nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #075「樹の暗躍(大会編)」

――選手達の休憩所

 

牛頭との試合を終えた桑原が休憩所に戻って来た。


桑原、ニヤリ。

「浦飯ィィ!!見たかよ!俺様の強さ」

 

桑原は満面の笑みでVサイン。

 

「見てたぜ!桑原があんな一撃必殺の技を使うなんて、スゲーじゃねーか!」

 

「だろ!実際は時雨の技のパクリだけどな。この技は時雨に死ぬほど鍛えられたお陰で出来たようなもんだ。それでどうだった?俺の剣技はよー」

 

スッ

 

飛影が二人の側にやって来た。

「まだまだ踏み込みが甘い上に無駄な動きが多いぞ。とても俺と同じ男を師事したとは思えんな」

 

ピクッ

 

「飛影……てめーはいつもいつも」

 

「次の相手は牛頭とは比べものにならない相手だ。勝ちを喜んでばかりいないで次の試合で死にたくなければ少しでも剣の腕をあげたらどうなんだ」

 

それは実際に武威と戦い、その強さを知る飛影なりの

アドバイスであった。

 

「わーてるよ!少しぐらい勝利の余韻に浸らせろや」

 

「フン、しかしこの短い期間でこれだけの力を身につけたのは貴様にしては大したものだがな」

 

(!?)

 

幽助と桑原は飛影の意外な誉め言葉に驚いた。

 

「おっ!珍しいことがあるもんだな。あの飛影が誉めるなんてよー」

 

「確かにあの飛影が誉め言葉を言うなんてマジで驚いた。富士山噴火の前触れじゃないのか?俺を誉めるなんて思わず自分の耳を疑ったぜ」

 

(……こいつら一度殺すか)

 

「あれっ?そういえば蔵馬は?」

 

「さっきまで一緒にいたんだけどな」

桑原は辺りを見回した。

 

「おっ!いたいた」

 

蔵馬はスクリーンの近くで恐い顔をして映像を見ていた。

桑原は気になって蔵馬の側に行って見る。

 

「おーい蔵馬ァァ」

 

近くから声をかけたのに蔵馬はよっぽど何かに気を取られているのか、桑原の声に気付いていない。

 

(蔵馬、どうしたんだ?)

 

桑原が蔵馬の後ろから肩を軽く叩いた。

 

(!!!)

 

蔵馬は珍しく驚いて身体がビクッと反応した。

 

「あ、悪い。驚かしちまったか……」

 

「いや、すまない桑原君。大丈夫だ」

蔵馬の額から汗が滴り落ちた。

 

「珍しいな、おめーが俺が後ろに来た事に全く気付かないなんて。俺の試合は見てたか?」

 

蔵馬は笑顔で頷く。

「もちろんですよ。見事な勝利でしたね」

 

「だろ。しかしなんかえらいスクリーンを見入っていたみたいだけどなんかあったんか?」

 

「いや、別に大したことではないですよ」

 

「そっか、大したことないなら別にいいんだけどよー」

 

桑原は次の対戦の組み合わせを見た。

「おっ!次のDブロックの第四試合に鈴木が出るじゃねーか。あいつを応援してやらねーとな」

 

「そうだね」

 

「っとその前に観客席にいる雪菜さんに俺の勝利を報告してくるぜ」

 

「ハハハ、相変わらずだね。雪菜ちゃんに宜しく言っといてくださいね。それと桑原君は狙われているということをくれぐれも忘れないでくださいよ」

 

「分かっているって」

 

桑原は蔵馬に手を振るとメイン会場の方に走っていった。

桑原の後ろ姿を見ながら蔵馬は苦笑いを浮かべた。

 

「俺としたことが桑原君が後ろに来た事に気付かないぐらいスクリーンを見入っているとはな」

 

フゥ~っと蔵馬は軽く息を吐いた。

 

(俺の考え過ぎだ。鴉は暗黒武術会の決勝で俺が確実に殺した。生きているはずがない。あれは別人だ)

 

桑原が立ち去って暫くするとスクリーンに鈴木と対戦相手の駒形の姿が映し出された。

 

「どうやら鈴木の対戦相手はあの女性か」

 

鈴木の対戦相手の駒形は美しい女性の妖怪であった。

着物をイメージした武闘着を着て鈴木の前に立っている。

 

「見た感じだとあの女性はA級の中位クラス。鈴木の相手ではないな」

 

その時、背後から蔵馬を見つめる何者かの強い視線を感じた。

 

(!!)

