幽☆遊☆白書~2ND STAGE~#020「幽助登場(序章)」
――広い建物の跡地
黄泉「魔古忌流炎裂撃」
比羅(!!)
ドガァァァ!!
黄泉の切り札炎裂撃が比羅の胸部に直撃する寸前、
比羅は咄嗟に右に避けた。その為、黄泉の一撃が急所から外れて比羅の肩に直撃した。
黄泉「避けられたか」
比羅の左肩が黄泉の一撃で黒く変色している。
比羅はチラッと自分の左肩を見た。
「やるな。私のフィールドを破壊して、私の身体に傷をつけることが出来るとは驚いたぞ」
黄泉(確実に奴の胸に直撃したと思ったが…。あれを避けることが出来る奴とは)
比羅「惜しかったな」
黄泉「惜しくはないさ。これで貴様のフィールドは完全に破壊して無くなったぞ。負傷しているとはいえ、貴様を倒す力はまだ残っている。覚悟するがいい」
黄泉の言葉を聞いた比羅は大声で笑う。
黄泉「何がおかしい」
比羅「フィールドを破壊しただと?めでたい奴だよ。これを見るがいい」
比羅は握り締めた右手を上に向かって高く突き上げた。
黄泉(!!)
比羅の赤いフィールドが再びその姿をあらわす。
比羅「フィールドは私の能力だ。私が望めば何度でも再生出来る」
黄泉(なるほど、こいつは厄介だ)
比羅「貴様の呪術は見せてもらった。二度と同じ手は私に通用しない」
黄泉(俺の呪術で奴のフィールドを破壊できるのは分かったが、破壊しても奴のさっきの動きから、致命的なダメージを与えるのは簡単ではない。一体どうする?)
比羅に受けた傷を見る。胸と腹に大きな傷がある。
特に修羅を庇って受けた腹の傷が深い。かなりの重症といえる。
黄泉(この傷で出来るかどうかわからんが、禁断の呪術を奴に試してみるか。上手くいけば呪術で奴の動きを封じられる。そしてもう一度フィールドを破壊して炎裂撃を奴に叩き込めば、あるいは…)
黄泉は一度息を吐くと再び戦闘態勢に入った。
その時だった。黄泉の研ぎ済まされた聴力が、遠くからここに向かってくる者の足音を聴きとる。比羅はまだ気付いていない。
黄泉(誰かがこの場所に向かって来ている。人間ではない。恐らくあいつだ)
比羅「さあ、続きをやろうか」
お互いに構えて相手の動きを伺う。そして両者が飛び出した。
幽助「黄泉ー!!」
黄泉・比羅(!!)
幽助が黄泉たちの前に現れた。その瞬間、黄泉と比羅の動きがピタリと止まる。
幽助は黄泉の顔を見てニヤリ。
幽助「次に会うのが大会の予定だったが、また会っちまったな」
黄泉「浦飯、どうしてここにきた」
幽助「あんなに直ぐ近くで、おめーがあれだけでかい妖気をぶっ放していれば、嫌でも気付くぜ」
幽助は黄泉の胸部と腹部の深い傷と無数のかすり傷を見た。
幽助「これをやったのはあいつか?おめーにこれだけの傷をつけるってただもんじゃねーな」
そう言うと幽助は比羅に視線を移した。
黄泉「気付いているか浦飯?奴は妖気でも霊気でもない異質な気を持っている」
幽助「そうみてーだな。あいつから今まで感じたことのない気が感じる」
黄泉「浦飯、あいつはお前の仲間の人間を狙っている」
幽助「人間の仲間?もしかして桑原の事か」
黄泉「人間と一緒にいた氷女、それに修羅は危険と判断したから、逃がすために俺が別の場所へ飛ばした」
幽助「そっか…。詳しい話しは後でまたゆっくり聞くぜ。まずはあいつをなんとかしねーとな」
幽助は目を瞑ると息を軽く吐いた。
幽助「ハァァ!!!」
ブォォォォォォ!!!
