nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #028「互角の戦い(序章)」

黄泉「俺か?俺の名は黄泉だ」

 

修羅が黄泉の側まで桑原を運んできた。

 

桑原(…だ、誰だこいつらは…?)

 

桑原の目に映ったのは目を瞑った男と生意気そうな感じの小柄の少年の姿だった。

二人の頭についている角、そして感じる巨大な妖気。

彼等が人間ではなく妖怪だという事は直ぐに分かった。

 

黄泉が桑原に話しかける。

 

黄泉「お前は人間にしては高い霊力を持っているようだな」


桑原「て、てめーは一体…!?」


黄泉「フッ」

 

桑原の質問には答えず不敵な笑みで返した。

 

桑原(あいつ、確かさっき名前を黄泉って言っていたな?どっかで聞いたことのある名前だな…)

 

比羅「黄泉といえばかって魔界の三大勢力の一つとして君臨していた妖怪の名だ。お前はあの黄泉なのか?」

 

比羅は黄泉の名前を聞いて、

少し驚きながらも表情は変えていない。

 

桑原(!)

 

黄泉「俺の事を知っているのか?貴様が何者かは知らんが、霊気でも妖気でもない面白い気を持っているな」

 

比羅「やはりあの黄泉か。貴様が何故人間界にいるのか不思議だが、そんなことは今はどうでもいい。何故私の邪魔をして人間を助けた?」


桑原(黄泉か…、思い出したぜ…。浦飯が魔界統一トーナメントで戦った相手だ。そして浦飯を倒した妖怪…)

 

雪菜「和真さん…」

 

桑原の側に駆け寄り、身体にそっと手で触れる。

 

桑原「雪菜さん…」

 

比羅に受けたダメージが大きく、身体を殆ど動かす事が出来なくなっていた。

 

雪菜の回復の術で桑原の傷が癒えていく。

 

雪菜「私の回復の力では、傷と体力の回復は同時に出来ません。ですが、少しはこれで動けるはずです」

 


桑原「すまねー、雪菜さん」

 

雪菜は黙って頷いた。

 

桑原(黄泉か…)

 

自分の目の前に現れた最強の妖怪の姿を目で追う。

 

黄泉「魔界に戻る前に知人に会いに来たら、

やたらと高い霊力と異質な気を感じてな。興味本位でここに立ち寄ってみただけだ。その人間を助けたのもあくまで成り行きよ」

 


比羅「ならば貴様に関係ないだろう。その人間を私に渡してもらいたい」

 

黄泉「俺にとってこの人間の事はどうでもいいが、
俺の勘はお前にこの人間を渡すなと言っている。

それにお前の持つ異質な気に少し興味がある」 

 

比羅「あくまで人間を私に渡すのを拒むというわけだな」

 

黄泉「俺が拒むと言ったらお前はどうする?」

 

比羅「貴様を倒すまでだ」


地面を蹴ると凄まじいスピードで黄泉に接近した。

 

黄泉はすぐさま戦闘の構えを取った。

 

比羅「ハァァ!!」

 

鋭い蹴りを黄泉の顔面を狙って放った。

 

黄泉「フン!!」

 

ガシッ!

 

黄泉、比羅の鋭い蹴りを左手で受け止める。

 

黄泉「トァァッ!!」

 

ビューン!!

 

空いてる右手で素早い一撃を比羅に向かって放った。

 

比羅「フッ」

 

ガッ!

 

黄泉(!)

 

比羅の顔面を完全にとらえたかに見えた黄泉の一撃は、赤いフィールドによって遮られた。

 

黄泉「何だこれは!」

 

直ぐにバックステップで後ろに下がり比羅と距離を取った。

 

比羅のフィールドに驚く黄泉。

 

比羅、ニヤリ。

 

比羅「私には常に身体を守る赤いフィールドが張られている。物理的な攻撃はもちろんのこと、妖気や霊気の類のエネルギー波は私には通用しない」

 

黄泉(なるほど。さっき人間を助ける時に放った妖気弾が遮られたのはあれのせいか…)

 

比羅「行くぞ黄泉」

 

再び地面を蹴ると黄泉に向かって駆け出した。


黄泉は自分の身体に流れる一人の戦士としての血が騒ぐのを感じた。

 

この感覚は浦飯幽助との戦い以来であった。

 

黄泉、ニヤリ。

 

「無敵のフィールドか…。面白い。そのフィールドは

俺が破壊してくれるわ」

 

黄泉も地面を蹴ると比羅に向かっていった。

 

比羅「ハァァーー!」

 

黄泉「ハッ!」

 

ビューーン!!!

 

同時に繰り出される拳と拳。

 

ドガァァァン!!!

