幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #087「二回戦ともう一つの戦いの始まり(大会編)」
魔界統一トーナメントは一回戦の試合を全て終えて、 いよいよ二回戦に突入しようとしていた。
――選手たちの休憩所
樹里が休憩所に入ってきた。
マイクを握り締める。
「これより二回戦を行います。第一試合に出場する選手の方はそれぞれの闘場に向かってください」
休憩所に樹里の声が響き渡る。
これを機に二回戦が始まるということで、一回戦を勝ち抜いた選手たちの目付きが変わった。
各ブロックの二回戦・第一試合の組み合わせがスクリーンに映し出される。
【Aブロック】
乙夜(いつや)
×
時雨(しぐれ)
【Bブロック】
棗(なつめ)
×
曲尺(かねじゃく)
【Cブロック】
木阿弥(もくあみ)
×
九浄(くじょう)
【Dブロック】
蔵馬(くらま)
×
電鳳(でんぽう)
二回戦の各ブロックの第一試合には注目の選手たちが揃って登場する。
第一試合に出場する蔵馬がDブロックの闘場に向かおうとしていた。
桑原が蔵馬を呼び止める。
「蔵馬、おめーの相手の電鳳って奴は強いのか?」
「雷禅の仲間の一人ですからね。かなりの強敵ですよ」
「勝てるのか?」
「やってみないと分からないけど苦しい戦いになるのは間違いないですね」
「お~い、蔵馬ァァァ!!」
幽助も蔵馬の側にやって来る。
「あ、幽助。試合が終わってから姿が見えなくなっていたが、一体何処に行っていたんだ?」
「メイン会場に行っていたんだ」
「メイン会場に?」
「霊界との通信機を観客席にいた北神に取って来てくれって頼んで来た」
「そうか、北神に頼んで来たのか」
「ああ。あいつなら信用出来るからな」
――幽助の回想
メイン会場の観客席で試合を観戦していた北神の所に幽助は陣との試合が終わって直ぐに来ていた。
「というわけなんだよ」
幽助は魔界に来る前に人間界で起きた事情を簡単に北神に説明したのだ。
「分かりました。私でよければ取ってきましょう」
「悪いな、北神」
北神、ニコリ。
「かまいませんよ。大統領府ですね」
「大統領府には煙鬼のおっさんの部下がいるはずだ。そいつに聞いたら部屋の場所は教えてくれると思う」
「分かりました。では直ぐに行ってきます」
「ああ。悪いな。頼んだぜ」
こうして北神は幽助が大統領府で借りていた部屋に置き忘れてしまった霊界との通信機を取りに向かったのだった。
だがこの時、北神は通信機を取りに行ったことにより、まさか大きな陰謀に巻き込まれることになるとは思ってもいなかった。
――幽助の回想・終わり
「まっ、そういうわけで北神に頼んで来た」
「ここから大統領府までは大した距離ではないからな。北神も直ぐに戻ってくるだろう」
「だと思うぜ。そんな事より蔵馬は今から試合みてーだな。相手の電鳳は強いぞ」
「もちろん分かっている。相手が誰でも俺は俺の戦いをするだけだよ」
蔵馬はそういうとDブロックの闘場に向かって歩いていった。
桑原は心配そうに蔵馬の後ろ姿を見ている。
「浦飯、おめーは蔵馬の奴は勝てると思うか?」
「電鳳もかなり強いが、蔵馬も強いぜ!俺はいい勝負をするんじゃねーかなって思ってる」
――その頃、幽助に頼まれた霊界との通信機を取りに行った北神は、大統領府の幽助の部屋から通信機を持ち出して来た道を戻っていた。
丁度このタイミングで北神の姿を見つめる一人の人物がいた。
比羅の妹で十二魔将の一人、砂亜羅である。
(誰だか知らないが会場に向かっている)
会場全体を見渡す事が出来る崖の上で比羅たちは大会の様子を見守っていた。
何か動きがあれば直ぐに動く事が出来る場所である。
砂亜羅は比羅たちが誰も気付いていない中で只一人、北神の存在に気付いたのだった。
「暇していたところだ。丁度いい」
戦いを好む好戦的な砂亜羅にとって、北神は獲物みたいなものだ。
「砂亜羅、どうした?」
会場とは違う場所を一人で顔。見ていた砂亜羅に比羅が話しかける。
「兄さん。いや、ちょっと気になることがあって」
「気になること?」
「少しの間、ここを離れていいか?」
比羅はチラッと崖の上から下を見た。
北神が歩いている。
それを見た比羅は察した。
