幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #005「新たな目的(序章)」
互いに間合いをとる飛影と奇淋。
躯は二人の力関係を瞬時に見極めた。
躯(当然だが妖力、戦闘技術、サイズ、経験、あらゆる面で、奇淋は圧倒的に飛影を上回っている)
先に行動を起こしたのは飛影だった。
飛影「行くぞ」
飛影の姿が一瞬で消える。
奇淋(面白い。こいつのスピードはかなりのものだ)
ボォォォォォ!!!
奇淋の頭上に現れる飛影。
その手に持つ剣には、魔界の炎が激しく燃えていた。
飛影「邪王炎殺剣」
ビューン!!!!!
奇淋の肩を狙って、刃が振り下ろされる。
だが、
バッキ!!
飛影(何だと!?)
剣が奇淋の身体に触れた瞬間、真っ二つに折れた。
奇淋「その程度の力で私の身体に傷をつけることは出来ない」
ドゴォォォォォ!!!
奇淋は飛影の腹に強烈な一撃をくらわせた。
予想外の出来事に、飛影は防御が間に合わなかった。
飛影「ぐっ!!」
たまらずその場に膝をつく飛影。
奇淋「どうした?これでもう終わりか?」
飛影は鋭い目で奇淋を睨みつける。
「まだだ」
飛影は直ぐに立ち上がると、素早く動いて、奇淋に近付いた。そして肉弾戦を仕掛ける。
ドガ!!!!
バキ!!!!
ドゴォォォォ!!!
高速の連打!連打!
奇淋「なかなかの威力だ」
一方的に攻撃を受け続けている奇淋は、
涼しい表情。
飛影(馬鹿な!?殆どダメージを受けていない。今の俺の攻撃は戸愚呂(弟)クラスの妖怪なら、一撃で倒せる破壊力はあるはず)
奇淋「ハァァァァァ!!!!!」
拳に妖力を込める。
飛影(!!?)
ドゴォォォォ!!!!
再び飛影の腹に強烈な一撃が直撃する。
飛影「ぐはっ!!」
躯(これで決まりだな)
飛影(この俺がここまで手も足も出ないとは…)
飛影は崩れる落ちるようにその場に倒れて、
そのまま意識を失った。
奇淋は自分が倒したばかりの男の姿を見つめている。
奇淋(なるほど、こいつが飛影か)
躯が奇淋の隣にやって来る。
躯「奇淋、お前は実際に手合わせをしてみて、
この飛影をどう思った?」
奇淋「少しだけしか動きを見ていませんが、
荒削りながら素晴らしい格闘センスをもっていますね。
私に破れたことでより強くなることでしよう」
躯「そうか」
奇淋「躯様が私を彼に会わせたのは、何か目的があってのことでしよう?」
躯「フッ、気付いていたか。全てはこの男の為だ。
奇淋、お前はこれから大変になるだろうな」
奇淋「私がですか?」
躯は意識を失っている飛影を見つめて静かに微笑んだ。
――数時間後
飛影 「う……」
意識を取り戻した飛影はゆっくりと起き上がる。
飛影「クソッ!この俺が手も足も出ないとは」
背後からゆっくりと足音が聞こえてくる。
飛影「躯か…」
躯「目を覚ましたようだな」
飛影「俺は何時間ぐらいくたばっていた?」
躯「3時間ぐらいだ」
飛影「チッ」
躯「派手にやられたな。だがこれで最強クラスの戦士の力が分かっただろう」
飛影「ああ。よく分かったぜ。次は負けん」
躯「いい目だ。飛影、これからお前に俺から課題をやる。今から半年で奇淋を超えてみせろ」
飛影「半年?」
躯「俺の見立てだと、雷禅の野郎がくたばるのが半年後ぐらいだ」
飛影(雷禅…幽助の親父か)
躯「雷禅が死んだら全軍をもって総攻撃をかける。その時お前は、No.2として俺の片腕となってそばにいろ」
飛影「フン、いいだろう。だが俺は貴様に言われるまでもなく、あの野郎を倒す」
躯「そう言うと思ったよ」
飛影の答えに満足した躯は背を向けた。
飛影「待て躯、一つ聞きたい。何故、俺を奇淋に会わせた?」
躯は足を止めて振り向く。
躯「お前は俺がこれまで触れてきた意識の中で一番心地良かった」
飛影は困惑した表情で
「答えになっていない。どういう意味だ?」
躯はニヤリと笑う。
「フッ、俺を失望させるなよ。飛影」
躯は再び背中を向けるとその場を後にした。
飛影「チッ、相変わらずつかめない野郎だ」
飛影自身はまだ気付いていないが、奇淋を半年で超えるという新たな目的が出来たことで、身体に高ぶる熱い何かを感じ取っていた。
――躯の部屋
バスッ
躯は自分の部屋に戻り、クッションに腰をかけた。
そして再び顔を布で隠した。
躯「飛影、あのまま放っておいたら、つまらん事で、無駄に命を落としていただろうな」
(飛影…お前が半生をかけてまで探し続けていた氷泪石と妹の行方。その全ての目的を果たしたお前には戦いだけが残り、喪失感の中で死に場所を求めていた。だが、奇淋という超えるべき壁を見つけた今なら、
お前の中で何かが変わった筈だ)
躯は飛影に新たな生きる目的を与える為、
躯軍最強の戦士奇淋と手合わせをさせたのだった。
奇淋の圧倒的な力を見せつける事で、
飛影の中の心の変化を促したのだった。
躯「フッ、奇淋よ、お前のNo.2の座は、半年も待たずとも飛影によって奪われてしまう事になるかもしれないな」
――その頃飛影は
躯の居城から離れた森の中にいた。
飛影「ハァァ!!」
飛影は全力で妖気を放出。邪王炎殺黒龍波を天に向けて放った。
飛影「俺は誰にも負けんぞ」
躯の見立て通り、
半年後に雷禅の死が魔界全土に知れ渡る。
その時、飛影は奇淋を倒し、躯軍の筆頭戦士の座を奪っていたのだった。
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飛影は不敵な笑みを浮かべていた。
躯「どうした飛影?」
飛影「いや、何でもない。奇淋の言っていた人間とやらを捕獲に行って来る」
飛影はそう言うと訓練所を後にした。
躯「A級妖怪並の人間か…。そのような者が魔界に現れるとは。これから魔界で何かが起り始める前ぶれか…」
躯は何か嫌な予感を感じていた。