nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #041「酎の天敵はお兄様!?(大会編・前章)」

――魔界のとある場所。

 

ここに一軒の家がある。

家の入口のドアが開くと、小柄の可愛い女の子が外に出てきた。

ス~ゥっと外の空気を吸うと空を見上げる。

 

「和真さん、大丈夫でしょうか」

 

この女の子の名は雪菜。

本来なら氷河の国に住んでいる氷女の妖怪である。

氷河の国を出てここ数年は、人間界の知人の家で生活をしていたが、訳あって今は魔界にいる。

 

「雪菜ちゃん、もう身体の方は、大丈夫?」 

 

黒髪の綺麗な女性が声をかけてきた。

この家の主・棗である。

道着を着た姿が良く似合う。

 

「はい。お陰様でもう大丈夫です。すっかり元気になりました」

 

「そう、それなら良かった」 

 

棗はニコリと笑う。

彼女を見て雪菜は思う。

笑うと棗は笑窪ができる。

本当に綺麗。

美女とはこういう女性に合う言葉だと思う。

普段のキリッとした顔しか知らない人、

特に男性が彼女の笑顔を見てしまったら一発で恋に落ちるかもしれない。

 

「酎さんは、今日も来られるのですか?」 

 

「酎ならもうすぐ来ると思うよ。あいつ毎日ここに通ってくるし」 

 

頭の中で酎の姿が浮かんでいるのか、ちょっと嬉しそうな棗。

口元が少し弛んでいる。

 

「本当に驚きました。お二人が恋人同士だったなんて」 

 

雪菜の言葉にクスッと笑う。

 

「私も、今だに変な感じよ。前にね、私があいつに口説かれた時、私はあいつに自分より弱い男に興味がないって言ったのよ」 

 

「えっ、そうだったんですか?」

 

「そしたらあいつったら私より必ず強くなるからって言って、期限を決めて私に言ってきたのよ。私、少し驚いたけど、根性のある奴は嫌いじゃあないから、これを受けたんだけどね」 

 

酎と棗の間にあった過去に少し驚いたが、それよりも酎が女の人を口説くなんてイメージが、雪菜の中には無かったのでそこが一番驚いた。

桑原から酎は、幽助と同じ戦闘バカ(バトルマニア)と聞かされていたので、女の人にはあまり興味がないのかなっと雪菜は勝手に思っていたのだ。

棗は前回の大会の時の酎との対戦時の事を話した。

 

「酎さんは、よっぽど棗さんに惹かれたのですね」 


「フフッ。どうかしらね。前の大会が終わってから、あいつは、私より絶対に強くなってやるって言って、しょっちゅうここに通ってきたの」

 

「酎さん、棗さんより強くなろうと本当に頑張ったんですね」 

 

「頑張っていたわね。私に何度も倒されても倒されてもここに来るたびに面白いぐらいに強くなって来ていたのよ」

 

 「私の中で酎さんのイメージが少し変わりましたよ」

 

閉ざされた世界である氷女の妖怪といっても、やっぱり若い女の子である。

酎と棗の成り染めに興味深々。

惚れの女の人を振り向かせる為に一途に頑張る男の人って本当に素敵だなって思う。

 

(私には恋愛とか、異性を好きになるって気持ちがどんなものかまだわからない。でも男性に愛されてみたい気持ちはある)

 

氷女は男性との交わりを掟で禁じられている。

氷女は百年ごとの分裂期に合わせて、自分の力だけで子供を産む。

そして産まれてくる子供は全て女。

だが、氷女が男を産むときがある。

それは男性と交わった時のみ。

男を産むと氷女は例外なく死ぬ。

産まれた男児は雄性側の特性を強く受け継ぎ残忍で凶悪な場合が多く、忌み子として嫌われ同族から処断される。

私の母がそうだった。

私の母は双子の男女を産んだ。

兄と私である。

氷女は男性と恋愛して交わり、子供を作れば死ぬ。

私に愛する人が出来てその人と交わり、子供を授かったとしても、命を懸けて母のように子供を産むことが出来るのかまだ分からない。

そんな運命にあるからこそ、他人の恋愛ごとには、

興味がある。自分には出来そうにないから

だってこんな私を愛してくれる男性なんてきっといないから。

でも和真さんの顔が頭に浮かぶのは何故でしょうか。

 

