幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #021「桑原たちの行方(序章)」
――人通りの少ない路地裏
幽助と蔵馬にとっては久しぶりの再会であった。
幽助「蔵馬、おめーに会うのは数ケ月ぶりぐらいか」
蔵馬「そうだな。しかし幽助と黄泉にここで会うとは思わなかったから本当に驚いた。それより…」
蔵馬は壁を背に腰を下ろしている黄泉に話しかける。
「黄泉、その傷は一体どうしたんだ?」
黄泉「成り行きで人間たちを助けた代償だ」
蔵馬「助けた人間たち?」
幽助「黄泉が追われていた桑原たちを助けてくれたみてーなんだ」
蔵馬「そうか、黄泉が桑原君たちを…」
(俺が戦っている間、あの男の仲間が桑原君たちに接触していたのか。やはり桑原君には危険が迫っていたんだ)
黄泉「魔界に戻る前に、最後にお前と会って帰ろうと思ってな、この街に修羅と寄ったんだが、珍しく強い霊気を感じて気になって見にいったのだ。すると追いつめられている人間たちを見つけたということだ」
蔵馬「そうか。それで桑原君たちは今どこにいるんだ?みんなは無事なのか?」
黄泉「ここにはいない。修羅と人間たちは、俺が別の場所に飛ばした。恐らく無事だと思うが」
蔵馬「飛ばした?」
黄泉「ああ。別の場所にな。俺が人間たちをここから飛ばしたのは、側にいて奴から守りきれないものがあった。だがそれよりもあの人間を奴に渡したら、何かとんでもないことが起こりそうな、そんな予感を肌で感じたのだ」
蔵馬「お前が守りきれないとは相当なものだ。黄泉のその傷を見たらどんな戦いしていたのか、大体想像出来たよ」
蔵馬は黄泉の受けた傷を改めてみた。かなりの傷だ。
相手の強さは少なく見積もっても、黄泉と同等クラスの強さの持ち主だとわかる。
黄泉の傷の具合を見た蔵馬は、持ち歩いている薬草を使って、応急処置した。この薬草は、魔界で仙水と戦ったときにも使っていたものだった。
蔵馬、ニコリ。
「しかし人間を完全に食料としてしかみていなかったお前が、その人間を助けるとは、昔のお前からしたら考えられないな」
蔵馬の言葉に黄泉は苦笑い。
黄泉「全くだ。お前と盗賊をしていた頃は、俺は血の気が多かった。あの頃の俺ならきっと助けてはいないだろう。お前たちの影響を少なからず受けてしまっているようだ」
蔵馬「お前も幽助に影響を受けたってことだ」
幽助「それで蔵馬、おめーはどうしてここに?」
蔵馬「ああ。桑原君と雪菜ちゃんと昼間に会ったんだが、その時に桑原君から何者かの視線を感じているという相談を受けたんだ。気になって桑原君たちを探していたらここに行き着いたってわけさ」
幽助「なるほどな。あーそういえば、一昨日桑原に会った時にあいつ、蔵馬に会いに行くって言ってたっけな」
蔵馬「そういう幽助こそ、どうしてここに?」
幽助「蔵馬と似た感じだ。仕事を始めたら黄泉の妖気を感じっちまってな。それで気になって来てみたんだ」
黄泉(………)
何か少し険しい顔で何かを考えている。
蔵馬「どうしたんだ?黄泉」
「蔵馬、お前は隠しているようだが、少し呼吸が乱れている。俺と同じ様にどこか傷を負っているのか?」
幽助は黄泉の言葉を聞いて、少し驚いた顔で蔵馬を見る。
幽助「そうなのか蔵馬?」
蔵馬「黄泉、よく分かったな。お前には流石に隠せないな。さっき桑原君を狙った男の仲間が接触してきたんだ。これはその時の戦いで負った傷だよ」
黄泉「目が見えないだけに人に分からないものが俺にはよく分かる。それでお前に接触してきた奴はどうした?」
蔵馬「苦戦したがなんとか倒したよ」
黄泉「流石だ。しかし俺と浦飯が戦った比羅とかいう男。俺と浦飯と同等かそれ以上の力をもっている。力も出しきった感じではなかった」
幽助「ああ。そうみてーだな。あの野郎、次に会ったら絶対にぶっ倒してやる」
蔵馬「俺が倒した男の名前は分からないが、物体を武器化する力をもった奴だったよ。力を出される前に倒せたから良かったが、全力を出されていたら実際に勝てたかどうか分からない」
幽助「しかし何で蔵馬に接触して来たんだ?あいつらの狙いは桑原だろ?」
蔵馬「俺が桑原君と昼間に会った時に、彼を監視する者の視線に俺が気付いた。多分奴らの目には、俺が彼らの邪魔する敵だと思ったんだろう」
黄泉「蔵馬、お前が倒した男から妖気でも霊気でもない、何か異質な気を感じなかったか?」
蔵馬「黄泉の言うとおり、奴は異質な気を持っていた。その口ぶりだと、黄泉たちが戦った相手もそうみたいだな」
黄泉「ご名答」
幽助「あいつら、一体何者なんだ」
蔵馬「正体も気になるが、彼らが何故桑原君を狙うのか。また桑原君を使って一体何をするのか。彼らと戦うならこっちも情報をある程度仕入れる必要がある」
頭の中で現在ある情報を整理する。
幽助「蔵馬、何かいい考えでもあんのか?」
蔵馬「幽助、もしかしたらコエンマなら何か知っているかも知れないですよ。霊界の情報網ならあるいは」
幽助「そっかー!コエンマならなんか知ってるかもしれねーな。あいつ、ああ見えて霊界で偉い奴だからな。伊達におしゃぶりをしゃぶってねーぜ」
黄泉「おしゃぶり??」
おしゃぶりという単語に黄泉は不思議そうな顔をした。
蔵馬(幽助、おしゃぶりは関係ないんでは…)
幽助「屋台もそのままにしているし、コエンマと話すなら、俺の家に行こうぜ。ぼたんにもらった霊界と通信出来るモニターがあるからよ」
蔵馬「そうだな。黄泉も傷の手当をきちんとする必要があるし、幽助の家に行こう。それでいいか黄泉?」
黄泉「ああ」
幽助「肩を貸すぜ」
幽助は黄泉に肩を貸す。
黄泉「すまんな」
三人は幽助の家に向かって歩き始めた。
蔵馬「そういえば黄泉、肝心の桑原君たちを何処に飛ばしたのか聞いていなかったが、一体お前は何処に飛ばしたんだ?」
幽助「俺もそれは気になっていた。まだ聞いてなかったよな。比羅の野郎も気にしていたし」
二人は黄泉の顔を見た。
黄泉はニヤリと不敵な笑みを浮かべて答える。
黄泉「魔界だ」
続く