nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ 076「ナルシストの恋(大会編)」

――魔界統一トーナメントDブロックでは四試合目が始まろうとしていた。

 

鈴木(すずき)
×
駒形(こまがた)

 

上空から審判が両者を見つめる。

この試合の審判はあの樹里である。 

 

樹里、鈴木の顔を見ながらニコリ。

(フフッ、鈴木の試合だから無理言って変わってもらっちゃった)

 

鈴木は目の前にいる駒形を見た。

 

(女か……戦いにくいな)

 

――メイン会場

 

小兎が解説。

「鈴木選手と駒形選手は共に非常に容姿に優れております。美しい二人による華麗な戦いに期待が持てます」

 

小兎はスクリーンに映る鈴木の姿を羨ましそうに見る。

 

(樹里さんは鈴木の試合の審判が出来ていいな~。あ~あ、私も凍矢の試合の審判がしたい) 


――Dブロック

 

「それではDブロックの一回戦・第四試合を始めます」

 

駒形が鈴木に話しかけた。

「鈴木さんでしたね。お手柔らかにお願いしますわね」

 

そう言うと駒形は手を差し出す。

 

「あ、ああ、こちらこそ」

駒形と握手する鈴木。

鈴木は駒形の柔らかい口調に少しドキドキしていた。

 

(うん?なんだこの感覚)

 

鈴木と駒形のやり取りを樹里は見ていた。

(あの鈴木の顔!!なんなのあの女!!)

 

駒形、ニコリ。

「綺麗な手をしていますね」

 

「い、いや……そんな事はないぞ……」

鈴木は駒形の笑みで頬を赤く染めていた。

 

樹里の背中から黒い妖気が漂う。

「も~っ!!始めなさい!!!」

(あたしあの女、嫌いだわ)


嫉妬で怒号気味の樹里の試合開始の合図の声が響き渡る。

実はこの時、樹里は大きなミスを侵していた

 

「鈴木さん、行きますわよ」

 

駒形は構えると鈴木に向かって一気に駆け出した。

そして鈴木に接近。

 

「ヤァァァ!!」

 

ブーン!!

 

駒形は鈴木に向かって回し蹴りを放つ。

 

ガシッ!

 

鈴木は右腕で駒形の蹴りを受け止めた。

蹴りを受けた右腕がジンジンする。

 

(おおっ!?意外と蹴りに威力があるな。腕が少し痺れたぜ) 

 

駒形、ニコリ。
「どんどん行きますわよ」

 

鈴木は胸を手で押さえる。

(まただ!?あの笑顔を見たら何故か変な気持になるぜ)

 

考え事に夢中で集中力が途切れた鈴木は、試合開始早々に駒形の攻撃を受ける事になる。

 

ビューン!!

 

「しまった!」

 

駒形は鈴木の腹部を狙ってパンチ。

 

ドゴッ!!

 

腹部に駒形の攻撃がヒット。

 

ビリビリ

 

鈴木は強い衝撃を受けて、お腹を押さえてしゃがむ。

 

(かなり効いた……)

 

「私に手加減などはしないでくださいね」

 

駒形は鈴木に可愛いらしいウインクをした。

この行為は鈴木のハートをバキューンっと撃ち抜いた。

 

「あ、あ……」

(本当になんなんだこの感覚は??)

 

頬が真っ赤になり身体が熱くなるという体験をするのは、これまでナルシストであった鈴木にとっては、まさに初めての体験である。

その後、鈴木は圧倒的に力の劣る駒形の連続攻撃に苦戦を強いられた。

それは駒形の仕草や笑顔に目を奪われてしまった為である。

 

バキッ!

 

駒形の強烈なストレートが鈴木の顔面にヒット。

 

ザザザ……

 

顔面に一撃をくらって後ろに後ずさる鈴木。

 

(まさかこの感覚が恋というものなのか!?)

 

何かを悟った鈴木は鼻血を垂らしながら笑みを浮かべていた。

 

――選手たちの休憩所

 

鈴駒、陣、死々若丸が休憩所にやってきた。

鈴木の試合観戦である

 

「あれれ、鈴木の奴が苦戦をしてるぞ」

意外な展開に鈴駒はびっくり。

 

「しかもなんか顔が笑ってるみたいだな」

陣はやられているというのに何で笑っているのだろうと不思議そうな顔をした。

 

死々若丸は、鈴木の異変に気付く。

「あんな相手に苦戦とはいつもの鈴木ではない。一体どうしたんだ?」

 

凍矢が後ろからやって来た。

「あれは色香だ」

 

「へっ?」

気の抜けた声を出す陣。

凍矢は呆れた顔でスクリーンの鈴木を見ている。

 

「そういえばなんか今の鈴木の状況と似たような試合を前にどっかで見たような気がするんだよな~」

陣は腕を組んで考え始めた。

 

死々若丸は早速それが何か思い出したようだ。

「凍矢の言う同じ色香で前の大会で敗れた奴がいたぞ」 

 

頷く凍矢。

「いたな」

 

陣が声を上げた。

「あっ!思い出した!!鈴駒の試合だ」

 

