのは、それだけ飛影は躯を信頼している証であった。

そして躯に一言。

 

「初戦の相手がつまらん相手だったからな。楽しい戦いになりそうだ」

飛影はそう言うと闘場に繋がる階段を上がっていった。

 

前大会から三年。

魔界で躯の元に残った飛影。

大会の敗者として、魔界に迷い込んだ人間を保護するパトロール隊の一員となり、その能力である邪眼で多くの人間を彼は見つけて保護して来た。

何も変わらない日々

何も刺激のない日々。

飛影は日々の生活に多くのストレスを感じていた。

そのストレスの捌け口となっていたのが、飛影が幽助や蔵馬達と同じぐらいに信頼している躯との手合わせであった。

彼女との命賭けとも言える激しい手合わせによって飛影の日々の鬱憤は発散されていた。

その飛影と共に手合わせを続けてきた躯。

彼女は感情によって、その力が大きく変化していた。その理由は彼女の凄惨な過去にあった。

感情に左右されてコントロール出来ない力。

焼けただれた半身。その原因の中心になっていたのが、奴隷商人痴皇であった。

飛影の協力を得て痴皇との過去を清算した躯は、感情に左右されていた力を100%発揮出来る様になっていた。

その最強の力を持つ躯と三年に渡って手合わせを続けてきた飛影の力は、飛躍的に上がり、前の大会で圧倒的な力を見せつけていた煙鬼達、そして黄泉などと肩を並べるまでに強くなっていた。

そして御堂から得た禁呪法・魔封紋。

着実に最強の妖怪になりつつあった。

 

「俺ももうすぐ試合だが、ギリギリまでお前の戦いぶりを見させてもらうぞ」


――救護室

 

ここは大会の主催者・煙鬼によって作られた、大会で負傷した選手達の傷を治療する場所である。

この救護室には、魔界全土から優秀な回復呪術を得意とするエキスパートの妖怪達が集められていた。

そのエキスパート達が大会で度重なる激戦によって、次々と運び込まれてくる妖怪達の治療にあたっている。

梟に倒されて瀕死の鈴木の治療もここで行われていた。

そして蔵馬と桑原も二回戦で負傷した傷の手当てを受けていたのだった。

彼等は15人分のベッドが入る広さの部屋にいた。 

彼等のいる部屋は予選の敗者や本選の敗者で既に一杯であった。

 

治療中の桑原と蔵馬は武威について話している。

 

「なあ蔵馬、おめーは武威の最期の言葉をどう思うよ?」

 

「武威は俺達の前に何者かが現れる様な事を言っていました……。何か意味深な感じでしたね。それに武威の命を奪った仮面の男。分からない事ばかりだ」

 

武威が最期に二人に語った内容が不気味に彼等の心に刻み込まれていた。

 

「俺は月畑の仇を討つって言う強い気持であいつをぶっ殺す為に戦っていたけどよー、いざ目の前で死ぬ所を見ると……」

桑原はそこで言葉を止めた。

 

「桑原君、君の気持は分かりますよ……」

武威の死を目の前で見た二人は顔色が優れなかった。

 

(………)

 

重苦しい雰囲気を変える為に桑原は別の話題を話し始めた。

 

「しかし蔵馬もよくあの怪獣(電鳳)に勝ったよな。かなりの力の差があったのによー」

 

蔵馬、ニコリ。

「フッ、怪獣はちょっと言い過ぎですよ。電鳳が可哀想だ」

 

桑原の電鳳の呼び方に蔵馬は苦笑いを浮かべた。

 

「そうか?俺から見れば怪獣っぽかったが」

 

「せめて野獣ですよ」


「なるほど」

 

二人は重苦しい雰囲気を吹き飛ばす様な声で笑った。


(フン。怪獣と野獣で悪かったな)

ベッドの布団を頭から被ってふてくされる電鳳。

二人が気付いていないだけで実は部屋の隅のベッドに電鳳はいたのだった。

 

「お前達、楽しそうだな」

楽しく談笑を始めた桑原達の元に死々若丸がやって来た。

 

「死々若」

 

「ゲッ!てめえかよ」


死々若丸の顔を見て露骨に嫌な顔をする桑原。


「おい、失敗ヅラ!そんなに露骨に嫌な顔をするなよ。折角、お前に見舞いを兼ねていい物を持って来てやったのに」

 

「コラァ!!誰が失敗ヅラだ!!」

当たり前ではあるが、桑原は死々若丸に失敗ヅラと呼ばれる事が嫌いなのである。 


死々若丸、ニヤリ。

「フッ、それだけ威勢が良ければ試合で受けた傷は大丈夫だな」

 

「ぐっ……」

 

「失敗ヅラ」

 

スッ

 

死々若丸は着物の胸元から何かを取り出した。

 

「これをお前にやる」

 

ポイッ

 

胸元から取り出した物を桑原に投げて渡した。

 

パシッ

 

右手でキャッチ。

 

「何だ?」

桑原は受け取った物を間近で確認。

 

「おいおい、こいつは!?」

 

「見て分からないのか?試しの剣だ」

 

