nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #027「追跡者・比羅(序章)」

比羅「初めまして桑原。私はお前の力が欲しい」

 

桑原(!!)

 

桑原は比羅を見た瞬間、全身に鳥肌がたった。

この感覚は久しく忘れていた。

いや忘れていたかったのかもしれない。

初めて戸愚呂(弟)が100%になったとき以来だ。

この感覚が行き着く先、それは恐怖でしかない。

 

桑原「てめーは一体何者だ?」

(何だ、こいつから感じる気は…。今まで感じたことのねー感じだぜ)

 

外は寒い冬。だが、比羅を見た瞬間から額からの汗が止まらない。

 

比羅「フッ、何者かだと?こうすれば私の事に気付いてもらえるかな?」

 

比羅の目が一瞬光った。

 

桑原(この視線は!!!?)

 

比羅「その顔を見ると、
どうやら分かってくれたみたいだな」

 

桑原「そうか。俺が時々感じていたあの視線はてめーの仕業か!」

 

比羅「そういうことだ」

 

桑原「何で俺をずっと監視していたんだ!!」

 

声を荒らげる。声を荒げていないと比羅から感じるプレッシャーに押し潰されそうになる。

 

桑原(あの視線は、雪菜さんを狙っていたものじゃあなくて俺だったのか…)

 

比羅「さっきも言ったがお前の力が欲しいからだ。
監視していたのは、まさか人間の中に私たちの目的を成就させる可能性がある能力者がいるとは、にわかに信じがたかったからだ。

能力者かどうか確認する為に、お前を暫くの間、

監視させてもらっていたというわけさ」

 

桑原(能力者…)

 

比羅「ある男からお前の存在のことを聞いた。私たちの目的の成就にはお前が持つ能力が必要なのだ」

 

桑原「ある男?俺の能力を必要とするならてめーの目的は、俺の次元刀か!」

 

比羅「フッ、何故次元刀だと思う?」

 


桑原「昔、俺の次元を切る能力を欲しがって、

俺を捕まえた野郎たちがいたからよ!!」

 

比羅「あの男からも聞いているよ。次元を切り裂くことの出来るお前の次元刀。人間とは思えない素晴らしい能力だ。だがお前にはさらなる上位能力に目覚める素質がある。私たちの目的には、その目覚めた能力の方が必要なのだ。彼は、お前ならその能力に必ず目覚めると言っていたよ」

 

桑原「次元刀を超える上位能力だと!?」

 

その能力に心当たりはあった。

 

桑原(昨日、鈴木にもらった試しの剣で、次元刀を出した時に出たあの剣がそうなのか??いやいや…まだ答えを出すには早いぜ。力が尽きて試してないからどんな力かも分かんねーし…)

 

比羅「人間相手に手荒い真似はあまりしたくはない。

協力をすれば身の安全は保証してやる。拒めば私は、力に任せて言うことをきかせることも出来るのだ」

 

桑原(……)

 

チラッと雪菜を見た。

 

雪菜「和真さん…」

 

雪菜は心配そうな顔で桑原を見つめている。

 

桑原(クソッ…。あいつが何者か分かんねーが、

俺が手に負える相手じゃねーぜ…。俺のせいで雪菜さんをこんな危険な目に合わせちまうなんてよ…)

 

雪菜はギュッと桑原の服を掴む。

 

桑原「てめーがさっきから言っている“あの男”って奴は、何で俺の事を知っていやがるんだ?」

 

比羅「やはり気になるか?お前とは面識のある者だ。私と来ればすぐに会わせてやるさ」

 

桑原「けっ!別に会いたくもねーぜ!!こんなこと企むなんてろくな奴じゃねーだろうからな」

 

この状況から打開する為に頭の中で必死に考える。

雪菜をなんとしても守らないと。

 

桑原(どうする?とりあえずこの場所から逃げることを考えねーと…)

 

比羅「さてどうするのか?隣にいる氷女をどうにかすれば私に協力してくれるのかな?」

 

雪菜を見る比羅。

 

桑原(!!)

 

このままでは雪菜が危ない。

比羅の言葉に桑原は強い殺気を見せた。


桑原「雪菜さんには指一本触れさせねー!!」 

 

右手を前に突き出すと霊気を集中。

 

桑原「行くぜ!!!次元刀ォォォ!!!」

 

ピキーン

 

桑原の右手に次元刀が現れた。

 

比羅「なるほど。これが次元刀か」

 

桑原「おりゃあぁぁぁ!!!」

 

次元刀で比羅に斬りかかる。

 

桑原(先手必勝!!!)