 

蔵馬は素早く振り向いた。


蔵馬の背後に立つ者がいた。

Dブロックの第三試合を終えて戻って来た梟である。

 

「か、鴉……」

 

蔵馬は梟の姿を見て思わず鴉と呟いた。

それほど梟と鴉の姿は似ていたのだ。

梟は長身で細身の身体つき、そして美しく長い髪。

顔を目から下をマスクで隠していた。

蔵馬が以前戦った鴉とまさに瓜二つの姿である。

そして蔵馬と梟の目が合う。

 

(スクリーンで見るより実際に見ると梟は鴉にあまりにも似ている)

 

(……)

 

梟は蔵馬に背を向けるとゆっくりと歩いていった。

 

(梟は間違いなく俺を見ていた……。何故だ?梟、お前はやはりあの鴉なのか?)

 

立ち去る梟の後ろ姿から蔵馬は目を離せなかった。

そして梟の姿を見つめる男が蔵馬以外にもう一人いた。

武威である。

 

(鴉……)

 

武威は兜を被っている為にその表情を伺い知ることが出来ないが、暗黒武術会の時に戸愚呂チームで同じチームメイトだった鴉をよく知るだけに死んだ鴉にそっくりな梟に対して強い視線で彼を見つめていたのだった。

 

――霊界

 

コエンマの机の上に別室から持って来た大量の資料が置いてあった。

コエンマはその資料を調べていた。 


「う~ん、う~ん」

 

コエンマは資料を見ながら腕を組んで何か考え事をしていた。

一緒に手伝いしているぼたんがやって来る。

 

「コエンマ様、便秘ですか?」

 

「たわけ!違うわ」

 

コエンマたちが調べている事は、幽助が魔界に旅立つ直前に桑原を狙う比羅たちが何者であるか調べて欲しいと頼んだ件についてである。

霊界には大量の膨大な資料と情報網がありそれを見込んだ上での頼みであった。

 

「何か分かりました?」

 

「全くわからん。幽助の言っていた者たちの事が載る資料が必ずあると思うのだが中々見つからないな」

 

「まあ膨大な資料ですからね」

 

「失礼します」

 

ガチャッ

 

コエンマの部屋の扉が開くとあやめが何かの資料を持ってやって来た。

 

「あやめ、何かあった?」

 

「ええ。かなり古い霊界の書物が見つかったからこっちに持ってきたの」

 

あやめの手には、古びた分厚い本が数冊あった。

 

「どれどれ見せて見ろ」

 

「あっ、はい」

 

ドスン

 

あやめはコエンマの机に書物を置いた。


モワーンっと本から大量の埃が辺りに飛散。

 

「ゴホゴホ。これはかなり古い本だな」

 

「例の資料室で見つけて参りました」

 

「あの資料室からか。どれどれ早速調べて見るとするか」

 

パサパサパサ

 

コエンマはあやめが持って来た本を調べ始めた。

 

「しかし本当に古い本だね。あやめ、こんな本をどこで見つけたのかい?」 

 

「コエンマ様が以前、閻魔大王様の事件の事を調べ上げたあの資料室の奥に隠れるように置いてあったのよ」

 

「あの資料室か。でもよく見つけてきたね」

 

あやめ、ニコリ。

「まあね」

 

(あやめは相変わらずコエンマ様の事になると頑張るのよね)

 

コエンマが本を調べ始めて30分が過ぎようとした時、

コエンマが突然声を上げた。

 

「むっ!これは……」

 

コエンマは本のある一ページの記述を見て驚いていた。

ぼたんとあやめがコエンマの側に駆け寄る。

 

「コエンマ様、何か見つかったんですか?」 


「うむ、この本を読んで分かったぞ。桑原を狙う連中が霊気でも妖気でもない気を持つ理由とそしてその正体もな」

 

「何者なのですか?」

 

「奴らの正体はだな……」

 

そしてコエンマは比羅たちの事についてぼたんとあやめに語った。

 

「なるほど……。それが彼らの正体だったのですね」

 

「じゃあ、あいつらは桑原君を使って何をするつもりなんだろう?」

 

