nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #093「死闘の始まり!武威vs桑原(大会編)」

――魔界統一トーナメントのAブロックの二回戦・第二試合

 

武威(ぶい)
×
桑原(くわばら) 

 

――メイン会場

 

小兎の解説が始まる。

「Aブロックの二試合目は本大会で唯一の人間である桑原選手の登場です。そして一回戦で月畑選手を一撃で倒して、観客の皆さんのど肝を抜いた武威選手が登場します!!!」

 

「武威!!一回戦の様にその人間を真っ二つにしてやれー!!」

 

「スカっとする戦いを見せてくれよ武威!!」

 

一回戦の衝撃的な試合から、武威を応援する観客が多くなっていた。

 

「和真さん…」

 

興奮する観客たちの中で、雪菜だけはスクリーンに映る桑原を心配そうに見つめていた。

雪菜は桑原と今から戦う相手となる武威に目を移す。


「あの人が和真さんの相手。なんて恐ろしい妖気なの。あの人は間違いなく和真さんを殺すつもりでいる」

 

――選手たちの休憩所

 

「桑原よ、あの者は手強いぞ。心してかかるのだ」

 

時雨は三回戦進出を決めて、直ぐに休憩所に戻って来た。

弟子の戦う試合を観る為に。

 

「あの者を倒して勝ち上がって来い。三回戦では拙者が御主を待っているぞ」 

 

――Aブロック

 

この試合の審判は天海である。

「始め!!」

 

天海の試合開始の合図の声が闘場に響き渡る。

桑原と武威はお互いの顔を見た。

 

「行くぜ武威!!」

 

ジジジ……

 

桑原は右手を前に突き出す。

 

「霊剣ンンンンンンン!!!!」

右手に霊剣を作り出した。

 

「ぶった斬ってやるぜェェェェ!!!」

 

攻撃を先に仕掛けたのは桑原だった。

武威に向かって全速力で駆け出す。

 

――選手たちの休憩所

 

幽助が腕を組んで試合を観戦している。

「桑原の奴、次元刀じゃねーな」

 

一方の飛影は呆れ顔。

「様子見といったとこだろう。馬鹿め、今の武威は様子見が出来る相手ではないぞ」

 

――Aブロック

 

武威は突進して来る桑原を黙って待ち構えている。

 

(……)

 

スッ

 

ジジジ……

 

右手を横に伸ばすと妖気を集中し始めた。

 

桑原が武威に接近。

「オリャァァァァ!!!」

 

ビューー!!!

 

武威の肩を狙って霊剣で斬りつける。

 

ガッ!!!

 

「何ィィ!!」

 

霊剣は武威の巨大な斧によって受け止められていた。

 

「野郎!獲物を出しやがったな!」

 

この大会で月畑を一撃で殺して見せたあの斧である。


ググッ

 

「チクショー!!びくともしねーぜ」

 

斧によって受け止められた霊剣は、桑原がいくら力を込めてもそれ以上は動くことがなかった。

 

「フン」

 

ビューン!!!

 

左手で桑原を殴りつける。


バゴッ!!!

 

桑原の顔面に思いっきりヒット。

 

ヒューー

 

殴られた勢いでふっ飛ばされる。

 

ドテッ!!

 

「痛てて……。油断しちまったぜ」

 

スッ

 

(ゲッ!?)

 

地面に叩きつけられた桑原の目の前に武威が斧を構えて立っていた。

 

ビューーーーーン!!!

 

巨大な斧とは思えないスピードで振り下ろす。 

 

「やべーっ!」

 

バッ

 

素早くジャンプ。

 

ドゴォォォォォォォ!!!


斧が地面にめり込む。

 

「危ねー。後少しでもかわすのが遅かったら、月畑みてーに真っ二つにされていたぜ」

 

桑原は武威と距離を取って着地した。 

 

(…………)

 

ズンズンズン

 

武威は巨大な斧を持ちながら桑原めがけて駆け寄る。


スッ

 

桑原は霊剣を構えて武威を迎え撃つ。

 

「来てみやがれ」

 

ビューーーーン!!!!!


再び巨大な斧が凄まじいスピードで振り下ろされた。


バッ

 

武威の攻撃を素早くジャンプしてかわす。

 

「くらいやがれー」

 

ビュー!!!

 

空中から霊剣で斬りつける。

 

シャキーン

 

武威の左肩から右の脇腹までを切り裂いた。

 

桑原、ニヤリ。

(完璧な一撃だ)

 

着地して武威の様子を見た。

 

「どうだァァァ!」

 

(………)

 

武威は何事もなかったかのように立っていた。

そして武威が口を開く。

 

「甘いな桑原。俺の身体までお前の霊剣は届いていない」

 

「ゲッ!マジか!?てめえの鎧はこんなに分厚いのかよー」

自信のあった一撃だけに驚きを隠せない。

 

「この鎧は俺の力を抑えるだけの只の飾りだ。お前も知っているだろう?俺には武装闘気があることを」

 

武装闘気……」

 

桑原は飛影と武威が暗黒武術会で戦った時の事を思い出した。

 

「どうやら思い出したようだな」

 

「ああ。思い出したぜ。頑丈なのはそいつのせいか…」

 

武威は自分自身でも抑えることが出来ない程の巨大な武装闘気を制御する為に、自分の身体の数倍はある重さの分厚い鎧をその身に纏い、その力をなんとか抑えていたのだ。

 

「そういうことだ。武装闘気を防御にまわす事で、俺の鎧の強度は格段に上がっている。今のお前の霊剣では俺の身体に傷をつけることは不可能だ 」

 

桑原、ニヤリ。

「そうかよ。不可能って言われて黙っている俺じゃねーんだよ!」

 

シュゥゥゥゥゥ

 

桑原の右手から霊剣が消えた。

そして懐からある物を取り出す。


(何かを取り出したな)


「行くぞコラァァ!!!」

再び武威に突進して行った。

 

(霊剣を出さずに向かって来る。何かあいつに策でもあるのか?)

 

向かって来る桑原に対して武威は斧を構える。

 

「試しの剣だ!!!」


ギュォォォォォォォン

 

試しの剣は桑原の霊気を吸い始める。

 

――選手たちの休憩所

 

桑原の試しの剣に、同じ試しの剣を持つ死々若丸が反応。

「あれは鈴木の試しの剣!」

 

――Aブロック

 

「強化版の霊剣だぜェェェェ!!!」

 

バチバチバチ

 

ピキーーン

 

試しの剣は桑原の霊気を吸い込み、強力なエナジーを放出した霊剣を生み出す。


「オリャァァァァァァ!!!!」

 

ビューー!!!

 

(速い!!)

 

武威は桑原の攻撃速度が予想より早い為に、斧で攻撃を受け止めるのが遅れた。

 

ズバァァ!!!

 

試しの剣が武威を切り裂く。

だが驚いたのは攻撃を仕掛けた桑原であった。

 

「ぬっ!!!ヤロー!!」

 

なんと武威は左腕で試しの剣を受け止めていた。

 

ポタポタポタ……

 

武威の左腕から血が滴り落ちる。

試しの剣は武威の左腕に深く食い込んでいた。

 

ググッ

 

武威はここで左腕に力を込めた。


「け、剣が抜けねー!?」

 

左腕の筋肉により、試しの剣の動きを完全に封じた。

 

武装闘気を貫くとは少し驚いたが、惜しかったな」

 

スッ

 

右手に持つ巨大な斧を振りかざした。

 

「あの魚人と同じ死に方をさせてやる。死ね桑原」

 

ビューーーーーン!!!!


桑原の腹部を狙って振り下ろされる斧。

狙いは桑原の身体を真っ二つにする為に。

 

「クソッタレー」

 

スッ

 

一撃をかわす為に、桑原は試しの剣から手を放す。

 

バッ

 

そして手を放すと同時に後ろに飛んだ。

 

「かわしたか」

 

ズドォォォォォン!!!!


巨大な斧は先程と同じ様に地面にめり込んだ。

 

「うっ……」

 

桑原の腹部には、傷は浅いが武威の斧によって斬られていた。

 

「月畑もこれでやられちまったんだっけな…」

 

(桑原め、思ったより出来るな)

 

グググッ

 

ズボッ

 

武威は左腕に食い込んでいた試しの剣を外した。

 

「返すぞ」

 

ポイッ

 

外した試しの剣を桑原に投げた。

 

パシッ

 

桑原は試しの剣を受け取る。 

 

「へへへ、返してもいいのかよ。後悔する事になるぜ!」

 

「それがあってもなくてもお前がここで死ぬ事には違いはない」

 

(こいつは想像以上に強いぜ。様子見で力を出し惜しみしていたらやられちまう)

 

「今のお前もこの鎧を脱いで戦う程の相手ではない。この姿のままで殺してやる」

 

「そうかよ。殺れるものならやってみやがれ!」」

 

桑原は試しの剣を一旦、使うのを止めた。

 

スッ

 

ジジジ……

 

右手を前に突き出すと霊気を集中し始めた。

 

「次元刀ォォォォォォ!!!!」

 

ピキーン!!

