nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #029「擬態(序章)」

――互角の戦いを繰り広げている黄泉と比羅。

 

比羅「あれは貴様の息子か?」

 

黄泉「そうだ。それがどうかしたのか?」

 

比羅「そうか」

 

比羅、ニヤリ。

 

比羅はこの時、完璧と思われた黄泉の弱点に気付いていた。そしてその黄泉を倒す為の策は既に考えついていたのだった。

 

黄泉(奴は何故、急に修羅の事を?)


突然、修羅の名前が比羅の口から出た事で、

自分では知らないうちに、冷静沈着な思考に僅かながら乱れが生じていた。

その事に彼は気付いていない。

 

比羅(狙い通りだ。奴の妖気に乱れがでた)

 

修羅「パパ…」

 

父・黄泉の戦いを見つめている。

 

その目は父の勝利を信じている。

 

比羅「一応、貴様にもう一度聞くが、桑原を私に渡すつもりはないか?」

 

桑原(……)

 

黄泉の顔を見る。

 

黄泉「ないな」

 

比羅「そうか」

 

黄泉「さっきも言ったが、お前から感じる異質な気が俺の勘に何故か引っ掛かる。そこにいる人間をお前に渡せば人間界のみならず、魔界にも多大な影響を与えかねないとな」

 

比羅「そうか。あくまで私の邪魔をするという事か。ならば遠慮なく倒させてもらうぞ」

 

比羅はそう言うと一歩前に踏み出して構える。

 

黄泉「お前にそれが出来るならな」

 

黄泉もまた構える。

 

比羅「出来るさ」

 

比羅は両手を前に突き出すと両手の手の平に気を集中し始めた。

 

黄泉(気を両手に集中させている。さっき使ったエネルギー波の類の技か)

 

両手の手の平に蓄えられていく気は徐々に大きくなっていく。

 

黄泉「悪いが技が完成するのをゆっくり待ってやるほど俺は甘くないぞ」

 

地面を右足で強く蹴ると比羅の方へ向かって駆け出した。

 

桑原(め、めちゃめちゃ速いぜ!!)

 

黄泉「ハァーーー!!」

 

比羅(さあ来るがいい)

 

ピシッ

 

比羅の足元が僅かだがひび割れた。 

 

この些細な変化に桑原だけが気付いた。

 

桑原「あいつの足元が…」

 

そして黄泉の鋭い一撃が比羅の胸部を捕えた。

その手には妖気の炎が熱く燃えている。

 

修羅「パパやっちゃえーー!!!」

 

桑原(あの足元のひび割れ、どっかで見た事あるぜ…)

 

比羅、ニヤリ。

 

ズボォォォォォォ!!

 

黄泉(なっ!?)

 

黄泉の一撃が比羅の胸を完全に貫いた。無敵の赤いフィールドはこの時何故か作動していなかった。

 

黄泉(何だこの感触は!?)

 

比羅の身体を貫いている腕に違和感を感じる。

 

桑原「おおっ!やったぜ!!!」

 

修羅「流石はパパだ!!!!」

 

桑原(うん……?)

 

桑原は何か黄泉の様子がおかしいことに気付いた。

 

桑原「おい、小僧」

 

修羅の肩を叩く。


修羅「小僧じゃない。修羅だ。僕を子供扱いすんなよ」

 

小僧って呼ばれた事にちょっとムッとなった。

 

桑原「なんかあいつの様子が変だぜ」

 

修羅「えっ?」

 

直ぐに黄泉の様子を見る。

 

黄泉「ぬぅぅ!これは………」

 

黄泉の拳は比羅の胸を貫いたまま静止していた。

 

比羅「動けないだろう」

 

ズズズ………

 

黄泉の背後の地中からもう一人の比羅が現れた。

 

修羅「あいつがもう一人………」

 

桑原「こいつは擬態だ!!」

 

修羅「擬態…?」

 

桑原(やっぱどっかで見た事あるって思ったぜ。あれは戸愚呂(兄)の技に似ている)

 

比羅「これは私の分身体みたいなもの。

私の性に合わない上に、消耗も激しいから滅多に使わない技だ。これを私に使わせただけでもお前は賞賛に価する」

 

ググッ!

 

黄泉は比羅の擬態から抜けなくなった腕を必死に抜こうとする。

だが抜けない。

 

黄泉「さっき時間をかけて気を溜めていたのも、
俺に攻撃をさせる為の囮だったのか…。俺とした事が、こんな子供騙しに引っかかるとは…」

 

比羅「これは私の来た世界から採れる特殊な樹皮と私の気で出来ている。いかに貴様といえども簡単には外せはしないだろう」

 

ググッ!

 

黄泉「くっ…!」

 

比羅「さっき私がお前の息子の事を聞いたよな?それによって貴様は、自分では気付かないうちに冷静さを欠いてしまっていたのだ」

 

黄泉(さっきのことか………)

 

比羅「最強の妖怪とはいえ、やはり親だな。心理戦を相手に仕掛ける事は戦術の基本中の基本だ。これで勝負あったな。貴様は終わりだ」

 

修羅「パパーー!!」

 

父を助ける為に比羅に向かって駆け出した。

 

比羅「小僧が」

 

向かって来る修羅を迎え撃つ。

 

修羅「今度は僕が相手だ」


比羅「父親の戦いを見ていなかったのか?お前ごときでは私の相手にはならない」

 

修羅「僕を甘くみるなよ」


黄泉「止めろ修羅!お前に勝てる相手ではない。寄せ!」

 

ググッ

 

黄泉「くそっ!」

 

必死に足掻くが腕がどうしても抜けない。

 

修羅「ヤッ!!」

 

上に向かって飛び上がる。

 

身体をグルグル回転させながら呪術を唱え始めた。

 

修羅「*⊿#∠∑>/&」

 

妖気が一気に高まる。そして狙いを定める。

 

修羅「くらえェェェ!!魔円咬!!」

 

ドドドドドッ!!

