nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #032「酎と棗(序章)」

――深い森の中を二匹の妖怪が歩いている。

 

彼等は躯の配下の妖怪、月畑と酒王である。

 

※月畑と酒王についてはこちらを参照してください。

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月畑「人間の反応はこっちの方だぞ」

 

酒王「しかし、意外と人間界から魔界に迷い込んで来るもんだな。さっきも飛影様たちが人間の女を保護したばかりだぞ」

 

月畑「そうだな。こんなに迷い込んでくるなら、

本当にこのパトロール隊を作って正解だったよ」

 

酒王「おい、知っているか?煙鬼の打ち出したこのパトロール隊の法案は、元々は雷禅の考えていた政策だったらしいぜ」

 

月畑「そうらしいな」

 

現在の魔界の王である煙鬼が発足した法案が出来るまで、魔界に迷い込んだ人間の運命は、生きて人間界に帰されるか、または妖怪の餌になるかの二つに一つだったのだ。

これまでは、完全に迷い込んだ人間を発見した妖怪の手によって、人間の生死の全てが委ねられていたのだ。

この二つのうち、どちらの可能性が今まで高かったのかというと、妖怪の餌になってしまう可能性の方が高かった。

 

酒王「人間を食べなくなって死んだあの雷禅が考えそうなことだぜ」

 

月畑「ああ。俺的には躯様がこのパトロールをする事に素直に従っているのが未だに不思議だ」

 

酒王「だが、躯様は俺の目から見ても、このパトロールを楽しんでおられるように見える。煙鬼の融和政策に対しても特に反対すらされていないし」

 

月畑「その融和政策自体も雷禅の考えていたことだろう?あの二人は長年対立してきたのに何でだろうな?」

 

酒王「それは分からないが、色々な意見の食い違いで争ってきたとはいえ、お互いにどこか通じるところがあったんじゃあないのか?」

 

森の奥深くまで入ったところで月畑の足が止まる。

 

月畑「おい!話しはここまでだ。人間の反応はこの辺りだぞ」

 

月畑と酒王の目の前には、桑原が登ったあの巨木があった。

 

酒王「いつもなら障気を吸って倒れている人間が、

いるはずなのだが…。いないな」

 

――巨木の上

 

桑原「な、何だ!?すげー妖気を感じたぜ」

 

巨木の上で眠っていた桑原は、月畑と酒王の妖気を感じて目を覚ました。

 

酒王「この木の上から霊気を感じるぞ」

 

月畑「何で木の上なんだ?人間が迷い込んだ時に木の上に落ちたのか?」

 

酒王「とりあえず木を揺さぶってみるか」

 

月畑「そうだな」

 

酒王はガシッと木を両手で掴むとその力で木を揺らし始めた。


桑原「なぬっ!木が揺れ出したぞ!?」

 

いきなりの揺れに慌てる。

 

酒王「フンフン」

 

さらに強く木を揺らす。

 

桑原「およっ!!?」

 

ついに足を踏み外してしまう。

 

ドテッ!

 

地面に尻から落ちる桑原。

 

「い、痛てて…」

 

酒王「いたぞ!人間だ」

 

月畑「何でこの人間、魔界の障気を吸って意識があるんだ?」

 

桑原「クソッ!これだけの妖気を感じるって事はてめーは妖怪だな!」

 

ブォォォォォォ!!!

 

桑原は霊気を一気に開放した。

 

桑原(休んで体力と霊気は随分回復したぜ。ここは強行突破してやる)

 

酒王・月畑(!)

 

思わず目を見開く二匹。

 

酒王「こ、この人間から、凄い霊気を感じるぞ!気の大きさだけなら俺たちと殆ど同じかそれ以上だぞ…」

 

月畑「あ、ああ…。こいつは本当に驚いたな。だが、

こいつを捕獲して、人間界に送り返さないと」

 

桑原「へっ、イライラしているんだ。

やってやるぜ」

 

月畑に向かって一気に駆け出した。

 

桑原「先手必勝!!」

 

月畑「あの人間、やる気だ。こっちに向かって来るぞ」

 

剣を構えて身構える月畑に、酒王が手で制した。

 

 

「ここは俺に任せろ」

 

酒王が桑原の前に出てきた。

 

戦闘態勢に入って身構える。

 

桑原(!)

 

ピキッ!

