nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #035「魔界へ(序章)」

――居城の一室

 

駁「おい比羅、お前はあの男の策に従うのか!」

 

機嫌が悪く、部屋の装飾品にあたっている。

 

比羅「樹の言う通りなら、あいつの策に従って、

私たちは動いた方が得策だ」

 

王の勅命が出ているとはいえ、駁はやはり妖怪である樹の策に従うっていうのが腹立たしい様だ。

 

比羅「私たち11人が、このまま魔界の者たちと戦うなら、黎明のような犠牲者は確実にでる。樹の策はそのリスクを減らす事になるのだ」

 

駁「それは分かっているさ。だが、俺はあの樹って妖怪は信用ならないんだ。絶対に何か企んでいる」

 

比羅「私たちに近付いてきたのだ。必ず何かあいつにはも思惑はあるのだろう。だが樹は、あの能力を持つ可能性が高い者の情報をくれた。私たちにはどうしてもあの能力が必要なのだ。お前もそれは分かっているだろ」

 

駁「ぐむむ…」

 

比羅「不満はあるだろうが、素直に従ってくれ」

 

比羅は駁と話しを続けた。駁の樹に対する不満は完全には拭えなかったが、とりあえずはおさまった。

 

そして二人の話しは魔界で行われる大会に移行した。

 

駁「魔界で新しい王を決める大会があるとはな」

 

比羅「その大会で奴らはお互いが競い合うことで多くの者が妖力と体力を消耗することだろう」

 

駁「その大会直後で消耗している奴らを相手に、俺たちは戦力を結集して桑原の捕獲に乗り出すというわけだな」

 

比羅「そういうことだ。大会が終了次第、私たちは行動を起こす」

 

駁、ニヤリ。

 

「魔界の連中と戦闘になっても消耗した奴らなら、

俺たちの相手ではないぜ」

 

樹がもたらした情報は、魔界統一トーナメントの開催の事だった。樹が彼等に提案したのは、魔界のほとんどの強者が集まる大会あるという事。そんな強者たちが集まり、試合でぶつかり合う事で、かなりの妖気と体力を消耗することになる。桑原を手に入れる為に、魔界の強者たちと一戦を交えるなら、大会が終わる直前を見計らって魔界に向かい、彼等が疲弊した時を狙って戦うことを提案された。

 

比羅「相手が弱ったところを狙うのは、一人の戦士としては、思うところはあるが、今は桑原を手に入れる事が先決だ」

 

駁「ま、そんな大きな大会ならどさくさに紛れて、桑原を捕まえられるかもしれないぞ」

 

比羅「うむ」

 

ここでガチャッと部屋の扉が開いた。

 

入ってきたのは十二魔将の一人、袂である。

 

余程慌てているのか、袂は汗だくになっていた。


袂「比羅、駁、大変です!楽越(らくえつ)が魔界に一人で向かいました」


駁「何!?」 

 

袂がもたらせた報告に驚く二人。

 

駁は驚いていたが、比羅はまたかといった顔。


駁「あの馬鹿は何を考えていやがるんだ!」

 

袂「彼の部屋に書き置きがありました」

 

楽越が書き残したという紙を比羅に手渡した。

 

紙には「俺は魔界の大会に参加するぜ。妖怪共は俺がやつけてやるから任せておけ」と書かれていた。

 

比羅「楽越め、相変わらずだな」 

 

袂「彼は私たちの中でも異色な存在ですよ」

 

駁「さらに言えば楽越は純粋なバトルマニアだからな。俺たちの目的の事など全く気にしていないのだろうぜ」

 

袂「私たちの気を魔界の者たちの前で使っても、気の波長を自由自在に変えることが出来る彼なら、正体が魔界の者たちにばれる心配は少ないと思います。しかし勝手な行動は困りますね」

 

駁「全くだ!比羅の説明をあいつは聞いていなかったようだな」

 

比羅は黙って目を瞑り、何かを考えていた。

 

そして。

 

比羅「袂、すまないが、残った7人の十二魔将を私の部屋に呼んで来てくれ」

 

比羅は突然、十二魔将を集める様に袂に指示を出した。

 

駁「比羅、みんなを集めてどうするつもりだ?」

 

比羅「大会が終わる頃を見計らって魔界に向かうつもりだったが、気が変わった。私たちもすぐに行動が起こせるように魔界に向かう。大会を監視し、魔界の奴らの能力や技を把握しておいた方が得策だろうからな」


袂「分かりました。直ぐに呼んで来ます」

 

袂は十二魔将を集める為に部屋を後にした。

 

駁「なるほどな。だが、楽越の事はどうする?」

 

比羅「追い掛けて楽越を止めてもあいつの事だ、
私の言葉に従わないだろう。奴は気の波長を自由自在に変えれるのだから、書き置きの通り、大会の参加者の一人として魔界の奴らと大会で思う存分闘ってもらうさ」

