nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #069「71ブロックの代表者(大会編)」

ーー魔界統一トーナメント予選・71ブロック


「な、何だこいつらは!!?」

 

蟲の大きさは蝿や蚊ぐらいで頭の先端には鋭く尖った針がある。

キリキリキリキリと不気味な鳴き声。

 

北神は自分に向かって来た蟲たちを追い払うべく抵抗する。

 

「気色悪い奴らだ」

 

北神は蟲たちを殴って次々と撃ち落とすが、数が多すぎて全然数が減らない。

 

「くそっ!数が多すぎるな。きりがない」

 

抵抗し続ける北神の背中に数匹の蟲が止まった。

 

「ぬっ」

 

北神は背中についた蟲を剥がそうと試みる。

だが外れない。

キリキリキリと北神の背中に止まった蟲たちが鳴いた。

 

(まずい!)

 

蟲たちが北神に次々とくっついてその身体を埋めつくしていく。

 

ズボッ!!

 

「うおっ!?」

 

身体に止まった蟲たちは一斉に針で北神の身体を刺した。

 

「ぐっ!」

 

苦痛で顔が歪む。

そして一気に蟲たちは針で北神の身体から何かを吸い出した。

 

(な、何!!)

 

蟲たちの頭の部分が青く光り始めた。

 

奇淋、ニヤリ。

「人間界にこの蟲と似た性質を持つ蚊という生き物がいるが、蚊は生き物の血を吸うがこの蟲は何だと思う?」


「ぐぉぉぉぉ!!!!!!」

 

北神は地面に膝をついて激しく苦しみ始めた。

 

「ぐぅぅぅぅ!!!!ち、力が抜けていく」

 

蟲たちの頭の輝きがどんどん大きくなっていく。

 

北神は奇淋を睨む。

「き、奇淋!!この蟲たちが私から吸いとっているものはまさか!?」

 

「そう。お前が頭に今描いている事だ」

 

(この蟲たちが私から吸っているもの、それは私の妖気だ……)

 

蟲たちはまた一気に北神から妖気を吸い出した。

 

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

北神は妖気を吸いとられる苦しみで地面に倒れ、もがき苦しんでいる。

北神が苦しんでいる姿を奇淋は腕を組んで涼しい顔で見ている。

 

「一度相手についたら最後、私が合図するまで決して離れる事がない。相手の妖気を吸い尽くすまでな」

 

北神は蟲たちに妖気を吸われながらも、ゆっくりと立ち上がった。

 

「ハァハァハァ」

 

「その蟲たちがついたままの状態で立ち上がってどうするつもりだ?蟲たちがお前の身体についている限り、お前の妖気をずっと吸い続けるぞ」

 

北神、ニヤリ。

「……だったらお前を倒すまでだ!」

 

北神は力を振り絞って奇淋に向かっていった。

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

奇淋に接近するとパンチ。

妖気を吸われ続けている為、パンチにキレがない。

 

「遅い」

 

北神の力を振り絞った渾身の一撃は、簡単に奇淋に受け止められた。

 

「蟲たちに妖気を吸われたお前の妖気はどんどんなくなっている。当然だが、すべての能力は急激に落ちているのだぞ」

 

蟲たちがさらに針を突き刺して北神の妖気を奪っていく。

 

「ぐぉぉぉぉ!!」

 

ドサッ

 

北神は崩れ落ちるようにその場に倒れた。

 

「長年に渡る私たちの戦いもあっけない幕切れだったな北神」

 

奇淋が指をパチンと鳴らすと北神に取り付いていた蟲たちは一斉に離れた。

 

(くそ……)

北神は意識が遠くなるのを必死に耐えていた。

 

奇淋はもう一度指をパチンと鳴らす。

 

蟲たちは鳴き声を上げると今度は奇淋の身体にくっついた。

 

(……自分に蟲たちをつけて何をするつもりだ!?)

 

蟲たちは青い輝きを放つと一斉に奇淋の身体に吸収されて消えていく。

そして奇淋の身体が青く輝く。

 

(まさか!?蟲たちが私から吸いとった妖気を自ら吸収しているのか!)

 

グッと奇淋は拳を握り締めた。

 

「ハァァ!!!」

 

ブォォォォ!!!

 

奇淋の妖気はさらに上昇した。

 

奇淋、ニヤリ。

「いいぞ。私の妖力が格段に増したぞ」

 

(馬鹿な!?まるでこれは別人のような妖気だ……。これはもしかすると国王の仲間たちを超えたかもしれない) 

 

「蟲が吸い取った妖気を吸収することにより私自身の持つ妖気の絶対値をあげることが出来る」

 

北神は最後の力を振り絞り立ち上がった。

 

「もう蟲たちに吸われてほとんど妖気も残っていないはずだ。今の私の妖気を見ただろう?負けを認めろ。お前にどうあがいても勝ち目はない」

 

「力が僅かでも残っていればまだ戦える。私は最後まであきらめん」

 

奇淋は北神の目を見た。

(勝負が既に見えているはずなのに北神の目はまだ死んでいない)

 

「私の最後の力を見せてやる」

 

ーーメイン会場

 

