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このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #061「到着・7番地区(大会編・前章)」

ーー魔界7番地区

 

24番地区の荒野を抜けた幽助、楽越、ゆりは目的地の7番地区にようやく到着した。

これまで緑があまりなかった24番地区とは違い、7番地区は自然も多く、多くの魔獣も生息している。

蔵馬が召喚する魔界のオジギソウもここ7番地区が一番多く、獰猛で有名である。

 

幽助は息を吸い込むと吐く。

 

「いい空気だ。ここに来るのは久しぶりだぜ」

 

7番地区は、幽助の遺伝上の父・雷禅の治めていた国の一つで、彼のお墓もここにある。

色々あったが、ようやくこの地に幽助たちはやってきた。

 

「よいしょっと」

 

幽助の背中に乗っていた、ゆりが地面に降りた。

ここまで着いて来た楽越も後ろでひと息ついている。

 

「ゆりは、知り合いに会いにここに来たんだろ?これからどうするんだ?」

 

「へっ!?」

ゆりは幽助に聞かれて一瞬ポカーンとした顔になる。

 

(??)

不思議そうな顔でゆりを見る幽助。

あれって顔をしている。

 

(あーそういえば、そういう事にしていたんだっけ…)

 

集落で幽助たちに会ったのはイレギュラーだったから、

咄嗟にあの場で考えた設定だったのだ。

 

(とりあえず後から行く事ということにして、その時は一旦幽助たちから離れよう。でも目的を果たすまでは幽助たちから離れないようにしないと…)

 

ゆりは精一杯の笑顔を作って幽助に近付く。

「もう少し、幽助についていっていい?幽助がここに来たのはお父さんのお墓参りだよね。せっかく一緒にここまで来たのだから、私も一緒にお参りしたい」

 

「そっかそっか。いいぜ、ゆり。一緒に行こうぜ」

ゆりの申し出を幽助は嬉しそうに承諾した。

 

ゆり、心の中でニヤリ。

(フッ、ちょろい)

 

楽越は二人のやり取りを眺めている。

(なんか分からないけど、ゆりはどうも引っかかるんだよな)

 

「幽助はまずはどこに行くつもりなの?」

7番地区に父親の墓参りに来たという幽助の目的は分かっているが、まずはどこに向かうのかゆりは分からなかった。

 

幽助が集落で汲んだ水を入れたペットボトルの蓋を開けて、水を飲みながら答える。

 

「ここには親父の部下たちが沢山いてよー。親父の墓を守っているんだぜ。まずはそいつらに会いに行く」

 

楽越が幽助の側にやって来る。

「そこはここから近いのか?」

 

幽助が頷く。

「まあな。走ればそんなに遠くじゃあないぜ」

 

「よし、行こうぜ」

楽越は先に駆け出した。

 

「おい馬鹿!そっちじゃあねーよ。てめえは道知らねーし、方向音痴だろうが」

 

ダッシュで追いつき楽越の首根っこを捕まえる。

毎度この男には手間をかけさせられる。

 

「よっと」

 

ゆりは幽助の背中に乗る。

もうここは彼女の定位置になってしまっている。

 

「よし、行くぜ。着いて来いよ楽越。振り落とされねーよーにゆりは捕まってろよ」

 

幽助は駆け出した。

雷禅の墓を守る北神たちのもとへ。

 

ーー7番地区・北神たちの居住地

 

ここはかって、雷禅が住んでいた居城から少し離れた場所。

雷禅が死に、前の大会が終わってから、森の一部を切り崩して小さな集落を北神たちは作った。

それは亡き主君の墓を守る為に。

雷禅の墓は幽助と北神と他数名にしかその場所を知らない。

雷禅のような名前の知られた妖怪の墓は、墓荒らしに狙われやすく、墓荒らし対策の為である。

 

「傷はもう大丈夫か?」

 

北神は先日、大きな傷を負って倒れていた男を助けて、

自らの住む家に連れて帰って治療をしていた。

オジギソウにやられたと見られる男の傷はかなり酷かったが、懸命の治療を行い、彼の傷はかなり回復していた。

その男の名は黎明。

 

「傷はもう大丈夫か?」

 

ベッドに座っている黎明に北神が話しかける。

 

頷く黎明。

「おかげさまで、私はもう大丈夫だ」

 

身体が元気になったのを見せる為、腕を軽く回してみせる。

 

その様子を見て安心する北神。

「相当大きな怪我だったのに、お前の回復力は大したものだ」

 

「お前たちの治療が良かったのだ。本当に感謝する」

そう言うと包帯が巻かれている、胸元に手を当てる。

 

「お前を見つけたのは本当に偶然だ。お前の命運がまだ尽きていなかったってことだ」

 

ベッドから立ち上がる黎明。

「俺は受けた恩は必ず返す。何かあればお前の力になろう」

 

北神、ニコリ。

「お前が元気になればそれでいい」

 

ここで、外で誰かが大きな声を上げた。

外で何かあったのか。

 

「直ぐそこだ。黎明はここにいろ。外を見てくる」

 

「分かった」

 

北神は家を出ると声が聞こえた場所に向かって駆け出した。

そして声が聞こえたところにたどり着くと、大勢の仲間たちが集まっていた。

みんな嬉しそうに笑っている。

 

「東王、南海、何かあったのか」

 

東王、ニコリと笑みを浮かべて集落の入口を指差す。

北神は何かあるのかって顔で集落の入口の方を見た。

 

「あ、あれは!!」

 

集落の入口を見た北神の顔も自然に微笑む。

そしてその集落の入口から声が聞こえた。

 

「よっ!おめーら元気だったか」

 

幽助たち一行がここまで辿り着いたのだ。

北神たちは走って入口に向かって駆け出す。

 

「幽助さん!お帰りなさい」

 

北神たちはあっという間に幽助たちを取り囲む。

もう一人の主とも呼べる幽助の帰還にみんな大喜び。

そんな中、近くの建物の側から幽助の姿を黎明は見ていた。

 

(あれは確か浦飯幽助。比羅が言っていた私たちが捕獲すべきターゲットの友人であり、警戒すべき男の一人)

 

意外な人物とまさかこんなところで遭遇したことに驚いたが、それよりもまだ黎明を驚かす事があった。

 

(浦飯幽助と一緒にいる男…。あれは楽越ではないか!?これは一体どういう事なのだ…)

 

続く

 

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