nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #092「蔵馬vs電鳳戦の結末」

――魔界統一トーナメントのDブロックの二回戦・第一試合

 

蔵馬(くらま)
×
電鳳(でんぽう) 

 

――Dブロック

 

妖狐蔵馬の身体から毒死草がその姿を現した。

 

「行くぞ」

 

毒死草の中心部には目玉のようなものが見える。

そしてその少し下には口らしきものがあった。

 

《グワァ》

 

毒死草は奇声を上げて口を大きく開けた。

 

ズォォォォォ!!

 

凄まじいまでの強烈な霧のブレス吐き出した。

霧は一瞬で妖狐蔵馬と電鳳の姿を隠すように包み込む。

 

――選手たちの休憩所

 

スクリーンに映し出されている毒死草を飛影が見ている。

(蔵馬はやはり自分の身体に取り込み、毒死草に妖気を通したか)

 

幽助が興味深そうにスクリーンに映る霧を観ている。

「スゲー霧だな。だけどよ蔵馬はいつの間に体内に入れたんだ?」

 

「分からないのか?さっきの黒い煙を出した時に決まっているだろう」 

 

「あ、あの時か!」

 

「毒死草は妖気を通してから使えるまでに時間がかかる。普通に妖気を通したくても、電鳳に邪魔をされて出来ないだろうからな」

 

「蔵馬はあんな植物を身体に入れて大丈夫なのか?」

 

「大丈夫なわけがないだろう。かなり苦しい筈だ。それに本当に恐ろしいのは…」

 

「何だ?」

 

「毒死草の効果だ」

 

飛影は再び相樂を倒した時の事を思い出した。

 

――飛影の回想

 

相樂の前に毒死草が姿を現した。

 

相楽が毒死草を見上げる。

「何だ?この植物は!?」 

 

そして蔵馬が相楽を攻撃するように毒死草に指示。

「行け」

 

《グワァ!!》

 

主の命令を受けた毒死草が奇声を上げた。

 

ズォォォォォォ

 

毒死草は霧のブレスを吐き出した。

霧のブレスは蔵馬と相樂を包み込む。

 

「これは霧か!?」

相楽は一瞬で辺り一面が霧に包み込まれた事に驚く。

 

ドクン

 

そして急に相楽の心臓が激しく波打つ。

「うがが……」

 

身体から急に力が失われていく。

 

ググ……

 

「どういう事だ!?力が急に抜けたと思ったら今度は身体が動かん!」

 

「この毒死草が吐き出した霧は毒が含まれている。この霧に触れた者は一時的だが、身体の動きを封じると同時に妖力を数段階は落とす事が出来る」

 

ガクッ

 

そう言うと蔵馬も相樂と同じ様に膝を地面につく。

 

「それは同じ霧の中にいる俺も同じ事だがな……」

 

「一体、あの霧の中で何が行われているのだ?」

 

霧の外にいる飛影には中で何が行われているのか分からなかった。

だがその時、霧の外にいる飛影に向かって蔵馬は大きな声で叫んだ。

 

「飛影!この霧は一時的なものだ。霧が晴れたら、お前は直ぐに相樂を攻撃するんだ!!」

 

「何を訳の分からない事を。何なら今からでも奴を攻撃してやるぞ」

 

飛影はいつでも霧の中に飛び込む構えだ。

 

「よせっ!今は黙って俺の言う通りにしてくれ」


「クソーッ!身体がほとんど動かす事が出来ん!」

相樂は身体を動かそうとするが毒により身体の自由を奪われていた。

暫くすると毒死草が吐き出した霧が晴れていく。

霧が晴れると、そこには毒で身動きが取れなくなった相楽の姿があった。

 

カチャッ

 

飛影は剣を構えた

「なるほど。さっきの霧に身体を動けなくする力があったようだな」 

 

「今だ飛影!!」

 

蔵馬の声に反応して飛影の身体が動く。

「ハァーー!!!!」


ズキューン!!

 

飛影は素早く動いて、動けなくなった相樂に向かっていく。

 

飛影の接近に相楽が気付く。

(なっ!?)

 

「死ね」

 

シャキーン!!!シャキーン!!!シャキーン!!!