 

右手に次元を切り裂く事の出来る次元刀が姿を現した。

 

シュッ

 

次元刀の剣先を武威に向けた。

 

「俺がてめえの鎧を今から脱がせてやるぜ。覚悟しな」

 

「フッ、死ぬ前にお前の力を俺に示して見せるがいい。いい思い出にしてやる」

 

桑原と武威の戦いは第二ラウンドに突入する。

 

続く

 

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幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #092「蔵馬vs電鳳戦の結末」

――魔界統一トーナメントのDブロックの二回戦・第一試合

 

蔵馬(くらま)
×
電鳳(でんぽう) 

 

――Dブロック

 

妖狐蔵馬の身体から毒死草がその姿を現した。

 

「行くぞ」

 

毒死草の中心部には目玉のようなものが見える。

そしてその少し下には口らしきものがあった。

 

《グワァ》

 

毒死草は奇声を上げて口を大きく開けた。

 

ズォォォォォ!!

 

凄まじいまでの強烈な霧のブレス吐き出した。

霧は一瞬で妖狐蔵馬と電鳳の姿を隠すように包み込む。

 

――選手たちの休憩所

 

スクリーンに映し出されている毒死草を飛影が見ている。

(蔵馬はやはり自分の身体に取り込み、毒死草に妖気を通したか)

 

幽助が興味深そうにスクリーンに映る霧を観ている。

「スゲー霧だな。だけどよ蔵馬はいつの間に体内に入れたんだ?」

 

「分からないのか?さっきの黒い煙を出した時に決まっているだろう」 

 

「あ、あの時か!」

 

「毒死草は妖気を通してから使えるまでに時間がかかる。普通に妖気を通したくても、電鳳に邪魔をされて出来ないだろうからな」

 

「蔵馬はあんな植物を身体に入れて大丈夫なのか?」

 

「大丈夫なわけがないだろう。かなり苦しい筈だ。それに本当に恐ろしいのは…」

 

「何だ?」

 

「毒死草の効果だ」

 

飛影は再び相樂を倒した時の事を思い出した。

 

――飛影の回想

 

相樂の前に毒死草が姿を現した。

 

相楽が毒死草を見上げる。

「何だ?この植物は!?」 

 

そして蔵馬が相楽を攻撃するように毒死草に指示。

「行け」

 

《グワァ!!》

 

主の命令を受けた毒死草が奇声を上げた。

 

ズォォォォォォ

 

毒死草は霧のブレスを吐き出した。

霧のブレスは蔵馬と相樂を包み込む。

 

「これは霧か!?」

相楽は一瞬で辺り一面が霧に包み込まれた事に驚く。

 

ドクン

 

そして急に相楽の心臓が激しく波打つ。

「うがが……」

 

身体から急に力が失われていく。

 

ググ……

 

「どういう事だ!?力が急に抜けたと思ったら今度は身体が動かん!」

 

「この毒死草が吐き出した霧は毒が含まれている。この霧に触れた者は一時的だが、身体の動きを封じると同時に妖力を数段階は落とす事が出来る」

 

ガクッ

 

そう言うと蔵馬も相樂と同じ様に膝を地面につく。

 

「それは同じ霧の中にいる俺も同じ事だがな……」

 

「一体、あの霧の中で何が行われているのだ?」

 

霧の外にいる飛影には中で何が行われているのか分からなかった。

だがその時、霧の外にいる飛影に向かって蔵馬は大きな声で叫んだ。

 

「飛影!この霧は一時的なものだ。霧が晴れたら、お前は直ぐに相樂を攻撃するんだ!!」

 

「何を訳の分からない事を。何なら今からでも奴を攻撃してやるぞ」

 

飛影はいつでも霧の中に飛び込む構えだ。

 

「よせっ!今は黙って俺の言う通りにしてくれ」


「クソーッ!身体がほとんど動かす事が出来ん!」

相樂は身体を動かそうとするが毒により身体の自由を奪われていた。

暫くすると毒死草が吐き出した霧が晴れていく。

霧が晴れると、そこには毒で身動きが取れなくなった相楽の姿があった。

 

カチャッ

 

飛影は剣を構えた

「なるほど。さっきの霧に身体を動けなくする力があったようだな」 

 

「今だ飛影!!」

 

蔵馬の声に反応して飛影の身体が動く。

「ハァーー!!!!」


ズキューン!!

 

飛影は素早く動いて、動けなくなった相樂に向かっていく。

 

飛影の接近に相楽が気付く。

(なっ!?)

 

「死ね」

 

シャキーン!!!シャキーン!!!シャキーン!!!


「ギャァァァァ!!!」

 

動けない相樂を飛影の剣が容赦なく切り刻む。

 

ドシャッ

 

相樂は全身を十数ケ所も飛影に斬られて息絶えていた。

 

「手間をかけさせやがって」

 

カチャッ

 

剣を鞘に納めると、飛影は毒死草の効果で動けなくなった蔵馬の所へむかう。

 

飛影の顔を見ると蔵馬はニコリ。

「やったな飛影」

 

「お前も動けなくなっているようだな。どういう事か詳しく話せ」

 

「ああ」

 

蔵馬は毒死草の事を飛影に詳しく説明した。

 

「そういう事か。しかし、お前がその様では俺がいなければ奴を倒せなかったぞ」

 

「まあね。本来ならこれ用に毒消し草を調合しているんだが、相樂がここまで強いとは思わなかったから持ち合わせていなかったんだ」

 

「あの時、俺がお前の静止を聞かなければどうしていた?」

 

「その時は動けるようになって、相樂と戦いながら考えるよ」

 

蔵馬は少しおどけて笑う。

 

「チッ」

(顔は笑っているが、こいつの目は俺が計算通りに動くことを確信していたっていっているようなものだ)

 

「ところで、飛影はどうしてここに?」

 

「お前には関係ない」


「フッ、俺が以前、お前を助けた時に口走っていた、雪菜って子が関係しているんじゃあないのか?」

 

(チッ……)

 

「まあいいさ。飛影はこれからどうするんだ?」


「さあな。俺はそろそろ行く」

 

「そうか。飛影、お前とはまた会うような気がする」

 

「俺はごめんだ」

 

蔵馬、ニコリ。

「フッ」

 

飛影は蔵馬を一瞥すると走り去っていった。

そして走りながら飛影は蔵馬の事を考えていた。

 

(蔵馬か……敵に回したくない野郎だぜ)

 

この約八ケ月後、蔵馬と飛影は手を組み、剛鬼と共に霊界の秘宝を盗む事になる。

 

――飛影の回想・終了

 

(あの一件から俺は蔵馬を敵に回すのをやめた)

 

飛影はスクリーンに目を移す。

スクリーンに移るDブロックは大きな霧に包まれている。

 

「これでこの戦いはもうすぐ決着がつく」

 

――Dブロック

 

「凄い霧だ」

辺りをキョロキョロと見回す電鳳。

 

「これでお前を倒す」

 

「何をバカな事を言っている。たかがこんな霧で俺を倒せるわけがないぞ?」

不思議そうな顔をする電鳳。

 

ドクン

 

(何だ!?)

 

その時、電鳳の身体に異変が起こる。

 

ガクッ

 

電鳳は膝を地面につく。

 

妖狐蔵馬ニコリ。

「どうやら効いてきたようだな」

 

そう言うと口に小さな草を含んだ。

 

(何を口に入れたんだ?)

 

口に妖狐蔵馬が何かを入れたのを電鳳は見逃さなかった。

 

「お、お前は何をしたんだ?急に力が抜けていく…」

 

「これは毒死草だ。妖気を通す者の妖力の大きさに比例して、より強力な毒となる霧を吐き出す植物だ」

 

「毒だと…!」

 

「妖力に大きな差があるお前を倒すには、この毒死草しかなかった。この霧は触れている者の身体の自由を奪う。そして数段階は妖力が落ちる」

 

 「お前もこの霧に触れているのに平気なのは何故だ?」

 

「俺が何の準備もなくこの植物を使うと思うか?毒消し草は準備してあるさ」

 

電鳳の脳裏に先程、小さな草を口に含んだ妖狐蔵馬の姿が浮かんだ。

(さっき飲み込んだのがそうか!!)

 

妖狐蔵馬は少しずつ電鳳に近付く。

 

「少し卑怯かもしれないが、毒の効果で妖力の落ちた今のお前なら倒せる」

 

電鳳、ニヤリ。

「なるほど、こんな切り札があるとはやられたぞ。お前の能力だ。これは卑怯ではない。しかし流石はあの坊主の友達だよ。見事だ。さあ、勝負のケリをつけろ」

 

妖狐蔵馬は頷く。

「今まで俺が戦った相手で一番お前が強かったよ」

 

妖狐蔵馬の右手に植物が巻き付く。

 

「ハァァァァ!!!樹霊妖斬拳!!」

 

ビューン!!!

 

樹霊妖斬拳を電鳳に向かって放つ。

 

ドゴォォォォォ!!!!

 

拳が電鳳の腹部に深くめり込んだ。

 

「ガハァァァ!!!」

 

電鳳が口から血を吐く

 

ドスン!!!