 

お互いの拳と拳がぶつかりあった。

それを皮切りに激しい肉弾戦が始まった。

 

雪菜「キャアァァ!!」

 

周辺には凄まじいまでの衝撃が走る。

 

桑原「す、すげーぜ…」

 

今の桑原にはぶつかり合う黄泉と比羅の動きを目で追いかけるのがやっとであった。

 

桑原(これがS級を超える奴らの戦いかよ…)

 

黄泉「トァァ!!」

 

比羅「ハァ!!」

 

今度は黄泉と比羅の蹴りが同時のタイミングで放たれた。

 

そしてお互いの足がぶつかり合い、交差した状態で一時静止した。

 

黄泉・比羅(面白い)

 

一度静止した後、黄泉と比羅はまた激しい肉弾戦を開始した。 

 

桑原「すげーぜ…。俺とはあまりにも次元が違い過ぎる……」

 

桑原の隣に修羅がやってくる。

 

修羅「あいつ、凄いや。パパと互角に戦ってる」

 

桑原(パパ?こいつ黄泉の子供かよ!?)

 

修羅(防御力は、あのフィールドってやつがあるから、パパよりあいつの方が有利みたいだ。でもスピードならパパがあいつより上回っている)

 

桑原「…浦飯の野郎、あんなとんでもない化物と60時間以上も本当によく戦ったな…」

 

比羅「ハァーー!」

 

ビューン!!

 

比羅の鋭い一撃が黄泉の腹部を狙う。

 

黄泉「甘い」

 

拳は空を切る。

 

比羅(!)

 

黄泉の残像が比羅の視界に残る。

 

黄泉「本物の俺はこっちだ!」

 

比羅の背後に姿を現した。

 

そして右手を突き出すと、手の平を広げて妖気弾を放つ。

 

ドーーーーン!!!!

 

比羅「無駄だ」

 

比羅は直ぐに振り返ると黄泉の妖気弾に向かって走っていった。

 

赤いフィールドに遮られる妖気弾。 

 

黄泉「あれも遮るのか…。本当に強力なフィールドだ」

 

そのまま黄泉に接近する比羅。

 

比羅「くらうがいい!!!」

 

両手を頭より高く上げると気を溜める。

 

比羅の気で作られた巨大なエネルギーの塊が徐々に姿を現した。

 

黄泉「奴の気で作ったエネルギー弾か」

 

比羅「ハァッ!」

 

ドーーーーン!!!

 

走りながら巨大なエネルギー弾を放つ。

 

黄泉は立ち止まる。

 

そして右手の人差し指を立てて自分の眉間に充てると

呪術の詠唱を始めた。

 

黄泉「∑⊿∟∠#&」

 

修羅「あれはパパの呪術だ!!」

 

黄泉「ハァッ!!」 

 

黄泉のかけ声と共に目に見えない衝撃波が、

比羅の気で作られたエネルギー弾を打ち消した。 

 

比羅「俺の気を打ち消すとは…」

 

黄泉「弾くことも出来ただろうが、俺は用心深いからな」

 

そう言うと比羅に向かって駆け出した。

 

比羅「やるな」

 

比羅も駆け出す。そして再びぶつかる黄泉と比羅。


二人の激しい肉弾戦が果てしなく続く。 

 

全体的にスピードで比羅を上回る黄泉は、比羅の攻撃をかわしながら、鋭い攻撃を繰り出していた。そのいくつかは完璧に比羅の急所をとらえていた。だが、その全ての攻撃はフィールドによって遮られていたのだった。

 

修羅(パパの攻撃は、普通の相手だったら致命的なものになるぐらい、完璧なタイミングで放っている。
でもあいつの身体には一発も当たっていない。あのフィールドがあまりにも強力なんだ)

 

黄泉(俺の攻撃が全てあいつのフィールドに遮られている…。実際に奴はあのフィールドがある限り、防御が必要ない。防御をおろそかに出来る分、あいつは一撃、一撃に力を集中出来る。奴の攻撃を受けないように気をつけねば)

 

比羅(戦闘力的には私と殆ど互角か…。人間界に来て、まさかこんな奴と遭遇するとはな。計算外だった。桑原の捕獲には駁も連れてくるべきだったな) 

 

黄泉「トァァッ!!」

 

鋭い蹴りを比羅に放った。

 

ガッ!

 

赤いフィールドが黄泉の蹴りを遮る。

 

黄泉(どうやら通常の攻撃ではあのフィールドを破壊することは不可能のようだな)


比羅「ハァーーー!」

 

次々と激しい攻撃を仕掛ける比羅。そしてその全ての攻撃を素早い動きでかわす黄泉。

 

比羅(流石は黄泉だ。動きに全く無駄がない。完成されている。このまま奴とまともに戦っていては、私の攻撃を当てることが難しい。奴も私同様に防御は完璧だ)

 

バックジャンプで後ろに下がって黄泉と距離を取った。

 

黄泉「何をするつもりだ?」

 

ここで比羅はチラッと修羅を見た。

 

修羅(あいつ何だ?僕の方を見て)

 

比羅「あれは貴様の息子か?」

 

黄泉「そうだ。それがどうかしたのか?」

 

比羅「そうか」

 

比羅、ニヤリ。

 

比羅はこの時、完璧と思われた黄泉の弱点に気付いていた。そしてその黄泉を倒す為の策は既に考えついていたのだった。

 

続く

 

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