nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #010「遭遇(序章)」

――畑中建設の近くの喫茶店の向かい側にあるビルの屋上

 

 

金髪の男の背後に男が近付いてくる。

 

 

「黎明(れいめい)か」

 

 

誰が来たのか分かっていたようだ。金髪の男は振り向かずに近付いて来た者の名前を呼ぶ。

 

 

黎明と呼ばれた男は答える。

 

 

「例の者の様子はどうだ?」

 

 

黎明は金髪の男と同様に綺麗な顔立ちをしている。
金髪の男と大きく違うのは髪の色が銀色で、目の色が黒くミステリアスな雰囲気を醸し出していた。

 

 

金髪の男「ああ、しばらく監視を続けていたが、おそらくあいつで間違いない」

 


黎明「そうか、あの男の情報通りだな」

 

 

金髪の男「それより例の者はさっき面白い者と接触したぞ」

 

 

黎明「面白い者?」

 

 

金髪の男「ああ。妖狐・蔵馬だ。奴は私が監視している事に直ぐに気付いた。例の者は私に気付かなかったのにな」

 

黎明は金髪の男の隣にやってきた。

 

 

黎明「なるほど。あの伝説の盗賊妖狐・蔵馬か。あの男の情報だとかなり頭の切れる男と聞いたが」

 

 

金髪の男「もう少し大人しく監視するつもりだったが、あの様子だと、奴はいずれ私たちの邪魔をするだろう。邪魔をされると少々面倒な事になりそうだ。予定を変更する必要がある」

 

 

金髪の男は横目で黎明を見た。

 

 

黎明「フッ、妖狐は私に任せておくがいい。邪魔はさせないさ」

 

 

そう言うと黎明の姿がこの場から消えた。

 

 

金髪の男「私たちの目的を果たすには、例の者の力は必要不可欠だ。必ず手に入れなければならない」

 

 

金髪の男の青い瞳には例の者と呼ばれた人物の姿が映っていた。

 

 

――蔵馬は喫茶店で感じた謎の気配を追いかけて外に出ていた。

 

 

蔵馬「気配はもう感じられないか」

 

 

その時、畑中建設の事務所の中から一人の女性社員が出て来た。誰かを探しているのか、辺りをキョロキョロと見回している。

 

 

「あ、南野さん!!」

 

 

茶店の前にいる蔵馬の存在に気付いて、声をかけてきた。

 

 

蔵馬もその声に気付く。

 

 

女性社員「ちょうど良かったです。専務が探していましたよ」

 

 

蔵馬「ありがとう。直ぐに行きます」

 


蔵馬は女性社員に笑顔で返すと女性社員の方に向かって歩きだした。

 

 

蔵馬(あの気配から感じとれたのは間違いなく霊気でも妖気でもない異質な気だった。相手の正体が分かるまでは、桑原君たちからあまり目を離さない方がよさそうだ)

 

 

――畑中建設の社内

 

 

蔵馬は畑中建設の専務の部屋の前まで来ると、ドアをノックした。

 

 

「入りなさい」

 

 

蔵馬「失礼します。専務お呼びですか?」

 

 

専務「ああ、すまないが君に頼みがあってね」

 

 

蔵馬「頼みですか?」

 

 

専務「佐藤君が、担当している河原崎の現場に昼から行く予定だったんたが、急病で行かれなくなってしまってね。君に代わりに行ってもらいたいんだ」

 

 

蔵馬「分かりました。そういう事なら今から向かいます」

 

 

蔵馬は現場の仕事の詳細を聞くと部屋を後にした。

 

 

蔵馬(桑原君たちの事が気にかかるが仕方ないな。夜にでも桑原君の家に様子を見にいくしかないか)

 

 

――河原崎の建設現場

 

 

数時間後、蔵馬が現場での全ての仕事を終える頃には日は暮れて、夜になっていた。

 

 

現場責任者「佐藤君が来れなくなって一時はどうなるかと思ったが、南野君が来てくれて助かったよ」

 

 

蔵馬「俺の力がお役に立てて良かったです」

 

 

「お~い!秀兄ィ!!」

 

 

大きな声で蔵馬を呼ぶ声がする。

 

 

蔵馬もその声に気付いた。

 


蔵馬「秀一、どうしてここに?」

 

 

秀一「会社に電話したら秀兄ィがこっちに来ているっていうからさ!ここは高校から近いし一緒に帰ろうと思って寄ってみたんだ」

 

 