 

そして仰向けにその場に倒れた。

 

「本当に強かった。流石に正攻法で勝てる相手ではなかった」

 

倒れた電鳳を見つめる。

電鳳は完全に気絶していた。

 

「終わったみたい……」

 

隠れて試合の様子を見ていた審判が倒れた電鳳の様子を伺う。

 

「気絶している……。Dブロックの二回戦の第一試合は蔵馬選手の勝利です!!」

 

審判は妖狐蔵馬の勝利を宣言した。

 

ドスン

 

妖狐蔵馬はその場に崩れ落ちる様に座り込んだ。

 

シュゥゥゥゥ

 

そして妖狐蔵馬の姿が南野秀一の姿に変化していく。

 

「フゥ~、なんとか勝てたか」

 

自分の身体から出ている毒死草を見る。

 

蔵馬、ニコリ。

(またやってしまったな。やれやれ、身体で育てた毒死草を枯らすのが大変だな)

 

蔵馬は苦笑いを浮かべると身体で育てた毒死草を妖力で枯らしたのだった。

 

審判は倒れている電鳳を見ていた。

(私を助けた時、かっこよかったな。目が覚めたら声をかけてみようっと)

 

――選手たちの休憩所

 

黄泉と修羅は蔵馬の試合の一部始終を観ていた。

「パパ、蔵馬が勝ったよ」

 

「ああ」

(見事だったぞ蔵馬)

 

――選手たちの休憩所に続く階段

 

試合を終えた蔵馬は休憩所に続く階段を下りていた。

足がふらつき、壁に手をついた。

 

(思ったよりダメージが大きい。瑠架に治療してもらわないと。俺の薬草だけでは回復がきついな」

 

ブォォォォォ!!!

 

(何だこの妖気は!)

 

強力な妖気が階段の下から段々近づいて来るのを蔵馬は感じた。

そして蔵馬の目の前に現れたのは、Dブロックの第二試合に出場する為に闘場に向かう梟であった。

 

(こいつは梟か。鴉にやはり似ている)

 

梟も蔵馬の存在に気付く。

そして蔵馬と梟の目が合った。

 

(………)

 

一瞬、彼等の間に緊張が走った。

 

スッ

 

だが、梟は何も言わずに蔵馬の横を通り過ぎた。

 

「待て」

 

梟を呼び止める。

 

「何だ?」

 

梟は蔵馬の方を振り向かずに足を止めた。

 

「梟、お前はあの鴉なのか?」

 

蔵馬の問いかけに梟は表情を変えることなく答える。


「それはお前の目で確かめたらどうだ?」

 

「……そうさせてもらう」

 

ビューーー!!

 

蔵馬は振り向くと同時に、胸から薔薇を取り出すと鞭化して梟を攻撃。

 

フッ

 

梟の姿が消え去る。

 

(消えた!?)

 

その時、蔵馬は背後に気配を感じた。

 

「クールな顔をして抗戦的だ」

 

梟の声が背後から聞こえてきた。

そしてそれと同時に髪の毛に違和感を感じる。

何故なら梟が蔵馬の長い髪の毛を優しく触っていたからだ。

 

「綺麗な髪だ。髪の毛が手入れされている。トリートメントもちゃんと使っているようだ」

 

「貴様ー!」

 

蔵馬が直ぐに梟に攻撃を加えようと振り向くと梟の姿は既に消えていた。

蔵馬の額から冷や汗が落ちる。

 

「忘れるわけがない。今の感覚は間違いなくあの時の鴉と一緒だった」

 

鈴木が闘場に向かう為に階段を上ってきた。

 

「お疲れ蔵馬。かなり苦しい戦いだったな」

 

「ああ」

鈴木は蔵馬の身体の状態を見て驚く。

 

「かなり酷い怪我をしているじゃないか!直ぐに治療をした方がいい」

 

「ああ、そのつもりだ」

鈴木は直ぐに蔵馬の様子がいつもと違う事に気付いた。

 

「その顔は怪我の痛みではないな?何かあったのか?」

 

「何でもない。大丈夫だ」

 

「それならいいが、俺は今から試合だ。これに勝てば三回戦の相手はお前になる。三回戦で当たったら宜しく頼むぜ」

 

「ああ」

(あいつの相手は鈴木なのか…)

 

「俺はそろそろ行くぜ」

 

「鈴木、相手はかなり強いぞ。油断するな」

真剣な顔で鈴木に話す。

 

鈴木はあまりの蔵馬の真剣な顔に一瞬、驚いたが笑顔で答える。

 

「ああ、大丈夫だ。蔵馬も早く治療しろよ」

鈴木はそう言うと階段を上って行った。 

鈴木の後ろ姿を見ながら蔵馬は恐ろしい事を口走る。

 

「…あいつの妖力は今の鈴木よりも上だ」

 

――Aブロック

 

闘場に到着した桑原と武威が対峙していた。

お互いの顔を見つめる。

両者の間で緊張が走る。 

 

桑原が武威を指差した。

「武威、てめえには負けねーぞ!月畑の仇を取らせてもらうぜ」

 

「安心しろ。お前も同じ場所に直ぐに連れて行ってやる」

 

Aブロックではいよいよ桑原と武威の戦いが始まろうとしていた。

これが激しい死闘になるとは、この時はまだ誰も思っていなかった。

 

続く

 

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幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #091「毒死草(大会編)」

――魔界統一トーナメントのDブロックの二回戦・第一試合

 

蔵馬(くらま)
×
電鳳(でんぽう) 

 

――Dブロック

 

妖狐蔵馬は電鳳を攻略する方法を頭をフル回転させて考えている。

 

(さてどうするか)

 

電鳳の強さはやはり圧倒的。

現時点の妖狐蔵馬ではまともに戦っても勝つ事は正直厳しい状況だ。

 

「折角、地上に降りて来たんだ。男ならガツンと俺と勝負しろ」

 

電鳳は右腕に力を込めて筋肉を見せつける。

その顔は妖狐蔵馬を肉弾戦へ誘う為に挑発している。 

電鳳の目的に妖狐蔵馬は気付いていた。

 

(フッ、肉弾戦が余程、あいつは好きみたいだな。流石は雷禅の喧嘩仲間といったところだな。幽助や酎と戦わせてやりたくなる)

 

「どうした?俺が怖いのか?」

 

さらに妖狐蔵馬を挑発する電鳳。

妖狐蔵馬は胸元から鋭い牙を持つ不気味な植物を取り出して目の前に置いた。

 

「ハァァァ!!!」

 

植物に妖気を通した。


ズズズ……

 

植物は直ぐに巨大化した。

妖気を通したことで牙があった部分が大きく膨らみ、目はないが、巨大な口を持つ姿に変化していた。

 

「何だあれは?」

 

巨大化した植物を見上げる。

ちょっと興味津々の様子。

 

(危険だが、毒死草を育てる為にはこれしかない)

 

スッ

 

妖狐蔵馬は右手で植物に軽く合図した。

すると植物は口から黒い煙を大量に吐き出した。

黒い煙はあっという間に妖狐蔵馬を包み込む。

 

「何をするつもりかしらないが、黙って見ているつもりはないぞ」

 

ググッ

 

電鳳は右手に妖気を集中。


「こんな煙は直ぐに吹き飛ばしてくれるわ」

 

ドン!!!

 

電鳳の右手から衝撃波が放たれた。

 

ズォォォォォォ!!!!

 

衝撃波で煙が一瞬で消し去られた。

煙が消えると何事も無かったかのように妖狐蔵馬が立っていた。

 

「あの一瞬では何も出来なかっただろ?」

 

「さあな」

 

妖狐蔵馬が呼び出した植物の姿は完全に消えていた。

 

「さっきの植物はもう使わないのか?」

 

「ああ」

 

ズズズ……

 

妖狐蔵馬の右手に、さっきとは別の植物らしきものが姿を現した。

 

「行くぞ電鳳」

 

ズキューン!!!!

 

高速で動き、一気に電鳳に向かっていく。

 

電鳳、ニヤリ。

「おっ!やっと俺とガチンコで勝負するつもりになったか」

 

「お前の望みを叶えてやる」

 

「お前とこの試合でまともに戦うのは初めてだな。俺とどこまで戦えるか見てやるぞ」 

 

スッ

 

妖狐蔵馬が電鳳の懐に入り込む。

 

「樹霊妖斬拳」


ビューン!!!!

 

ドゴッ!!

 

電鳳の腹部に妖狐蔵馬の一撃がまともに入った。

拳が腹にめり込む。

手応えを感じた妖狐蔵馬は直ぐに電鳳の様子を見た。 

 

「フフフ、中々いい筋だよ。その細い身体の割には強力な一撃を放つではないか」

 

(まともに入ったはずだ)

 

ビューン!!

 

ドゴッ!!!

 

もう一発、電鳳の腹部に樹霊妖斬拳を叩き込む。

 

「フフ」

 

だが電鳳は笑っている。

 

「俺の攻撃がお前には効いていないのか?」

 

「いや、結構効いているぞ。かなりの威力だ。だが俺の喧嘩仲間たちは肉弾戦を好む連中が多いのでな。仲間たちと喧嘩をする内に身体が頑丈になっただけだ」


「なるほどな」


バッ

 

妖狐蔵馬は素早く電鳳の上にジャンプする。

 

「ウォォォォォ」

 

ズズズ……

 

右手にまとわりつく植物を剣状に変化させる。

 

「ほ~う。便利な植物だな」

 

妖狐蔵馬の植物の動きを面白そうに見つめる電鳳。

その表情には余裕すら感じられる。

 

「樹霊妖斬剣」


ビューーーー!!!!

