幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #013「戦いの後・・・(序章)」
――蔵馬たちが立ち去って、1時間後の河原崎の建設現場。
警察やその関係者たちが、通報を受けて爆発した現場を検証していた。
「さっぱりわからんな」
「ああ。これだけ探しても爆発の要因となるものが見当たらない」
ここで現場検証している警察関係者の一人が、地面や壁にいくつか付着している青い液体を発見した。
「何だこの青い液体は?」
指に液体を付着させて触ってみる。
「おいっ!これ見てみろよ」
呼ばれて他の場所を調べていた警察官が近付いてくる。
「これは塗料かなんかかな?」
青い液体を指に擦りつけながら見せる
「なんか血に似ているな。でもこれは人間の血じゃあないな」
「気色悪いな」
警察官たちは不気味な液体に困惑していた。
河原崎の建設現場から離れたビルの屋上で、現場検証の様子を金髪の男と小柄の男が眺めている。
金髪の男「駁(まだら)、黎明はどうやら妖狐に倒されたようだ」
駁と呼ばれたこの男は、赤髪の小柄な男だが、鋭い目と鍛え上げられた鋼の筋肉が印象的だ。そして野性的なオーラを醸し出していた。
駁「情けない。あの程度の妖怪に殺されるとは。黎明の奴め、相手の力量を甘く見すぎだ」
金髪の男「仮に黎明が妖狐を甘くみていたとしても、あの黎明を倒すことが出来る男だ。決して侮る事が出来ない」
駁「うむ」
駁は金髪の男の肩を見た。彼の肩には戦闘で傷を負った後があった。
駁「しかしその傷、無敵と言われたお前のフィールドを貫いてくる奴がいるとはな」
金髪の男「ああ。流石はかって魔界を統一しようとしていた男だ。桑原を追いつめた時、奴は私の前に現れて邪魔をした。そればかりか、桑原を何処かへ飛ばした」
駁「比羅(金髪の男の名前)、お前の事だ、奴が桑原を何処へ飛ばしたのか、検討はついているのだろ?」
比羅「ああ。恐らくあの場所だ」
――その頃蔵馬は、桑原宅の前まで来ていた。
「あら、蔵馬君じゃない!久しぶりね。どうしたの?」
桑原宅から女性が出てきた。桑原の姉の静流である。
蔵馬「あ、静流さん、久しぶり。元気でしたか?」
静流「あたしは元気よ。相変わらず美容師としてばりばり働いているよ」
蔵馬「今度、母を連れてお店に行きますよ」
静流「蔵馬君のお母さんならサービスするよ。それより蔵馬君、和と雪菜ちゃんを見かけなかった?」
蔵馬「桑原君たちはまだ帰ってきていないんですか?」
静流「別にまだ心配するような時間じゃあないけどね。でも和の奴、妙なこだわりがあってね。可愛いがっている猫の餌は俺がやるって言って、餌を上げる時間までには必ず帰ってくるのよ。美味しそうに食べる猫の顔を見るのが、なによりの楽しみなんだって。だからちょっと気になってね」
蔵馬「昼間、桑原君たちには会ったけど、別れてからはどうしているのかわからないな。俺は桑原君に用があってお宅に向かっていたとこだったんですよ」
静流「まあ、雪菜ちゃんが一緒だから、デート気分で浮かれていたりしてね」
デレデレしている弟の顔が浮かんだのか、静流は苦笑い。
蔵馬「はは。昼間、二人の様子を見ましたけど、微笑ましい感じでしたよ」
静流「どうする蔵馬君?
和に用があるなら、うちに上がって和の帰りを待つ?」
蔵馬「いえ。帰っていないならまたにしますよ」
蔵馬は静流に軽く会釈すると元来た道を戻り始めた。
すると静流が蔵馬を引き止める。
静流「蔵馬君、悪いけど、もし和たちに会ったら早めに帰るように伝えといてね。なんかちょっと胸騒ぎがしてね」
蔵馬「わかりました。もし会えたら伝えときます」
(静流さんも何かを感じているのか)
静流と別れて左の路地に入ると、蔵馬は全力で走り出た。
蔵馬(桑原君たちの身に何かあったに違いない)
蔵馬は桑原たちを捜して町中を走り回って捜し続けた。
だが、桑原たちの姿はどこにも見つからない。
蔵馬「クソッ。桑原君たちは一体どこに」
ここで一度立ち止まる。そして妖気を集中して桑原の霊気と雪菜の妖気を探す。捜している最中に、少し乱れた妖気を感じ取った。
蔵馬「これは強い妖気だ。町外れの方から感じるな」
直ぐに妖気の感じる場所に向かって走りだした。
蔵馬(この乱れた妖気は間違いなく誰かが戦っていた感じだ)
――その頃。
人通りの少ない路地裏で、黄泉が壁を背にして座っている。そしてその隣に立つ男がいる。
黄泉「礼を言うぞ。お前が来てくれなかったら俺も危なかったかもしれん」
黄泉は身体に数ヶ所に渡って大きな傷を負っていた。
男「よく言うぜ!おめーなら俺が来なくても乗りきっていただろ」
黄泉「さあな」
男の言葉にニヤリ。
男「礼をいうなら俺の方だ。だがよー、おめーがあいつらを助けてくれるとは思わなかったぜ」
黄泉「あいつらを助けたのは成り行きだ」
男「あいつらをどこに飛ばしたんだ」
黄泉「それは…」
黄泉が男に答えようとした時、近くから足跡が聞こえてきた。
黄泉「フッ、丁度いいタイミングで客が来たぞ」
男「あれは…蔵馬じゃねーか!」
二人の存在に気付いた蔵馬が近くまでやってきた。
黄泉「また会ったな蔵馬」
蔵馬「黄泉!?どうしてここに。それにお前のその傷は…」
黄泉の隣にいる男が話しかけてきた。
男「よっ!蔵馬、久しぶりだな」
蔵馬は男の顔を見て、それが意外な人物だったことに驚く。
蔵馬「ゆ、幽助!?」
――浦飯幽助と蔵馬。意外な場所で久しぶりの再会。