幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #066「第二回魔界統一トーナメント開幕(大会編)」
――魔界の3番地区
現在の魔界の王・煙鬼のいる大統領府があるということで、魔界中に知られるこの地が魔界のこれからの運命を決める第二回魔界統一トーナメントの開催地である。
ここで煙鬼には王としての最後の仕事がある。
それは、魔界統一トーナメントの主催者としての役目である。
3番地区の中心地である大統領府から少し離れた先に設置された大会の会場。
そしてこの大会に使われる為に作られた様々な試合用のステージ。
ザワザワザワ
会場にはすでに大会に参加する多くの妖怪たちが集結していた。
前大会があまりにもハイレベルだった為か、前回より半分ぐらいのその数およそ三千強。
この大会に参加する妖怪たちは、この大会の為に修行を積み、優勝を虎視眈々と狙う猛者たちばかりである。
その者たちによって前大会を遥かに上回るハイレベルな試合がついに始まろうとしていた。
「よっと」
大会用に持って来た道着に着替えた幽助が、準備運動をしている。
そのすぐ横には、幽助と一緒に大会にやって来た蔵馬の姿があった。
そして幽助たちと少し離れた場所に、北神・東王・西山・南海の四人の姿。
また雷禅の喧嘩仲間たちの姿もあちらこちらに見える。
蔵馬が準備運動をしている幽助に声をかけた。
「幽助、いよいよ始まりますね」
「ああ。早く戦いたくてウズウズするぜ」
三年間待ちに待った大会が始まるのだ。
幽助の気分はハイテンション。
「お~い浦飯ィィィ!!蔵馬ァァァ!!
(!!)
めちゃくちゃ聞き慣れたこの声。
幽助と蔵馬は声が聞こえた先を見た。
「おっ!?」
「あれは桑原君!」
桑原が走って幽助たちの側にやって来た。
「よぉ!」
異世界である魔界に突然飛ばされて、ずっと気が張っていたせいか、久々の知っている顔との再会に満面の笑顔の桑原。
「元気そうだな桑原」
ペシペシペシと笑顔で桑原の頭を叩き始めた。
「痛て、痛てて。浦飯てめー!再会するなり何するんだコラ!!」
桑原は幽助に頭を叩かれながらも嬉しそうだ。
「全くよー、心配かけさせやがって」
「元気そうでなによりですよ桑原君」
元気そうな桑原の姿を見て幽助と蔵馬は安心した。
「おう。心配かけて悪かったな浦飯、蔵馬」
蔵馬は桑原に人間界での出来事について話す事にした。
「桑原君を狙う連中と、俺も桑原君と喫茶店で別れたあの日に接触したよ」
「そ、そうなのか?」
蔵馬にも比羅の仲間が接触していた事を知らなかった桑原は驚いた。
「ああ。詳しい話しは大会が終わってから話そう。奴らが桑原君を狙ってこの魔界まで追って来ているかどうかまだ分からないが油断だけはしないように」
「大丈夫だ!もし金髪の野郎が来ても修行の成果を奴らに見せつけてやるだけさ」
蔵馬、ニコリ。
「話しは聞いているよ。時雨に剣術を習ったんだってね。修行の成果を楽しみにしているよ」
修行によって実力がついて自信がついたのか胸を張る桑原。
「任せておけって! 」
幽助、ニヤリ。
「修行の成果を見せるっていって、いきなり予選落ちとかしたら俺は腹を抱えて笑うぞ」
「ケッ、パワーアップした俺様の力をたっぷりと見せつけてやるから見てな」
桑原の背後からいきなり声が聞こえてくる。
「フン。相変わらず騒がしい男だ」
「誰が騒がしい男だコラァ!!」
桑原が振り向くとまた見知った顔が。
「あっ!、飛影じゃねーか」
飛影の目が一瞬、鋭くなる。
「桑原」
カチャッ
そして鞘に手をかける。
ビューン!!