 

比羅「フッ」

 

その場所から一歩も動かない。

 

比羅(私にはフィールドがあるが、あの男の言う通りなら、あの剣に直接接触するのは止めといた方がいいな)

 

ビューン!!!

 

桑原の一撃が比羅の頭上に振り下ろされた。

 

比羅「遅い」

 

次元刀が比羅の身体に触れる瞬間、桑原の前から姿を消した。

 

空を斬る次元刀。

 

比羅「こっちだ」

 

桑原(!)

 

比羅はいつの間にか桑原の背後に回っていた。

 

比羅の拳が桑原の顔面をとらえる。

 

桑原「ぐわァァァァ!」

 

ズシャッ!

 

桑原は比羅によって雪菜の立っている場所まで殴り飛ばされた。

 

雪菜「和真さん!!!」

 

倒れた桑原に直ぐに駆け寄る。

 

桑原「うっ…チクショー……!」

 

桑原は直ぐに立ち上がろうとした。

だが、足が膝から崩れ落ちた。


地面に膝をつく桑原。

ブルブルブルっと膝が震えている。

 

桑原(た、立てね…!?)

 

比羅「今の一撃で足にきたようだな。もう戦う事も逃げることも出来ない」

 

桑原「やべーぜ…」

 

比羅を見上げる桑原。

 

桑原(こいつ、やっぱりとんでもねー奴だ。俺が勝てなかった仙水以上の強さだぜ…)


雪菜「和真さん、動かないで」

 

桑原の足にそっと手を当てると回復の術をかけ始めた。

 

桑原「雪菜さん…」

 

身体全体が温かくなる。

癒しの力が桑原の身体を包み込む。

 

比羅「あの氷女…。まさか回復の術が使えるのか」

 

桑原「助かりましたよ、雪菜さん。なんとかこれで少しは動けます」

 

そう言うと桑原は立ち上がった。

 

雪菜「良かったです、和真さん」

 

立ち上がった桑原を見て安堵の溜め息。

 

桑原「すんません雪菜さん。奴の狙いは俺だ。

俺のせいで危険な目に巻き込んじまって」

 

雪菜「和真さん、私の事は大丈夫です。それよりここから逃げた方がいいです。あの人は人間でも妖怪でもないです。凄く異質な気を感じます」

 

桑原は雪菜の顔を見た。比羅を見るその顔は、

かって樽金に見せていたあの時の氷のような表情だ。

 

桑原「そうっすね…。俺も今まで感じたことのない気を感じますよ」

(雪菜さんも感じたか…。妖気でも霊気でもない異質な気だもんな)

 

雪菜「和真さん、どうしますか…?」

 

桑原「俺に任せてください」

 

桑原の考えた打開策。

それは幽助たちと正聖神党と戦った時に使った、

蔵馬のあの作戦だった。

 

桑原(俺の次元刀にしか出来ねーことだ)

 

比羅「先ほどの氷女に対するお前の反応。その氷女をどうにかした方が、お前を協力をさせるのに一番効果的みのようだ」

 

比羅はゆっくりと歩いて桑原たちに近付いてくる。

 

桑原「させねーぜ!!」

 

再び右手を前に突き出した。

 

桑原「次元刀ォォォ!!!」

 

ピキーン

 

右手に再び次元刀が現れた。

 

桑原(上手くいくか分からねーが、次元刀で空間を切り裂いて他の場所に逃げてやる。名付けて“どこでもドア作戦゛だぜ)

 

雪菜に小声で話しかける。

 

桑原《雪菜さん、俺は今からこの次元刀で空間を切り裂く。そうしたら直ぐに俺にしがみついてください。ここから逃げます》

 

無言で頷く雪菜。

 

桑原「絶対に俺は雪菜さんを守ってみせますから」

 

雪菜、ニコリ。

 

「私は和真さんを信じていますから」

 

桑原「行くぜ」

 

比羅を睨みつける。

 

桑原「てめーの思うようには絶対にさせないぜ!」

 

比羅「お前に私から逃れる術はない」

 

桑原、ニヤリ。

 

「そいつはどうかな!!」

 

左手を握り締めると霊気を集中し始めた。

 

ジジジ…

 

そして左手の手の平を広げると霊剣手裏剣を比羅に向けて放った。

 

比羅「霊気で作った手裏剣か。面白い技を使うな」

 

霊剣手裏剣が比羅に触れる瞬間、無敵の赤いフィールドがその姿を現した。

 

そしてフィールドによって霊剣手裏剣は瞬時に消滅。

 

比羅「無駄だ。お前には言っていなかったが、

私の身体はフィールドによって守られている」

 

桑原「そんなもん知ったこっちゃねー!行くぜ、次元刀ォォォ!!!」

 

シュパン!!