棗と雪菜の話は続く。

 

「酎さんは、約束の期限内に棗さんに勝ったんですか?」 

 

「まあそうなるね。でないとあいつと恋人になっていないよ。あいつが私を初めて負かしたのは、約束期限が残り半月ぐらいになった時ぐらいだったかな」 

 

「その時の話しを良かったら聞かせてください」

 

「う~ん、恥ずかしいな。でもまあいいか」

 

棗は雪菜にその時の事を語り始めた。

 

ーー棗の回想

 

「棗さん、来たぜ!!相手してくれや」 

 

酎は棗を負かす為に、今日も張り切ってやってきた。

人間界の日にちで例えると、1週間で3回から4回は挑戦をしにここに来ている。

でも今回はいつもと違い、前回の手合わせから10日も経っていた。

 

「10日も来ないからもう諦めたかと思っていたよ」

 

酎、ニヤリ。

 

「馬鹿言ってんじゃあねぇよ。諦めるわけはねー。特訓よ、特訓。今回の俺は違うぜ棗さん。それとも俺が来なかったから寂しかったとか」

 

酎の言葉にやや呆れ顔の棗。

 

「バーカ」

 

これまで酎と棗は数百回は手合わせしてきた。

結果はいつも酎が棗に圧倒されて敗北してきた。

だが、日を増すにつれて彼の身体はどんどん鍛えられて逞しくなった。そしてそれに比例するかのように、

妖力は桁違いに上がっていた。

その成長度合いだけをいえば幽助を遥かに凌駕するスピードだったりする。

まさに愛のなせるわざである。

 

棗「もう、約束の期限まで後り半月よ。この10日の間に何をしてきたのか知らないけど、強くなってきたのかしら?」 

 

棗は構えると戦闘態勢に入った。

酎がここに来た頃は構える必要もないほど、

彼は弱かった。

ここだけを見ても酎のレベルアップがよく分かる。

 

「今日こそ、棗さんに勝って、俺の女になってもらうぜ 」

 

酎も棗同様に構えると戦闘態勢に入った。

 

酎と棗の手合わせをするところを見ている観客がいる。

 

鈴駒と流石の二人である。

 

「酎も諦めずに本当に頑張るな~」

 

鈴駒と酎は六遊怪の頃からの付き合い。

いつもからかっているが酎の事は心の底から応援している。

 

「鈴駒ちゃんがいつも酎ちゃんの特訓の手伝いをしているんだもん。そろそろ勝ってもらわないとね」 

 

鈴駒の彼女である流石もまた酎の事を応援している。

彼女も鈴駒と一緒に酎が特訓している姿をずっと見てきたから。

 

酎「行くぜ!」

 

酎は地面を蹴ると一直線に棗に向かっていった。 

 

棗はその場から動かず身構えている。

この場から動かずに酎を迎え撃つつもりだ。

 

酎「でゃぁぁぁぁぁ!!」

 

まずは棗の間合いまで接近してパンチを繰り出す。

左ストレートと見せかけた右ストレートのフェイント攻撃。

 

「動きが前回より早くなってきたわね」 

 

バチィッ!

 

棗は左手で酎の拳を難なく弾いた。

 

「ハァッ!」

 

棗は一歩前に体重をかけて踏み出した。

大地にヒビが入る。

酎の腹部を狙った突きによる必殺の一撃。

彼女の一番得意とする技である。

 

「棗さん、もうその技はくらわねーぜ」 

 

素早く弾かれた右手を戻して左手と重ね合わせて、

お腹の前でクロスさせた。 

 

ガッ!!!

 

クロスさせた両手に必殺の一撃が入る。

物凄い衝撃だ。

もう何回この一撃を防ぎきれずに敗れてきただろう。

だが、今回の酎はいつもとひと味違っていた。

 

必殺の一撃の衝撃は大きく、酎の大きな身体は押された。

だが、両手に妖気を集中させて、必殺の一撃を受け止めていた。

 

(酎が私の一撃を受け止めた!?)