飛影が腰に下げていた剣を抜くと桑原を斬りつけた。
ガシッ
桑原はその場から動かず瞬時に霊剣を作り出して、飛影の剣を受け止めた。
「危ねーじゃねーかよ」
突然の不意打ちに桑原は怒る。
飛影、ニヤリ。
「フッ、ちゃんと修行していたようだな」
「当たりめーだ。死にものぐるいで修行したんだからよー」
蔵馬は幽助、桑原、飛影の三人の姿を見た。
「この四人がこうやって同じ場所に一緒に揃うのは、本当に久しぶりだな」
「言われて見れば」
「あの時以来だな」
「フッ」
飛影が魔界にいる為、この四人が全員揃ったのは、正聖神党事件以来だった。
「この四人が今回はそれぞれが敵同士になるとはいえ、また一緒に戦える事が俺は嬉しいな」
ずっとこの四人でいたいと願っていた蔵馬にとっては、
大会とはいえ嬉しかった。
「まあな。でも俺たちが対戦することになっても手加減なしで全力でぶつかるまでだ」
幽助は大会に燃えているため気合いが入っている。
「フン。俺は、元々手加減なんかしないぞ」
そして飛影も幽助同様に大会に燃えている。
「俺は手加減して欲しいぜ。でもよ~、本選の前の予選だけはお前たちといきなり当たりたくないぜ」
桑原の言葉に蔵馬は前の大会の予選での出来事を話す。
「前の大会は、予選から黄泉対修羅の親子が戦うサプライズがあったから今回も何があるか分からないですよ」
「そうなんか?あの生意気な小僧と黄泉の奴がな」
「幽助~~!!!」
ドーン!!
「!!?」
突然、何者かが幽助の名を呼ぶと後ろから体当たりして来た。
ドテッ!!
幽助と突っ込んで来た者は思いっきり倒れた。
「いって~な……。いきなり誰だよ~」
「俺だよ幽助!陣だ。久しぶりだな」
「お~!!!陣!!!!!」
ガシッ
「久しぶりだな~陣」
ギュウゥゥゥ~
「痛い痛い痛い!!」
「早速、二人共じゃれあってるな」
陣に続いて三人の男たちが歩いてやって来た。
「あっ、お前たち!!」
三人の姿を見た蔵馬が声を上げた。
三人の男たちとは凍矢・鈴木・死々若丸であった。
「久しぶりだな蔵馬」
凍矢はいつもの戦闘スタイルの姿。
「みんな、元気そうだ」
鈴木は背中に何やら色々と物を入れた袋を背負っている。
恐らくは闇アイテムだろう。
「フッ」
死々若丸は鈴木の肩に小鬼の姿で乗っている。
蔵馬、ニコリ。
「凍矢!、鈴木!、死々若!」
桑原も久しぶりの再会に嬉しそうにしている。
「なんか滅茶苦茶懐かしい連中ばかりだ」
死々若丸が鈴木の肩から下りると、大きな姿になる。
「なんだ?暗黒武術会の時に浦飯チームにいた潰れた顔がいるではないか」
「つぶ、誰が潰れた顔だ!コラァ!!」
「だって潰れているだろう」
死々若丸は、桑原の顔に向かって指を指した。
「うがぁぁぁぁ!!」
ゴツン!
桑原が死々若丸にゲンコツをくらわせた。
「痛たっ!?」
死々若丸は桑原にどつかれた頭を擦りながら文句を言う。
「潰れた顔のくせにいきなり何をするんだ!俺の頭まで潰れたらどうする!」
「だぁぁぁ!!また潰れたって言った!ちょっと顔がいいからっていい気になるなよ!!」
死々若丸、ニヤリ。
「誰が見ても俺は美形だ。」
ピクッ
(美形なら美しい魔闘家と讃えられた(自称)この鈴木の方が上だ)
鈴木が心の中で呟いた。
桑原と死々若丸がどつきあいを始めた。
凍矢と鈴木が桑原と死々若丸のやり取りを見ている。
「桑原とか本当に久しぶりだな」
「ああ。暗黒武術会以来だからな」
ここで酎と鈴駒が合流して来た。
「お~みんなまとめて揃ってやがるぜ」
「あらら。幽助と陣が桑原と死々若丸がじゃれあっているね」
凍矢が酔たちに気付く。
「酎も鈴駒も来たか」
酔と鈴駒がみんなの側にやって来た。
「よお!みんな元気か」
陣とじゃれあっていた幽助も酎たちの存在に気付いた。
幽助、ニコリ。
