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このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書 ~2ND STAGE~ #008「それぞれの始まり・蔵馬(序章)」

――飛影と桑原が魔界で再会を果たしたところから遡ること数日前。

 

畑中建設

 

それはどこにでもある建設会社。

ここから新たな物語が始まろうとしていた。

 

「南野君、今回も良くやってくれたね」

 

スーツ姿の中年の男は、満足そうに笑顔で南野という青年に話しかける。どうやら彼等の関係は上司と部活という間柄のようだ。

 

南野「いえ、大した事ないですよ」

 

南野と呼ばれた男性は笑顔で返事を返した。

 

女性的な雰囲気を醸し出しているこの青年は、

一般的に見ればかなりのイケメン。

10人の女性が街中で彼とすれ違えば、恐らく9人から10人の女性が足を止めて振り返るだろう。

 

「ははは、謙遜するな。今回は君が提案してくれたプロジェクトがこれほど上手くいくとは思わなかった。本当に素晴らしい仕事だったよ」

 

南野「ありがとうございます。でも俺の力だけじゃあないですよ。皆の協力があればこその成功ですよ」

 

「海外に視察にいってるお義父さんも喜んでいたぞ」

 

南野「義父の期待に応えることが出来て本当に良かったと思っています」

 

「これからも宜しく頼むよ」

 

南野「はい。では俺はこれで失礼します」

 

上司に軽く会釈するとその場を立ち去った。

 

南野「フゥ~」

 

会社の屋上に出ると、涼しい風が吹いていて、

とても心地良い気分になる。

 

何も考えずに街の景色を眺める。

 

そして結んでいた髪の毛をほどく。すると女性のように長い髪の毛が風で大きくなびく。

 

「あれから3年か」

 

考えてみると3年という月日はあっという間に過ぎていった。この3年は仕事に没頭した日々だった。

仕事に打ち込む自分は嫌いではない。

 

だが、そんな生活ももうすぐ終わる。

 

ズボンのポケットから1枚の小さな紙を取り出して中身を確認する。そこには見慣れない文字が書かれている。

 

「そろそろ行くか」

 

空を飛ぶ鳥の姿を見る彼の目は少し遠い目をしていた。

 

 

――男の名前は南野秀一。

高校時代は学年TOPクラスの成績を持ちながらも大学には進学せず、母親の再婚相手である畑中の経営する、

畑中建設に就職する道を選んだ。
就職後は持ち前の才能を存分に発揮して、中小企業であった会社の成長に大きく貢献していた。

 

社内に戻ると上司に行き先を告げる。

 

南野「少し現場の方に行ってきます」

 

事務室の前を通り過ぎていく南野の姿を見た女性社員たちが騒いでいる。

 

南野は会社ではいつも女性社員たちから、

羨望の眼差しで見られていた。本人は恋愛には興味がないのか、彼女たちの反応に対して特に気にしているような素振りはない。

 

「南野さん、また大きなプロジェクトを成功させたみたいよ」

 

「本当に凄いよね!でもあの人が凄いのは仕事だけじゃないのよね。顔も女の子みたいに綺麗だし、頭も良くて性格も優しい。さらに運動神経も抜群ときたら、男としてこれ以上の男はいないわ」

 

「なあにあんた、南野さんの事を狙ってんの?

無理無理、社内の独身女性はみんな南野さんを狙っているんだから」

 

「何よ!いいじゃない。でも南野さんはあれだけ完璧超人なのに、未だに恋人がいないのが不思議よね~」

 

「確かにそうね。もしかしたら南野さんには誰か好きな人がいるのかもしれないわね…」

 

――町外れの路地裏

 

南野が来ると影から男が姿を現す。

 

帽子を深く被って厚手のコートを着た、いかにも怪しげな男。

 

南野「お前がまさか人間界に来ているとはな。

お前から連絡を受けた時は驚いたよ黄泉」

 

黄泉と呼ばれた男は被っていた帽子を取る。

 

黄泉は人間ではなかった。

何故なら人間にはない角が頭に生えていたからだ。

 

そう、実はこの黄泉の正体は妖怪なのである。

 

黄泉は目が不自由な為、両目を瞑っている。

 

黄泉「ああ。修羅を人間界に連れて行った事がなかったからな。社会勉強の為に連れて来た」

 

黄泉がそう言うとその後ろから少年がひょこっと顔を出す。

 

南野「久しぶりだな修羅。前に会った時より、
少し逞しくなったな」

 

修羅「へへへ。パパについていっぱい修行したんだ」

 

南野(妖気が前に会った時より桁違いに強くなっている。これは相当黄泉に鍛えられているな)

 

黄泉「蔵馬、もう少しで煙鬼が主催する魔界統一トーナメントが開催される。お前も当然参加するのだろう?」

 

――黄泉が呼んだ蔵馬とは南野秀一のもう一つの名前。いや、こちらが本当の名前と言った方がいいだろう。

彼も人間ではない。黄泉と同じ妖怪なのである。
その本当の正体は伝説の盗賊、妖狐・蔵馬であった。

 

蔵馬「まだ参加するかどうか分からない。
前回の大会から魔界の環境は大きく変わった。

今なら優勝の出来る力を持つ者だったら、誰が王になっても悪い世界にはならない。

今回は大会を見守ろうかと考えている」

 

黄泉「それは残念だ。
俺はな蔵馬、浦飯が三年の間にどれほど成長しているか、あいつと戦えるのが今からとても楽しみなのだ」

 

蔵馬「幽助か、人間界に帰ってきてからも、彼はかなり特訓しているようだったよ」

 

修羅「あいつ、前はボクとおんなじぐらいだったけど今ならずっとボクの方が強いよ」

 

自信満々にVサイン。

 

蔵馬(大会自体には興味はないが、俺も幽助と戦ってみたい気持は今でもある)

 

身体の中に眠る熱い血が騒ぐのを感じた。

 

蔵馬「黄泉、せっかく人間界に来ているなら幽助に会ってきたらどうだ?」

 

黄泉「ああ。もちろんそのつもりだ。浦飯に会うのは大会以来だからな」

 

修羅「パパ!そろそろ行こうよ!ボクあの看板に書いてある遊園地ってやつに行ってみたい」

 

黄泉「分かったよ修羅」

 

息子を見る黄泉の顔。

それはどこにでもいる普通の父親のような顔をしていた。

 

蔵馬「フッ、お前が遊園地か。昔のお前では考えられないな」

 

黄泉「そうか?確かにそうかもしれないな。
これまで修羅は、産まれてからずっと修行三昧だった。たまには父親らしい事をこいつにしてやらねばなと思ってな」

 

蔵馬「それは良いことだと思うよ」

 

昔の黄泉の姿が脳裏に浮かぶ。

 

蔵馬(魔界以上に変わったのは黄泉お前だろうな)

 

黄泉「蔵馬、俺としてはやはりお前が大会に参加してくれることを期待しているよ」

 

蔵馬「考えておく」

 

黄泉「では蔵馬、また会おう」

 

修羅「またな蔵馬」

 

黄泉と修羅の姿が蔵馬の目の前から完全に消え去った。

 

蔵馬(魔界統一トーナメントか。今回は誰が勝つかわからないな)

 

蔵馬は二人の姿が消えた後も暫くの間、

この場に残り、これからの魔界が一体どうなっていくのか、物思いにふけたのだった。

 

 

続く