 

駁「楽越は実力からいえば比羅、弥勒(みろく)に次ぐNo.3。だが、格闘センスだけなら、俺たちの中では一番だ。楽越が勝ち抜けば奴らの戦力は削られていくな」

 

比羅「ああ。しかしあくまでも私たちの目的は魔界の奴らを倒す事ではない。桑原の捕獲だ。大会を監視しながら、桑原を捕獲出来るチャンスがあれば、捕獲することも忘れるな」

 

駁「それは分かっているさ。俺たちの悲願を果たす為だからな」

 

比羅「全てはこの世界の為だ」

 

――人間界

 

蔵馬が幽助の家の前に立っていた。

 

そこに幽助が帰って来た。

 

蔵馬「幽助、何処に行っていたんだ?コエンマの話しを聞いた後、急に外に出掛たりして」

 

幽助「悪い悪い。ほったらかしにしていた屋台の片付けと桑原の家に行ってきた」

 

蔵馬「桑原君の家に?」

 

幽助「ああ。桑原の親父さんや静流さんが、家に帰って来ない桑原や雪菜の事を心配しているだろうからな。

一応、事情を話しに行って来たんだ」 

 

蔵馬「静流さんたちは何か言ってませんでした?」

 

幽助「親父さんや静流さんは桑原が一緒にいた雪菜を巻き込んだ事に怒っていたぜ。特に静流さんは、
和の顔をぶん殴ってやるから、首ねっこ引っ張ってでも連れて帰って来いって言っていたぜ」

 

蔵馬「ハハハ、静流さんらしいな」

 

幽助「最後に二人の事を宜しく頼むって言っていたぜ」

 

………。

 

二人の間に一瞬、沈黙が流れる。

 

蔵馬「彼らには本当に平和な人間界で幸せに暮らしてもらいたかったのにな…」

 

幽助「あの連中が来たらぶっ倒して、あの馬鹿を人間界にさっさと連れて帰ってやろうぜ」


蔵馬「そうだな」

 

幽助はキョロキョロと当たりを見渡す。

 

幽助「そういえば、黄泉の奴の姿が見えねーがどうしたんだ?」

 

蔵馬「黄泉なら幽助が家を出て直ぐに、修羅が心配しているだろうから魔界に戻ると言って一足先に帰ったよ。魔界に戻ったら、桑原君の事を保護してくれるように頼んでおいた」

 

幽助「ったく、あいつは相変わらず親馬鹿だな。

あの生意気なガキのどこが可愛いのだろうな?」

 

蔵馬「ハハハ、それは幽助が親になったら分かるかもね」

 

幽助「そうかもな。でも今回は黄泉に随分と助けられたぜ」

 

蔵馬「ああ。黄泉がいなければ桑原君は奴らの手に間違いなく落ちていただろう」

 

幽助「今回の事はあいつに感謝するけどよー、大会では別問題だ。黄泉とは思いっきり闘うぜ」

 

蔵馬「あれから三年、幽助は黄泉に勝てる自信はありますか?」 

 

幽助、ニヤリ。


「もちろん、俺が勝つぜ」

 

その顔は自信に満ちていた。

 

蔵馬「しかし残念でしたね。コエンマから奴らの有力な情報が得られなくて」

 

幽助「まあな。でも、コエンマも心当たりがあるような感じだったし、調べてくれているから今は気長に待つさ」

 

――幽助の回想

 

幽助「という訳なんだ」

 

コエンマ「なるほどのう。霊気でも妖気でもない者たちか…」

 

蔵馬「コエンマ、何か心当たりはないですか?」

 

幽助「コエンマなら何か手がかりになる情報を知らないかと思って聞いたんだぜ。なんか知らねーのか?」


コエンマ「う~む、心当たりがないわけではないが、確信がないんだ。話しを聞く限りじゃあ、その者たちは、
桑原を使って何かまずいことを企んでいるのは間違いないな。至急、ぼたんたちと一緒に調べよう」

 

コエンマの後ろから、「えーあたしもですか~」ってぼたんの声が聞こえてくる。

 

幽助「分かったぜ。あいつらは只者じゃあねーからな、闘うには少しでも情報が欲しいからよ。悪いが早めに頼むぜ」

 

コエンマ「任せておけ。幽助、わしはお前から話しを聞いてから、全ての世界を巻き込む大きな何かが起こりそうな、とにかく嫌な予感がしてならんのだ」

 

幽助「ああ、俺もだ」

 

コエンマ「何か進展があれば直ぐにお前に連絡を入れよう。幽助、霊界との通信機であるこのモニターを魔界にも持っていくのだぞ」


幽助「分かった」

 

