幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #017「黄泉と修羅(序章)」
「久しぶりだな。おめーの挨拶にしたらちょっと手ぬるい感じだったぜ、黄泉」
黄泉「戯れだ。浦飯、魔界統一トーナメント以来だな」
ゆっくりと黄泉の側に歩いていく幽助。
幽助と黄泉は、三年前の魔界統一トーナメントの三回戦で対決した。
この試合で幽助は敗れはしたものの、圧倒的な力の差があった黄泉を相手に、なんと60時間以上も戦った。
彼等の対決は名勝負として、多くの妖怪たちの記憶に鮮明に残った。
幽助「何でおめーが人間界にいるんだ?」
黄泉「ああ、それは修羅を今まで人間界に連れて来た事がなかったのでな。大会も近いし、息抜きと社会勉強も兼ねて連れてきたんだ」
修羅「そういうこと」
暗闇の中から男の子が現れた。
黄泉の息子の修羅である。
修羅「よっ!幽助」
幽助「あの時のガキか。おめーはあれから三年も経っているっていうのに、姿は全然変わってねーな」
修羅「うるさいな。僕はあれからいっぱいパパと修行して技も妖気も強くなったぞ。今度の大会じゃあ僕が幽助をボコボコにしてやるからな!」
自信満々にVサイン。
幽助もそれを見てニヤリと笑う。
幽助「相変わらず生意気なガキだな。楽しみにしてるぜ。倒せるもんなら俺を倒してみろよ」
幽助は右手を前に出して親指を立てる。
三年前の大会では、幽助と修羅の力は同等だった。
両者の力が三年の間にどう変わったのか、これまでの修行の集大成が今度の大会でいよいよ明らかになるのだ。
黄泉「浦飯、今日の昼に蔵馬に会ったよ」
幽助「そうか。俺は同じ人間界にいながら、仕事が忙しくてよー。最近は蔵馬とはろくに会ってねーんだ。大会には蔵馬は出るって言っていただろ?」
黄泉「いや、まだ分からないようなことを言っていた。そして今の魔界で優勝出来る者ならば、誰が王になっても、悪い世界にはならないだろうともな」
幽助「蔵馬らしいな。でもあいつのことだ。必ず参加するさ」
黄泉「フッ、俺も蔵馬は口ではああ言っていても参加すると思う。クールでありながら好戦的なあいつが大会の熱気に触れたら嫌でも血が騒ぐだろう」
幽助(そういえば考えたら蔵馬とは一度も戦ったことねーよな。あいつと戦うことになったら面白いかもな)
黄泉「浦飯。どうやらお前も前の大会からかなり修行したみたいだな。俺は今度の大会でもう一度お前と戦えるのを楽しみにしている」
幽助「俺もだ!おめーには、前の大会での借りを返さないといけねーんだからな」
黄泉「あれから三年の間に、俺も修羅も修行を積んだ。お前の三年間の修行の成果の全てを俺にぶつけてもらいたいものだ」
幽助「当たりめーだ!今度は負けねーぞ!」
黄泉「俺と当たるまでつまらない相手に負けるなよ」
幽助「おめーもな」
黄泉「さて、俺たちはそろそろ行く。次に会うのは恐らく大会だろうな」
幽助「何だもう行くのか?俺のラーメン食っていかねーか?」
黄泉「ラーメン?何だそれは??」
幽助「人間界の食いもんだ。美味いぜ。俺の奢りだから食ってけよ」
幽助の誘いに黄泉はちょっと困惑気味。
黄泉「俺は人間を食べるタイプの妖怪だぞ」
修羅「パパ、僕はラーメンっていうものを食べてみたいよ」
黄泉「うん、そ、そうか。修羅がそういうなら食べていくか」
幽助(こいつ変わったぞ…)
屋台の椅子に黄泉と修羅を座らせて、ラーメンを食べさせた。
修羅「何だこれ?細くて長い…」
幽助「それはラーメンの麺だ。修羅、うめえだろう?」
修羅「ゆ、幽助にしてはまあまあかな」
幽助「へっ、可愛げのないガキだぜ」
幽助はチラッと黄泉の様子を見る。
黄泉「ぬぅ、これは!?」
修羅とは対称的に深刻な顔をして食べている。
どうやら箸が上手く使えないようだ。麺を掴む手が震えている。
幽助(ははは。日本に初めて来た外国人みてーだな)
修羅「幽助、今日人間界の遊園地ってとこにいったけど、あれは面白いな。魔界にはあんなものがないからびっくりしたぞ」
幽助「へ~、遊園地に行ったのか。黄泉に連れていってもらったのか?」
修羅「もちろんだ。僕が看板で遊園地を見て、ここに行きたいっていったらパパが連れて行ってくれた」
幽助は黄泉の顔を見てニヤリと笑う。
黄泉「な、何だ浦飯?」
幽助「相変わらずガキには甘いようだな黄泉」
黄泉「うっ……」
黄泉、指摘を受けてちょっと困った顔。
――数十分後
黄泉「ご馳走になった。では俺たちは行くぞ」
幽助「もう魔界に戻るのか?」
黄泉「いや、明日の夜に蔵馬にもう一度会ってから戻ろうと思っている」
幽助「そっか。じゃあ大会でな、黄泉」
黄泉「ああ」
修羅「またな!幽助」
二人の姿が幽助の前から消え去った。
幽助(黄泉も修羅も前より遥かに強くなってる感じだったな。おもしれーぜ!ぜってーにあいつらに負けねーぞ!!)
身体が今とても熱く、早く強い奴と戦いたい。幽助の気持ちは高ぶる。
バトルマニア故の性質か、それとも闘神と呼ばれた遺伝上の父・雷禅の血がそうさせているのか、それは分からない。分かっていることは、自分の身体が戦いを欲っしているということだ。
そして三年ぶりの再会を果たした、幽助と黄泉であったが、再び二人が会う事になるのは大会ではなかった。
この日の翌日に繰り広げられる事となる、
大きな戦闘の中で、彼等はまた再会することになる。