「おお!!酎!!久しぶりだな」
「幽助、久しぶりだな」
蔵馬が飛影に話しかける。
「飛影。これでみんな揃いましたね」
飛影、ニヤリ。
「これから敵同士になるというのに、全くお気楽な連中ばかりだぜ」
ザワザワザワ
突然周辺にいた妖怪たちがざわめき始めた。
陣と鈴駒が様子を見に行く。
「何かあったか?」
「誰か大会に来たようだよ」
妖怪たちの輪が左右から割れた。
そこから歩いてくる者たちがいた。
「む、躯だぜ」
「こ、こっちは、黄泉親子だ」
妖怪たちが冷や汗を掻くほど、躯と黄泉が強烈な存在感を醸し出していた。
躯が左から黄泉親子が右からそれぞれ幽助たちの下に歩いて来る。
彼等の様子を見ていた蔵馬が感心する。
「さすがだな。現れただけで周りにいる妖怪達が一瞬で彼等の妖気に呑まれて怯えている」
躯が幽助の側に来た。
「躯」
「フッ、三年ぶりだな幽助」
「ああ。相変わらず凄い妖気だな」
幽助の姿を見る躯。
「見違えた。あれからかなり強くなっているようだな」
「当たりめーだ。おめーたちに負けないように修行してきたからな」
躯、ニヤリ。
「前の大会でもお前に言ったが、実戦に勝る修行はない。全力を出した俺と互角に戦えるぐらいまでの力を俺と当たるまでにつけろよ」
「今でも負けるつもりはないんだけどな。おめーも俺と戦うまでに負けるんじゃねーぞ」
「フッ、今の俺は誰にも負けないさ」
そして黄泉親子がこちらにやって来ている。
躯は黄泉の顔を見た。
(……)
かっては好敵手だった両者。
久しぶりの再会となる。
「お前もこの男にまた敗れないように頑張るんだな。俺を失望させるなよ」
躯はそう言うと背を向けて立ち去っていった。
躯が立ち去った後に、黄泉と修羅が幽助たちの所に歩いて来た。
「浦飯。人間界では世話になったな」
「いや、世話になったのは俺たちの方だ。ありがとな」
「あっ、あいつは!?」
死々若丸とどつきあいをしていた桑原が黄泉に気付いた。
「あいつは」
黄泉も桑原の存在に気付いた。
「てめー。助けてくれた礼は言うが、いきなり魔界に飛ばすなよ。化物には襲われるわ、不気味な面の奴に追いかけられるわで酷い目にあったぜ」
黄泉、ニヤリ。
「元気そうでなによりだ。いい冒険が出来ただろう?」
「いい冒険なわけがあるかー!!」
黄泉に噛み付こうとする桑原。
蔵馬「まあまあ、桑原君」
蔵馬が後ろから桑原を抑えている。
「蔵馬か。浦飯ともまた再戦したいが、お前と真剣に戦うのも面白いかもな」
「フッ、それはどうだろうな」
「黄泉!おめーとの勝負を楽しみにしているぜ」
「俺もだ浦飯」
これまでやり取りを見ていた修羅が幽助の隣にやって来た。
「幽助、僕もいる事を忘れるなよ」
「ああ。もちろんだ」
「修羅行くぞ」
「うん、パパ」
「浦飯、蔵馬、お前たちの健闘を祈る。また後でな」
「おう」
黄泉親子は幽助たちの前から立ち去った。
躯と黄泉親子を見ていた凍矢は厳しい顔。
「今回もかなり厳しい戦いになりそうだな」
隣にいた酔と鈴駒も同意。
「躯と黄泉。元魔界の三代勢力の二強。果たしてあいつらと当たって勝てるかな」
「あいつたち以外にも雷禅の仲間もいるし予選から当たりたくないね」
その時会場にアナウンスが流れ始めた。
話すのは樹里である。
「会場にお集まりの皆さん。それではこれより第二回魔界統一トーナメントの予選抽選会を行います」
彼女と仕事で関わりある幽助はいち早く気付いた。
「この声は、カルトの樹里だな」
飛影は軽く溜息。
「やれやれ。待ちくたびれたぜ」
桑原は合掌して天に祈る。
「予選から強い奴に当たりませんように」
蔵馬の目が真剣になる。
「いよいよだな」
幽助、ニコリ。
「みんな行こうぜ」
第二回魔界統一トーナメントの本選に出場する128人を決める予選会のくじ引きがいよいよ始まる。
続く