――畑中秀一は、蔵馬の人間界の母親である南野志保利の再婚相手である畑中の連れ子である。蔵馬が母の再婚相手の畑中姓を名乗らず、南野姓をそのまま名乗っているのは連れ子の名前が同じ秀一という名前だからである。

 

※畑中秀一についてはこちらを参照して下さい。

nanase1500.hatenablog.com

 

蔵馬「そうか。久しぶりに秀一と一緒に帰るのも悪くないな」

 

 

蔵馬は義弟に優しい笑顔を見せる。血は繋がってはいないが、義弟として可愛いがっている。また秀一も蔵馬の事を実の兄のように慕っていた。

 

 

蔵馬「俺はこれで失礼します」

 

 

現場責任者「お疲れ様。また頼むよ」

 

 

蔵馬は現場責任者に挨拶を終えると秀一の側に行く。

 

 

蔵馬「行こうか、秀一」

 

 

秀一「うん」

 

 

蔵馬(秀一がここに来るとは予想外だったが仕方ないな。秀一と家に一緒に帰ってから、桑原君の家に行くとするか)

 

ドゴーーン!!!!!

 

 

二人が現場を後にしてしばらく歩いていたら後方で大きな爆発音が鳴り響いた。

 

 

蔵馬(!?)

 

 

秀一「な、何!?」

 

 

蔵馬は直ぐに全力で走って、河原崎の建設現場に向かった。

 

 

秀一「あっ、秀兄ィ!!」

 


蔵馬(一体何が起こったんだ)

 

 

――河原崎の建設現場

 

蔵馬が現場まで戻ると建設中の建物の上段が大きく崩壊していた。

 

 

現場責任者「南野君!!!」

 

 

血相を変えて現場責任者が駆け寄って来た。

 

 

蔵馬「これは一体どうしたんですか!?」

 

 

現場責任者「それが分からないんだ!建物の上部分が急に爆発した」

 

 

蔵馬「怪我はないですか?」

 

 

現場責任者「私は大丈夫だが、建物内に一人取り残されている。もう駄目かもしれない・・・」

 

 

蔵馬「ここは俺に任せてください」

 

 

蔵馬は現場の責任者にそう告げると崩れかけた建物に向かって走っていった。

 

現場責任者「無茶だ!戻りなさい!!!」

 

 

――河原崎の建設現場の建物内

 

蔵馬「もう少しで完成だったのに一体どうしてこんな事に・・・」

 

 

蔵馬は辺りを見回して取り残された作業員を捜す。

 

 

蔵馬「あれは」

 

 

瓦礫に埋まっている作業員らしき人影を発見した。

 

 


蔵馬「ハァッ!!」

 

 

ドガァァァァァ!!!

 

 

薔薇に妖気を通して作った鞭で瓦礫を瞬時に粉々に破壊した。

 

 

 

作業員が血を流して倒れている。

 

 

蔵馬「大丈夫ですか!?」


直ぐに蔵馬は倒れている作業員に近付いた。

 

 

「ううう……」

 

苦しそうに呻き声を上げる作業員。

 

 

蔵馬(頭を少し打っているようだが、他は軽い怪我と打撲みたいだ。応急処置して病院に連れて行けば命に別状はない)

 

身体の痛みの為か、作業員は直ぐに意識を失った。

 

 

蔵馬はいつも持ち歩いている薬草を使って作業員の怪我の応急処置を施す。

 

 

蔵馬「これでよし。後は彼を病院に早く連れていかないと」

 

 

作業員を肩に担ぐと出口に向かって歩き始めた。

 

 

その時、蔵馬の背後から足音が聴こえてきた。

 

 

蔵馬が振り向くと綺麗な銀髪の髪と黒い瞳を持った美しい男が現れた。

 

 

黎明である。

 

 

「初めまして妖狐」

 

 

目の前に現れた黎明と名乗った男が放つ気から、蔵馬はこの男がただものではないと瞬時に悟った。

 

 

蔵馬(この男から感じる気は一体何だ…)

 

 

黎明「思っていたより早くやって来たな」

 

 

蔵馬「…この爆発はお前の仕業か」

 

 

黎明「そうだと言ったらどうする?」

 

 

黎明はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

 

蔵馬は気を失っている作業員を床にそっと寝かせると黎明に鋭い目で睨む。

 

 

蔵馬「本当にそうならば」

 


ピシッ!

 

 

蔵馬は床に鞭を叩きつける。

 


蔵馬「ここがお前の墓場になる」

 

 

続く

 

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