幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #040「幽助の背中(大会編・前章)」
ーー魔界24番地区
ゆりは幽助と楽越が寝ているところに帰ってきた。
彼等はさっきまでと同じ格好で寝ている。
幽助のイビキはますます大きくなっているし、
楽越はリュックがヨダレでベチャベチャになるほどかじっている。
(まったく呑気な連中ね…。)
ゆりはクスッと笑うと眠りについた。
ゆりが眠りに入ると楽越は目を開けて身体を起こした。
寝息をたてているゆりを見る。
(あの子…どこに行ってたんだ…?)
ーー翌日
「よっしゃー!行くぜ」
よく眠って体力回復。屈伸運動をして身体を慣らす。
リュックをドロドロにした楽越はしっかりと締めたし、
ゆりも背中に背負った。
準備万端。
(なんか私、物扱い…)
幽助の背中で頬を膨らませる。
「よっしゃー!行くぜ」
一気にギアを入れてトップスピードで7番地区を目指して出発。
楽越は涙目で首を擦りながら幽助の後を追いかける。
このままのスピードで行けば、後数時間も走れば到着しする計算だ。
ゆりは幽助の背中に背負われているが、彼女の今の状態は、人間界にあるジェットコースターの世界最速クラスに乗っている状態と同じなのだ。
男の人の背中に背負われるなんて、最初は恥ずかしくて仕方なかったが、慣れとは恐ろしいもので、今ではもうまったく抵抗がない。
むしろなんともいえない心地良さを感じる。
はたから見たら物凄いスピードで走っているのだから、
心地良いって言ったら変な顔をされるのかもしれないけど。
(考えてみたら私もお姉ちゃんも親におんぶされたことがないのよね…)
幽助の背中に顔をうずめてみる。
(う…汗臭い…でも)
ゆりは目を閉じると昨日の夜の事を思い出していた。
ーー昨夜
寝ている幽助と楽越の目を盗んで、少し離れた場所に
やってきたゆりは、岩壁の影に勾玉の力を使い、
通信していた。
「上手くいったよ、皐月お姉ちゃん、樹」
ゆりの言葉に皐月はニコリ。
樹は黙ってこちらを見ている。
「ゆり、良くやったね。流石は私の妹ね。でも予定より随分あいつに会うの早かったんじゃあない?」
ゆりは頷く。姉に褒められて嬉しそう。
「妖気を集めようと集落に寄って、そこの住人を皆殺しにしたんだけど、そこにあいつが偶然やってきたの。
咄嗟に私が殺した連中の中に混ざって、その中の生き残りのフリをしたんだ」
「へ~やるじゃない。でも上手くあいつらの中に入れたんだから早くても結果的に良しよ。ゆり、あんたには2つの役目を任せるている事を忘れないでね」
「大丈夫。私に任せといて」
胸元で拳をギュッと握って頷く。
彼女の目は力強く何かを決意している感じである。
ここで樹が口を開いた。
「お前の役目は忍の運命を握る事になる。浦飯には、決して気取られるな」
映像越しとはいえ樹から感じる圧倒的なプレッシャー。
仙水忍という男の事が絡むとこんなにも変わるのか。
ゆりは昔から樹の事を知っているから彼の変化がよく分かる。
「もっとも俺たちがまずあの男を倒さないと、いくら
お前が上手く事を運んでもただの無駄足になる」
「そうね。今から戦う相手は、私たちが無事に生きて戻れるか分からないほど強い相手だからね」
樹と皐月はこれからすべての計画の始まりとなる第一段階の計画を実行する。
「お姉ちゃん、樹、ご武運を祈ります」
ゆりは心配そうに二人を見る。
今自分が戦いで彼等の力になれないのが少し悔しい。
「またね。後は頼むよ、ゆり」
妹に笑いかけると勾玉から光が消えて彼女たちの姿が消えた。
「お姉ちゃん…」
ゆりは勾玉をギュッと強く握り締めた。
ーー魔界7番地区への道
誰かが私の事を呼んでる。
「おい、ゆり起きろ」
この声は幽助だ。
ゆっくりと目を開けるゆり。
どうやら幽助の背中で私はいつの間にか寝ていたらしい。
目の回りを触ってみると濡れてる。
涙が出ていた。いつの間にか泣いていたようだ。
「どうしたの?」
幽助の肩に顔をのせる。
幽助、ニヤリ。
「着いたぜ。ここから先が7番地区だ」
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