「フッ、魔界の奴らと大会で戦いたがっていたのを私が止めたからな。今度は止めても聞かないだろう。いいだろう。行ってくるがいい」
砂亜羅は仮面を外す。
美しい金髪が風で揺れる。
「ありがとう。兄さん」
ニコリと笑う砂亜羅の笑顔は美しかった。
「魔光気を使うときは、魔界の者に気付かれないように外部に漏れないように処置はしとくのだぞ。お前の力は巨大なのだからな」
「もちろんだ」
フッ
そう言うと砂亜羅の姿は消え去った。
「フッ、あいつにはやっぱり私は甘いかもしれない」
比羅は砂亜羅に甘い自分に苦笑い。
そして砂亜羅が消えた事に気付いた駁が直ぐに駆け寄る。
「おい比羅、砂亜羅の奴は何処に行ったんだ?」
「さあな」
「さあなって、勝手な単独行動を許さないお前にしては珍しく別行動を許したな」
「あれほどの大会を近くで見ているのだ。砂亜羅のような奴はかなり血が騒ぐはずだ。大人しくここにずっとはいられないだろう。ここら辺で何か鬱憤を発散させてやろうって思ってな」
駁、ニヤリ。
「双子の妹にはやはり甘いな」
「やっぱりお前から見てもそうか?」
「間違いなく甘い。まあ、お前の唯一の肉親だから、気持ちは分かるがな。ま、別にいいさ」
「さあ、二回戦が始まるぞ」
比羅は駁に笑いかけると崖の上から見える会場の巨大スクリーンに目を映した。
――Dブロック
Dブロックの闘場では蔵馬と電鳳が対峙していた。
蔵馬は目の前に立つ電鳳から強烈な圧力(プレッシャー)を感じている。
(生半可な技が通じる相手ではないな)
A~Cブロックの闘場でも時雨、棗、九浄たちも試合開始の合図を待っていた。
各ブロックの上空にいる審判たちが選手たちの様子を見つていた。
――メイン会場
二回戦も小兎が実況を担当。
「それではこれより二回戦の各ブロックの第一試合を始めます」
「前の大会でベスト4まで残った九浄が出てきたな」
「前回は躯に負けたがとんでもない強さだった棗もいるぞ」
「AブロックとCブロックには躯の直属の戦士の時雨と木阿弥がいる」
「Dブロックは元黄泉の国のNo.2だった蔵馬に化物のような強さの電鳳の対戦だ!こいつは見物だぜ」
大会も二回戦になり本選に残った選手の数が半分になると観客たちの間では、各選手たちへの注目の目が一層強くなっていた。
次の王が一体誰になるのか?
観客たちは期待と不安の目で大会を見ていた。
「始め!!」
A~Dブロックのそれぞれの審判が同時に試合開始の合図。
時雨、棗、九浄は試合開始の合図と共にそれぞれの対戦相手と戦い始めた。
――Dブロック
Dブロックにも試合開始の声が響き渡った。
ここで電鳳が口を開いた。
「お、試合が始まったみたいだぞ。お前は雷禅の息子の友達なんだってな。あいつの友達でも手加減はしないぞ」
「ああ、手加減は結構だ。俺は全力でお前を倒すからな」
蔵馬は電鳳の巨体を見つめながら真剣な顔で答える。
「言っておくが俺は強いぞ」
「抑えていても溢れでてくる巨大なその妖気でお前の強さは嫌というぐらい分かるさ」
グッ
ブォォォォォォォ!!!
蔵馬はそう言うと妖気を全身に集中し始めた。
「妖気を溜め始めたな。何をするつもりだ?」
電鳳が様子を見るうちに蔵馬の姿が徐々に変わっていく。
そして蔵馬は白魔装束を纏った銀髪の美しい妖狐の姿に変貌を遂げた。
「待たせたな。南野秀一の肉体では荷が重いのでな。最初から出し惜しみはしない。貴様は倒すぞ」
電鳳、ニコリ。
「ほうほう。いきなり妖気が爆発的に上がったな。これは少しは楽しめそうだ」
――会場に続く道
(もうすぐ会場につくな)
北神の手には幽助に渡す通信機があった。
そして北神はあまり人目のつかない場所に入り込んだ。
(うん?前から誰か歩いてくる)
鋼鉄の鎧を身に纏い、仮面で顔を隠したいかにも怪しい風貌。
砂亜羅である。
(あれは明らかにただの通りすがりではないな)
北神は足を止めた。
砂亜羅が近づいて来れば来るほど北神の額から汗が滴り落ちる。
(な、何だ!?あいつから感じる圧力(プレッシャー)は!!?)
北神の前まで来ると砂亜羅も足を止めた。
そして無言で腰に装着している剣に手をかけると、一気に抜き放つ。
スッ
剣先を北神に向けた。
(一体何者なのだ。あいつから感じる気は幽助さんの魔光気とよく似ている)
大会と場所を変え、もう一つの戦いが始まろうとしていた。
続く