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このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #036「24番地区の出会い(大会編・前章)」

ーー魔界24番地区

 

この地域は、魔界の中でも特に辺境の地であり、森は少なく広大な大地がある。ここには、魔界でも珍しい能力を持った種族の妖怪が多く生活している。

そして幾つかの集落があり、その一部は敵対している。

この地区についさっき到着した男がいる。

浦飯幽助である。

人間界から魔界にやって来た幽助は、7番地区に向かっていた。

7番地区は、遺伝子上の父である雷禅の国の一つであり、また彼が眠る墓がある。

大会が始まる前に墓参りに寄るのが、7番地区に今回行く一番の目的である。

そこに最短で到着するには。24番地区を通るのが一番の近道なのだ。

 

「ここは、相変わらず広いな」

 

幽助は、目の前に広がる大地を高い岩の上から眺めている。この辺りは妖怪の集落もなく、何も無い。ひたすら続く荒野だ。

背中に背負うリュックを下ろすと、人間界から持ってきたペットボトルを取り出す。

蓋を開けると、水を一口飲む。

 

「桑原の奴、見つかったかな」

 

幽助は人間界を出る前に、魔界の王である煙鬼に連絡して、桑原捜索の為のパトロール隊の派遣を依頼した。

煙鬼は幽助の頼みを快く利いてくれた。

直ぐに魔界全土に桑原の捜索の指示を出した。 

トロール隊は魔界全土にいる。

桑原が生きていれば、直ぐに見つかるだろう。

 

「さあ、行くか」

 

岩の上から飛び降りると、7番地区に向かって走り出した。幽助の走るスピードなら、半日もあれば7番地区に入る事が出来る。

幽助は体力には自信があった。

これは雷禅に会うため、北神たちに連れられて、幽助が初めて向かうときの話し。

北神たちは幽助を置き去りにするぐらいの気持ちで走っていた。

それは幽助を試すのが目的だった。

目的地である雷禅がいる場所は、全力で休まずに走ったら数日はかかる距離である。

普通の妖怪なら間違いないなく途中で力尽きて脱落する。

だが幽助は、その距離でも途中でバテて遅れることもなく、最後まで付いてきた。

逆に北神たちの方が疲れていたぐらいで、底無しの体力は彼等を感嘆させた。

今はさらなる鍛錬をした結果、当時とは比べ物にならないほど幽助の体力と走るスピードは上がっていた。

7番地区までの距離は、通常の者なら走って三日はかかる。

それを半日で辿りつけるのは、その成長の表れだろう。

2時間ほど走ると、幽助は一度足を止めた。

近くに人が一人座れるぐらいの岩を見つけると、

そこに座っておにぎりを食べる。

 

「北神たちに会うのもめっちゃ久しぶりだぜ」

 

雷禅の国のNo.2だった北神も、今は幽助が魔界に来た時は最も頼れる腹心のような存在になっていた。

前回の魔界統一トーナメントを開催に当たっても、

主催者だった幽助をサポートして、魔界にあまり詳しくない幽助の代わりによく動いてくれた。

彼がいなければ、あの短期間に大会を開催出来たかどうかわからない。

大会の開催の為に彼は大きく貢献してくれた。

大会以降は、彼は仲間たちと主であった雷禅の墓がある7番地区に残り、主君の墓守をする道を選んだ。

大会後、幽助は人間界に戻り、それからは会っていなかったので、今回は久しぶりの再会である。

 

「相変わらず王になってくれって言うんだろうな…」

 

雷禅が亡くなった後は、実質的にその息子である幽助が後を継ぐことになるのだが、北神たちは何度も薦めるが、幽助にはその気が全くなかった。だが、仮に王になるなら、魔界統一トーナメントに優勝して、魔界全土を支配する魔王にならなってもいいかなっと考えている。

何故なら、その方が親父の国の後を継ぐよりも親父は喜んでくれると幽助は思っているからだ。

一年間殴り合いしかしていない親子の関係だが、

拳で色々分かる事があるのだ。

幽助はおにぎりを食べ終えると、また7番地区に向かって走り出した。

だが、走り出して直ぐにまた足を止める事になる。

目の前に男が倒れていたからだ。

事件か?それともただの行き倒れか?

