幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #061「到着・7番地区(大会編・前章)」
ーー魔界7番地区
24番地区の荒野を抜けた幽助、楽越、ゆりは目的地の7番地区にようやく到着した。
これまで緑があまりなかった24番地区とは違い、7番地区は自然も多く、多くの魔獣も生息している。
蔵馬が召喚する魔界のオジギソウもここ7番地区が一番多く、獰猛で有名である。
幽助は息を吸い込むと吐く。
「いい空気だ。ここに来るのは久しぶりだぜ」
7番地区は、幽助の遺伝上の父・雷禅の治めていた国の一つで、彼のお墓もここにある。
色々あったが、ようやくこの地に幽助たちはやってきた。
「よいしょっと」
幽助の背中に乗っていた、ゆりが地面に降りた。
ここまで着いて来た楽越も後ろでひと息ついている。
「ゆりは、知り合いに会いにここに来たんだろ?これからどうするんだ?」
「へっ!?」
ゆりは幽助に聞かれて一瞬ポカーンとした顔になる。
(??)
不思議そうな顔でゆりを見る幽助。
あれって顔をしている。
(あーそういえば、そういう事にしていたんだっけ…)
集落で幽助たちに会ったのはイレギュラーだったから、
咄嗟にあの場で考えた設定だったのだ。
(とりあえず後から行く事ということにして、その時は一旦幽助たちから離れよう。でも目的を果たすまでは幽助たちから離れないようにしないと…)
ゆりは精一杯の笑顔を作って幽助に近付く。
「もう少し、幽助についていっていい?幽助がここに来たのはお父さんのお墓参りだよね。せっかく一緒にここまで来たのだから、私も一緒にお参りしたい」
「そっかそっか。いいぜ、ゆり。一緒に行こうぜ」
ゆりの申し出を幽助は嬉しそうに承諾した。
ゆり、心の中でニヤリ。
(フッ、ちょろい)
楽越は二人のやり取りを眺めている。
(なんか分からないけど、ゆりはどうも引っかかるんだよな)
「幽助はまずはどこに行くつもりなの?」
7番地区に父親の墓参りに来たという幽助の目的は分かっているが、まずはどこに向かうのかゆりは分からなかった。
幽助が集落で汲んだ水を入れたペットボトルの蓋を開けて、水を飲みながら答える。
「ここには親父の部下たちが沢山いてよー。親父の墓を守っているんだぜ。まずはそいつらに会いに行く」
楽越が幽助の側にやって来る。
「そこはここから近いのか?」
幽助が頷く。
「まあな。走ればそんなに遠くじゃあないぜ」
「よし、行こうぜ」
楽越は先に駆け出した。
「おい馬鹿!そっちじゃあねーよ。てめえは道知らねーし、方向音痴だろうが」
ダッシュで追いつき楽越の首根っこを捕まえる。
毎度この男には手間をかけさせられる。
「よっと」
ゆりは幽助の背中に乗る。
もうここは彼女の定位置になってしまっている。
「よし、行くぜ。着いて来いよ楽越。振り落とされねーよーにゆりは捕まってろよ」
幽助は駆け出した。
雷禅の墓を守る北神たちのもとへ。
ーー7番地区・北神たちの居住地
ここはかって、雷禅が住んでいた居城から少し離れた場所。
雷禅が死に、前の大会が終わってから、森の一部を切り崩して小さな集落を北神たちは作った。
それは亡き主君の墓を守る為に。
雷禅の墓は幽助と北神と他数名にしかその場所を知らない。
雷禅のような名前の知られた妖怪の墓は、墓荒らしに狙われやすく、墓荒らし対策の為である。
「傷はもう大丈夫か?」
北神は先日、大きな傷を負って倒れていた男を助けて、
自らの住む家に連れて帰って治療をしていた。
オジギソウにやられたと見られる男の傷はかなり酷かったが、懸命の治療を行い、彼の傷はかなり回復していた。
その男の名は黎明。
「傷はもう大丈夫か?」
ベッドに座っている黎明に北神が話しかける。
頷く黎明。
「おかげさまで、私はもう大丈夫だ」
身体が元気になったのを見せる為、腕を軽く回してみせる。
その様子を見て安心する北神。
「相当大きな怪我だったのに、お前の回復力は大したものだ」
「お前たちの治療が良かったのだ。本当に感謝する」
そう言うと包帯が巻かれている、胸元に手を当てる。
「お前を見つけたのは本当に偶然だ。お前の命運がまだ尽きていなかったってことだ」
ベッドから立ち上がる黎明。
「俺は受けた恩は必ず返す。何かあればお前の力になろう」
北神、ニコリ。
「お前が元気になればそれでいい」
ここで、外で誰かが大きな声を上げた。
外で何かあったのか。
「直ぐそこだ。黎明はここにいろ。外を見てくる」
「分かった」
北神は家を出ると声が聞こえた場所に向かって駆け出した。
そして声が聞こえたところにたどり着くと、大勢の仲間たちが集まっていた。
みんな嬉しそうに笑っている。
「東王、南海、何かあったのか」
東王、ニコリと笑みを浮かべて集落の入口を指差す。
北神は何かあるのかって顔で集落の入口の方を見た。
「あ、あれは!!」
集落の入口を見た北神の顔も自然に微笑む。
そしてその集落の入口から声が聞こえた。
「よっ!おめーら元気だったか」
幽助たち一行がここまで辿り着いたのだ。
北神たちは走って入口に向かって駆け出す。
「幽助さん!お帰りなさい」
北神たちはあっという間に幽助たちを取り囲む。
もう一人の主とも呼べる幽助の帰還にみんな大喜び。
そんな中、近くの建物の側から幽助の姿を黎明は見ていた。
(あれは確か浦飯幽助。比羅が言っていた私たちが捕獲すべきターゲットの友人であり、警戒すべき男の一人)
意外な人物とまさかこんなところで遭遇したことに驚いたが、それよりもまだ黎明を驚かす事があった。
(浦飯幽助と一緒にいる男…。あれは楽越ではないか!?これは一体どういう事なのだ…)
続く