――幽助の回想・終

 

蔵馬「俺は奴らに桑原君の事を教えた者が誰か一番気になっている」

 

幽助「どちらにしろ、こんなことを企んでいる野郎だ。ろくでもない奴だろうよ」

 

蔵馬「俺たちと面識のある者か…」

(可能性があるなら暗黒武術界の参加者か仙水たちの仲間の誰かだな)

 

幽助「蔵馬、おめーはいつ魔界に行くんだ?」

 

蔵馬「桑原君の事を黄泉に頼んだとはいえ、彼らが気になるから明日の朝にでも魔界に行くつもりだ」 

 

幽助「蔵馬、明日って仕事とかは大丈夫なのか?」

 

蔵馬「幽助が出掛けている間に、海外に行っている義父と母さんと職場の上司に連絡をして、仕事の休職をお願いしたよ」

 

幽助「いきなり休職するっていったら驚かれただろ?」

 

蔵馬「まあね。俺の事は大丈夫だから気にしなくていいよ。幽助はどうするんだ?」

 

幽助「俺も予定より早くなっちまったが、明日、魔界に行くぜ」

 

蔵馬「わかった。次に会うのは大会の会場だろうな」

 

幽助「ああ」

 

蔵馬「では幽助、俺もまだ行く前にやることがある。

一度、家の方に帰るよ」

 

幽助「じゃあ、大会でな」

 

蔵馬「ああ」

 

蔵馬は幽助の家を後にした。

 

幽助「さてと、俺ももう一つやることがあったぜ」

 

――亜空間の中

 

樹は亜空間の中をゆっくりと歩いていた。

 

樹の前方には横たわっている男の姿が見える。

 

樹「忍」

 

樹は横たわっている男の名を呟くと後ろからゆっくりと近付き、優しく抱き起こした。

 

横たわっていた男の名は仙水忍。元・霊界探偵だった男でもある。

 

彼はある事件がきっかけで人間全ての存在が悪と思うようになっていた。

 

彼の身体が悪性の病魔におかされたのがきっかけで、

純粋に魔界に行きたかった彼は、魔界への扉を開こうと企てる。

 

それを阻止する為に立ち上がった幽助たちとの死闘の中で、自身の最終目的地であった魔界の地で死んだのだった。 

 

樹はギュッと仙水の身体を強く抱きしめた。

 

樹「忍、目覚めたお前に早く会いたいよ」

 

樹は大きな野望を持つ者の目をしていた。

 

――雪村宅

 

ピンポーン

 

呼び鈴を鳴らす。

 

螢子「は~い」

 

ガチャッ

 

玄関のドアが開くと螢子が出て来た。

 

幽助「よっ!螢子」

 

螢子「こんな時間にどうしたのよ?」

 

幽助「事情が変わって、明日の朝に魔界に行く事になったんだ。そんで行く前に、
もう一度おめーに会っていこうと思ってな」

 

螢子「明日って何かあったの?」

 

幽助「何もねーよ。世話のかかる馬鹿の事が気になるだけだ」

 

螢子「はぁっ??」

 

幽助の言葉に不思議そうな顔をする。

 

幽助「まっ、そういう訳だからよ。明日、魔界に行って来るぜ」

 

螢子「なんかよく分からないけど気をつけていって来なさいよ」

 

幽助「ああっ!じゃあな、螢子。次に会う時は魔王になって帰ってくるぜ」

 

手を振りながら螢子に別れを告げて出ていく。 

 

螢子「幽助ー!!」

 

螢子は帰ろうとした幽助を呼び止めた。 

 

幽助「何だ螢子?」

 

足を止めて螢子の方を振り向く。

 

螢子「必ず無事に帰って来てよ。あたしは待っているからね」

 

心配そうな目で幽助を見つめる。

 

幽助「約束するぜ螢子。
必ず俺は帰ってくる。伊達にあの世は見てねーぜ!」


親指を立てて螢子に見せた。

 

螢子「幽助……」

 

幽助の言葉に螢子の心配は吹き飛び、表情はパーッと明るくなった。

 

――翌日・幽助の自宅前

 

朝の早い時間。幽助が自宅から出て来る。

 

天気も良く絶好のお出かけ日和。

 

顔を両手でパンッと叩く。

 

幽助「さあ、行くぜ」

 

こうして幽助は魔界に向かって旅立っていった。

 

桑原を狙う比羅たちは桑原を捕らえて何をするつもりなのか?

 

そして静かに仙水と時を過ごしていたはずの樹が、
比羅たちに接触した目的とは?

 

人間界・魔界・霊界、そして第四の世界。 これら全ての世界を巻き込む大きな闘いが今始まろうとしていた。


幽☆遊☆白書~2ND STAGE~


~序章~


 

大会編・前章に続く

 

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