nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #064「雷禅の命日(大会編・前章)」

ーー7番地区・雷禅の墓

 

幽助は第二回魔界統一トーナメントが行われる3番地区に向かう前に、7番地区に寄ったのは、遺伝上の父である雷禅の墓参り。

ようやく目的地である雷禅が眠る墓に到着した。

 

幽助の背中に乗るゆりがひょこっと顔を出す。

 

「幽助、ここが貴方のお父さんの墓がある場所なの?」

 

幽助が頷く。

「ああ。ここが親父の墓だ」

 

7番地区から19番地区との境にあたる場所に雷禅の墓がある。

巨大な岩の一部を切り取り、そこに雷禅の墓石が作られ、雷禅の遺体はそこに埋葬された。

周りには森も少なく、巨大な岩壁が立ち並ぶ。

荒野に近い感じで、何も無い場所である。

ここを通る妖怪も殆どいない。

一国を支配していた妖怪が眠る墓としては、非常に寂しい場所だ。

 

幽助はゆりを地面に下ろすと、墓の前まで歩いていく。

墓の前に来ると幽助はドスンとその場に座り胡座をかく。

北神たちはその様子を後ろで見ている。

 

(国王、幽助さんが来てくれましたよ)

 

幽助は墓石に声をかけた。

「ここに来るまで色々あってな、遅くなっちまった。間に合って良かったぜ。今日はあんたの命日だったよな。来てやったぜ。親父」

 

『よお!息子』

 

墓石から雷禅の声が聞こえる。

他の者には聞こえていない。

幽助の目にはうっすらと在りし日の雷禅の姿が映っていた。

それはもしかしたら幽助だけにしか見えない幻だったのかもしれない。

 

「今日で親父が死んでちょうど三年目だな」

 

雷禅、ニヤリ。
『俺の命日を覚えていたか。いい心がけだ。オシメがやっと取れたか?』

 

相変わらずの雷禅の言葉に幽助は嬉しくなり、ニコリと笑う。

「へへっ。相変わらずだな、クソ親父」

 

『三年もここに顔を見せないで何をしていた?』

 

雷禅からの質問を聞いて、ちょっと申し訳なさそうな顔になる。

「人間界で色々とな。ずっと墓参りに来なくて悪かったな」

 

『三年ぶりにお前が来るとは、何か魔界やお前のまわりであったんだろうな』

 

「まあな。魔界が大きく変わる話しがあるぜ。明日から次の魔界の王を決める魔界統一トーナメントがあるんだ。」

 

大会の概要を雷禅に説明する。

 

『ほう。また面白い事になってんじゃねえか!俺が生きていたら暴れてやるのだがな』

ニヤニヤ笑って楽しそうに話す。

 

「てめえがさっさとくたばるからだ。悔しかったら生き返って大会にでて暴れちまぇ」

 

『 けっ、無理いうな。生き返れるなら苦労はないぜ。だがな、死んだとはいえ俺の肉体自体は朽ちていないぜ。まあ、俺が出たらあまりの強さに大会がしらけてしまうだろうがな』

 

「全盛期の強さの親父と戦ってみたかったぜ。煙鬼のおっさんたちから話しを聞いたけど、おっさんたちより遥かに強かったっていうじゃねーか」

 

幽助の言葉にうんうんと頷く。
「まあ、俺は最強だからな」

 

「自分でいってら」

幽助は苦笑いを浮かべた。


『まぁ、大会を頑張れや息子」 

 

雷禅のエールに対して親指を立てる幽助。

「ああ、もちろんだぜ。親父が早く死んだことを後悔させるぐらい派手な大会にしてやるぜ」

 

『フン、言ってくれるな。俺を驚かしたいならお前が優勝して魔界の王になってその姿を俺に見せろよ。それが出来たら俺はお前に言ってやるよ。やっと息子がオシメが取れて一人前になりましたとな』

 

幽助、ニヤリ。
「ああ。任せておけってクソ親父」

 

『結果を楽しみにしといてやる。また来いよ。そして魔界をしっかりっと頼んだぞ。バカ息子』


「大会が終わったらまた来てやるぜ」 

 

『フッ』

 

雷禅が微笑むとその姿が消えた。

幽助はゆっくりと立ち上がると北神たちの側にいく。

北神が戻ってきた幽助に声をかける。

 

「親子の会話は終わりましたか」

 

幽助はニコリと笑うと頷く。

 

「そうですか。それでは私たちもお参りします」

 

北神、東王、西山、南海たちは並んで、亡き主の墓を拝む。

それに続いて、ゆりも拝んだ。

 

幽助は後ろに下がってみんながお墓を拝むのを見ている。

北神たちに幽助は感謝していた。

雷禅の息子であるのにもかかわらずここには残らず人間界に戻った自分に対して、彼等は心の内には思うところがもしかしたらあるかもしれない。

でも国王だった雷禅が死に、国が解体した後も変わらず忠義を尽くして墓を守ってくれている。

彼等にはいつか報わねばならないと強く思っている。

 