 

次元刀で自分の目の前の空間を円状に切り裂いた。

 

桑原「霊剣手裏剣はあくまで囮よ!!」

 

比羅(!)

 

桑原「雪菜さん!!!」

 

雪菜「はいっ!」

 

しがみついてきた雪菜の身体をガシッと左手でしっかりと受け止める。

 

そして空いた空間に桑原は雪菜を抱えて飛び込んだ。

 

比羅「何だと!?」

 

驚いた比羅が桑原が開けた空間に近付いた時には、

既に遅かった。切り裂かれた空間は閉じたのだった。

 

比羅「次元刀で切り裂いた空間の穴に飛び込むとはな…。こんな事を考える奴とは。人間だと思って少し甘く見過ぎていたな」

 

だが、比羅には焦った様子はない。

消えた空間を見ながら呟く。

 

比羅「いい考えだったが私から逃れられはしないぞ」

 

――桑原と雪菜は空間から脱出した先に降り立っていた。

 

辺りを見渡し状況を確認する桑原。

 

桑原(ここからなら蔵馬より浦飯の屋台の方が近いな)

 

雪菜「ここは何処でしょうか?」

 

桑原「多分、街外れにあった広い空き地みたいですね」

 

雪菜「和真さん、これからどうしますか?」

 

桑原「とりあえず、今はここを出て浦飯か蔵馬に助けを求めないといけないっす。悔しいけどあいつには、今の俺では歯がたたないです」

 

そう言うと一瞬、目の前が暗くなって身体が倒れそうになる。

 

雪菜が咄嗟に桑原の身体を支えた。

 

桑原(やっぱり霊剣手裏剣と次元刀の同時使用は身体に結構くるな…)

 

雪菜「身体は大丈夫ですか?」

 

雪菜は心配そうにしている。

 

桑原「大丈夫っす。あいつが来る前に行きましょう、雪菜さん」

 

雪菜「はい…」

 

桑原は雪菜の手を取ると空き地の出口に向かって走り出した。

 

そして出口が見えてきた。

だが出口には一人の男が立っていた。

 

「待っていたぞ」

 

桑原・雪菜(!!)

 

比羅である。

 

比羅「言っただろう?私から逃れる術はないとな」


桑原「何でここが分かった!?」

 

比羅「お前の肩を見てみるがいい」

 

桑原「これは…」

 

桑原は肩に小さな丸い装置がついている事に気付いた。

 

比羅「霊気を探知する発信機だ。先ほど私に斬りかかってきた時につけておいた」

 

桑原「クソッ!間抜けだったぜ…」

 

発信機を外すと握り潰した。

 

比羅「もう同じ手にはかからない。ここまでだな」

 

桑原「クソッたれェェェ!!」

 

右手を突き出すと霊気を集中する。

 

ジジジ・・

 

桑原(次元刀が出ねー…!?)

 

右手には次元刀ではなく普通の霊剣が現れた。

 

比羅「かなり霊気を消耗してしまっているようだな」

 

比羅は瞬時に桑原の懐に入り込む。

 

ビューン!

 

桑原(!)

 

ドゴォォォ!!!

 

桑原「がはっ!!」

 

比羅の一撃を腹に受けた桑原はその場に倒れた。

 

雪菜「和真さん!!!」

 

桑原(チ…チクショー!!!)

 

比羅「さあ一緒に来てもらうぞ、桑原」

 

その時だった。

 

ドーン!!!

 

突然、妖気弾が比羅に向かって放たれた。

 

比羅「何!?」

 

妖気弾は比羅のフィールドによって遮られる。

 

そして妖気弾が消えると同時に小柄な少年が現われる。比羅の一瞬の隙をついて桑原を抱えて走る。

 

比羅「何者だ!」

 

黄泉「でかしたぞ修羅」

 

修羅「へへっ」

 

比羅に黄泉は不敵に笑って答える。

 

黄泉「俺か?俺の名は黄泉だ」

 

続く

 

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