nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #002「躯との手合わせ(序章)」

――躯の居城

 

躯「それで、俺に何の用だ?」

 

飛影がここに何をしにきたのか、躯にはわかっていたが、わざと悪戯っぽく聞いた。


飛影「俺が答えなくても、ここに何をしにきたのか、

お前が一番よく知っているだろう」

 

無表情で答える飛影。

 

躯「フフ、パトロールが余程つまらないようだな」

 

ゆっくりと立ち上がる躯。


飛影「ああ。俺が次の大会で優勝したら、こんなくだらないもの、真っ先に潰してやる」

 

躯「パトロールはお前には退屈かもしれんが、俺は結構気にいっているんだがな」


飛影「何が楽しいのか、お前の気が知れないぜ」

 

二人は他愛のない会話をしながら、躯の居城内にある訓練場に向かっていた。

 

飛影がここに来た目的…それは躯との手合わせである。

 

――躯の居城・訓練所

 

ここは、躯が自分自身や配下の修行用に、魔界統一トーナメント後に作った部屋である。

 

天井が非常に高く、四方全てを壁に囲まれた訓練所は、どんなに巨大な妖気を放出しても、耐えることの出来る魔界の特別な素材で作られていた。 

 

訓練所の中央まで来ると、飛影は身につけていたマントを脱ぎ捨てて、上半身裸になった。
その首には二つの氷泪石がかかり、美しい輝きを放っていた。 

 

そして脱ぎ捨てたマントの横に、首にかけていた氷泪石を外して置く。

 

躯(フッ、相変わらずだな。あの氷泪石を大切にしている) 

 

飛影「行くぞ」

 

準備が出来た飛影は直ぐに戦闘モードにシフト。

 

躯「相変わらずせっかちな奴だ。まあいいさ。

俺はいつでもいいぞ」

 

飛影「ハァァァァ!!!」


ブォォォォォォ!!!!

 

飛影は、巨大な妖気を放出し、部屋内を妖気があっという間に充満する。

 

躯(流石は飛影だな。前に手合わせした時より、妖力が数段上がっている)

 

ボォォォォォォ!!!

 

飛影の両手には、魔界の炎が燃えている。

 

ズキューーン!!!!

 

飛影は地面を蹴ると、一瞬で躯に近付いた。

 

飛影「邪王炎殺煉獄焦」

 

ズガガガガガガ!!!

 

躯の腹部を狙って激しく連打。

 

躯「大したものだ。妖力、スピード、パワー、どれをとっても、前に比べて随分と上がっているではないか」


躯は煉獄焦を両腕で難なく防御。

 

飛影「当然だ」

 

ガガガガガ!!

 

連続で、数十発におよぶ煉獄焦を躯に放ち続けている。だが、躯の鉄壁の防御の前に、その攻撃は完全に防がれていた。

 

躯「単調な攻撃だけでは、俺に決定的なダメージを与える事は出来ないぞ」

 

飛影(………)

 

飛影は躯の言葉に返事を返す事もなく、ただ無言で躯の腹部に煉獄焦を叩き込んでいた。

 

躯(まてよ。飛影にしては珍しく単調な攻撃だけを繰り返している。何か狙いでもあるのか?)

 

躯がそんな疑問を頭に浮かべたその時、飛影は次の行動を起こした。

 

飛影「くらえーー!!!」


飛影の両足にいつの間にか魔界の炎が燃えていた。

 

ボォォォォォォ!!!

 

躯「これは!?」

 

飛影「見せてやる。俺の邪王炎殺煉獄脚をな」

 

躯(いつの間にか飛影の足に炎が燃えている。煉獄焦で単調な攻撃を繰り返していたのは、足に魔界の炎を呼び出すまでの時間稼ぎか)


ドガッ!!!

 

躯の肩に煉獄脚がヒット。


躯は肩に激しい衝撃を受けて後ずさる。

 

躯、ニヤリ。

 

躯「中々の威力だ」

 

飛影「お前、今のはわざと受けたな」

 

躯「お前の煉獄脚とやらが、どれほどの威力があるのか、少し興味があったからな」

 

飛影「チッ、舐めやがって」

 

両手両足に燃えていた魔界の炎を消しさると、次の攻撃の為、躯に向かって駆け出した。

 

そして躯に接近する直前で右手を横に伸ばす。

 

ジジジ・・・

 

ボォォォォォォ!!!

 

右手に炎の剣を作り出す。

 

飛影「邪王炎殺剣」

 

ビューーン!!!