コエンマは椅子に深く座り、腕を組む。

「幽助たちもそれを知りたがっておったが、肝心の桑原が次元刀以外の能力に恐らくまだ目覚めておらんのだろうから分からんのだ」

 

「桑原君の能力は何なのでしょうね?」

 

「桑原は次元刀という非常にレアな能力を持つ男だ。恐らくあいつにはまだ奴らが求めるほどの眠っている能力があるのだろう」


「でも桑原君がまだその能力に目覚めているわけではないのならそんな能力を本当に持っているっていうのも奴らに分からないのではないですか?」

 

「確かにな。桑原を狙う連中には分からないだろう。幽助たちが言っていた奴らの協力者が相手の隠れた潜在能力が分かる能力者だとしたらどうだ?」

 

「あ……そっか。確か幽助たちと面識がある者って言っていましたよね。コエンマ様はそれが誰だかわかったのですか?」

 

頷くコエンマ。

「うむ。幽助たちから話しを聞いてからずっと考えておったのだが、相手の潜在能力を探る能力を持ち、幽助たちと面識を持つ者は一人だけ思い当たる男がおる」

 

「一体それは誰です?」

 

コエンマは机の上に両手の肘を置いて、手を組む。

「闇撫の樹だ」

 

――亜空間

 

樹は一匹の妖怪の肉体を見つめている。

「素晴らしい肉体だ。死んで三年も経過しているというのにな」

 

樹の目の前には幽助の遺伝上の父親である雷禅の遺体が横たわっている。

その姿は死んだ三年前と変わっていない。

 

「これで器が手に入った。ここまでは俺の計画が順調に進んでいる」

 

樹は雷禅の隣に寝かしてある仙水の肉体を見た。

樹は仙水の側に行くと仙水の髪の毛を優しく触る。

 

「忍よ、俺が今からやろうとしていることをお前が知ればお前は一体俺をどう思うのだろうな……」

 

――霊界

 

ぼたんがコエンマに詰め寄る。

「魔界の穴事件の後に死んだ仙水の魂と身体と共に行方不明になっているあの男ですか?」

 

「そ、そうだ。あいつは忍が霊界探偵をしていた頃に敵として出会い、その後は忍のパートナーとして行動を共にしていたので奴の事はワシも良く知っておる」 

 

あやめが話しに加わる。

「彼は相手の隠れた潜在能力を見抜く力を持ち合わせていたのですか?」


「樹は一目見れば分かっておった。その者が持つ才能と隠れた潜在能力をな」

 

「じゃあ、魔界の穴事件の仙水たちに協力していた人間たちはまさか?」

 

「恐らく忍が魔界の穴の事件で集めた、天沼や御手洗たち能力者は、樹がその才能を見つけだし、忍が持つ絶大的なカリスマ性で味方につけていたのだろう」

 

「才能を見抜く樹に、相手を取り込むカリスマ性を持つ仙水。見事な連携プレイだね」

 

「魔界で最後に話をした時、樹は忍と静かに時を過ごすと言っておったが……。ワシが考えられる協力者は樹しかいない。もし本当に樹なら何を企むか分からないぞ」

 

コエンマは静かに目を瞑り何かを考え始めた。

 

「コエンマ様?」

 

コエンマの目を開けると椅子から立ち上がった。

 

「ぼたん!あやめ!万が一に備えて舜潤ら特防隊に伝えてくれ。いつでも出動出来る準備をしておくようにとな。それと幽助に現段階の情報を伝えるのだ」

 

ぼたんとあやめは頷く。

「分かりました」

 

「何か大きな胸騒ぎがする」

 

――亜空間

 

樹は桑原の次元刀で斬られた顔の傷を触った。

 

「桑原、俺はお前に目を斬られた時に俺は感じ取った。さらなる上の能力がお前に隠れているということをな」

 

樹の目の前に桑原が雪菜と楽しく話している姿が映し出されている。

 

「一目で全ての能力を見抜けなかったのはお前が初めてだ。お前のその能力は危険過ぎる。使い方次第では、全ての世界を掌握出来るほどのな」

 

――魔界

 

ピッピッピ

 

幽助が魔界に持って来ていた霊界との通信機が鳴り始めた。

 

しかし幽助は煙鬼の大統領府で借りていた部屋にそれを忘れていた。

 

続く

 

次へ

戻る