 

植物の剣が振り下ろされる。

 

ガシッ

 

だが電鳳は植物の剣を難無く白羽取りで受け止める。

 

「まだだ!!ハァァァ!!!!!!」

 

電鳳を斬り裂くべく植物の剣にさらに妖気を込める。


グググ……

 

だが、植物の剣に妖気を込めても、電鳳に受け止められた剣がそれ以上動く事がなかった。

 

「いい一撃だが、まだまだだ」

 

グッ

 

電鳳は植物の剣を両手に挟んだまま、その力で妖狐蔵馬の身体を軽々と持ち上げる。


(何て力だ!?)

 

電鳳の力に驚愕する。

 

ブーン!!ブーン!!ブーン!!

 

電鳳はその力に任せて妖狐蔵馬の身体を振り回し始めた。

 

「ムッ!!」

 

妖狐蔵馬は右手に作り出していた植物の剣を消し去り、電鳳の手から逃れた。

そして電鳳から少し離れた位置に着地。

 

(これが電鳳か…。強い)

 

――選手たちの休憩所

 

「蔵馬はさっきの植物に煙を吐かせて何をするつもりだったんだろう?」

桑原が不思議そうな顔をしている。

さっきの煙は何の為なのか目的が分からなかったからだ。

 

幽助も頷く。

「直ぐに電鳳の衝撃波で消されちまったから何も出来なかったんじゃねーのか?」

 

(蔵馬の奴、まさか……)

飛影は蔵馬の意図に気付いた。

 

その時、休憩所にアナウンスが流れた。

 

「桑原選手と武威選手は試合がもうすぐ始まります。会場に向かってください」


「俺の出番か。蔵馬の試合が気になるってのによー」

 

桑原はスクリーンを見るとAブロックで時雨が乙夜を倒した姿が映し出されていた。

 

桑原、ニヤリ。

「時雨が勝ったな。流石に強いぜ」

 

剣術の師である時雨の勝利を喜ぶ。

 

パン!

 

桑原は両手で頬を叩いて気合いを入れた。

 

「おっし!!行くぜ」


「月畑のように殺されんようにな」

 

無愛想な顔で飛影が桑原を見送る。

 

「あたりめーだ。殺されてたまるかよ」

 

「負けるんじゃねーぞ」

幽助が親指を立てて闘場に向かう桑原を見送る。

 

「あたぼうよ。俺様の勝利をここで見とけよ」

 

桑原も親指を立てて幽助に返すと、Aブロックの闘場に向かって走っていく。

 

(月畑、仇を取るぜ)

 

桑原は蔵馬と電鳳の試合の結果を見る事なく武威との戦いに挑む。

 

――Dブロック

 

ドゴォ!!!

 

強烈な電鳳の一撃が妖狐蔵馬の腹部に入った。

 

「ガッ!」

 

ガクッ

 

腹部を右手で抑えて膝をつく。

 

「フン」

 

バキッ!!

 

膝をついた妖狐蔵馬を直ぐに殴りつける。

 

ヒューーー

 

ドシャッ!!

 

妖狐蔵馬は地面に身体を叩きつけられた。

妖狐蔵馬と電鳳の戦いは圧倒的な肉弾戦の強さを誇る電鳳がその実力を見せつけていた。


(クソッ)

 

ゆっくりと立ち上がる。

妖狐蔵馬の息が荒くなる。

 

「どうした?もう終わりか?」

 

右手をチョイチョイと自分の方に向けて妖狐蔵馬にかかって来いと合図する。

それを見た妖狐蔵馬は鋭い目付きで電鳳を睨む。


「ハァーー」

 

ズキューン!!!

 

ボロボロの身体ながらも電鳳に向かっていく。

 

ビューン!!

 

樹霊妖斬拳で電鳳に殴りかかった。

 

パシッ

 

電鳳は右手で妖狐蔵馬の攻撃を受け止めた。

 

ギュゥゥ

 

電鳳は妖狐蔵馬の右手の拳を握り潰す。

 

「ウァァァ!!」

 

右手を握り潰された痛みで顔が歪む。 

 

グイッ

 

電鳳は妖狐蔵馬の身体を自分の方に引き寄せると、両腕で妖狐蔵馬の身体を抱き抱えて締め上げ始めた。

 

メキメキメキ

 

「ウァァァァァァ!!!!!」

 

強烈な締め付けにより鈍い音が辺り一面に響く。

 

「俺の締め付ける強さはお前の植物と変わらないぞ」

 

メキメキメキ

 

「ガハッ!!」


口から血を吐き出す。

 

「お前は良く戦った。流石は坊主の友達だよ。降参しろ。俺がこれ以上締め付けると身体の骨が全て粉々になるぞ」

 

「わ、悪いが、俺はまだ勝負を諦めていないからな」

 

「そうか。ならこれはどうだ」

 

ビリビリビリ

 

電鳳は妖狐蔵馬の身体を締め付けたまま、自らの身体から雷を発生させ、妖狐蔵馬の身体に流し込む。


「アァァァァァァァ!!!!!!」

 

妖狐蔵馬の絶叫が闘場に響き渡る。

そして妖狐蔵馬の頭が下がると動かなくなった。

 

「勝負は決した。流石にこれで戦闘不能だろう」


電鳳が勝利を確信したその時。

 

シュルルル

 

気を失ったかに見えた妖狐蔵馬の肩から突然、植物が出て来た。

 

(な、何だ!?)

 

植物は電鳳の首を締め付ける

 

「グワァァァァ!!」


首を締め付けられた為に、妖狐蔵馬を捕まえていた電鳳の腕の力が一気に弱くなる。

 

「ハァッ」

 

ドカッ!!

 

電鳳の首に巻き付けた植物を離すと素早く電鳳の胸部に蹴りを入れる。

 

ザザザ

 

後ずさる電鳳。

 

クルクルクル

 

シュタッ

 

妖狐蔵馬は身体を回転させて電鳳から距離を取って着地。

 

「驚いたな。いきなりあいつの身体から植物が出て来るとは…」

 

突然の植物の出現に驚いた電鳳だったが、妖狐蔵馬の姿を見てさらに驚く。

 

「お、お前、その姿は!?」

 

なんと妖狐蔵馬の身体から巨大な植物が姿を現していた。


「……驚いたか?こ…これが俺の切り札の毒死草だ…」

 

苦しそうな声で話す。

 

妖狐蔵馬は自らの身体に小さな毒死草を取り入れて育てていたのだ。

さっきの煙は毒死草を身体に植え付ける時間稼ぎの為だった。

 

「これで…勝負をつけ…る」

 

電鳳の妖狐蔵馬を見る目が変わる。

そして毒死草がいよいよその力を見せようとしていた。

 

続く

 

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幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #090「蔵馬の切り札(大会編)」

――魔界統一トーナメントのDブロックの二回戦・第一試合


蔵馬(くらま)
×
電鳳(でんぽう) 

 

――Dブロック

 

シュゥゥゥゥゥ!!!

 

妖狐蔵馬がさっきまで立ってた場所に電鳳が立っていた。

その足下は黒く焦げている。

 

「やるじゃないか。あれをかわしたか」


電鳳は直ぐに空を見上げる。

すると妖狐蔵馬は空にいた。

 

――Dブロックの上空

 

「流石に今のは危なかったぞ」

浮葉科の植物を素早く召喚して電鳳の攻撃をぎりぎりでかわしていた。 

 

――選手たちの休憩所

 

「今のはヤバかったな。見ていてヒヤヒヤしたぜ」

 

電鳳の攻撃を妖狐蔵馬が無事にかわしたのを見てホッとした様子。 

 

幽助もホッとしている。

「あれをまともにくらっていたら蔵馬は黒焦げだったかもな」

 

電鳳の先程の技は雷を身体に帯びていた為に、

もし擦りでもしたらかなりの高電流が身体に流れていたのだ。

 

――Dブロック

 

「どうやら奴は妖気で雷を発生させることが出来るようだな。不用意に近付くわけにはいかない」

 

バサバサバサ

 

妖狐蔵馬は浮葉科の植物に、妖気を通して作った翼でさらに上空に向かって、どんどん羽ばたいていく。

 

「コラァ!汚いぞ。俺は空が飛べないのだから降りて俺と喧嘩しろ!!」

 

地上に残された電鳳は空高く消えた妖狐蔵馬に文句を言っていた。

 

――Dブロックの上空

 

上空から地上にいる電鳳を見る妖狐蔵馬。

 

「フッ、何か俺に文句を言っているようだが聞こえないな」

 

スッ

 

妖狐蔵馬は非常に小さな葉を胸元から取り出した。


「これを使うまでには少し時間がかかる。奴には悪い気がするが、これも勝負だ。ここで少し時間を稼がせてもらうぞ」 


小さな草を手の平にのせると草に妖気を通し始めた。

 

ズズズ……

 

妖気を吸収して草は徐々に成長を始めた。

 

――Dブロックの地上

 

地上に取り残された電鳳は、地上に降りて来る気配がない妖狐蔵馬に対して、徐々に頭に血がのぼってきていた。

 

「クソッ!俺は気が短いんだ」

 

ジジジ……

 

左右両方の拳に妖気を込め始める。

 

ボォォォォォォォ!!!!!