 

桑原、ここで急ストップ。

 

酒王の姿を見て思わず固まってしまう。

 

酒王の容姿…。

それは少女漫画に出てくるような目をキラキラさせたナルシスト風のイケメン顔…。

その顔を巨大化した身体に、さらにそこから太くて長い両手、そして短い両足が生えていた。

 

ちなみに月畑の容姿は半魚人風の妖怪で、剣の達人である

 

桑原(き、気持ち悪過ぎる…。こ、こんな奴とは死んでも戦いたくないぜ…。こんな奴と戦うなら、

まだあの金髪の野郎の方がいいぞ…)

 

その様子を後ろで見ていた月畑。

やっぱりかって感じの顔。

 

月畑(人間よ…。その反応は間違っていないぞ。

長年の付き合いがある我々も、酒王の姿には未だに慣れないのだ)

 

酒王(あれっ?人間の奴、いきなり止まったぞ)

 

桑原(………)

 

恐る恐る方向転換。

 

ダッダダダダッ

 

桑原は一目散に逃げた。

 

月畑「あっ、逃げた」

 

酒王「あっ!コラァァ!!!待てェェェェ!!」

 

酒王もドスドスドスと足音をたてながら、

慌てて桑原の後を追いかけ始めた。

 

月畑は苦笑いを浮かべている。

 

月畑「しかしあれだけの霊気を持つ人間を傷つけずに捕獲するのはかなりの至難の業だぞ。とりあえず上の方に報告しとくか」

 

月畑は追跡を酒王に任せて、躯の居城に向かった。

 

――その頃、酎と再会を果たした雪菜は

 

雪菜「貴方は酎さん!?」

 

※酎についてはこちらを参照して下さい。

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酎「本当にびっくりしたぜ、森の入口にお前さんが倒れていたんだからな」

 

雪菜「酎さんが私を助けてくださったんですね…。本当にありがとうございます」

 

酎「いいってもんよ。知らない仲でもないしよ~。しかし何があったんだ?全身に軽い打撲を負っていたようだが」

 

雪菜(はっ!?そういえば)


桑原の事を思い出した。

 

雪菜「酎さん、和真さんを見かけなかったですか!!?」

 

酎「和真…?和真って誰だ?知らねーな」

 

雪菜「あっ…桑原です。桑原和真…」

 

酎「桑原…?桑原っていえば確か暗黒武術会の時に浦飯チームにいたあの霊気の剣を出す人間か?」

 

雪菜「あ、はい。そうです」

 

酎「見てないな。俺が見つけたのはお前さん一人だけだったぜ」

 

雪菜「そうですか…」

 

桑原の事を心配して暗い顔になる。

 

酎「とにかくよ。お前さんに何があったか、俺に話してみな。この棗さんと一緒に力になるからよ」

 

棗「そうだよ。私たちが力になる」

 

雪菜「は、はい!!ありがとうございます」

 

二人の言葉に雪菜の表情は明るくなる。

 

棗「え~っと貴方の名前は…」

 

雪菜「あっ、雪菜です。名乗るのが遅くなってすみません」

 

棗、ニコリ。

 

「分かった。雪菜ちゃんだね。じゃあ何があったか話してくれる?」

 

雪菜「分かりました」

 

雪菜はこれまで起きた出来事の全てを酎と棗に話した。

 

…………。

 

…………。

 

酎「なるほどな。あの黄泉と互角にやりあうような奴に狙われたらたまったもんじゃあないな」

 

棗「私は妖気でも霊気でもない気を持っているって奴に興味がある。一度戦ってみたいよ」

 

酎「へへっ、棗さんの事だからそう言うと思ったぜ。

九浄も聞いたら同じ事を言いそうだな」

 

棗「あいつは私の双子の兄だからね。それに他の喧嘩仲間たちもきっと私と同じ事を言うと思うよ。でも酎、そういう貴方も戦ってみたいんじゃないの?」

 

棗の言葉に酎はニヤリ。

 

酎「まあな。なんてったって俺はバトルマニアだからよ」

 

雪菜(なんかこの二人、色々と凄そうです…)

 

酎「でも安心しな。桑原の奴は大丈夫だと思うぜ。魔界には迷い込んだ人間を保護するパトロール隊が作られているんだ。魔界にお前さんと同じ様に飛ばされたんだったら、直にパトロール隊に保護されるだろうよ」

 

雪菜「そうですか…。良かったです…」

 

酎の言葉にホッとする。

 

棗「でも、話しに聞いた男は、その人間を捕まえて一体何に使うのだろうね」

 

酎「さあな。でも桑原が魔界に飛ばされたのなら、

そいつも簡単に桑原に手を出すことは出来ないだろうよ」


棗「そうよ、雪菜ちゃん。保護してしまえば魔界には、私や酎もいるし、私の喧嘩仲間たちや躯もいる。

大丈夫よ」

 

力強い言葉を聞いて雪菜、ニコリ。

 

雪菜はチラッと棗の方を見た。

 

棗に何かずっと聞きたそうな顔をしている。

 

棗「うん、どうしたの?」


雪菜「ところで先程から気になっていたのですが、

棗さんは酎さんとどういう関係なんですか?」

 

棗「あ~、私は…」

 

棗が話そうとしたらズイッと酎が前に出て来て遮った。

 

酎「おっと。お前さんにはまだ話していなかったな。

実はよー…」

 

酎は棗との関係を雪菜に話した。

 

雪菜「えっ!?えーーー!?そうなんですか!!」

 

普段は大人しい雪菜が珍しく大きな声を上げた。

 

酎、ニヤリ。

 

だが、その顔はどこか照れていた。

 

続く

 

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