北神たちがお参りを終えて戻ってきた。

「北神、それにお前等、俺がいない間、俺の代わりに親父の墓を守ってもらって本当に悪かったな」

 

「雷禅国王が亡くなり国も解体してしまった今でも、あの方は私たちの王に変わりはありませんから。これからも国王のお墓をお守りするつもりでいます」

 

北神の横にいる東王、西山、南海も同時に頷く。

 

「すまねえ。親父の墓を頼む。俺も今回のように、親父の命日は毎年必ず顔を出すようにする」

 

北神、ニコリ。

「そうしてください。貴方がここに来てくれたら、国王も喜ばれますから」

 

「分かったぜ。さてと墓参りも終わったことだし、戻るか」

 

ゆりを背中に乗せて、帰る支度をしていた幽助の前に来客たちが現れた。

 

「お~~い幽助!!」

 

大きな声が辺り一面に響き渡った。

 

幽助たち6人が振り向くと、そこには煙鬼をはじめとした雷禅の昔の喧嘩仲間たち全員がこの場に集結していた。

 

親父の喧嘩仲間大集合に幽助は驚く。

「煙鬼のおっさん!?孤光にそれに才蔵、棗や他のみんなも来たのか?」

 

煙鬼、ニヤリ。
「今日は、大事な喧嘩仲間の命日だからな」

 

「おっさん、王の仕事はいいのかよ?」

 

「今日は雷禅の命日なのだから、仕事なんかほったらかしにしてでもここにくるよ」

胸を張って答える煙鬼。

 

孤光がフラフラな足取りで前に出て来る。
「幽助、あたしはね、年に一度こいつに文句を言ってやりに来ているのさ」

 

孤光は、そう言うと雷禅の墓の前に両手と両膝をついて喋り始めた。

 

「ヒクッ。雷禅のバカヤローー!!!」

 

孤光の大声が墓の周辺に響き渡った。

そして泣き出す。

 

「勝ちっぱなしで死んでしまうなんて許さないよ。全くもーー!!」

 

孤光はずっと泣きながら雷禅の墓に向かってひたすら文句を言っていた。

 

「おっさん、あれって?」

 

「孤光の奴は、朝から酔っ払っておるからな。雷禅の命日はいつもあの調子だよ。あいつ酔っ払うと泣く癖があるんだ」 

 

「あらあら」

幽助は苦笑いを浮かべた。

 

鉄山が声を上げる。

「みんな、雷禅のお墓を参ろうではないか」

 

鉄山がそう言うと棗や電鳳たちが雷禅の墓に花を供えた。

そしてみんなで雷禅の墓の前に座り拝んだ。


お墓参りが終わると帽子を被った精悍な顔つきの男が幽助の側に近付いて来た。

 

「元気そうだなボウズ」

 

「痩傑。久しぶりだな」

 

痩傑、ニヤリ。

「どうだ?少しはあれから強くなったのか?」

 

当たりめーだ。大会で修行の成果を見せてやるぜ」

 

「ボウズの気合いの入った妖気は、見ていて気持がいいからな。出来たらお前と戦いたいぜ。当たったら試合で俺がお前を鍛えてやるぞ」

 

「痩傑、そのボウズってのやめてくれよ~」

幽助は恥ずかしいのか、ちょっと困った顔。

 

「ははは。お前は雷禅の息子だからな。俺から見たら可愛いボウズだよ」


「おいおい」

幽助は苦笑いを浮かべた。

 

幽助と痩傑が話していたら、小柄で頭はスキンヘッド。頭の横に角が生えた男が今度は近付いてきた。

周である。

 

「その似合わない帽子の男じゃなくて、俺と大会で当たるといいな雷禅の息子」


「やれやれこの帽子は俺のトレードマークだぜ周よ。この帽子のセンスは、金物臭いメタル族のチビにはわからんだろうがな」

 

「けっ。お前のセンスなんか一生わからんわ」

 

「なにおう」

 

パチパチパチ

 

いきなり火花を散らす二人。

 

(この二人は、相変わらずだな」

やれやれって顔で定番の二人の喧嘩を見守る。

 

「幽助君。お久しぶり」


「幽助、元気そうじゃあないか!」

棗と九浄の双子の兄妹がやってきた。

 

「棗に九浄も久しぶりだな。棗、蔵馬に前に話しを聞いたが酎と付き合っているんだってな」

 

棗、頬が少し赤くなる。

どうやら照れているようだ。

「まあね。実は彼にプロポーズされたのよ」

 

「おいおいマジかよー。でもあいついい奴だし、棗なら俺は意外とお似合いと思うけどな」

 

「意外とは失礼ね。でもプロポーズを酎から受けたのはいいけど話しがちょっとややこしくなっていてね」

 

チラッと兄の九浄を見た。

 

棗、ニコリ。

「ね、九浄」

 