 

電鳳は両手には巨大な妖気の塊が出来た。

 

電鳳、ニヤリ。

「俺は遠隔攻撃はあまり好きではないんだが、降りて来ないなら地上まで引きずり降ろしてやるまでよ」

 

ドーン!!!

 

上空の妖狐・蔵馬に向けて右手から巨大な妖気の弾が放たれた。

 

「もう一発プレゼントだ」

 

ドーーン!!!

 

今度は左手から巨大な妖気の弾を放つ。

 

――Dブロックの上空

 

上空では妖狐・蔵馬の手の平から妖気を吸収した草はどんどん大きくなっていた。 

 

「もう少しだ」


グォォォォォォ!!!

 

(あれは!)

 

電鳳の放った巨大な妖気の弾が迫って来ていた。

妖狐蔵馬はとっさに妖気の弾をかわす為に身体をずらす。

 

ガッ!!

 

「むう」

 

妖気の弾が胸元をかすめる。

 

シュゥゥゥゥ

 

「しまった!」


今の妖気の弾で妖気を通して成長させていた草が、妖気の弾に呑み込まれて消滅してしまった。

 

――Dブロックの地上

 

電鳳がドヤ顔で豪快に笑う。

「ガハハハハ!!驚いたか」

 

――Dブロックの上空

 

グォォォォォォ!!!

 

二発目の妖気の弾が迫る。

 

(またか!)

 

幽助や陣のように風を操り空を飛んでいない妖狐蔵馬は、浮葉科の植物で空をある程度は自由に飛ぶことは出来る。

だが素早い動きになると彼等の様に素早く動く事は出来なかった。 

 

(これは避けるのは不可能だ。堪えるしかない)

 

スッ

 

両手を前に出して巨大な妖気の弾を受け止める態勢を作る。

 

グォォォォォ!!!

 

「行くぞ」

 

ドガァァァァァァァァァ!!!!!!

 

妖気の弾が妖狐蔵馬と接触して空中で大爆発を起こした。 

 

――Dブロックの地上

 

「命中だ」

 

ググッ

 

「ここで一気に勝負を決めさせてもらうぞ」

 

ドーーン!!

 

ドーーン!!

 

さっきと同じ巨大な妖気の弾を今度は左右両方の手から同時に上空に向かって放つ。

 

――Dブロックの上空

 

グォォォォォ!!!

 

爆発を起こしている妖狐蔵馬のいる場所にさらに二発の妖気の弾が命中。

 

ドガァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!


さっきの爆発を遥かに超える大爆発が上空で起きた。

 

「キャァァァァァ」

 

大爆発の衝撃で上空にいたDブロックの女性審判が飛ばされた。

 

――Dブロックの地上

 

ヒューーー

 

「キャァァァァ!!助けてー!!」

 

審判の女性が地上に落ちてくる。

 

ドスン

 

電鳳が地上で審判の女性を両腕でしっかりと受け止める。

 

「た、助かりました……」

 

「悪いな姉ちゃん。ちょっとやり過ぎたようだ」 


ポリポリと頭を掻きながら苦笑いを浮かべる。

 

――選手たちの休憩所

 

凍矢が心配そうな顔でスクリーンを観ている。

「蔵馬はあの巨大な妖気の弾を三発も受けたが大丈夫か?」

 

鈴駒がスクリーンを指差した。

「あっ、あれは!?」


スクリーンに妖狐蔵馬の無事な姿が映し出された。

 

陣が笑顔で感心している。

「蔵馬の奴、スゲーな!あの攻撃を耐えたみてーだぞ」

 

合計三発に及ぶ電鳳の妖気の弾を受けた妖狐蔵馬。


爆発の衝撃で全身にダメージを負ってはいたが、あの爆発の大きさに比べたら比較的軽いものだった。

 

――Dブロックの上空

 

「白魔装束に今回は救われたか」

自分の身に付けている白魔装束を触る。


(電鳳にあれほどの妖気の弾を放つ技があるのなら、このまま空にいるのは危険だ)

 

ヒューー

 

妖狐蔵馬は地上に向かって降りて行く。 

そして地上に降りながら先程、消滅させられた草を胸元から取り出す。 


(胸を奴の弾が擦った時にこれが無事で良かった。これは俺の切り札なのだからな) 

 

――Dブロックの地上

 

「審判をするのも命がけだわ」

 

審判の女性は電鳳から遠く離れた岩の影に隠れて試合の様子を見守る。

落下から助けてくれた電鳳の顔を見て頬を赤くした。

 

(電鳳ってイカつい割にはちょっとカッコイイかも)

どうやら電鳳に恋をした模様。

 

「あいつはまだ地上に下りて来ないみたいだな。もう一発ぐらいいってみるか」

 

ググッ

 

電鳳が再び巨大な妖気の弾を空に向けて放とうとしたその時。

 

妖狐蔵馬が地上に降りて来た。

 

「待たせたな」


電鳳、ニヤリ。

「ようやく降りて来たか」

 

――選手たちの休憩所

 

「飛影、さっき電鳳に妖気を通わすのを邪魔をされた植物が蔵馬の切り札なのか」

幽助が隣にいる飛影に訪ねる。

 

「そうだ」

 

「蔵馬の奴は空の上で何かの植物を作り出そうとしていたがあれは何か飛影は知ってんのかよ?」

 

桑原も飛影に問いかける。


「あれは毒死草だ。一度だけ蔵馬が使う所を見た事がある」

 

「毒死草??名前からしてヤバそうな名前だな」

 

「これはまだ俺がお前たちと出会う前の話だ」

 

――飛影の回想

 

「チッ、しつこい野郎だ」

 

飛影は巨大なライオンの姿をした妖怪に追われていた。 

 

その当時の飛影は邪眼を移植した代償として妖力が最下級クラスまで落ちていた。 

飛影は妹の雪菜に繋がるような情報があれば、今の自分より妖力が高い妖怪が相手でも、危険を侵してまで色々と調べて回っていた。

相樂(さがら)という名の妖怪が、人間界で人間に化け、催眠術で人間の女性や妖怪の女性を自由に操って、闇ブローカーに彼女たちを売り払い、巨万の富を得ているという情報を掴んだ飛影はその屋敷に進入。

催眠術で操られている女性の中か、闇ブローカーに売られてしまった女性の中に妹の雪菜がいるかどうかを調べに来たのだった。

結局、雪菜に繋がる手掛りはなく、相樂に見つかり追跡されていた。

相樂はC級の上位クラスで飛影は戦ってはみたものの、防戦一方で勝ち目がなく、飛影は相手を振りきるべく必死に逃げていた。

 

「追いつめたぞ」

 

飛影は相楽によって逃げ場のない断崖絶壁に追いつめられていた。

 

(クソッ!)

飛影の顔に焦りが見える。


「手を貸そうか?」

相樂の背後に蔵馬が現れた。

 

「貴様は確か……」

飛影は蔵馬の姿を見て驚く。

 

一度、蔵馬とは数ケ月前に八手の事件で面識は会ったがそれ以降、二人の間に繋がりが無くなっていた。

 

「飛影、久しぶりだな。俺も訳ありでここに来てみたら、誰かさんが既に暴れまわった後でね。妖気を辿って来てみたってわけだ」


蔵馬は自分の通う学校や他校の女生徒が相次いで行方不明になる事件を調べている内に、妖怪である相樂に辿り着いたのだった。

 

「貴様も妖怪か!」

 

「そうだ。お前に操られていた女性たちは俺が催眠術を解いて解放した」

 

「何だと!?俺がかけた催眠術はそう簡単に解けるものではないはずだ」」

 

蔵馬、ニコリ。
「俺にかかれば解くのは簡単だったよ。もっと強力な催眠術のかけかたを教えてやろうか?」 

 

「貴様ー!!」

 

怒り狂った相樂は蔵馬に向かって行く。

 

蔵馬と相樂は激しく戦ったが妖力の勝る相樂が徐々に蔵馬を圧倒し始めた。

 

「あの野郎に助けられるのは堪にさわるぜ」

 

飛影は蔵馬と相樂の戦いの中に乱入する。

 

飛影と蔵馬の二人がかりによる攻撃も相樂の前には通用しなかった。

 

ザザザ

 

「おのれ!」

 

スッ

 

再び相樂に向かって行こうとする飛影を手で蔵馬は静止した。

 

「奴は俺達より圧倒的に妖力は上だ。俺に考えがある。悪いが奴を少しの間食い止めてくれ」

 

「何か策があるようだが貴様の指図を俺はうけん」

 

バッ

 

飛影は蔵馬の静止を振りきり相樂に戦いを挑む。

だが口で言う事とは裏腹に、先程までとは違って時間をかけるような戦い方で相樂と戦う。

飛影は蔵馬の為に時間を稼ぎを始めたのである。

 

(フッ、素直じゃないな)

 

スッ

 

蔵馬は胸元から毒死草を取り出し妖気を通し始める。


ズズズ……

 

毒死草は変化を始める。

 

蔵馬が毒死草に妖気を通している間、飛影の戦いは続く。

 

「この雑魚妖怪がチョロチョロしゃがって」

 

バキッ

 

飛影の顔面にヒット。

 

ザザザ

 

「チッ」

 

その時、蔵馬の声が響き渡る。

 

「完成したぞ。飛影、直ぐに俺と相樂から離れるんだ」

 

バッ

 

飛影、ニヤリ。

「待たせやがって」


飛影は素早くジャンプして蔵馬を飛び越えてかなりの距離を取って着地。 

 

「相樂、覚悟しろ」

 

蔵馬は成長した毒死草を相樂に向けた。

 

「な、何だこれは!?」

 

カーー

 

――飛影の回想・終了

 

「俺と蔵馬は大きな力の差があった相手を毒死草で倒した」

 

桑原は飛影の話しを聞き入っていた。

「スゲーな。だが自分にも危険があるんだろ?」


「ああ、かなり危険だ」

 

「すると蔵馬はその毒死草ってのを使わねーとあの電鳳に勝てねーってのか!?」

 

「そういうことだ。奴は全ての面で今の蔵馬を上回っている。奴がオジギソウを倒した時点で蔵馬もそれは気付いているだろう」


――Dブロック

 

「電鳳よ、勝負だ!」 

 

「俺を楽しませてくれよ」

 

自分にも危険があるという妖狐蔵馬の切り札の毒死草とは?