幽助は直ぐに男に駆け寄って抱き起こした。

 

「おいおい大丈夫かよ」

 

何回か頬を叩いたら男は目を覚ました。

目覚めた男は、幽助に何か言いたそうに口をパクパクしている。

男の口の近くに耳を近付けて言葉を聞いてみる。

 

「み、水……」

 

……どうやら後者のただの行き倒れのようだ。

 

5分後、男は幽助からペットボトルを貰ってゴクゴクと飲んでいる。

 

「あ~!!生き返った!!!!」

 

男は満面の笑顔で叫んで、

完全復活したと幽助にアピール。

すると今度はお腹がぐうっと鳴った。

 

「あ、そういえばずっと何も食べてなかった…」

 

男はヘナヘナとなり、またその場に倒れた。

 

「何なんだこいつは!?」

 

やれやれと幽助はまた男を抱き起こすと、持っていたおにぎりを男の口の中に突っ込む。

 

「う、うめー!!」

 

男の目がパチリと開くと、ガバッと起き上がっておにぎりを爆食い。

 

「…………」

 

そのあまりの食べっぷりに幽助は圧倒されている。

 

「Å*æ#$!!!」

 

突然苦しみ出した男。

また口をパクパクしている。

 

……どうやら今度はおにぎりを喉に詰まらせたらしい。

 

幽助が背中をパンパンと叩いてやると詰まったおにぎりを口から吐き出した。

 

「ほら、これを飲めよ」

 

ペットボトルの蓋を開けて渡してやる。

ゴクゴクと水を飲むと男はようやく落ち着いたようだ。

幽助は改めて男を観察してみる。

男は見た感じ、20代前半ぐらいの青年だが、年齢よりはもっと幼く見える。赤髪でどこか雰囲気が陣に似ている。

 

「元気になったみてーだな」

 

男から空になったペットボトルを受け取る。

 

「いや~本当に助かったぜ。ありがとう」

 

男は今度こそ本当に元気になったようなので、

幽助は男から事情を聞いてみることにした。

 

「おめー、何でこんなとこにいるんだ?」

 

まずは男がこの何もない場所にいる理由を聞き出す。

 

男はポリポリと顔を掻きながら答える。

 

「いやあ~、これが行き倒れなんだよ」

 

男の的外れの天然の答えに思わずズッコケる。

 

「そんなこと分かってるわい!」

 

幽助にしては珍しくツッコミをしてしまう。

 

「あ~俺はめちゃくちゃ強いんだけど、食べる事に目がなくてさ。ガス欠になると倒れるんだ」

 

笑顔であっけらかんと答える。

 

「なんか調子が狂うぜ。そういえば名前聞いてなかったな。俺は浦飯幽助だ。おめーの名は?」

 

幽助の名前を聞いた時、男の幽助を見る目が一瞬変わった。だが幽助はその事に全く気付いていなかった。

男が幽助の質問に答える。

 

「俺の名前は楽越(らくえつ)だ。宜しくな幽助」

 

※楽越についつはこちらを参照してください。

nanase1500.hatenablog.com

 

 

そう言うと幽助の手を取って笑顔で握手する。

 

「あ、ああ。宜しくな」

 

ちょっと変な奴だが、悪い奴じゃあなさそうと

幽助は思った。

 

ーー24番地区集落・間田愚(まだろ)

 

幽助が楽越と出会った同時刻。

この集落は、幽助たちがいる場所からもう少し先に進んだところにある。

集落の中心地にある大きな広場で、十数匹の妖怪が少女を取り囲んでいた。

少女の胸には、小さな勾玉がついたペンダントが光っている。

妖怪たちは、金になりそうなこのペンダントを狙って集まっているのだ。

少女もまた妖怪である。

薄い水色のおかっぱ頭で、目が大きく可愛らしい顔をしている。一際目立つ英語のXに似た形の模様が入った紺色の着物を着ている。

少女を人間に例えると中学生ぐらいの年頃だろうか。

 

「おいガキ!そのペンダントを渡せ」

 

一匹の鬼妖怪が少女の肩を掴んだ。

少女は酷く怯えている。

鬼妖怪は少女の反応を見てゲラゲラ笑うと、

少女の首にかかっているペンダントを手に掴む。

 

「ウホッ!これはスゲーよ。絶対に良い金になるぜ」

 

後ろの妖怪たちもかなりの高額の品物と分かり騒いでいる。

 

「…もう、止めてください……」

 

喉の奥から振り絞った、か細い声で言うと、

少女は顔を手で隠して声を上げて泣き出した。

だが、その手の中に隠れている少女の顔は…。

 

続く

 

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