そして幽助は目を開けると同時に比羅に向けて攻撃的な妖気を放出した。
黄泉(浦飯、三年の間にここまで妖力を上げているとは。驚いたぞ)
幽助の妖気を感じた比羅の表情が変わる。
比羅「そこにいる黄泉とほぼ同等クラスの妖気だな。貴様は何者だ?」
幽助「俺は浦飯幽助だ。てめえこそ何者だ?」
比羅「そうか貴様があの浦飯か。私の名は比羅。貴様の事は、あの男から聞いてよく知っている」
幽助「そいつは誰だよ?」
比羅「貴様に話す義理はない。だが一つだけ教えてやる。貴様と面識のある男だ」
幽助「なるほどな。そいつが誰かわかんねーが、今回の黒幕って奴だな」
比羅「黒幕になるのかどうかは知らんが、あの男が私たちが行動を起こすきっかけになったのは間違いないな」
比羅はそう言うと再び気を解放した。
「お喋りはここまでだ。私はそこの男から、桑原を何処に飛ばしたか吐かせないといけないからな。邪魔をするなら貴様も倒すまでだ」
幽助「今度は俺がてめえの相手をしてやるぜ」
比羅「いいだろう。あの男から話を聞いて、一度お前とは戦って見たかった。相手をしてやろう」
幽助「行くぜ」
黄泉「待て浦飯!」
幽助はその場からジャンプして一気に比羅に近付いた。
幽助「くらいやがれー!!」
ビューン!!
比羅の顔面をめがけて強烈なストレートパンチ。
比羅「中々、速いな」
ガッ!
比羅の赤いフィールドに幽助のパンチは遮られた。
幽助「何だ!?」
突然現れた赤い透明な壁に驚く幽助。
比羅「貴様にも教えておいてやる。私の能力のフィールドはあらゆる攻撃を全て遮ることができる」
幽助「遮る?そんなもんやってみねえとわかんねーぜ。オラァァァ!!」
ズドドドドッ!!!
幽助は拳に妖気を込めて比羅の腹部に向かって連打。
ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!
全ての幽助の攻撃はフィールドによって遮られる。
比羅「分かるさ。私にはお前の攻撃は通用しない」
ビューン!!
比羅は渾身の一撃を幽助に放つ。
これを幽助は下にしゃがんで攻撃をかわす。
幽助「オラァァァ!」
ドドドッ!
幽助は攻撃をかわすと同時に、比羅に向かって素早い連打を腹部に入れた。
ガッ!ガッ!
だが比羅のフィールドにまたもや攻撃は全て遮られる。
幽助「ならこれでどうだ」
ズドドドドド!!!!
幽助は拳による連打。スピードをさらに上げて撃ちこむ。
ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!
この攻撃も比羅のフィールドに遮られる。 フィールドの頑丈さを思い知る。
幽助(駄目だ。あいつにフィールドとかいうのが有る限り俺の攻撃は通用しねー。なんかあいつに攻撃を当てる方法はねーのかよ)
比羅「ハァァ!!」
ビューー!!
ここで比羅の鋭い蹴りが幽助の頭部を狙う。
幽助は比羅の蹴りを素早く右に避けてかわす。
幽助の頬を僅かに比羅の蹴りがかすめる。
だが幽助はひるまない。
幽助「ウラァァァ!!」
右の拳による一撃を比羅の顔面を狙って殴る。
ガッ!
幽助(クソッ!)
幽助は後ろにジャンプして比羅から一度距離を取った。
ポタポタポタっと幽助の裂けた頬から血が流れて地面に落ちる。
幽助「さっきの蹴りが擦ってたのか」
地面に落ちた自分の血を見た。そこで幽助は何かに気付いた。
幽助「いいことを閃いたぜ。試してみる価値がありそうだ」
比羅「どうした?攻撃はもう終わりか。だったらこちらから行かせてもらうぞ」
ズキューン!!!
比羅は素早く動いて幽助に近付く。
幽助(こっちからの攻撃をフィールドが遮るなら、あいつの攻撃が俺の身体に触れる時、あいつのフィールドが発動するかどうか試してやる)
比羅の一撃が再び幽助の腹部を狙ってきた。
比羅「避けないのか」
黄泉「浦飯!!」
ドガッ!!
幽助は比羅の拳を避けずに腹部に直撃を受けた。
幽助「ぐっ!!!」
ゴボッと口から血を吐き出す。
だが幽助、ニヤリ。
比羅(!?)