戦いはいよいよ最終局面を迎える。

 

続く

 

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幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #089「俺は美味くないぞ(大会編)」

――魔界統一トーナメントのDブロックの二回戦・第一試合

 

蔵馬(くらま)
×
電鳳(でんぽう) 

 

――Dブロック

 

《ギイギギギ》

 

電鳳に激しい敵意を剥き出しになったオジギソウが電鳳に向かって動き始めた。

妖狐蔵馬がオジギソウにもう一度命じる。

 

「あれはお前に害をなす者だ。全力で奴を排除しろ」

 

命令を受けたオジギソウはさらに勢いを増して向かっていく。

 

電鳳は構える。

「植物と喧嘩するのもまた一興だよな」

 

グッ

 

電鳳は右腕に力を込め始めた。

 

バチバチ

 

右腕が膨らみ、その腕から火花が見え隠れする。

 

「フン」

 

ドン!!

 

膨らんだ右腕で地面を殴る。

 

グォォォォォォ!!!!!


オジギソウに向かって地中を這うように一直線に火柱が向かっていく。

 

「黒焦げになるがいい」

 

《ギイギギギ》

 

オジギソウは素早く身体を動かして火柱をかわす。

 

「何ィ!?」

予想外のオジギソウの動きに驚く。

 

妖狐蔵馬、不敵に笑う。

「俺の呼び出したオジギソウを甘く見ないことだ」

 

《ギイギギギ!!》

 

オジギソウは不気味な鳴き声を上げると身体から大量の触手を出した。

 

シュルルルル

 

オジギソウに攻撃をかわされないと思っていた為、電鳳は攻撃をかわすタイミングが一瞬遅れた。

 

「チィィッ!!」

 

電鳳の身体を触手でぐるぐるに巻き付ける。

電鳳の身体の自由を完全に奪った。

 

「こらァァ!さっきから言っているが、俺を喰ってもマジで美味くないぞ」

 

オジギソウに捕まっても特に慌てた様子はなく、オジギソウに文句を言っている。

 

《ギギギーー!》

 

オジギソウは大きな奇声を上げると電鳳を黙らす為に一気に締め付ける。

 

ミシミシミシ

 

「ほほう!植物なのに割と力が強いではないか」


かなりの力で締め付けられているのにまだまだ余裕の顔をしている。

 

《ギイギギギ!!!!》

 

電鳳の反応に腹をたてたオジギソウはさらに締め付ける力を強くする。

 

メキメキメキ

 

不気味な音が辺り一面に響き渡る。

 

「おいおいおい。これがお前の全力の力か?」

 

(オジギソウが締め付けている力は凄まじいはずだ。人間界で戦った比羅の仲間はどうすることも出来ずに俺に敗れたというのにな……) 

 

メキメキメキ

 

電鳳を締め付けている音がずっと鳴り響いている。

 

「もういいわ。どうやらこれがお前の全力の力のようだ」

 

ブォォォォォ!!!!!

 

電鳳の身体から巨大な妖気が放出された。

 

「なんて妖気だ!?」

 

電鳳、ニヤリ。

「俺を締め付けるのは300年早いぞ」

 

《ギイギギギ!?》

 

電鳳が一向に弱らない為、オジギソウは戸惑い始めた。

 

(まずいな)

 

妖狐蔵馬はオジギソウに次の攻撃を合図する。

 

「オジギソウよ、奴を呑み込め!」

 

《ギギギ》

 

戸惑い始めていたオジギソウであったが、妖狐蔵馬の言葉で冷静さを取り戻した。

 

《ギイギギギ!!!》

 

オジギソウは巨大な口を開き、締め付けている電鳳をそのまま体内に呑み込もうとする。


「グフフ」

電鳳は不気味に笑っている。

 

ゴクン

 

電鳳は不気味な笑みを浮かべたままオジギソウに呑まれた。

 

(あの笑みは何だ……)

 

――Cブロック

 

Dブロックで電鳳がオジギソウに呑み込まれた頃、Cブロックでは九浄と木阿弥の戦いが終盤に差し掛かろうとしていた。

 

ドゴォォォォ!!!

 

九浄の強烈な一撃が木阿弥の腹部にヒット。

 

「がはっ!!」

 

ザザザ

 

九浄の一撃をまともに腹部に受けて後ずさる木阿弥。


「くそ……強い」

 

九浄、ニコリ。

「今の一撃をまともに受けてもまだ倒れないか。お前、中々強いな」

 

「おのれ!」

 

スッ

 

木阿弥は鉄扇を胸元から取り出す。

 

「これでもくらえー!」

 

シューーー

 

木阿弥の手から武器の鉄扇が九浄に向かって放たれる。

 

シュパッ!

 

鉄扇が九浄の頬を裂く。

裂けた頬から口元の辺りまで滴り落ちる血を舌でペロリと舐める。

 

「ただの鉄扇じゃないな。妖気で切れ味が増しているぜ!俺の顔に傷をつけるとは中々やるじゃあないか」

 

パシッ

 

木阿弥の手元に鉄扇が戻って来る。

 

「この鉄扇は俺の切札だ」

 

「流石は躯の戦士の一人だけはあるなって言ってやりたいが」

 

ズキューン

 

「は、速い!?」

 

九浄は瞬時に木阿弥の懐に入り込む。

 

「悪いがこれで寝んねしなよ」

 

木阿弥の胸に軽く手を置いた。

 

(!)

 

ドォォォォォォォン!!!!!!!

 

強烈な発勁

 

「ゲボァァァ」

 

ドサッ

 

木阿弥はその場に崩れ落ちるように倒れた。

 

九浄は意識を失っている木阿弥に向けて言葉をかける。

「またやろうな。強い奴を俺はいつでも歓迎する」

 

上空から審判が試合の様子を見ている。

 

「Cブロックの第一試合は九浄選手の勝利です!」

 

審判が九浄の勝利を宣言した。

 

「これで二回戦を突破だ。次は酎だぜ」

 

――選手たちの休憩所

 

飛影は躯の直属戦士仲間である木阿弥の試合を見ていた。

 

(木阿弥は敗れたか)

 

酎とその他の仲間たちもスクリーンに映る九浄の試合を鑑賞。 

目を細めながら、スクリーンにアップで映る九浄を酔は見ている。

「やっぱ九浄は強いぜ」

 

死々若丸も九浄の強さを感じていた。

「俺は一回戦で躯の戦士の一人とで戦って苦戦したというのに奴は簡単に倒したな」

 

鈴駒が酔をからかう。

「ニヒヒ。酎は死ぬ気で戦わないと九浄に勝てないかもよ。勝たないと“愛しの棗さん”と結婚出来ないもんな」

 

「うるせーぞ!分かっとる」

 

「へ~、俺たちの知らないとこで面白い事になってるんだな。酎が棗にプロポーズしたとこまでは知ってんだけどよー」

陣が楽しそうに酔の顔を見て笑っている。

鈴駒が知らない皆に簡単に状況を説明した。

「ってわけで、酎は九浄に勝たないと結婚出来ないんだ」

 

鈴木と凍矢もここで初めて酔の置かれている状況を知った。

「なるほど、それじゃあ、酎は大変だ。俺たちは三回戦で酎が九浄と戦う所を楽しく見させてもらうぜ。なあ、凍矢」

 

「そうだな」

 

酎以外の五名は笑みを浮かべてその後、酎を散々からかったのだった。

 

ちょっと涙気味の酔。

「お、お前等、他人事だと思って……」

 

酎はやれやれっといった顔で再びスクリーンの九浄を見た。

 

(木阿弥を倒したあの一撃をくらっちまったら、俺でも一発でやられちまうかもしれねー。これは気をつけんとやばいぞ)


酎は九浄と三回戦で闘う時のシミュレーションを考え始めた。 

全ては九浄に勝つ為に。

 

――Dブロック

 

《ギイギギギ》

 

オジギソウは電鳳の身体を完全に体内に呑み込んでいた。

 

(……)

 

妖狐蔵馬は呑み込まれる直前の電鳳の笑みを見て何か強い胸騒ぎがしていた。

 

カーー!!!

