幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #030「転移(序章)」
比羅「トドメだ。死ぬがいい」
ビューーーン!!
修羅(殺られる!!)
黄泉「修羅ァァァァ!!!!!」
バッ!!
黄泉は修羅の下へ飛んだ。
迫り来る比羅。
修羅(かわせない……)
死の恐怖から目を瞑る。
恐怖心が彼の心を支配する。
修羅(…死にたくない……)
ドゴォォォ!!!!
桑原「ああ……!!」
雪菜(!!)
修羅(あれ…?僕、生きてる??)
恐る恐る目を開けてみた。
修羅(!!)
そこには衝撃の光景があった。
思わず叫ぶ、修羅。
「パ、パパァァァァ!!!!!」
比羅、ニヤリ。
「馬鹿め、息子を庇ったか」
黄泉「ぐっ……」
比羅の拳は黄泉の腹部を完全に貫いていた。
黄泉「ガハッ!!!」
口から大量の血を吐いた。
腹部からは血がどんどん溢れ出てくる。
血は比羅の手を伝わり地面にまで流れ落ちていた。
比羅「やはり親だな、黄泉。私としては貴様を倒す手間が省けたから、むしろ願ってもない好都合だ」
ズボッ!!
比羅は黄泉の腹部に貫通している手を引き抜いた。
黄泉「ガハッ!」
黄泉は再び血を口から吐いた。
そしえ腹部を手で押さえると膝が地面についた。
比羅「その身体ではもはや私の邪魔は出来ないな」
修羅「パパァァ!!」
心配そうに黄泉の肩にしがみついている。
黄泉(ぬうう……。思ったより傷が深いな…… )
雪菜「いけない!」
回復の術をかけようと黄泉の所へ駆け寄る。
黄泉「来るな!!」
桑原「雪菜さん!!行ったらいけねーー!!!」
比羅「フッ」
雪菜に右手の手の平を向けた。
比羅「回復の術は使わせない」
ドーーーーン!!!
雪菜に向けて強烈な衝撃波を放った。
雪菜「キャアァァァァ!!!」
衝撃波による圧力が雪菜に襲いかかる。
桑原「雪菜さーーーん!!!」
素早く雪菜の前に立つと、両手の手の平を前に突き出して、全力で霊気を集中。衝撃波の威力を抑え込もうと踏ん張る。
雪菜「か、和真さん!!」
桑原「グォォォォォ!!!!」
ズズズ……
だが、少しずつ衝撃波の圧力に押されていく。
比羅「まだそんなに霊気が残っていたのか。だが無駄だ!」
ドーーーン!!!!
さらにもう一発、強力な衝撃波を放つ。
桑原(!!)
ズズズズズズ………
桑原「チ…チクショーォォォォォ!!!」
黄泉(まずい)
バーーン!!!
桑原の手は衝撃波の威力の前に弾かれた。
二人は衝撃波に飲み込まれる。
桑原「うわァァァァ!!!」
雪菜「キャアァァァァ!!!!!」
ズシャッ!!!
二人の身体は吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。
桑原「クソッタレがァァァ!!」
痛みを堪えながら、どうにかゆっくりと立ち上がる。
桑原「はっ!?雪菜さん!!!」
一緒に吹き飛ばされた雪菜の姿を必死に捜す。
桑原(!)
雪菜は地面に倒れて動かない。
桑原「ゆ、雪菜さーーーん!!!!!!」
ボロボロの身体を引きずりながらも、雪菜の所まで辿り着く。
そして彼女の身体を抱き起こした。
桑原「雪菜さん!!雪菜さん!!雪菜さーーん!!!」
雪菜「うっ……」
桑原「良かった……。気を失っているだけか」
比羅、黄泉と修羅に向けてニヤリ。
比羅「貴様等のトドメは後でゆっくりと刺してやる。
そこで待っていろ。邪魔したかったらしてもいいが、
その身体では何も出来まい」
そう言うと桑原たちの方へ近づいてくる。
桑原「クソォォォ!!」
右手に霊剣を作り出して戦闘態勢。
黄泉(………)
黄泉は比羅に貫かれた腹部の傷を見た。
黄泉(この傷では人間たちを守りながら戦えない。
仕方がない)
比羅「桑原よ。私と共に来てもらうぞ」
桑原(次元刀はもう出せねーし、一体どうすればいい……)
黄泉「∑*#/>∠∑」&」
黄泉は両手の手の平を合わせると呪術の詠唱を始めた。
修羅「パ、パパその術は??」
合わせていた両手の手の平を離すと前に突き出す。
黄泉「ハァァァ!!」
ボーン!