「ギャァァァァ!!!」

 

動けない相樂を飛影の剣が容赦なく切り刻む。

 

ドシャッ

 

相樂は全身を十数ケ所も飛影に斬られて息絶えていた。

 

「手間をかけさせやがって」

 

カチャッ

 

剣を鞘に納めると、飛影は毒死草の効果で動けなくなった蔵馬の所へむかう。

 

飛影の顔を見ると蔵馬はニコリ。

「やったな飛影」

 

「お前も動けなくなっているようだな。どういう事か詳しく話せ」

 

「ああ」

 

蔵馬は毒死草の事を飛影に詳しく説明した。

 

「そういう事か。しかし、お前がその様では俺がいなければ奴を倒せなかったぞ」

 

「まあね。本来ならこれ用に毒消し草を調合しているんだが、相樂がここまで強いとは思わなかったから持ち合わせていなかったんだ」

 

「あの時、俺がお前の静止を聞かなければどうしていた?」

 

「その時は動けるようになって、相樂と戦いながら考えるよ」

 

蔵馬は少しおどけて笑う。

 

「チッ」

(顔は笑っているが、こいつの目は俺が計算通りに動くことを確信していたっていっているようなものだ)

 

「ところで、飛影はどうしてここに?」

 

「お前には関係ない」


「フッ、俺が以前、お前を助けた時に口走っていた、雪菜って子が関係しているんじゃあないのか?」

 

(チッ……)

 

「まあいいさ。飛影はこれからどうするんだ?」


「さあな。俺はそろそろ行く」

 

「そうか。飛影、お前とはまた会うような気がする」

 

「俺はごめんだ」

 

蔵馬、ニコリ。

「フッ」

 

飛影は蔵馬を一瞥すると走り去っていった。

そして走りながら飛影は蔵馬の事を考えていた。

 

(蔵馬か……敵に回したくない野郎だぜ)

 

この約八ケ月後、蔵馬と飛影は手を組み、剛鬼と共に霊界の秘宝を盗む事になる。

 

――飛影の回想・終了

 

(あの一件から俺は蔵馬を敵に回すのをやめた)

 

飛影はスクリーンに目を移す。

スクリーンに移るDブロックは大きな霧に包まれている。

 

「これでこの戦いはもうすぐ決着がつく」

 

――Dブロック

 

「凄い霧だ」

辺りをキョロキョロと見回す電鳳。

 

「これでお前を倒す」

 

「何をバカな事を言っている。たかがこんな霧で俺を倒せるわけがないぞ?」

不思議そうな顔をする電鳳。

 

ドクン

 

(何だ!?)

 

その時、電鳳の身体に異変が起こる。

 

ガクッ

 

電鳳は膝を地面につく。

 

妖狐蔵馬ニコリ。

「どうやら効いてきたようだな」

 

そう言うと口に小さな草を含んだ。

 

(何を口に入れたんだ?)

 

口に妖狐蔵馬が何かを入れたのを電鳳は見逃さなかった。

 

「お、お前は何をしたんだ?急に力が抜けていく…」

 

「これは毒死草だ。妖気を通す者の妖力の大きさに比例して、より強力な毒となる霧を吐き出す植物だ」

 

「毒だと…!」

 

「妖力に大きな差があるお前を倒すには、この毒死草しかなかった。この霧は触れている者の身体の自由を奪う。そして数段階は妖力が落ちる」

 

 「お前もこの霧に触れているのに平気なのは何故だ?」

 

「俺が何の準備もなくこの植物を使うと思うか?毒消し草は準備してあるさ」

 

電鳳の脳裏に先程、小さな草を口に含んだ妖狐蔵馬の姿が浮かんだ。

(さっき飲み込んだのがそうか!!)

 

妖狐蔵馬は少しずつ電鳳に近付く。

 

「少し卑怯かもしれないが、毒の効果で妖力の落ちた今のお前なら倒せる」

 

電鳳、ニヤリ。

「なるほど、こんな切り札があるとはやられたぞ。お前の能力だ。これは卑怯ではない。しかし流石はあの坊主の友達だよ。見事だ。さあ、勝負のケリをつけろ」

 

妖狐蔵馬は頷く。

「今まで俺が戦った相手で一番お前が強かったよ」

 

妖狐蔵馬の右手に植物が巻き付く。

 

「ハァァァァ!!!樹霊妖斬拳!!」

 

ビューン!!!

 

樹霊妖斬拳を電鳳に向かって放つ。

 

ドゴォォォォォ!!!!

 

拳が電鳳の腹部に深くめり込んだ。

 

「ガハァァァ!!!」

 

電鳳が口から血を吐く

 

ドスン!!!