 

《ギギギ!?》

 

オジギソウの身体が光を放ち始めた。


「……やはりな」


《ギイィィィィィィ!!!!!!!!》

 

オジギソウは今まで聞いたことのないような奇声を上げた。

そして次の瞬間。

 

ドガァァァァァァァァァ

 

オジギソウの身体がバラバラに砕け散った。

 

ドサドサドサ

 

オジギソウの身体の残骸が辺り一面に飛び散る。

 

砕け散ったオジギソウの中から電鳳がその姿を現した。

そして地面に着地。

 

電鳳、ニヤリ。

「だから言っただろ。俺は美味くないと」

 

そう言うとオジギソウの残骸を見た。 

 

「流石に甘くないか」

妖狐蔵馬はフゥ~ッと溜息をついた。

 

「今度は俺から行くぞ」

 

ズンズンズン

 

電鳳は巨体を揺らしながら走り出した。

 

バッ

 

そして高くジャンプ。

 

「電鳳は何をするつもりだ」

 

ググッ

 

クルクルクル

 

電鳳は空中で身体を丸めると凄まじい回転を始めた。


(あれはどうやら身体を丸めて体当たりしてくる技みたいだな)

 

グォォォォォォ!!!!

 

「来い」

妖狐蔵馬は回転しながら向かって来る電鳳を迎え撃つ。

 

「そんな攻撃は俺には通用しないぞ」

 

「フフフ」

電鳳の不気味な笑い。

 

バチバチバチバチ

 

回転している電鳳の身体全体に火花が走る。

 

(あれは!?)

 

ジジジジジジジジジジジジ!!!!!!!

 

電鳳の身体は凄まじいまでの雷を帯びている。

 

「あれは擦るだけでもまずい」

 

電鳳を迎え撃つ態勢で構えていた妖狐蔵馬であったが、危険を察知し直ぐにかわそうと試みる。

 

「遅いな。その白い身体を黒焦げにしてやる」

 

ジジジジジジジジジジジ!!!!!!!!!!!!!!

 

(奴のスピードが早くなった!!?)

 

電鳳が間近に迫って来ていた。

 

――選手たちの休憩所

 

「く、蔵馬ァァァ!」


桑原がスクリーンに映る蔵馬に向かって叫んだ。

 

続く

 

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幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #088「蔵馬vs電鳳(大会編)」

――魔界統一トーナメントのDブロックの二回戦・第一試合

 

蔵馬(くらま)
×
電鳳(でんぽう) 

 

――メイン会場

 

「あーっと!!Dブロックでは蔵馬選手が妖狐の姿に変わりました!!!これは非常に注目です」

 

蔵馬が試合開始早々に妖狐化した事で小兎のテンションが上がった。

 

観客席では雪菜が試合を観戦している。

「蔵馬さん、変身してしまいましたね」

 

――Dブロック

 

妖狐へと変貌を遂げた蔵馬

美しい銀髪を手で掻き上げる。

その姿は中性的で妖しい色気を醸し出していた。

 

電鳳は顎に手をやると、顔を近付けて妖狐蔵馬をまるで値踏みするように見る。

「それがお前の本当の姿か?」

 

「ああ、そうだ」

 

ブォォォォォォォォォ!!!!!

 

妖狐蔵馬は攻撃的な妖気を電鳳に向けて放出し始めた。

 

ピシピシ

 

大地に亀裂が入る。

 

電鳳、ニヤリ。

「ほ~う。気持いいぐらいの攻撃的な妖気だな。坊主(幽助)の友達だけはあるようだ」

 

「お前を相手にするのに南野秀一の肉体で挑むほど馬鹿ではない。行くぞ」


――選手たちの休憩所

 

いきなりの妖狐化に桑原が驚く。

「おおー!?蔵馬の奴、いきなり妖狐の姿になりやがった」

 

「相手が雷禅の仲間だからな、蔵馬は最初から全力で行くつもりだろう」

飛影は蔵馬が妖狐になるのを予見していたようだ。

 

幽助、ニヤリ。

「蔵馬、おめーの全力の力を見せてもらうぜ」

 

――会場近くの崖の上

 

比羅たちは巨大スクリーンに映し出されている妖狐に変化した蔵馬の姿を見ている。

 

比羅と駁が横に並んでスクリーンを見る。

「なるほど。あれが黎明を倒した蔵馬の本来の姿か」

 

「確かに凄い妖気だが、あの程度では俺の敵ではないな」

 

「駁、奴は黎明を倒した男だ。油断は決して出来ないぞ」

 

駁、ニヤリ。

「比羅、俺に油断があると思うか?」 

 

「フッ、ないな。お前はどんなに力が弱い者に対しても手を抜かない男だからな」

 

スクリーンでは蔵馬が電鳳に対して攻撃を仕掛け始めた。

 

「比羅、始まるぜ」

 

「妖狐蔵馬、黎明を倒したその実力を見せてもらうぞ」 


――Dブロック

 

カーーー!!!

 

ドン!!!!!!!!

 

地中から閃光と共に巨大なオジギソウがその姿を現した。

 

《ギイギギー!!》

 

不気味な鳴き声を発するオジギソウ。

 

(あいつの能力はどうやら植物を扱うことのようだな)

電鳳はその場から動かずに妖狐蔵馬の動きを観察している。

 

妖狐蔵馬がオジギソウに命令。

「行け」

 

電鳳への攻撃の合図。

 

《ギイギギー!!》

 

「ここは魔界だ。獰猛なお前の力を存分に発揮するがいい」

 

オジギソウが電鳳に勢いよく向かっていく。

 

「どれどれ楽しそうだな。行ってみるかな」

 

ズンズンズンっと巨体を揺らしながらオジギソウに向かっていく。

そして電鳳はオジギソウの巨大な身体をガシッと両手で掴んだ。

 

「何をするつもりだ」


《キキ》

 

オジギソウは電鳳を丸ごと呑み込もうと巨大な口を開けた。

 

電鳳、ニヤリ。

「おいおいおい。俺を呑み込んでも美味くないぞ」

 

ブォォォォォォォ!!!!


電鳳の身体から巨大な妖気が放出され始めた。

凄まじいまでの砂煙が辺り一面に吹き荒れる。

 

「なるほど?さっきのお返しとばかりの攻撃的な妖気だな」

 

ピシピシピシ

 

オジギソウを掴む電鳳の両手の筋肉が張り始めた。

 

「ウォォォォォ!!!」

 

そして腕の筋肉がボンッと急激に膨らんだ。

 

「よいしょっと」

 

グググッと両腕に力を込めた。

するとなんと自分の身体より数倍の大きさはあるオジギソウを両手で持ち上げた。

 

「何だと!?」


《ギギギ!?》

 

妖狐蔵馬もオジギソウも電鳳のパワーに驚く。

 

「ほらくれてやるぞ」

 

ビューーーン!!!!

 

オジギソウの巨体をまるでボールを投げるように軽々と妖狐・蔵馬に向けて投げつけた。

 

「これは想像以上だ。驚いたな」

 

バッ

 

空中にジャンプして投げつけてきたオジギソウをかわす。

 

ズン!!!!!

 

オジギソウの巨体は地面に叩きつけられた。

妖狐蔵馬は空中で倒れているオジギソウを見る。

 

「呆れたパワーだ」

 

電鳳はパンパンと両手を叩く。

 

「今のはほんの挨拶代わりだ」

 

地面に着地する妖狐蔵馬。

「派手な挨拶だ」

 

《ギイーーギギ!!!》

 

地面に倒れていたオジギソウは起き上がると不気味な鳴き声を上げて電鳳を見た。

強い殺気を電鳳に向けている。


「中途半端な攻撃で気の荒いオジギソウに火をつけてしまったようだな」

 

《ギイギギギ》

 

オジギソウは電鳳に攻撃を加える為に行動を起こし始めた。

妖狐蔵馬はそのオジギソウを冷静に観察。

 

「オジギソウは完全にお前を敵と見なした」

 

電鳳は手の骨をボキボキと音を鳴らし、笑みを浮かべると戦闘態勢を整え始めた。

 

「俺もぼちぼち暴れてやるか」

 

電鳳に対して敵外心を剥き出したオジギソウとその最強クラスの力を今まさに発揮しようとしている電鳳。

両者がぶつかり、これを気に激しい闘いに突入する。

 

続く

 

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幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #087「二回戦ともう一つの戦いの始まり(大会編)」

魔界統一トーナメントは一回戦の試合を全て終えて、 いよいよ二回戦に突入しようとしていた。

 

――選手たちの休憩所

 

樹里が休憩所に入ってきた。

マイクを握り締める。

「これより二回戦を行います。第一試合に出場する選手の方はそれぞれの闘場に向かってください」

 

休憩所に樹里の声が響き渡る。

これを機に二回戦が始まるということで、一回戦を勝ち抜いた選手たちの目付きが変わった。

各ブロックの二回戦・第一試合の組み合わせがスクリーンに映し出される。


【Aブロック】

乙夜(いつや)
×
時雨(しぐれ)

