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このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #055「飛影の求める力(大会編・前章)」

ーー魔界2番地区・躯の居城

 

「躯、お前に話しがある」

 

武威との一戦の後、飛影は躯の居城に戻っていた。

そして今は躯の寝室。

ちょっと呆れ顔の躯が飛影を見ている。

 

「しかしお前は、いつもいきなり入ってくるな。許可したとはいえ、俺だからいいものの、他の女だったら嫌われるぞ」

 

飛影は躯のいる部屋や寝室に入る時は、突然攻撃を仕掛けてくる。

それが飛影の躯に対する挨拶となっていた。

もちろんそれを許可しているのは躯自身なのだが。

 

飛影、ニヤリ。

「お前以外にはしないさ」

 

躯は飛影の言葉に「やれやれ」と溜息をついた。

躯はベッドから起きると、近くに置いているソファーに腰を下ろし、両手を胸の前で組んだ。

 

「それで俺に話しとは何だ?」

 

飛影は無言で躯の座るソファーに行くと、彼女の隣に座った。

 

「御堂という男について聞きたい」

 

御堂という名前を聞いた躯は一瞬、ピクッとなった。

 

「どこであいつの事を知ったのか知らないが、あいつは危険な奴だぞ。まあいいさ。お前がどこまで知っているのか話してみろ。内容次第では教えてやる」

 

「分かった」

 

飛影はこれまでの経緯を躯に全て話した。

氷室から御堂の話しを聞いたこと。

その氷室と武威の戦い。

自分と武威の因縁も。

 

一通りの話したを聞き終えた躯。

その顔はどこか楽しそう。

 

「そうか。試練に打ち勝った者に会ったのか。氷室を圧倒するとはまた凄い奴が出てきたな。お前とも因縁がある奴とな。面白くなってきたじゃあないか」

 

「チッ、お前楽しんでいるだろ」

ソファーから思わず立ち上がる。

 

躯、ニコリ。

「まあな。なんとなくお前がここに来た理由も分かったしな」

 

そう言うと「まあ座れ」っとソファーを軽く叩いて、

飛影に座るようにうながす。

 

「フン」

 

しぶしぶまた躯の隣に座る飛影。

 

「御堂とお前は契約を結んでいると聞いたが」

 

躯は過去の記憶を思い出すかのように目を閉じる。

「御堂と契約したのはお前が生まれる遠い昔の事だ。あいつの妖力自体は大した事はないが、厄介な能力を色々持っていてな。俺も手を焼いていたから、あの洞窟の所有権を与えて、お互いに邪魔をしないという契約を結んだ」

 

「それは氷室に聞いた。御堂は、何故他人に能力を与えるようなマネをする?」

 

「さあな。変わり者の偏屈だからな。あいつの考えは俺の知るところではないさ」

 

そう言うと躯は組んだ両手を首の後ろに回して、手を背にソファーに寄りかかる。

 

その後、飛影は躯から御堂についての情報を聞いた。

だが氷室から聞いた内容と殆ど重複するだけで大した情報は得ることが出来なかった。

躯が飛影の顔を見ると少しイライラしている感じだった。

 

「御堂の事が気になるなら、俺たちに聞くより、直接奴に聞く事だな。お前は御堂のところに行くのだろ?お前が望む能力を得る為に」

 

飛影は頷く。

 

それを見た躯の目が真剣になった。

 

「あいつから能力を与えてもらうのはいいが、能力を得る為の試練にもし失敗したら、御堂の子と俺たちが呼んでいる殺戮者となる。それでもやるのか?」

 

「ああ。俺は試練ごときには負けないからな」

 

飛影は、何か大きなものに挑戦する事を決意した男の顔になっていた。

この顔を躯は前に見た事がある。

(この顔は、飛影が奇淋と初めて手合わせをして、負けた時に、奇淋を超えると決意した時に見せた顔だ)

 

「躯、もう一つ聞きたい事がある。お前は俺の事をどう思う?」

 

躯、ニヤリ。

「何だ?お前は俺の事が好きなのか?そうかそうか。少し驚いたぞ。いきなり俺に聞いてくるとは飛影、お前は意外と恐いもの知らずというか、大胆だな」

 

躯の言葉に顔を真っ赤にして、少し慌てながら怒る飛影。

「バ、バカかお前は!今のは違うぞ。今の俺の強さをお前から見てどうなのか聞いただけだ!!決してお前を好きとかそういう事ではないぞ」

 

「何だ飛影、俺の事が嫌いなのか?」

ちょっと悲しげな顔をする躯。

 

「それは違うぞ!!」

 

ムキになって否定する飛影。

 

「だったら俺の事好きなんだな」

 

手で頭の後ろを掻きながら答える。

「き、嫌いではないぞ」

 

飛影の反応が余程面白かったのか、躯は普段は配下の者には決して見せない顔でバカ笑いをした。

 

「ハハハ。すまんすまん。ほんの少しからかうだけだったんだが、お前の反応があまりに可笑しくてな」

 

(こいつ本当に殺すか)

 

バカ笑いする躯にむくれる。

 

「まあ、冗談はこれぐらいにして」

ふざけていた顔から一転、真剣な顔になる。

 

「俺の見立てた今のお前の強さは、煙鬼を含めた雷禅の仲間たちの強さと比較して例えると、黒龍波を使用した状態なら、奴らと互角以上に戦える強さはある」

 

「ああ。俺もそう思うぜ」

 

飛影はこの三年の間に、ひたすら剣技と特に妖力を高めることを徹底的に行った。

その結果、黒龍波を体内に取り込んだ時に上昇する妖力は飛躍的に上がった。

前の大会では、大きな力の差があった煙鬼たちとの差はこれで一気に埋まり、彼等の対抗馬となりうる力の持ち主となっていた。

 

「そんな強さのお前が御堂の力を求める理由も分かっているがな」

 

「お前なら分かると思っていたぜ。躯、はっきり言ってくれていいぜ」

 

躯は軽く溜め息をつくと飛影が御堂の力を得たい理由を答え始めた。

 

「簡単なことだ。今のお前でも黒龍波を乱発すれば直ぐにガス欠となる。仮に煙鬼と戦い、黒龍波を使って奴を倒せたとしても、もうお前に次の試合はない。つまり黒龍波はお前の最大の武器であり、弱点でもある」

 

飛影、ニヤリ。

「流石だな。大会はトーナメント。勝ち続ければお前はもちろんのこと、黄泉や雷禅の仲間たちと必ずぶつかる。俺は一人は倒せてもお前の言う通り、俺に次はない」

 

そう言うと飛影はソファーから立ち上がる。

 

「行くのか、御堂のところに」

 

躯の言葉に頷く飛影。

 

「お前が求める能力。まあ想像は出来るが、あえて聞いていいか?」

 

飛影は躯の方を振り向くと答える。

 

黒龍波の連発に耐えれる精神力と肉体だ」

 

続く

 

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