 

回転する修羅の身体から大量の妖気の弾が比羅に向かって放出された。

 

だが、ここで赤いフィールド発動。

 

魔円咬は比羅のフィールドによって完全に遮られる。

 

比羅「お前のその技もこのフィールドの前では無力だ」

 

修羅「クソッ!」

 

頭に血が上る。

比羅に向かって飛びかかる。

顔面を狙って殴りかかった。

 

比羅「遅い」

 

修羅のパンチを片手で受け止める。

 

比羅「お前の攻撃如きにフィールドを使うまでもない」

 

修羅「チクショー!!!」

 

暴れる修羅。

 

比羅に拳を捕まえられたまま、下半身を後ろに振って、

その勢いで蹴る。

 

だが、修羅の蹴りも比羅の空いてる片手で難なく受け止められた。

 

比羅は修羅の足を掴むと、片手だけで小さな修羅の身体を振り回す。

 

比羅「ハァーーー」

 

ドガァァァァン!!!

 

地面に思いっきり叩きつけられる修羅。

それも何度も何度も激しく叩きつける。

 

黄泉「修羅ーー!!」

 

ボロボロになった修羅の身体を逆さ吊りにゆっくりと

持ち上げると顔を近付ける。

 

修羅「…こ、この野郎……」

 

比羅「やはり子供だな。
妖気の高さだけは認めてやる。だが実戦での経験不足に加えてその小さな身体。私と戦うには役不足だったな」

 

修羅、ニヤリ。

 

ペッと比羅の顔に唾を吐く。

 

比羅は無言で掴んでいた修羅の足を放す。

そして。

 

修羅(!)

 

ドゴォォォォォォ!!!!!!

 

修羅を身体を蹴り飛ばす。

 

修羅「うわぁぁ!!!?」


ズシャッ!

 

小さな身体は地面に叩きつけられた。

 

黄泉「修羅ァァァ!!クソッ!!」

 

ググッ

 

黄泉「抜けん。やはり呪術でこれを破壊するしかないな」

 

修羅「クソォォォォ!!!!!」

 

修羅は立ち上がると比羅に向かっていった。

 

修羅「くらえーーーーーー!!」

 

修羅は両手の手の平を広げると妖気の炎が現れた。

 

修羅「僕の得意技!魔炎竜だァァァァ!!!!」

 

ドーーーーン!!!

 

妖気で作られた炎の竜が比羅に向かっていく。

 

桑原「あの小僧、なんてすげー妖気だ。仙水を倒した時の浦飯の妖気とは比べもんにならねー……」

 

比羅、ニヤリ。

 

比羅「本来なら恐ろしいほどの威力があるのだろうが、私のフィールドは無敵」

 

シュゥゥゥ…

 

あっけなく打ち消される魔炎竜。

 

修羅「そんな……」

 

絶望に打ちひしがれて戦意喪失。

 

比羅「所詮は子供だな」

 

一瞬で修羅の懐に入り込む。

 

修羅(!)

 

ドゴォォォ!!!

 

修羅の腹に比羅の拳がめり込む。

 

修羅「うっ……!!ガハッ!」

 

口から大量の血を吐き出し、吹っ飛ぶ修羅。

 

黄泉「修羅!!」

 

桑原「クソッ!!」

 

右手に霊剣を作りだした。

 

雪菜「和真さん!?」

 

桑原「野郎ォォォ!!」

 

霊剣を構えると比羅に斬りかかろうとする。

その姿を見た黄泉が一喝。

 

「行くな!奴の狙いはお前なのだからな」

 

ビクッ!

 

黄泉の言葉で足を止める。

 

桑原(チクショー……)

 

黄泉「#>⊿&⊿∠&∑」

 

擬態を破壊する為の呪術の詠唱を始めた。

 

比羅は黄泉が呪術を詠唱を始めた事に気付いた。

 

比羅「奴があれを外したらまた面倒だな。こいつの相手をしている場合ではない」

 

修羅「ハァハァ……」

(僕は、パパとあんなに修行をして強くなったのに、

こんな奴にここまでやられるなんて……)

 

比羅「時間がない。この一撃でお前を殺す」

 

右手の拳に気を溜める。

 

黄泉「>∑*&⊿>∠…」

(まずい、修羅……!)

 

修羅「クソォォォ……………!!!」

 

比羅「これで終わりだ。小僧!」

 

修羅にトドメを刺すべく走りだした。

 

ここで黄泉の呪術が完成した。


黄泉「ハッ!!!」

 

呪術が発動。

 

ドガァァァァン!!!

 

分身体を粉々に破壊した。

 

比羅「トドメだ。死ぬがいい」

 

ビューーーン!!

 

修羅(殺られる!!)

 

黄泉「修羅ァァァァ!!!!!」

 

続く

 

次へ

戻る