 

【Bブロック】

棗(なつめ)
×
曲尺(かねじゃく)

 

【Cブロック】

木阿弥(もくあみ)
×
九浄(くじょう)

 

【Dブロック】

蔵馬(くらま)
×
電鳳(でんぽう)

 

二回戦の各ブロックの第一試合には注目の選手たちが揃って登場する。 

 

第一試合に出場する蔵馬がDブロックの闘場に向かおうとしていた。

桑原が蔵馬を呼び止める

「蔵馬、おめーの相手の電鳳って奴は強いのか?」

 

「雷禅の仲間の一人ですからね。かなりの強敵ですよ」

 

「勝てるのか?」

 

「やってみないと分からないけど苦しい戦いになるのは間違いないですね」

 

「お~い、蔵馬ァァァ!!」

 

幽助も蔵馬の側にやって来る。

 

「あ、幽助。試合が終わってから姿が見えなくなっていたが、一体何処に行っていたんだ?」

 

「メイン会場に行っていたんだ」

 

「メイン会場に?」

 

「霊界との通信機を観客席にいた北神に取って来てくれって頼んで来た」

 

「そうか、北神に頼んで来たのか」

 

「ああ。あいつなら信用出来るからな」

 

――幽助の回想

 

メイン会場の観客席で試合を観戦していた北神の所に幽助は陣との試合が終わって直ぐに来ていた。

 

「というわけなんだよ」

 

幽助は魔界に来る前に人間界で起きた事情を簡単に北神に説明したのだ。

 

「分かりました。私でよければ取ってきましょう」

 

「悪いな、北神」

 

北神、ニコリ。

「かまいませんよ。大統領府ですね」

 

「大統領府には煙鬼のおっさんの部下がいるはずだ。そいつに聞いたら部屋の場所は教えてくれると思う」

 

「分かりました。では直ぐに行ってきます」

 

「ああ。悪いな。頼んだぜ」

 

こうして北神は幽助が大統領府で借りていた部屋に置き忘れてしまった霊界との通信機を取りに向かったのだった。

 

だがこの時、北神は通信機を取りに行ったことにより、まさか大きな陰謀に巻き込まれることになるとは思ってもいなかった。

 

――幽助の回想・終わり

 

「まっ、そういうわけで北神に頼んで来た」

 

「ここから大統領府までは大した距離ではないからな。北神も直ぐに戻ってくるだろう」

 

「だと思うぜ。そんな事より蔵馬は今から試合みてーだな。相手の電鳳は強いぞ」

 

「もちろん分かっている。相手が誰でも俺は俺の戦いをするだけだよ」

 

蔵馬はそういうとDブロックの闘場に向かって歩いていった。

桑原は心配そうに蔵馬の後ろ姿を見ている。

「浦飯、おめーは蔵馬の奴は勝てると思うか?」


「電鳳もかなり強いが、蔵馬も強いぜ!俺はいい勝負をするんじゃねーかなって思ってる」

 

――その頃、幽助に頼まれた霊界との通信機を取りに行った北神は、大統領府の幽助の部屋から通信機を持ち出して来た道を戻っていた。

 

丁度このタイミングで北神の姿を見つめる一人の人物がいた。

比羅の妹で十二魔将の一人、砂亜羅である。

 

(誰だか知らないが会場に向かっている)

 

会場全体を見渡す事が出来る崖の上で比羅たちは大会の様子を見守っていた。

何か動きがあれば直ぐに動く事が出来る場所である。

砂亜羅は比羅たちが誰も気付いていない中で只一人、北神の存在に気付いたのだった。

 

「暇していたところだ。丁度いい」

 

戦いを好む好戦的な砂亜羅にとって、北神は獲物みたいなものだ。

 

「砂亜羅、どうした?」

会場とは違う場所を一人で顔。見ていた砂亜羅に比羅が話しかける。

 

「兄さん。いや、ちょっと気になることがあって」

 

「気になること?」

 

「少しの間、ここを離れていいか?」

 

比羅はチラッと崖の上から下を見た。

北神が歩いている。

それを見た比羅は察した。

 

「フッ、魔界の奴らと大会で戦いたがっていたのを私が止めたからな。今度は止めても聞かないだろう。いいだろう。行ってくるがいい」

 

砂亜羅は仮面を外す。

美しい金髪が風で揺れる。

 

「ありがとう。兄さん」

 

ニコリと笑う砂亜羅の笑顔は美しかった。

 

「魔光気を使うときは、魔界の者に気付かれないように外部に漏れないように処置はしとくのだぞ。お前の力は巨大なのだからな」

 

「もちろんだ」

 

フッ

 

そう言うと砂亜羅の姿は消え去った。

 

「フッ、あいつにはやっぱり私は甘いかもしれない」

比羅は砂亜羅に甘い自分に苦笑い。


そして砂亜羅が消えた事に気付いた駁が直ぐに駆け寄る。

「おい比羅、砂亜羅の奴は何処に行ったんだ?」    

 

「さあな」

 

「さあなって、勝手な単独行動を許さないお前にしては珍しく別行動を許したな」


「あれほどの大会を近くで見ているのだ。砂亜羅のような奴はかなり血が騒ぐはずだ。大人しくここにずっとはいられないだろう。ここら辺で何か鬱憤を発散させてやろうって思ってな」

 

駁、ニヤリ。

「双子の妹にはやはり甘いな」

 

「やっぱりお前から見てもそうか?」

 

「間違いなく甘い。まあ、お前の唯一の肉親だから、気持ちは分かるがな。ま、別にいいさ」


「さあ、二回戦が始まるぞ」

比羅は駁に笑いかけると崖の上から見える会場の巨大スクリーンに目を映した。


――Dブロック

 

Dブロックの闘場では蔵馬と電鳳が対峙していた。

蔵馬は目の前に立つ電鳳から強烈な圧力(プレッシャー)を感じている。

 

(生半可な技が通じる相手ではないな)

 

A~Cブロックの闘場でも時雨、棗、九浄たちも試合開始の合図を待っていた。


各ブロックの上空にいる審判たちが選手たちの様子を見つていた。

 

――メイン会場

 

二回戦も小兎が実況を担当。

「それではこれより二回戦の各ブロックの第一試合を始めます」

 

「前の大会でベスト4まで残った九浄が出てきたな」


「前回は躯に負けたがとんでもない強さだった棗もいるぞ」

 

「AブロックとCブロックには躯の直属の戦士の時雨と木阿弥がいる」

 

「Dブロックは元黄泉の国のNo.2だった蔵馬に化物のような強さの電鳳の対戦だ!こいつは見物だぜ」 

 

大会も二回戦になり本選に残った選手の数が半分になると観客たちの間では、各選手たちへの注目の目が一層強くなっていた。

次の王が一体誰になるのか?

観客たちは期待と不安の目で大会を見ていた。

 

「始め!!」

 

A~Dブロックのそれぞれの審判が同時に試合開始の合図。

 

時雨、棗、九浄は試合開始の合図と共にそれぞれの対戦相手と戦い始めた。

 

――Dブロック

 

Dブロックにも試合開始の声が響き渡った。

ここで電鳳が口を開いた。

 

「お、試合が始まったみたいだぞ。お前は雷禅の息子の友達なんだってな。あいつの友達でも手加減はしないぞ」

 

「ああ、手加減は結構だ。俺は全力でお前を倒すからな」

 

蔵馬は電鳳の巨体を見つめながら真剣な顔で答える。

 

「言っておくが俺は強いぞ」

 

「抑えていても溢れでてくる巨大なその妖気でお前の強さは嫌というぐらい分かるさ」

 

グッ

 

ブォォォォォォォ!!!

 

蔵馬はそう言うと妖気を全身に集中し始めた。

 

「妖気を溜め始めたな。何をするつもりだ?」

 

電鳳が様子を見るうちに蔵馬の姿が徐々に変わっていく。

そして蔵馬は白魔装束を纏った銀髪の美しい妖狐の姿に変貌を遂げた。

 

「待たせたな。南野秀一の肉体では荷が重いのでな。最初から出し惜しみはしない。貴様は倒すぞ」

 

電鳳、ニコリ。

「ほうほう。いきなり妖気が爆発的に上がったな。これは少しは楽しめそうだ」

 

 

――会場に続く道

 

(もうすぐ会場につくな)

 

北神の手には幽助に渡す通信機があった。

そして北神はあまり人目のつかない場所に入り込んだ。

 

(うん?前から誰か歩いてくる)

 

鋼鉄の鎧を身に纏い、仮面で顔を隠したいかにも怪しい風貌。

砂亜羅である。

 

(あれは明らかにただの通りすがりではないな)

 

北神は足を止めた。

砂亜羅が近づいて来れば来るほど北神の額から汗が滴り落ちる。

 

(な、何だ!?あいつから感じる圧力(プレッシャー)は!!?)

 

北神の前まで来ると砂亜羅も足を止めた。

そして無言で腰に装着している剣に手をかけると、一気に抜き放つ。

 

スッ

 

剣先を北神に向けた。

 

(一体何者なのだ。あいつから感じる気は幽助さんの魔光気とよく似ている)


大会と場所を変え、もう一つの戦いが始まろうとしていた。

 

続く

 

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