実況席と観客席があるメイン会場に、続々と予選を勝ち抜いた選手たちが集まってきていた。

幽助、桑原、蔵馬、飛影も予選を勝ち抜き、躯や黄泉等の主要な選手の殆どが予選を通過していた。

メイン会場の中央に設置されている巨大なスクリーンに71ブロックとまだ予選が終わっていない他のブロックが映し出されている。

幽助はスクリーンに映る北神と奇淋の戦いを見ている。

 

「北神、意地をみせろよ」

 

飛影もスクリーンに映る奇淋を真剣な目で見ている。

その隣には躯がいる。

「奇淋の奴、あんな技を隠し持っているとはな」

 

「飛影、今のお前にあの奇淋を倒せるか?」

 

「ああ。今の俺は誰にも負ける気がしない。もちろん躯お前もな」

 

躯、ニコリ

「それは楽しみだ」

 

ーー魔界統一トーナメント予選・71ブロック

 

(今の私に残された妖気では後一撃放つのが精一杯だ。ただでは負けない)

 

北神は体内に残された最後の妖気を使う。

選んだ最後の攻撃。

それは軟体術であった。

北神は軟体術で首を伸ばした。

 

「奇淋いくぞ!!」

 

「長年の好敵手に敬意を表して私の全力で完全に葬ろう」

(軟体術は私には通用しないぞ北神)

 

グググっと両手に妖気を集中。

 

ジジジ……

 

ゴォォォォォ!!!!

 

奇淋の両手が青く燃える。

 

「ハァァァ!!!」

北神が仕掛ける。

 

ビューーーーン!!

 

伸びた首が奇淋に向かっていく。

奇淋は余裕の顔で待ち構える。

 

この時、奇淋は北神が仕掛けた軟体術は巻きついて締め付けてくると思っていた。

だが、違っていた。

北神の仕掛けた最後の一手。

それは幽助との手合わせで披露したあの技だった。

 

「霧津流・硬弾」

 

瞬時に硬化した北神の伸びた首。

それはまるで鉄球のようだった。

 

「何だと!?」

 

予想外の北神の変化に奇淋は対応が遅れた。

そして北神の渾身の一撃は奇淋の胸元に直撃した。

 

ドゴォォォォォォォ!!!

 

衝撃で奇淋の身体がぐらつく。

攻撃を受けた胸元の鎧は大きくひび割れた。

だが、妖気の殆どを蟲に吸われた北神の攻撃はこれが精一杯だった。

 

ガシッ

 

奇淋は胸元にある北神の硬化した首を両手で掴んだ。

 

ビリビリビリ!!!

 

奇淋の青く燃えている両手から北神の伸びた首を伝わり北神の全身に電流が流れた。

 

「ギャァァァ!!!」

 

北神の悲鳴が闘場に響き渡る。
北神の首が元に戻った。

ぐらつく北神に奇淋が仕掛けた。

 

フッ

 

北神が瞬きする間に目の前から奇淋の姿が消えた。

 

(奇淋!!)

 

そして次の瞬間、既に奇淋は至近距離にいた。

 

ビューン!!!

 

ドゴォォォ!!

 

北神の腹部に奇淋の拳がめり込む。

 

バゴォォン!!

 

奇淋は次に北神の身体を空に向かって蹴り上げた。

空高く北神の身体は飛んでいく。

奇淋は上空に蹴り上げた北神を見上げると空高くジャンプして、蹴り上げた北神を追い抜いた。

その瞬間、北神と奇淋の目が合う。

 

「北神」

 

「奇淋」

 

決着の時。

 

「これで終わりだ」

 

ゴォォォォォ!!!

 

奇淋の右手の青い炎が激しく燃えている。

 

ビューン!!!

 

ドゴォォォ!!!

 

「がはぁぁぁ!!」

 

ヒューーー

 

ドガァァァァァ!!

 

北神は空中から地上に激しく叩きつけられた。

もはや北神は動く事も出来ない。

奇淋は北神の側に着地した。

 

「ここまでお前に完膚なきまでやられるとはな。まだ戦う気力だけはあるが身体が動かないぜ。悔しいが俺の負けだ」

 

「一つ聞きたい。お前は三年前の大会の後にエネルギー源である人間を絶ったのか?」

 

「……何故そんなことを聞く?」

 

「妖気が三年前と殆ど同じだからだ。お前が三年の間修行をしないわけがないからな。エネルギー源を絶つことをしていなければ最初に私を締め付けた時に、勝てていたかもしれないぞ」

 

「人間を絶ったのは、雷禅国王の意志を継いだまでだ。人間を絶ったことを負けた言い訳にはしないさ」

 

「お前の事だから人間を絶つのをやめろといっても利かないだろうな」

 

「ああ」

 

「最後の攻撃は中々効いたぞ。予選とはいえお前と決着をつけられて良かったぞ」

 

奇淋は右手を北神に差し出した。

 

「私もだ。お前に魔道本家の技を一切使わせることなく敗れてしまったのは悔しいがな」

 

ガシッ

 

北神は奇淋の右手を掴むと立ち上がった。

 

上空の審判が71ブロックからの本選に出場するのが、

奇淋だと宣言した。

奇淋はこれまで長年の好敵手であった北神を難なく倒せた事でかなりの手応えを感じていた。

 

(飛影、そして躯様をこの大会で超えて見せる)


魔界統一トーナメント予選71ブロック・北神vs奇淋の予選最大の注目のカードは、魔道本家奇淋が北神を圧倒的な強さで倒し本選出場を決めた。

 

続く

 

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