「な、何だよ」

ちょっとバツが悪い顔。

 

「はは~ん。なんか兄貴の九浄が言ってるんだな」

 

「そういうこと。大会で酎が九浄に勝つか、九浄より上の順位にいかないと結婚は認めないってこいつが言いだしたのよ。酎もそれを受けて燃えちゃっているし」

 

「あ、あんなムサイ男が可愛い妹の旦那になって俺の義弟になるのが反対なだけだ」

胸元で腕を組んでそっぽを向く。

 

幽助に小声で耳打ちする棗。

「口では、こう言っているけど実際はあいつのことを認めているのよ。本音は、酎がどこまでやれるか試したいのだと思うわよ」

 

幽助がニヤニヤ笑って九浄を見る。

「へ~。九浄、そうなんだ」 

 

「違うわ」

九浄は慌てて否定した。


「まあ、そんな状況になっているってわけよ」

 

「ははは。でも酎の奴は、単純だから必死で頑張るだろうぜ」

 

「そうね。幽助君と一緒で単純よ」

 

「……俺も単純なのか」

軽くへこむ。

 

「おお~い、みんな!!」

 

電鳳が声を上げて煙鬼たちに呼びかけた。

 

才蔵が電鳳に近付く。

「どうした、電鳳?」


「今日は、雷禅の命日だから派手な事が好きだったあいつの前でそろそろあれをやらないか?」

 

「なるほど。そうだな」

 

他の喧嘩仲間たちも顔を見合わせて頷く。

どうやらみんなで何かをやるようだ。

 

不思議そうに彼等の様子を見る幽助。

「あいつら何をやるんだ??」


北神が幽助の隣にやってくる。

「幽助さん、これは、国王が亡くなってから毎年の事ですよ。まあ見ていて下さい」

 

煙鬼たち喧嘩仲間全員が円状に並んだ。

煙鬼が声を上げた。

「よし!いくぞみんなー!!!」 

 

「オウ!!」

 

幽助は煙鬼たちが今から何をするのか気付いた。

「なあ、北神、これってもしかして?」

 

北神、ニコリ

「やっぱり分かりましたか。」

 

喧嘩仲間たちの気合いが入った声が辺り一面に響き渡る。

 

「うぉぉぉぉ!!!!!」

 

ドーーン!!!!

 

煙鬼たちは全力で一気に妖気を放出させた。

 

ビリビリビリと幽助の肌に凄まじいまでの妖気が伝わって来た。

 

「ははは。やっぱな。マジで親父の仲間たちはすげーぜ!!」

 

幽助は左手を右手の腕に軽く添えて、右手を空に向けて銃の形を作って構えた。

 

慌てる北神。

「幽助さん、何を??」

 

幽助、ニヤリ。

「せっかくだから俺も一発かましてやるぜ」

 

ジジジ…

 

幽助の右手の人差し指に巨大な妖気が集まっていく。

 

「受け取れクソ親父!!!妖丸!!!」

 

ズドォォォォン!!

 

幽助の放った妖丸が魔界の空に向かって放たれ、

ぐんぐん天に昇っていく。


「フッ、あいつめ」

煙鬼等、喧嘩仲間たちも天に昇っていく妖丸を見守る。

 

「へへっ。北神、あの親父に届いたかな」

 

北神、ニコリ。
「きっと国王に届いてますよ」

 

幽助は両頬を叩いて気合いを入れた。

 

「さてと大会はいっちょ全力でやってやるか!!」

 

幽助は三年ぶりの大会の優勝を目指していざ大会に挑む。

 

――幽助たちが立ち去った後の雷禅の墓

 

幽助たちが寝静まった後、ゆりは一人でまた雷禅の墓にやってきていた。

 

「ここがそうだよ」

 

ゆりは誰もいない場所に向かって話している。

 

ズズズ…

 

すると闇撫の樹が亜空間の中から姿を現した。

 

「ご苦労だったなゆり。上手くやったな」

 

ゆり、ニコリ。

「ここまで来るの本当に大変だったんだからね」

 

そう言うと樹にくっつく。

「でも本当に樹が生きていて良かった。あいつを倒したんだね!」

 

樹の身体には無数の傷跡がある。

激しい戦いを終えた後の姿だ。

樹はゆりの頭を優しく撫でた。

「ああ。あれは死闘と呼ぶに相応しい戦いだった。我々があいつに勝てたのは奇跡なのかもしれない」

 

樹は墓に近付くと墓石を触る。

 

「これが魔界最強の妖怪といわれた闘神・雷禅が眠っている墓か」

 

樹は雷禅の墓を見つめながら亜空間の中から壷のような物を取り出し、何かを始めた。 

 

3番地区で、間もなく魔界全土を巻き込む新たな王を決める大会が幕を開ける。

いよいよ前回を超える熱き男たちの闘いが始まろうとしていた。

その前に最後にあの男の行方を追う。

 

続く

 

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