酎、ニヤリ。

 

「やっと棗さんの得意の突きを防いだぜ」

 

必殺の一撃を受け止めた腕は真っ赤になっていた。

 

「酎の奴、やったよ。ついに止めた」

 

「あれを止められたの初めてだよね!!」

 

鈴駒と流石も酎が棗の必殺の一撃を受け止めたことに驚いている。

 

「驚いた…。あなたが防御を身につけてくるなんてね。自分の弱点にやっと気が付いたわね」

 

「まあよ!いくら特訓して攻撃力や妖力をを上げても、棗さんの攻撃を防ぐ防御を身につけないと、棗さんにいつまで経っても勝てねぇって思ったからな」

 

何十回と同じパターンで敗れていたから、

酎も学習したということだ。

 

「今までのあなたは、ほとんど攻撃重視で、

持ち前の打たれ強さだけで私の攻撃に耐えていたものね」

 

「面白くなってきた」っと棗は小声で呟く。

 

「というわけで今日こそは勝たせてもらうぜ」


再び酎は構えると戦闘態勢に入った。

 

「どこまで防御技を身につけてきたが、私が試してあげるわよ」 

 

棗は酎に向かって駆け出した。

 

酎はパンッと両手で頬を叩くと気合いを入れた。

 

「おぉーし!!行くぜ!」 

 

酎も棗に向かって走り出した。

 

「おらぁぁぁぁ!!!」 

 

お互いの間合いに入る。

肉弾戦が出来る距離だ。

 

ビュッ!!ビュッ!!

 

酎は棗の腹部にジャブを放つ。

 

パッパッ!!

 

棗はそれを左手で素早く受け止めた。

次は棗が仕掛ける。

パンチとキックの連続攻撃だ。

 

ガッ!ガッ!ガッ!

 

酎はこれも難なく腕で防御する。

棗は次から次へと攻撃をする場所をあっちこっちに散らしながら、仕掛けるがどれも酎は防ぎ切る。

 

(あいつ、凄いじゃない。どの攻撃パターンにも対応出来てる)

 

……。

……。

 

(あれ、私喜んでる?)

 

酎の成長が嬉しくなっている自分に気付く。

 

バッ!!!

 

棗は素早く上にジャンプして、酎の右肩に軽く手を触れると、空中で回転して酎と少し離れた位置に着地した。

 

「あなたにこれをかわせる?」

 

ビューーン!!

 

棗は高速で酎の周りを円を描くように回り始めた。

 

あまりのスピードに棗の姿がいくつもの姿に分身しているように見える。

 

「来たな」 

 

素早く動きながら棗が酎に話しかける。

 

「これまでのあなたは、この動きについていくのがやっとだった。私に攻撃を当てることが出来るかしら?」 

 

「ぬぅぅ…」

 

必死に目で棗の動きを追っていた。

 

「さあ、いくわよ!」

 

ビューン!!!!!

 

素早く動く棗の攻撃は、四つに分かれた分身と同じ様に四方から放たれた。

 

酎の目が真剣になる。

そしてニヤリ。

 

「棗さん!!俺は、この攻撃が来るのを待っていたんだ」 

 

酎は少し肩を下げて、両腕を後ろに引くと、全身に妖気を伝え始めた。

 

酎「うぉぉぉぉぉ!!!!!」 

 

ピシッ!!

 

酎の身体が一気に鋼鉄と化していく。

 

棗(!!) 

 

ガッガガガッ!!

 

棗の四方からの攻撃は、酎の鋼鉄化した身体に弾かれた。

 

棗「こ、これは身体の鋼鉄化!?」

 


鈴駒がやったっと叫ぶ。

 

「酎の新しい技が上手くいった!」

 

ガシッ!

 

(しまった!)

 

酎の突然の鋼鉄化に驚いた棗はその隙をつかれた。

右手を酎に捕まえられたのだ。

 

「これが棗さんに勝つ為に編み出した爆肉鋼鉄だ」 

 

鈴駒は酎のネーミングセンスに苦笑い。

 

「あ~あ。あれ鈴木の爆肉鋼体のパクリだよな」 

 

酎「おりゃあぁぁぁぁ!!」

 

ブーーン!!

 

酎はその場で棗を一本背負いで投げ飛ばした。 

 

ドタッ!! 

 

地面に背中を打ちつける棗。

 

「くっ…。油断したわ」 

 

棗が起き上がろうとした瞬間を酎が狙う。

 

「フン!!」 

 

ズンッ!!

 

酎が仕掛けたのは暗黒武術会の幽助とのナイフ・エッジ・デスマッチで使った切り札の頭突き。

 

(これはかわせない!!)