ボーン!
ボーン!
黄泉の手から三つの黒い円が現れた。それはまるでブラックホールの様にも見える
修羅「ま、まさかパパ、それは!?」
黄泉「空間転移の術だ」
黄泉が黒い円の一つに手を触れると円は突然、高速回転を始めた。
続けて残り二つの円にも黄泉は手を触れた。
さっきの円と同様に二つの円も高速回転を始めた。
黄泉「ハァァァ!!!」
黄泉は二つの黒い円を桑原と雪菜に向かって投げた。
比羅も黒い円の存在に気付く。
比羅「な、何だあれは!?」
パァァァ!!!
黒い円が桑原と雪菜を包み込む。
桑原「なんじゃあこりゃあァァァ!?」
修羅「初めて見た!これが空間転移の術…」
ドンッ
修羅(!?)
黄泉は側にいた修羅を残り一つの円の中に突き飛ばした。
修羅「パ、パパ!?」
桑原「て、てめー!これは何なんだァァァァ!?」
黄泉「人間よ。お前を奴に渡すと人間界のみならず、
必ず魔界にも悪いことが起こる。悪いがこの場から逃がす為に、別の場所に飛ばさせてもらうぞ」
桑原「お、おい冗談じゃあねーぜ!!これってまさか」
桑原は自分を包み込んでいる黒い円を見て何かを思い出した。
桑原「こ、この感覚は、死々若丸や鈴木に昔、別の場所に飛ばされたあの感覚と同じだ」
修羅「パパ!僕までどうして??」
黄泉「修羅よ。この場は俺に任せるのだ」
修羅「僕も一緒にあいつと戦うよ」
黄泉「駄目だ。今のお前では到底、奴には勝てない。俺の足でまといになる。お前は父の足でまといになりたいのか!!」
父の言葉にビクッとする修羅。
修羅「で、でもパパは僕を庇って大きな怪我をしてる……」
黄泉、ニコリ。
黄泉「案ずるな修羅。俺には大会用に編みだしたあの技がある。俺一人ならなんとかこの場は切り抜けられる。奴を倒したら直ぐにお前を迎えに行く」
修羅「パパ……」
黄泉は立ち上がると右手を強く握り締める。そして今度は右手を高く上に挙げたのだった。
黄泉「ハァァァ!!!」
掛け声と共に三つの円は空高く昇った。
比羅(!)
桑原「何だ!身体がどんどん何かに吸い込まれていく!!」
黄泉「∑⊿#」
黄泉の短い詠唱によって円の回りは強力な妖気に包まれる。
黄泉「ハァッ!」
桑原「ま、またかよ~~~!!!雪菜さ~~ん!!」
修羅「パパァァ!!」
フッ
桑原と雪菜と修羅の三人の姿はこの場から完全に消え去った。
比羅「消えた!?」
黄泉「上手くいったな」
ズキッ
黄泉「ぬうう……」
腹部の傷の痛みで再び地面に膝をつけた。
比羅は黄泉を睨みつけた。
比羅「き、貴様ァァァァ!!!!」
怒る比羅とは対象的に黄泉は冷静。
黄泉「フッ、これでゆっくりとお前と勝負の続きが出来るな」
――とある森
上空に黄泉の飛ばした黒い円が姿を現した。
桑原(!)
そして黒い円は上空で突然消えた。
桑原「ウォォォォ!?」
ドタッ!!
桑原は空からどこかの暗い森の中へと落とされたのだった。
桑原「痛てて……。ここはどこだ?」
辺りを見回すと桑原が落ちた森は、障気に満たされた異様な雰囲気を醸しだしていた。
桑原「こ、ここは…まさか!?」
続く