 

振り下ろされる炎殺剣。

 

躯(…………)

 

フッ

 

空を切る炎殺剣。

 


躯の姿が飛影の前から消えた。

 

飛影は直ぐに天井を見上げる。

 

「上か!」

 


すると躯が飛影の頭上にその姿を現した。

 

躯「正解だ」

 

ビュッ!!!

 

鋭い蹴りを飛影の顔面に向けて放った。

 

その蹴りのスピードは飛影の予想を上回る速さであった。その為、防御が間に合わない。

 

バキッ!!

 

飛影の顔面にヒット。

 

飛影「ぐっ・・・!!」

 

ドガァァァァァァァァ!!!!!

 

飛影の身体は壁に思いっきり叩きつけられ、

地面に倒れる飛影。

 

そして起き上がる気配がない。

 

躯「オイ、遊んでいないでさっさと起きたらどうだ。それでお前が終わるわけないだろ」

 

飛影「フン」

 

何事もなかったかのように立ち上がる。

 

飛影「強烈な一撃だ。結構利いたぜ。そろそろ身体が温まってきた。本気で行くぞ」

 

シュルシュルシュル

 

飛影は右腕に巻いている包帯を外し始めた。

 

躯「黒龍波か。フフ、たかが暇潰しの手合わせなのに、お前は手を抜かないな」 


飛影「お前ほどの化物が相手だと、手合わせでも手を抜くことなど出来ないぜ。躯、お前も本気を出せ」

 

躯「まあ、大会前の調整に調度いいかもな」

 

グッと両手の拳を握り締める。

 

躯「ハァァ!!」

 

ブォォォォォォ!!!

 

躯は抑えていた妖気を一気に解放した。

 

これまで躯の戦闘力は、彼女の精神状態により大きく左右されていた。三年前に開かれた魔界統一トーナメントでは、終始大会が和やかだった為に、優勝候補の最有力と言われながらも、その実力の半分程度しか発揮出来ずに、準々決勝で煙鬼に敗れ去っていた。

 

飛影は大会の後、躯の精神状態を大きく左右する要因となっていた躯の父、奴隷商人痴皇の呪縛から躯を解き放った。

 

心の闇から解放された躯はその後、精神状態に左右される事もなく安定した力をつね発揮出来るようになったのである。

 

それは同時に最強の妖怪・躯を誕生させたといって過言ではない。

 

飛影「ハァァ!!」

 

ドゥォォォォォォ!!!

 

飛影は黒龍波を上に向かって放つ。

 

そして黒龍は術者である飛影に向かって来る。

 

カーー

 

ズンン

 

黒龍を体内に取り込むことで攻撃力、防御力、妖力を急激に上昇させた。

 

飛影、ニヤリ。

 

「行くぜ!」

 

躯「ああ」

 

ズキューン

 

飛影・躯「ハァァ!!!」


ドガッ!!

 

二人は同時に動き、激しい肉弾戦を始めた。

 

――躯の居城の入口

 

一匹の半魚人風の姿をした妖怪が躯の居城を訪れていた。

 

彼は慌てているのか、少し息を切らしている。

 

「月畑(つきはた)、慌ててどうした?」

 

居城の入口にいた見張りの妖怪が声をかける。

 

月畑「ちょっとパトロール中にトラブルがあってな。

報告と協力の要請に来た」


「躯様なら、今は訓練所におられるぞ」

 

月畑「そうか。それなら、他に幹部の方は誰かいるか?」

 

見張り番「えーと、今なら・・・」

 

「どうした?何事だ」

 

見張りの妖怪が答えようとしたその時、その背後から、1匹の妖怪が姿を現した。

 

月畑「あ、貴方は!」

 

――躯の居城の訓練所

 

飛影「ウォォォォォ!!!」

 

ドガッ!!!

 

躯「ハァァァ!!!」

 

バキィィィ!!

