nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #053「鎧の男の正体(大会編・前章)」

ーー魔界2番地区最南端・洞窟「御堂」

 

「行きますよ!!」

 

ブォォォォォォ!!!!

 

妖気を最大限に高める氷室。

氷室の身体から発せられる妖気が目に見えて現われた。

バチバチと稲妻のような妖気が全身から放出されている。

鎧の男は戦斧を肩に乗せて、氷室が攻撃を仕掛けてくるのを待ち構えていた。

 

「覚悟はいいですか。私の力を思い知らせて上げますよ」

 

氷室は詠唱を始めた。

暫くすると空に浮かぶ大量の黒い雲が1箇所に向かって集まり出した。

それはやがて一つの大きな形を形成していく。

ゴゴゴっと大きな音と共に空に稲妻が走る。

そして氷室は、最後に杖を空高く掲げた。

 

「いでよ、バハムート!!!」

 

神々しい光が辺り一面を照らす。

氷室の呼びかけに応じた神龍バハムートが光の中からその姿を現した。

神々しくも美しい鱗。

召喚獣が持つ巨大な魔力を内に秘めた、まさに神龍と呼ぶに相応しい姿だ。

バハムートはタイタンと同じように大きな咆哮を上げた。

鎧の男は現れたバハムートに臆することなく、

戦斧を肩に乗せたまま、様子を伺っている。

氷室は杖の先を鎧の男に向けた。

これで召喚獣のターゲットは定まった。

後は命令を下すだけだ。

 

「バハムートよ、あの者を殺りなさい!!」

 

主の命令を受けたバハムートは奇声を上げて、鎧の男に向かっていく。

その腕の先にある、鋭い爪で身体を切り裂く為に。

バハムートは一気に鎧の男に襲いかかる。

両手を合わせて八本の爪が鎧の男の頭上から振り下ろされた。

 

ガシッ

 

鎧の男は戦斧を両手で持って、バハムートの爪を受け止め、その攻撃を阻む。

奇声を上げるバハムート。

バハムートもタイタンと同じ様に力で押し込もうとする。

鎧の男もタイタンの拳を受け止めた時と同じ様に下半身に重心をかけて踏ん張る。

 

氷室、ニヤリ。

「バハムートの力はタイタンの数段上ですよ」

 

バハムートはさらに大きな奇声を上げると両手に力を込める。

鎧の男の口が開く。

 

「なるほど。さっきの奴より、少しは骨はありそうだ」

 

鎧の男は戦斧を握る両腕に力を込める。

力には力で返すまでだ。

両者はお互いに譲らない。

激しい力と力のぶつかり合い。

現状は互角といえる。

 

氷室は両者の状況を見つめている。

「ここまでは想定内です。一瞬で貴方を灼熱の炎で焼きつくして、炭くずにして見せましょう」

 

氷室は杖に妖気を込めると、杖の先を再び鎧の男に向けた。

そして命じる。

 

「バハムートよ、あの者を貴方のメガフレアで焼きつくすのです」

 

主の命令を受けたバハムートは、咆哮をもう一度上げると口を大きく開いた。

バハムートの口に魔力が集まる。

口元から外に光が溢れ出した。

 

氷室、ニヤリ。

「バハムートのメガフレアに焼かれると、最後は肉片一つ残っていないでしょう」

 

鎧の男はバハムートの爪を受け止めている為に、身動きが出来ない。

バハムートの口元の魔力の光は、どんどん大きくなり、今は辺り一面を眩しく照らしている。

そしてバハムートのメガフレアは完成した。

バハムートの口から灼熱の炎が鎧の男に向けて放たれ

た。

 

ボォォォォォォ!!!!

 

「!!?」

 

メガフレアは鎧の男の全てを呑み込んだ。

大きな爆炎が空高く舞い上がる。

 

「御堂の子はなかなか手強い相手でしたね」

 

この時、氷室は勝利を確信していた。

それだけ、自身の持つ最強の召喚獣の力には、

絶大なる自信を持っていたからだ。

だが、勝負はまだ終わっていなかった。

 

シュッ!!!!

 

爆炎の中から光が横に一線。

さらに左右斜めにも。

 

ブホォォォォォォ!!!!

 

光が通り過ぎた後、爆風が起きた。

 

「な、一体これは何事です!?」

 

メガフレアによる爆炎は爆風により、完全に消失した。

そして消失した後から、鎧の男が何事も無かったかのように戦斧を肩に担いで姿を現す。

鎧の男はメガフレアによる火傷のダメージは殆ど受けていなかった。

その姿を見た氷室の顔色が変わる。

 

「まさか、戦斧の斬撃だけで、バハムートのメガフレアを切り裂いたというのですか…」

 

鎧の男は戦斧に力を込めた。

 

「ウォォォォォォォォ!!!」

 

大きな声を上げると戦斧をバハムートに向かって投げた。

 

シュパン!!!

 

まるで豆腐でも切るかのようにバハムートの首が一瞬で切断された。

戦斧はブーメランのように鎧の男の手に戻ってくる。

 

ドスン!!!!!

 

神龍バハムートの首のない胴体は地面に落ちると、

その身体は徐々に消失していく。

 

「バハムート!!!」

氷室の絶叫に似た叫び声が辺り一面に響き渡った。

 

鎧の男が口を開く。

「これでお前は翼をもがれた鳥も同然」

 

そう言うともう一度戦斧に力を込める。

 

「死ね」

 

バハムートの時と同様に、今度は氷室に向かって、

戦斧を投げた。

 

「な、速……」

 

氷室が言い終わる前に、戦斧は氷室の身体を真っ二つに切断した。

戦斧が戻ってきて鎧の男の手に戻る。

この時、鎧の男は先程の氷室のように勝利を確信していた。

だが、真っ二つに切断された氷室の身体が横に揺らいでいく。

それはまるで幻影のように姿が消えていく。

 

(これは!?)

 

鎧の男がここで異変に気付いた。

だがその時はもう遅かった。

 

「残像だ」

 

鎧の男の背後から突然、何者かの声が聞こえてきた。

そして。

 

ビューーン!!!

 

背後から剣が鎧の男を襲う。

鎧の男は咄嗟に戦斧で剣を受け止めた。

 

「チッ、勘のいい野郎だ」

 

この時、氷室はすぐ近くの大木の下にいた。

身体が切断される瞬間、突如乱入した者によって命を助けられたのだ。

 

乱入者は戦斧で剣を受け止められたのでバックジャンプで鎧の男と距離を取った。

 

氷室が乱入した者の名を呼んだ。

「飛影!!」

 

名前を呼ばれて氷室を見る飛影。

「危なかったな」

 

氷室、ニコリ。

「助かりましたよ。感謝します」

 

飛影と鎧の男の目が合う。

 

「貴様にまた会うとは思わなかったぜ」

 

飛影の言葉に氷室が驚いた。

「飛影はこの御堂の子を知っているのですか!」

 

「ああ」

 

鎧の男も口を開く。

「俺もだ。運命とは分からないものだ」

 

飛影はこの鎧の男を知っていた。

何故なら一度戦った事のある相手だからだ。

飛影は鎧の男の名前を呼ぶ。

 

「武威」

 

続く

 

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