 

棗は瞬間的に目を瞑る。

 だが、酎は棗に頭突きが当たる直前で止めた。

 

「何で当てないの?」

 

酎、ニコリ。


「いくらなんでも女に頭突きなんて出来るわけないぜ」

 

(こんなムサ苦しい顔しているのに、意外に紳士なのね)

 

………。

 

………。

 

ここでお互いの目と目が合う。

 

「顔が近い!」

 

バキッ!

 

酎は、棗に殴り飛ばされる。

 

「痛てて………」

 

(バカ……)

 

棗は顔が少し赤くなっている。

 

「でも身体を鋼鉄化させるなんて驚いたわ。あなた相当、特訓してきたようね」

 

「俺は、棗さんにどうしても勝ちたかったからな」 

 

「油断していたとはいえ、予想外の技で私に一本を取ることが出来たから、悔しいけど今回は私の負けだわ」

 

「おおっ!」

 「酎ちゃん凄い」

 

鈴駒と流石のカップルが騒いでいる。

 

「じ、じゃあ、棗さん、お、俺の勝ちでいいんだな!!」 

 

不本意だけどね」

 

酎は目を瞑って魔界の空を見上げた。

 

両手を上に突き上げて、妖怪人生最高の笑みを浮かべて叫んだ。

 

「おっしゃああ!!!」 

 

酎の大きな身体が震えている。

あまりの嬉しさに感動しているのだ。

 

「じ、じ、じゃあ、棗さん、俺の女になってくれるんか?」 

 

「……まぁ正直、私の好みのタイプじゃあないけど、約束だからね。いいわよ…。それに私を想ってここまで強くなったあなたなら大事にしてくれそうだしね」 

 

棗の言葉は酎を頭から足下まで全身を真っ赤に染め上げた。

これを鈴駒が冷やかす。

 

「あ~あ、あのバトルマニアが顔を真っ赤にしっちゃってよ」

 

それを聞いた流石がいたずらっ子の顔になる。

 

「じゃあ、鈴駒ちゃんも真っ赤になる?」

 

「えっ?」

 

チュッ 

 

流石は鈴駒の頬に軽くキスをした。

 

「流石ちゃ~ん」

 

身体がふにゃふにゃになる。

 

「うふふ」

 

鈴駒の顔が真っ赤になって目がハートになったのは、言うまでもない。

 

「でも、最初に言ったけど私は、弱い男に興味はないの。だからこれからも特訓を続けてもっと強くなりなさい」

 

「は、はい」 

 

酎は嬉しさのあまり頭が完全に舞い上がっていて、

返事を返すのがやっとだった。 

 

ーー棗の回想終了

 

棗の話しを最後まで聞いて雪菜はニコリ。


「棗さんにお付き合いのOKをもらった時の酎さんの顔が目に浮かびます」 


「面白いくらい顔を真っ赤にしたのよ。あんないかつい顔なのに、中身は凄く純情なのよ、あいつ」 

 

「なんだか可愛いらしいです」 


雪菜の頭の中に桑原の顔が浮かんだ。

 

(和真さんになんだか少し似ているかもしれません)

 

「フフッ、そうね。それでね、実はつい最近なんだけど、私、酎にプロポーズされたんだ」

 

「えーーー!!!」 

 

雪菜は声を上げて驚いた。

恐らく生まれてから一番大きな声。

 

「雪菜ちゃん、何もそんなに驚かなくても」

 

「二人が恋人同士って話しにも驚きましたが、今のは、さらに驚きました。それで棗さんはどうしたんですか?」 

 

棗「実はね、酎が私にプロポーズした時にちょっとしたことがあったの…」

 

棗は再び雪菜にプロポーズの時の事を語り始めた。

 

ーー回想

 

「棗さ~ん、来たぜ!」 

 

酎がいつものように棗の住む家に訪れた。

 

コンコンと家のドアをノックする。

 

「開けていいわよ」

 

ドアを開けて酎が家に入ってくる。

 

「ああ、酎、いらっし……!!?」 

 

棗は酎の姿に驚き、言葉を失う。

 

なんと酎が綺麗な服を来て、正装して現れたのだ。 

 

「ぷっ、あははは!!!!」

 

棗は酎の普段とのあまりのギャップがある姿に涙を流して大笑いした。

 

「な、何が、おかしいんだ!!」

 

「あ~本当におかしい。酎、あなたにその格好は流石に似合わないわよ」 

 