死々若丸が胸元から取り出した物。

それは鈴木が大会前に死々若丸に渡した、改良されたあの試しの剣であった。

 

――Bブロック

 

闘場の中央付近で飛影と周が一定の距離を保って対峙した。

いつでも戦える準備は既に整っている。

 

――メイン会場

 

小兎が解説を始める。

「Bブロックの二回戦・第四試合は躯選手の直属戦士の中でもNo.1の実力を誇る飛影選手の登場となります」

 

メイン会場のスクリーンには飛影と周の姿が映し出されている。

 

「その飛影選手の対戦相手は前大会で、痩傑選手と長時間に渡る凄まじいまでの戦いを繰り広げ、観客の皆さんを驚かせた、あの周選手です」

 

「あのメタル族の奴は前の大会で戦うのを見たが、とんでもない妖力を持っていたぞ」

 

「飛影と周、これは面白い対決になりそうだ」

観客達は強者同士の対決を期待していた。

 

――Bブロック

 

「それでは周選手対飛影選手の試合を始めます」

審判の言葉を聞いて、ここで周が初めて口を開いた。


「おい、邪眼師のチビ、始めから飛ばしてかかって来い」

周の言葉に無表情で答える飛影。

 

「それは俺が決める事」

 

「ケッ、無愛想な野郎だぜ」

 

上空から審判が両者の様子を見ている。

 

「始め!!」

 

審判の試合開始の合図の声が闘場に響き渡る。

 

カチャッ

 

飛影は試合開始の合図と同時に腰にぶら下げている剣に手をかける。

周も同様に両手の拳を握り締めて喧嘩スタイルで構える。

 

(…………)

 

緊張の瞬間。

 

ズキューン!!!!!

 

先に攻撃を仕掛けたのは飛影であった。

 

「ハァァァーー!!」


高速で動いて周に一瞬で近付く。

 

周、ニヤリ。

 

(!!)

 

シャキーン

 

飛影の剣が周の腹部を切り裂いた。

 

(こいつ、何故防御をしない)

直ぐに背後にいる周を見る飛影。

 

「フフン、どうした?」


周は腹部を斬られたのにもかかわらず、何事もなかったかのように余裕の顔を見せる。 

飛影は周を斬った剣の刃を見つめる。

 

(奴の血が剣についていない。今の一撃はあの野郎の腹を斬ったのは間違いない)


「さてと今度は俺の番だぜ!邪眼師のチビ」

 

ズキューン!!

 

飛影に続いて今度は周が仕掛けた。

 

「オラァオラァ行くぜ!!」

 

ズダダダダダダ!!!!!


両手で鋭いラッシュ!!!

 

飛影は素早く動きこの攻撃を難なくかわす。

周は飛影に息をつく暇を与えない程の連続攻撃。

 

(俺の一撃は奴の急所を斬ったはずだ。だが、何故か斬れていない)

 

攻撃をかわしながら頭の中で考える飛影。

 

「スピードは流石だな」

飛影は周の連続攻撃を全てかわしていた。

 

「よく喋る野郎だ」

 

フッ

 

飛影の姿が一瞬で消え去る。

 

「おっ!!」

 

シャキーン

 

僅かな周の隙を見つけて先程と同じ箇所を斬りつけた。

 

(今度も完璧に斬ったぞ)

 

「それがどうした」

先程と同じく何事もなかった様な顔の周。

 

「何だと!?」

 

二度に渡り確実に急所を斬った飛影。

だがその攻撃が周に通用していない事に驚く。

 

周、ニヤリ。

「お前の剣を見てみな」


周に言われて飛影は剣の刀身に目を移す。

 

ピシッ

 

(!!)

 

剣の刀身に亀裂が入る。

 

パキン

 

そして飛影の剣が真っ二つに折れた。

 

ドスッ

 

折れた剣が地面に突き刺さる。

 

「チッ」

 

飛影は折れた剣を投げ捨てた。

 

「始めから飛ばして来いと言ったろ?全力でかかってこないと俺の身体に傷なんかつけられんぞ」

 

「なるほど面白い」

 

パサッ

 

飛影は身に纏っているマントを脱ぎ捨て、第三の目である邪眼を隠すヘアバンドを外した。

 

パチッ

 

第三の目である邪眼が開く。

 

ブォォォォォ!!!!!!


飛影は巨大な妖気を解き放った。

それと同時に飛影の右胸には、大きな謎の紋章が浮き出た。 

 

――選手たちの休憩所

 

躯が禁呪法の紋章を確認する。

「あれが例の禁呪法か。見せてもらうぞ飛影。御堂から得た力をな」

 

――Bブロック

 

「お前の言った通りにしてやるぜ」

 

「そうだ。折角、お前と戦うなら思いっきり戦いたいからな。お前にメタル族最強の戦士の力を見せてやるよ」

 

ブォォォォォォ!!!!!


周も内に秘めた巨大な妖気を放出。

 

飛影、ニヤリ。

 

飛影はいつも手合わせしていた躯以外で、久しぶりに歯応えのある者と戦える事に喜びを感じていた。

 

続く

 

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