nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #063「魔界に来た者たち(大会編・前章)」

ーー7番地区・北神たちの居住地

 

楽越を見る黎明の顔は涼しく、どこか陰があった。

「その驚き方だと私が死んだと聞かされていたようだな」

 

頷く楽越。

「ああ。比羅から妖狐・蔵馬に倒されたと聞いていた」

 

死んだと思っていた者がいきなり目の前に現れたのだ、

まだ動機が収まらない。

 

「私は妖狐に敗れた。まともに戦えば私は勝てただろうが、私は自分の力を過信し、奴の力を甘く見過ぎていた」

前をはだけてオジギソウにやられた傷を楽越に見せる。

傷を凝視する楽越。

「結構、派手にやられたな。とにかくよく生きていたな」

 

黎明は傷を手で触る。

「この傷の借りは妖狐に必ず返す。奴には決して手を出すな」

 

楽越、ニヤリ。

「大丈夫だ。お前の獲物は取ったりしないぜ。今の俺が興味あるのは浦飯幽助だ。あいつと戦いたい」

 

そう言うと楽越はジャンプして木の高いところにある果物を取る。

「食うか黎明?」

 

「う、うむ」

楽越から果物をなんとなく受け取る黎明。

木を背にその場に腰を下ろして果物を食べる二人。

シュールな光景かもしれない。

 

「ところで俺に話しとはなんだ黎明?」

 

「そのことだが、どうしてお前が浦飯幽助たちと一緒にいるのだ」

 

浦飯幽助は黎明たちにとっては敵である。

黎明に瀕死の重症を負わした妖狐・蔵馬とも深い繋がりがある人物。

そんな者たちと仲良く行動をしている楽越が不思議でならないのだ。

楽越は頭をポリポリと掻きながらちょっと苦笑い。

この魔界に一人で来ている理由と幽助との出逢いについての流れを黎明に説明した。

 

「やっぱりそうか……。違う世界に来ているとはいえ、相変わらずの方向音痴……。勝手な単独行動……。お前はどれだけ比羅や弥勒を泣かすつもりか……」

 

深い溜息をつく。

楽越はどうやら元いた世界でも問題児のようだ。

 

「さて、私は行く。お前の話しだと比羅たちが魔界に来るというなら、私は彼等と合流する。お前は好きにしたらいいさ。どうせお前の勝手な行動は今に始まった事ではない」

そう言うと黎明は立ち上がった。

 

「悪いな黎明。俺はどうしても魔界の奴らと戦いたい。大会で大暴れしてやるぜ」

そう言うと楽越も立ち上がった。

 

「お前が魔界の強者を完膚なき叩きのめして奴らの戦力を削ぐのは、決して悪い話しではない。但し、私のように奴らをなめると足元をすくわれるぞ」

 

拳を強く握り締めて黎明に見せた。

「安心しろ。俺は実力だけなら王を除けば十二魔将最強だぜ。俺に油断はない。立ちはだかる者は全て破壊してやる」

 

黎明、ニコリ。

「お前の強さは誰もが認めるとこだ。ではまたな。まだここにいるなら浦飯幽助に正体がばれないようにしろよ」

 

楽越に告げると黎明は集落を出て、森の方へ走っていった。

 

黎明が走り抜けた集落の入口を見る楽越。

(黎明が生きていた。良かった。十二魔将は誰も欠けていない)

 

森の中を走り抜ける黎明。

(北神に何も言わずに集落を出たのは少々心残りだが、あいつが妖怪とはいえ、俺は命を助けてもらった。北神から受けた恩はいつか必ず返す)

 

ーー3番地区・とある崖の上

 

風に揺られて金髪の美しい髪をなびかせた端正な顔立ちの男が、大統領府とその先に見える大会の会場を眺めていた。

金髪の男の背後には彼が引き連れてきた9人の仲間たちがいた。

金髪の男の名は比羅。

桑原を捕えて何かを企んでいる者たちの中心的な人物である。

比羅は風に揺れる長い髪を手でおさえる。

 

「あれが魔界の王の煙鬼のいる大統領府とやらか」

 

比羅の直ぐ後ろにいた小柄の赤い髪の男・駁が答える。

 

「そうだな。あそこに煙鬼がいやがる。ここが現在は魔界の中心地として機能しているようだ」

 

「つまりあそこが樹が言っていた、新たな魔界の王を決める大会の会場か」

 

比羅の視線の先には複数の大会の会場、そして試合用の沢山のステージがあった。 

 

「そうみたいだな。比羅よ、あの樹という妖怪だが、あいつは何が目的で俺たちに近づいて来たんだ?」

 

駁は面白くないって顔をしている。妖怪に対してあまり良い感情を持っていないようだ。

 

比羅が駁の質問に答える。

「あの男は王の持つ秘宝の力を欲している。我々の目的が成就すれば、その見返りとして秘宝の力を使わせて欲しいと言っているようだ」

 

「なるほど、秘宝の力か。しかし比羅よ、樹の力は俺たちより遥かに下だが、あいつから何か得体のしれない力を感じるぜ。侮れない。あの男だけは決して油断はするなよ」

 

頷く比羅。

「フッ、分かっているさ。あいつは俺たちを利用するが、私たちも奴を利用すればいい」

 

「兄さん、一人勝手な行動をとっている楽越はもうこの場所に到着しているのだろうか?」

 

駁の横にいた者が口を開いた。

 

その姿は全身を鋼鉄の鎧を身につけ、顔は鋼鉄の仮面で隠れている。

一体どのような顔をしているのかすらわからない。

 

「おそらくはな。砂亜羅(サーラ)よ。楽越のように大会でお前も戦いたいのだろう?」

 

「長い間、血を見ていないからな。血が騒ぐ。魔界の猛者が集うこの大会で奴らと戦ってみたいものだ」

 

砂亜羅と呼ばれたこの人物も十二魔将の一人。

実は彼女は比羅の双子の妹である。

兄以上の激情化で、気性が荒い女性である。

 

「我々の戦力の分散は今はしたくない。大会が終われば桑原の捕獲の為に、どちらにしろ奴らと事を構える可能性が高い。それまでは我慢しろ」

 

「ああ、それは分かっている」

双子の兄の言葉に頷く。

ここで比羅は8人の仲間に告げた。

 

「我々の最大の目的は例の者・桑原の捕獲だ。必ず奴を国に連れて帰り、私たちの悲願を必ず果たす」

 

「オゥ!!!」

この場にいる8人の十二魔将は一斉に声を上げた。

そして魔界の王・煙鬼のいる大統領府を比羅は見た。

 

「私たちの世界はこの十二魔将が必ず守る。どんな手段を使ってもな。魔界よ、我々の糧となるがいい」

 

続く

 

次へ

戻る