「う、うるせ~よ!!」

 

バツが悪そうに横を向く。

 

「それ、あなたが選んだの?」

 

「す、鈴木のコーディネートだよ。鈴木がこれを着ていけって言ったから・・・」

 

棗はチラッと横目で酎の姿をもう一度見た。

 

「ぷっ、あはははは!!!!」

 

「ええいっ!笑うな!!」


鈴木を後で絞める!っと心の中で誓う。

 

「ごめん、ごめん、あんまり酎の姿がおかしくて。

あ~笑い過ぎてお腹が痛い。それで、そんな格好をして一体どうしたのよ?」

 

「え~っと今日は、棗さんに大事な話しがあるんだ」

 

襟を正して咳払いする。

 

「改まってどうしたのよ。大事な話しって何?」 

 

「た、単刀直入に言うぞ。な、棗さん、お、お、俺と一緒になってくれ!!」 

 

………。

………。

 

一瞬沈黙。

 

(えっ…これってプロポーズよね…)

 

瞬間湯沸かし器的な早さで棗の顔が赤くなった。

 

(ど、どうしようか…。でも酎なら私の事をを大切にしてくれるだろうしな…) 

 

「ひ、平たく言うとだな。俺と、け、結…」

 

 

「ちょっと待ったぁぁ!!」 

 

バタン!!!

 

入口のドアが勢いよく開いた。

 

「あっ、九浄」

 

酎と棗の前に現れたのは、棗の双子の兄の九浄であった。

 

※九浄についてはこちらを参照して下さい。

nanase1500.hatenablog.com

 

「悪いが酎、可愛い妹はお前にはやらねぇぜ」 

 

(なんか、話がややこしくなってきた…)

 

頭に手を置いて大きく溜息をつく棗。 

 

「俺的には不本意だったが、妹との交際は頑張りを認めて許してやっていたが、結婚となったら話しは別だ」 

 

「九浄、俺は棗さんが好きなんだ。兄貴のお前さんには認めて欲しいぜ」 

 

「お前みたいなむさい男が、俺の義理の弟になるなんて嫌だぜ…。だが お前のことだ簡単に棗を諦めないだろう。そこでだ、俺に認めて欲しかったら条件がある」 

 

「条件?」

 

酎は首をかしげる

 

「もうすぐ煙鬼主催の魔界統一トーナメントが開かれるのは、お前も知っているだろ?その大会で俺に勝つか、俺より上の順位に行くことがお前を認める条件だ」 

 

「おい、九浄、お前は何を言っている」 

 

棗は勝手に話しを進める兄を諌める。

 

「棗は、黙っていろ。酎、どうする?それが駄目なら結婚は絶対に認めない。結婚は諦めて貰う。どうだ!この条件を呑むか?」 

 

酎に迷いはない。

九浄の目を見ながらハッキリと答える。

 

「いいぜ。それで九浄が認めるならよ。障害があった方が男は燃えるってもんよ」 

 

「おいおい、酎…あなたまで…」


(私は、まだ結婚するとは、一言も言っていないんだが……)

 

九浄、ニヤリ。

 

「よし!良い答えだ。約束だぞ。お前にだけは一切手を抜かねぇ!覚悟しとけよ」

 

九浄はそれだけを言うとさっさと走り去っていった。

 

「あいつ…何で俺が棗さんにプロポーズする日に限ってここにくるんだ…」

 

棗は溜息。

 

(その格好よ…。酎のこの格好はあまりにも目立ち過ぎるもの。九浄だって何だと思って気になって見にくるわよ……)

 

ーー棗の回想終了 

 

「というわけで、私のプロポーズの返事も聞かないまま、酎と九浄は盛り上がって、お互いに闘って勝つぞってことで頭の中はいっぱいなわけよ」

 

「ははは…なんだかですね」 

 

雪菜は苦笑いを浮かべる。

 

「でも九浄は、正直私より強いわよ。酎がもし本当に九浄に勝つことができたら、プロポーズを受けてやろうかなって私は思っているの」

 

「酎さんにとって今度の大会は、人生の岐路にたたされた形になりますね」 

 

この時、楽しく会話をする棗と雪菜の会話を聞く、

男の姿があった。

 

(雪菜…) 

 

それは雪菜の双子の兄、飛影であった。

 

続く

 

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