ここで幽助は腹部にめり込んでいる比羅の拳を左手で強く掴む。
幽助「どうやら…、てめえのフィールドは自分が攻撃して、相手に触れている時は発動しねーようだな」
黄泉(なるほどな)
比羅「ぬっ!」
幽助「捕まえたらこっちのもんだぜ!」
幽助はすかさず右手であの構えを作る。
幽助「くらいやがれー」
キュンンンンン
幽助は指先に妖気を込める。
幽助「妖丸!!!」
ズドォォォォォォォン!!!
幽助は十八番である妖丸を比羅の顔面に向かって放つ。
シュゥゥゥ……
だが妖丸は比羅のフィールドによって遮られていた。
幽助「おいおいマジかよ!?」
確実に妖丸が決まったと手応えを感じていた幽助は、防がれたことに衝撃を受ける。
比羅「私を掴むまでは良かったが、フィールドの力を甘く見過ぎたな」
バキッ!
比羅の一撃を顔面に受けて飛ばされる。
幽助「野郎!」
比羅「ワザと攻撃を受けて私の腕を掴むことを、あれだけの間に考えるとはな。正直驚いたぞ」
ここで比羅は異変に気付く。
フィールドに僅かだが亀裂が入っていたのだ。
比羅(これはどういう事だ。浦飯の放った妖丸が私の無敵のフィールドに傷をつけたというのか)
黄泉「浦飯」
黄泉が幽助の隣に来た。
黄泉「腹の傷は大丈夫なのか?」
幽助「ああ、大丈夫だ。ワザとあいつの攻撃を受けるつもりで腹に防御を集中していたからな」
黄泉「そうか」
黄泉も比羅に向かって構える。
比羅「黄泉と浦飯か…」
比羅はニヤリと笑うと、幽助たちに背中を向けて歩き出した。
幽助「おい、てめえ何処に行く?」
比羅は足を止めて振り向く。
比羅「フィールドを破壊した黄泉に、フィールドに傷をつけた浦飯。流石に最強クラスの妖怪であるお前たちの相手を同時にするとなると、私も只ではすまないからな。桑原の居場所は気になるが、ここはどうやら分が悪い。大人しく退かせてもらうことにした」
幽助「てめえは桑原を捕まえて何をするつもりだ!」
比羅「さあな。黄泉よ、桑原の居場所は必ず突き止める。貴様らとはいずれ決着をつけてやる」
そう言うと比羅の身体がだんだん薄くなっていく。
比羅「また会おう」
比羅の姿が完全にこの場から消え去った。
幽助「チクショー!あいつが桑原を狙う理由がわかんねーじまいだ」
幽助の顔は悔しそうだ。
黄泉「ぐっ」
ガクッと黄泉は膝を地面につく。
幽助「おい!大丈夫か?」
幽助は黄泉に肩を貸した。
黄泉「すまんな。修羅をかばった傷が酷くてな」
幽助「この近くに人通りが少ない路地裏がある。そこで少し休もうぜ」
――路地裏
黄泉「少しの間、ここで休ませてもらうぞ」
黄泉は壁に背中をつけて地面に腰を下ろした。
幽助は座った黄泉の隣に立つ。
黄泉「礼を言うぞ。お前が来てくれなかったら俺も危なかったかもしれん」
比羅との戦いで受けた傷は思ったよりも大きいようだ。
幽助「よく言うぜ!おめーなら俺が来なくても乗りきっていただろ」
黄泉「さあな」
幽助の言葉にニヤリ。
幽助「礼をいうなら俺の方だ。だがよー、おめーがあいつらを助けてくれるとは思わなかったぜ」
黄泉「あいつらを助けたのは成り行きだ」
男「あいつらをどこに飛ばしたんだ」
黄泉「それは…」
黄泉が幽助に答えようとした時、近くから足跡が聴こえてきた。
黄泉「フッ、丁度いいタイミングで客が来たぞ」
幽助「あれは…蔵馬じゃねーか!」
二人の存在に気付いた蔵馬が近くまでやってきた。
黄泉「また会ったな蔵馬」
蔵馬「黄泉!?どうしてここに。それにお前のその傷は…」
幽助が蔵馬に話しかける。
幽助「よっ!蔵馬、久しぶりだな」
蔵馬は幽助の顔を見て驚いている。
蔵馬「ゆ、幽助!?」
異質な気を持つ者と戦った幽助と黄泉、そして蔵馬が一つの場所に集結した。