nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #033「飛影との再会(序章)」

――深い森の中を桑原は、全力で走り続けている。

 

酒王と桑原の果てしない鬼ごっこは続いている。

 

酒王「おい貴様!いい加減に逃げるのやめてこっちに来い!!」

 

ドスドスドス 

 

大きな足音が森の中に響き渡っている。

酒王は短足で走るのは遅いが、桑原を見失しなわないように全力で追いかけている。

 

桑原「クソ!なんだってんだ、あいつらは」 

 

汗だくになりながら必死に逃げている。

 

桑原(霊気をけっこう消耗するけど仕方ねーか!) 

 

桑原は後ろを振り向くと同時に霊気で作った複数の霊剣手裏剣を酒王に向かって飛ばした。

 

ビューン! ビューン! ビューン!

 

酒王「おっ!?」

 

ガキーン! ガキーン! ガキーン!

 

桑原の放った霊剣手裏剣を鍛え上げらた腕で弾き飛ばした。

 

桑原(よし、今のうちだ)

 

酒王が霊剣手裏剣を弾く間に、霊気と気配を消して、

茂みの中に隠れた。

 

息を潜める。

 

桑原(金髪の野郎から最初に逃げた時に、霊気を消していればあんな発信機で簡単に見つからなかったんだけどな…) 

 

ドスドスドス

 

酒王は桑原を探して先に向かって走り去っていった。 

 

桑原「しかしあの妖怪の姿には参ったぜ…。認めたくねーが、あんな気色悪い姿の奴が戸愚呂(弟)より妖気が上なんてよ~」

 

酒王を撒いた桑原は霊気と気配を断ちながら、

森の中を走って進んで行く。

 

桑原「チクショー、どうにか妖怪を撒いたのは、いいが早くここから抜けねーと」

 

まるで迷路のような深い森。深いところに行けば行くほど森の中はより瘴気に満ちている。

 

桑原「ここは多分魔界だろうな…。また来ることになるとは思わなかったぜ。あんにゃろう!こんなとこに俺を飛ばしやがって」

(だがよ、ここが魔界なら俺を助けてくれそうな奴は、やっぱあいつぐらいしかいねーな)

 

どこを走っているのか分からない。だが、止まるわけには行かない。出口を見つけるまでは。

 

ガサガサガサ

 

前の方の茂みが揺れている。

そしてその茂みの中から

 

時雨「悪いが先回りさせてもらったぞ」 

 

桑原の目の前に円形の刀を持った強い威圧感を放つ男が現れた。

 

桑原(こいつはスゲー妖気だぜ。俺を追いかけていた奴らとは比べものにならねーぜ)

 

冷たい汗が流れる。目の前にいる妖怪は、黄泉と修羅を除けば、今まで出会った妖怪の中で間違いなく一番強い。

 

時雨「人間にこれほどの霊気を持った奴がいるとは、

真に驚いた。霊界の基準だとA級妖怪クラスか」 

 

桑原(まずいぜ…。まともにやりあってどうにかなる相手じゃあねーな。逃げる方法を考えねーと) 

 

時雨「人間にしては、高い霊力を持つ御主が一体

何者か興味はあるが、御主を傷つけるつもりはない。

拙者と一緒にくれば悪いようにしない」 

 

桑原(浦飯、てめーならこの場合どうするんだろうな) 

 

頭の中で、自分より遥かに強い妖怪を目の前にして、

一体どうしたらこの窮地から脱出出来るのか、

必死に考える。

 

桑原(仕方ねー!まともに戦ってもあいつに勝ち目はねー。ここは先手必勝)

 

時雨に向かって突進する。 

 

時雨(こちらは危害を加えないって言っているのに、

抗戦的な奴だ)

 

桑原は走りながら両手を広げた。

 

桑原「くらいやがれー!!」

 

同時に2本の霊剣を作り出す。

 

桑原「霊剣二刀流!!!」 

 

時雨(面白い。霊気で作った剣か)

 

攻撃を受け止める為、構える。

 

バッ!! 

 

桑原は、時雨の少し手前から思いっきり飛び上がった。

 

時雨(何をするつもりだ) 

 

キュキュッ 

 

ギュッ!!


空中で2本の霊気の剣を繋げて一本の長い棒を作り上げた。

 

時雨「なんと!?」 

 

桑原の意外な行動に流石の時雨も驚いた。

 

その棒を地面に突き刺し、その反動で身体を振り、

時雨の頭上を越えて10m先まで飛んだ。

 

桑原「へっ、戦っても勝ち目がないからよ!ここはトンズラさせてもらうぜ」

 

地面に着地すると同時に走って逃げた。

 

時雨はその姿を苦笑いを浮かべてみる。

 

時雨「油断していたとはいえ、真に驚いた」

(霊気の剣を空中で結ぶとは、非常識なやつだな)

 

桑原は後ろを振り返り、時雨の姿がないことを確認。 

 

桑原「へへ、上手くいったぜ。やっぱ先手必勝だぜ」

 

ドン!!