ギクリと身体が固まる鈴駒。

「お、おいらかい!?」

 

死々若丸と凍矢は頷く。

 

陣、ニコリ。

「鈴駒は流石ちゃんにメロメロになってなすすべもなく負けたんだもんな」

 

「あ、あははは……」

(おいらってあんな感じで流石ちゃんと戦ってたのか)

 

死々若丸は腕を組んで考える。

「しかし暗黒武術会以後は大人しくなっていたとはいえ、あのナルシストの鈴木が女に惚れるとは……。これはある意味革命的なことだぞ」

 

「だな。あの鈴木も自分大好き妖怪から卒業していよいよ春が来たんだな~」


「酎に鈴駒にそれに鈴木まで俺たちのまわりは何で女に弱い者ばかりなんだ」


そして凍矢たちとは別の位置で壁に背中を持たれて鈴木の試合を見ている者がいた。

棗である。

 

「鈴木って酎の仲間だったわよね。やっぱり普通は中々気付かないわよね」

冷めた目でスクリーンに映る駒形を見ている。

 

「お~い!棗さ~ん」

 

Cブロックの第三試合を終えた酎が棗の所にやって来た。

 

「お疲れ。試合は見ていたわよ」

 

「あれっ?九浄は一緒じゃないのか?」

 

「九浄なら試合が終わるなり、才蔵の所に行ったわよ」

 

「そっか」

少し苦手な九浄がいない事に酔はホッとした。

 

「それより酎、貴方の仲間の鈴木が苦戦しているわよ。鈴木と駒形の力の差がかなりあったとしても、鈴木はあの状態では負けるわよ」

 

「なぬー!」

 

酎がスクリーンを見ると鈴木がボコボコにやられている姿が映し出されていた。


「なんだこりゃー!?鈴木が綺麗な姉ちゃんにボコボコにされとるではないか!」

 

棗、呆れ顔。

「綺麗な姉ちゃんね~。彼はどうやらあの駒形って子に恋をしたみたいね」

 

「おいおい……」

 

「彼があの事に気が付いたら直ぐに勝負がつくのだろうけど。でも知らない方が彼は幸せかも」

意味深な事を言う棗。

 

「ああっ?棗さんどういうことだ?」

 

「試合前にあの駒形って子を見かけた時に、私はすぐに気付いたんだけど……。あの子は実は……」

 

棗は酎に駒形について話した。

 

「何だってぇぇぇ!!」

酎の絶叫が響き渡った。

 

――Dブロック

 

攻撃を受け続けながら鈴木はついに確信した。

(俺は間違いなく駒形に恋をしている)

 

上空で樹里が恐い顔で鈴木の試合を見ていた。


(もーっ!!何で鈴木はあんな女にデレデレしてるの。しかもボコボコにされてるし) 

 

樹里はポケットから選手のプロフィールと個人情報が載った資料を取り出した。

そして駒形の情報を探して資料をパラパラパラとめくる。

 

(あ、あったわ。全く駒形って女は何者よー)

 

樹里は資料で駒形のプロフィールの情報を見て驚愕した。

 

「えーーーー!!」

 

――メイン会場

 

「なんだ?Dブロックから凄い声が聞こえてきたぞ」 

 

樹里は口元に付けているマイクのスイッチ切り忘れていたのだった。

 

――Dブロック

 

「嘘ォォォ!!駒形ってオカマなのォォォ!!!!」

 

樹里の声がメイン会場と各ブロック全体に響き渡る。


――メイン会場

 

観客席がざわつく。

「おい!駒形ってオカマだとよ」

 

「嘘だろー!俺は女だと思っていた」

 

小兎は大慌て。

「樹里さん!樹里さん!マイクのスイッチが入ってますよー!!!」

 

――Dブロック

 

樹里の耳に小兎の声が届いた。

 

「え、えー!!!?」

樹里はマイクの切り忘れにここでようやく気付いた。

 

「あ~しまった!?マイクのスイッチが入ったままだ!!?し、失礼しましたァァァァ!!」

 

樹里は慌ててマイクのスイッチを切った。

(や、やばー!!やらかした!!!)

 

一方、鈴木と駒形はというと。

 

「オカマとは失礼ですわね!心は女ですわよ」

 

(………………)

鈴木はうつ向いて黙り込んでいる。

 

「鈴木さんどうしたんですの?」 

 

ゴゴゴゴ……

 

鈴木の背中から妖気とは別の異様な気が溢れ出している。

鈴木は顔を上げると両目から大粒の涙を流していた。


「うん??」

駒形の笑顔が凍る。

鈴木の額には青筋が浮かんでいた。

「初めて自分以外の存在を好きになったのに……。それがまさかオカマだったとは……」

 

――選手たちの休憩所

 

スクリーンに映る鈴木のアップ顔。

 

「鈴木の奴、なんか泣いているようだぞ」

 

「初めて自分以外を好きになった相手が男だったもんな~」

 

「不憫だ」

 

「おいらは流石ちゃんを好きになってよかった」


酎はスクリーンの駒形を見て信じられないって顔をしている。

ドヤ顔の棗。

「ねっ!私の言った通りでしょう?」

 

「マジかよー。本当に棗さんの言う通り駒形が男だったとは……。お、恐ろしいぜ……」

 

棗、溜息をつく。

「鈴木は恋と失恋を同時に知ってしまったわね」

 

酎は胸を撫で下ろした。

「俺は棗さんを好きになっていて良かった」

 

――Dブロック

 

「鈴木さん、貴方までオカマだなんて失礼ですわよ。私の心はれっきとした女ですわ」

 

「ウォォォォ!!」 


ビューン!!!