 

そして仰向けにその場に倒れた。

 

「本当に強かった。流石に正攻法で勝てる相手ではなかった」

 

倒れた電鳳を見つめる。

電鳳は完全に気絶していた。

 

「終わったみたい……」

 

隠れて試合の様子を見ていた審判が倒れた電鳳の様子を伺う。

 

「気絶している……。Dブロックの二回戦の第一試合は蔵馬選手の勝利です!!」

 

審判は妖狐蔵馬の勝利を宣言した。

 

ドスン

 

妖狐蔵馬はその場に崩れ落ちる様に座り込んだ。

 

シュゥゥゥゥ

 

そして妖狐蔵馬の姿が南野秀一の姿に変化していく。

 

「フゥ~、なんとか勝てたか」

 

自分の身体から出ている毒死草を見る。

 

蔵馬、ニコリ。

(またやってしまったな。やれやれ、身体で育てた毒死草を枯らすのが大変だな)

 

蔵馬は苦笑いを浮かべると身体で育てた毒死草を妖力で枯らしたのだった。

 

審判は倒れている電鳳を見ていた。

(私を助けた時、かっこよかったな。目が覚めたら声をかけてみようっと)

 

――選手たちの休憩所

 

黄泉と修羅は蔵馬の試合の一部始終を観ていた。

「パパ、蔵馬が勝ったよ」

 

「ああ」

(見事だったぞ蔵馬)

 

――選手たちの休憩所に続く階段

 

試合を終えた蔵馬は休憩所に続く階段を下りていた。

足がふらつき、壁に手をついた。

 

(思ったよりダメージが大きい。瑠架に治療してもらわないと。俺の薬草だけでは回復がきついな」

 

ブォォォォォ!!!

 

(何だこの妖気は!)

 

強力な妖気が階段の下から段々近づいて来るのを蔵馬は感じた。

そして蔵馬の目の前に現れたのは、Dブロックの第二試合に出場する為に闘場に向かう梟であった。

 

(こいつは梟か。鴉にやはり似ている)

 

梟も蔵馬の存在に気付く。

そして蔵馬と梟の目が合った。

 

(………)

 

一瞬、彼等の間に緊張が走った。

 

スッ

 

だが、梟は何も言わずに蔵馬の横を通り過ぎた。

 

「待て」

 

梟を呼び止める。

 

「何だ?」

 

梟は蔵馬の方を振り向かずに足を止めた。

 

「梟、お前はあの鴉なのか?」

 

蔵馬の問いかけに梟は表情を変えることなく答える。


「それはお前の目で確かめたらどうだ?」

 

「……そうさせてもらう」

 

ビューーー!!

 

蔵馬は振り向くと同時に、胸から薔薇を取り出すと鞭化して梟を攻撃。

 

フッ

 

梟の姿が消え去る。

 

(消えた!?)

 

その時、蔵馬は背後に気配を感じた。

 

「クールな顔をして抗戦的だ」

 

梟の声が背後から聞こえてきた。

そしてそれと同時に髪の毛に違和感を感じる。

何故なら梟が蔵馬の長い髪の毛を優しく触っていたからだ。

 

「綺麗な髪だ。髪の毛が手入れされている。トリートメントもちゃんと使っているようだ」

 

「貴様ー!」

 

蔵馬が直ぐに梟に攻撃を加えようと振り向くと梟の姿は既に消えていた。

蔵馬の額から冷や汗が落ちる。

 

「忘れるわけがない。今の感覚は間違いなくあの時の鴉と一緒だった」

 

鈴木が闘場に向かう為に階段を上ってきた。

 

「お疲れ蔵馬。かなり苦しい戦いだったな」

 

「ああ」

鈴木は蔵馬の身体の状態を見て驚く。

 

「かなり酷い怪我をしているじゃないか!直ぐに治療をした方がいい」

 

「ああ、そのつもりだ」

鈴木は直ぐに蔵馬の様子がいつもと違う事に気付いた。

 

「その顔は怪我の痛みではないな?何かあったのか?」

 

「何でもない。大丈夫だ」

 

「それならいいが、俺は今から試合だ。これに勝てば三回戦の相手はお前になる。三回戦で当たったら宜しく頼むぜ」

 

「ああ」

(あいつの相手は鈴木なのか…)

 

「俺はそろそろ行くぜ」

 

「鈴木、相手はかなり強いぞ。油断するな」

真剣な顔で鈴木に話す。

 

鈴木はあまりの蔵馬の真剣な顔に一瞬、驚いたが笑顔で答える。

 

「ああ、大丈夫だ。蔵馬も早く治療しろよ」

鈴木はそう言うと階段を上って行った。 

鈴木の後ろ姿を見ながら蔵馬は恐ろしい事を口走る。

 

「…あいつの妖力は今の鈴木よりも上だ」

 

――Aブロック

 

闘場に到着した桑原と武威が対峙していた。

お互いの顔を見つめる。

両者の間で緊張が走る。 

 

桑原が武威を指差した。

「武威、てめえには負けねーぞ!月畑の仇を取らせてもらうぜ」

 

「安心しろ。お前も同じ場所に直ぐに連れて行ってやる」

 

Aブロックではいよいよ桑原と武威の戦いが始まろうとしていた。

これが激しい死闘になるとは、この時はまだ誰も思っていなかった。

 

続く

 

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