 

桑原「うぉっ!?」 

 

何かにぶつかり思いっきり尻餅をついてしまう。

 

桑原(痛てて…何だよ…) 

 

「フッ、先手必勝という言葉を知っているとはお前も少しは利口になったな」 

 

桑原「あっ・・お、お前は!?」 

 

飛影「やれやれだ。しかし何でお前がここにいる?」 

 

桑原「ひっ飛影!!」 

 

まさかの飛影の登場に驚く。

 

飛影「フン、久しぶりだな。桑原」 

 

桑原と飛影の二人が会うのは正聖神党事件以来であった。 

 

桑原「な、なんでお前がここにいるんだ・・」

 

飛影「それは俺が聞きたいぜ。A級クラスの力を持った人間がいるからという報告を受けて、どんな野郎かと思って来てみれば、まさかお前とはな」

 

ここでようやく時雨が追いついてきた。 

 

時雨「飛影か」

 

飛影「時雨、この人間は、俺の知り合いだ」

 

桑原(!?)

 

飛影と時雨の顔を交互に見る桑原。

 

桑原「お、おめーら知り合いなのか?」

 

飛影「ああ。こいつの名前は時雨。躯の直属の77人の戦士の一人だ。そして俺に邪眼を移植し、剣術を教えた男でもある」

 

桑原「じゃあ、あんたが飛影の邪眼を…」

 

桑原の質問に頷く時雨。

 

時雨「如何にも、飛影が言った通りだ。しかし御主が飛影の知り合いとは、真に驚いたぞ」

 

時雨に続いて酒王と月畑もようやく追いつく。

 

酒王「追いついた…」 

 

桑原「げげっ、てめえは・・!?俺を追いかけていた奴じゃねーか!!?」

 

また飛影の顔をチラッと見た。 

 

桑原「飛影、まさか、こいつらも知り合いか?」 

 

飛影「ああ。こいつらも躯の部下だ。ふざけた顔が酒王、半魚人が月畑だ」 

 

時雨「拙者たちは、魔界に迷い込んだ人間を保護して、人間界に返すパトロールをしているのだ」 

 

桑原「じゃあ、こいつらが俺を追いかけていたのって…」

 

飛影「お前を保護して人間界に連れて帰る為だったというわけだ」

 

桑原「そ、そうだったんか。俺は、てっきり…」 

 

酒王が笑顔で桑原に近付いてくる。


酒王「俺の顔を見て逃げるなんて、よっぽど俺の美しさに照れたってことだな」 

 

バキッ 

 

桑原「そんなわけあるかーーー!!」

 

桑原の拳が酒王の顔面にめり込む、

強烈なストレート。

 

酒王「な、なんで…」

 

ドスンっと大きな音を立ててひっくり返る。

 

この時、桑原のツッコミのスピードは人間の限界を超えていた。まさにツッコミの神様が舞い降りた瞬間だった。

 

桑原「ハアハア、なんかこいつの顔を見ていたら手、手が勝手に・・」

 

月畑(分かる)

 

飛影(やれやれだぜ) 

 

気絶している酒王の事は忘れて、今後の事を話し合う。

 

月畑「ところでこの人間をどうしますか?」

 

時雨「拙者はとりあえず躯様の居城にでも連れて行くのが一番だと思うが。飛影、御主はどう思う?」

 

飛影「時雨の言った通りでいい。だがその前に、さっきの質問だ。なんでお前が魔界に来ている?」 

 

桑原「実はよ…」

 

桑原は、これまでの出来事の全てを飛影たちに話した。 

 

―5分後

 

飛影(雪菜が…) 

 

桑原から雪菜の事を聞かされて、顔には出していないものの動揺していた。

 

時雨「その者が御主を追って魔界にまで来るかも知れんな」

 

桑原「黄泉と金髪の野郎がその後どうなったかわからねーが、金髪の野郎には、他に仲間がいそうな感じだった。俺を追って魔界まで来るかもしれねー」

 

飛影「時雨、悪いがこの馬鹿を躯の所まで連れていってくれ」 

 

時雨「御主は、どうするのだ?」

 

飛影「俺は今から少し行く所が出来た」

 

桑原「お、おい飛影!」 

 

時雨(なるほど。妹を探しに行くのか) 

 

時雨は飛影の個人的な事情を医者と患者の関係から知っていた。

 

時雨「いいだろう。拙者に任せておけ」

 

飛影は無言で頷くと走り去っていった。

 

桑原「急にどうしたんだ、あいつ…」

 

月畑「桑原っていったな。今から俺と時雨様で躯様の所へ案内する。俺の事は月畑と呼ぶがいい」

 

桑原の側まで来ると肩に手を回す。陽気な笑顔を見せる。

 

桑原「お、おう。よろしくな」

 

時雨「さあ拙者達についてくるがいい。躯様にも御主の事や先程の話しを報告せねばならないからな 」 

 

桑原「おう!分かったぜ」 

 

月畑が桑原を連れていく。

 

時雨は足を止めると飛影の事を考える。

 

時雨(飛影よ。拙者との対決で手術代は、お主に返した。そろそろ妹に自分が兄と名乗ってもいいのではないか?)

 

飛影は、雪菜が魔界に飛ばされて来ているかも知れないことを知り、心の動揺を抑えられなかった。

 

飛影(…雪菜) 

 

そして酒王は、そのまま忘れられていた。

 

酒王「う~ん…何でだ…」

 

続く

 

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