 

「へっ?」

 

バゴーン!!

 

大粒の涙を流しながら、鈴木は駒形の頬を強烈なパンチで殴りつけた。

殴られた衝撃で駒形の小さな身体は吹っ飛ぶ。

 

「女の子の可愛い顔をグーで殴るなんて酷いですわ」

駒形は目に涙を溜めて鈴木に文句を言う。

 

「あっ?」

 

プチン

 

ゴゴゴゴ……

 

「女の子だとー!!誰が女の顔だコラァァ!!これは試合だ!シバキ倒すぞ!!」

 

――選手たちの休憩所

 

陣、苦笑い。

「なあ凍矢、鈴木の性格がなんか変わってないか?」

 

凍矢の目から大粒の涙。

「言うな陣、鈴木の心の叫びがここまで聞こえてくる」

 

――Dブロック

 

「一つ聞くが、お前は最初からそんな女性らしい顔立ちだったのか?」

 

「違いますわよ。これは50年前に美容整形してこうなりましたの」

 

鈴木、ニヤリ。

「なるほど。50年前にね~」

 

鈴木は腰にぶら下げている道具袋の中から、小さな袋を取り出しその中身を手に取った。

 

「オカマ野郎、覚悟しろ!」

 

フッ

 

鈴木の姿が駒形の目の前から消え去る。

 

「き、消えた」

 

フッ

 

そして駒形の目の前に姿を現す鈴木。

 

シュッ

 

カパッ

 

「あがが……」

 

左手で駒形の頬を押さえて無理矢理口を開かせた。 


鈴木、ニヤリ。

「これは俺からの愛のプレゼントだ」

 

駒形の口の中に5個の丸く小さな錠剤を放り込む。

 

ビューン

 

ドゴッ!

 

鈴木は軽く駒形の腹を殴る。

 

「う……」

 

駒形は鈴木が口に投げ入れた錠剤を殴られた衝撃で、ゴクンと飲み込んでしまった。

思わず手で口を押える。

 

「す、鈴木さん……。私に一体何を飲ましたのですの?」


「お前が飲み込んだ物は、俺が前世の実を使って作り上げた錠剤だ。一錠で10年分の時を戻す」

 

「えっ!?」

 

「お前は何粒の錠剤を飲み込んだかわかるか?5粒だ。つまり50年分の時を戻す」

 

鈴木の言葉に顔が青くなった。

「50年分ということは私が美容整形をする前!?」

 

鈴木、ニヤリ。

「そういうことだ」

 

シュゥゥゥゥ……

 

駒形の身体から白い煙のような物が出てきた。

 

「いゃぁぁぁ!!!」


ドローン!!!

 

駒形の姿が50年前の姿に変貌を遂げた。

そこには筋肉質の暑苦しいヒゲ面の男の姿が現れた。


「うわぁ!!50年前の私の姿に戻ってる!?」

 

ゴゴゴゴ……

 

「お、俺はこんな男にこ、恋をしてしまっていたんだな……」

 

鈴木は再び大粒の涙を流す。

鈴木の右腕が輝き始めた。

そして鈴木は駆け出した。

 

「これが初めて自分以外を好きになり、そして直ぐに失恋した男の純愛パンチだァァァ!!」

 

ビューン!!

 

鈴木の涙の純愛パンチが駒形に向かって放たれた。

 

「ああっ!!」

駒形は恐怖で叫ぶ。

 

ドゴーン!!

 

鈴木のパンチが駒形の顔面にクリーンヒット。

 

ピューー

 

駒形の身体は場外に飛んでいく。

 

ピカー!!

 

鈴木の一撃で駒形は遥か彼方で星となり消え去った。

鈴木が両手を挙げると雄叫びを上げた。


「ウォォォ!!オカマなんか嫌いだァァ!!!」


――選手たちの休憩所

 

酎と鈴駒はスクリーンに映る鈴木の泣き顔を見て、

涙を流していた。

それは別の意味で。

(オカマを好きにならなくて良かった……)

 

死々若丸は鈴木を哀れむ。

「やっぱり不憫だ……」

 

――Dブロック

 

「俺が優勝したらオカマ禁止の法律を作ってやる!!」

 

鈴木はもう一度両手を挙げて雄叫びを上げた。

そこには優勝を心に深く誓った男の顔があった。

 

樹里は安心した顔で鈴木を見ている。

(ホッ、駒形が男でなんか安心したわ)

 

鈴木の恋と失恋という大波乱を挟み、大会はどんどん進行していく。

そしてAブロックの七試合目が間もなく始まる。 

 

修羅
×
鈴駒

 

続く

 

次へ

戻る