 

二人とも、防御をする事を忘れて、がむしゃらに攻撃をし続ける。

 

二人のバトルは長時間に及んでいた。

 

飛影が持ち前のスピードをフルに活用し、激しい攻撃を仕掛けることで、序盤は躯と互角に渡り合うが、圧倒的な強さを持つ躯は、徐々にその力を発揮していった。

そのため、飛影は圧倒されはじめていた。

 

飛影「チッ」

 

だが実力の差以上に深刻なのは疲労である。
黒龍波を使っている飛影は妖力の消耗が激しく、疲労が身体に蓄積されていた。

 

躯「ハッ!」

 

ピカーっと躯の目が光る。

 

飛影「ぐっ!!」

 

バチバチバチっと、飛影は身体に電流が一瞬流れたような感覚を受けた。


グググ・・・

 

身体が殆ど動かない。

 

飛影(超能力か・・・)

 

気付いた時には、既に遅く、動きを躯に封じられてしまっていた。

 

躯は軽く手を上げると飛影の身体が宙に浮き始める。

 

躯、ニヤリ。

 

「そういえば俺がこの技をお前に使うのは初めてだったな」

 

飛影(こんな技を持っていやがるとは……)

 

躯「さっきはお前の新しい技の煉獄脚を見せてもらったからな。お返しに今度は俺の技を見せてやろう」


躯はそう言うと飛影の身体を操りはじめた。

 

スッ

 

壁の方に目を向ける躯。

 

ビューーー!!!

 

躯に操られた飛影の身体が壁の方に向かって飛んでいく。

 

ドガーン!!!!!

 

壁に思いっきり身体をぶつけられる飛影。

 

躯は今度は天井に向けて飛影の身体を操る。

 

ドゴォォォォ!!!

 

飛影「くそっ!」

 

ズガァァァァァ

 

バゴォォォォォ

 

躯に操られた飛影の身体は、何度も何度も壁に叩きつけられ続けた。

 

躯「どうした飛影。もう終わりか?その程度では今度の大会で、到底優勝は出来ないぞ」


飛影「チッ、俺を甘く見るな」

 

グググ・・・

 

飛影は躯の超能力による金縛りを解こうとする。

 

躯「無駄だ飛影!そう簡単には解けないぞ」

 

飛影「ウォォォォォ!!!!!!」

 

ブォォォォォォォ!!!

 

飛影の凄まじいまでの妖気が訓練所内を漂う。 

 

グググ

 

徐々に飛影の身体が動き始める。

 

躯「何!?」

 

飛影「ハァッ!」

 

カーーっと大きな光が飛影の身体を包む。

 

自力で躯の超能力による金縛りを解いたのだ。

 

飛影「行くぞ」

 

素早く動き、壁に足をつけると、その反動で躯に向かっていく。

 

ズキューーーン!!!!

 


飛影「躯ォォォォォ!!!」

 

躯「俺の金縛りを解くとは大した奴だ」

 

ズキューーン!!!!

 

躯も飛影に向かって駆け出す。

 

ガン!!!

 

二人の拳と拳がぶつかる。

 

ぶつかった二人は一時的に静止した状態となり、

広い訓練所内は静まる。

 

そして躯が口を開く。

 

躯「中々、楽しめたぞ。今日はこれぐらいにしておくか。続きは大会だ」

 

飛影「フン」

 

シュゥゥゥゥゥゥ 

 

放出していた巨大な妖気が訓練所内から完全に消えた。

 

躯「全力の俺と随分戦えるようになったな」

 

飛影「大会では必ずお前を超えてやる」

 

飛影はそう言うと地面に腰を下ろした。

 

恐らくこれが大会前の最後の手合わせとなるだろう。

まだまだ躯には及ばないが、ある程度の手応えを感じていた。

 

躯「黒龍波を使った後は、眠くはならないのか?」 

 

飛影「一発程度では大丈夫だ」

 

躯「お前は黒龍波を体内に取り込み、爆発的に戦闘力を上げるのはいいが、身体に負担がかかり過ぎるのが、大きな欠点だ。長時間の戦いになると直ぐにガス欠になる。その弱点は解消しろ。そうすればお前はもっと強くなる」

 

飛影にアドバイスする躯。この弱点さえ克服さえすれば、優勝を狙える一角になると彼女は思っていた。

 

 

飛影は目を閉じて少し考える。

そして目を開けると何かを決意した男の目になっていた。

 

飛影(面白い。やってやる)

 

躯(あの目はやる気だな。大会で飛影がどう化けるか楽しみだ)

 

飛影はこの後、命懸けで新たな力を身に付け、大きく成長した姿を大会で見せる事となる。

 

ブォォォォォ!!

 

飛影・躯(!)

 

その時、訓練所内に巨大な妖気を持つ者が入って来た。

 

飛影と躯は訓練場の入口に目を向けると一匹の妖怪が立っていた。

 

飛影はその妖怪の顔を見てその名を呟く。

 

飛影「奇淋(きりん)」

 

訓練所の入口に立つ者、それは元躯の77人の直属の戦士の中で飛影にその地位を奪われるまで筆頭戦士であった、魔道本家・奇淋であった。

 

続く