nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #025 「新しい剣?(序章)」

――翌日の午後。

 

前日に起こった、雪菜のピンチを助ける為に、久々に霊気を使ったせいで、桑原の身体は筋肉痛ならぬ軽い霊気痛になっていた。

 

身体の痛みの為、自分の部屋のベッドで横になって、朝からずっと起きずに寝ていた。

 

霊気痛の症状は、ピキッっとくると身体に電流が流れるような衝撃が走り、全身に激痛。

過去に四聖獣と戦った後にも同じ症状になった事があるが、今回のはその時以上かもしれない。

 

桑原(痛てて…。少し霊気を使っただけでこの様じゃあ、やっぱいけねーよな…。最後に霊気をまともに使ったのが、正聖神党の奴らを浦飯たちとやっつけて以来だもんな…)

 

部屋で大人しくしていると、色々と考えてしまう。

最悪の事態があった時の事とか。

大好きな雪菜に何かあったとき、今雪菜を守れるのは、人間界で一緒に暮らす自分しかいない。

このままではいけないと考えて、激痛を堪えながら

ゆっくりとベッドから起き上がって部屋を出る。

 

雪菜「あれっ、和真さんお出かけですか?」

 

桑原が玄関の戸を開けて外に出掛けようとしたら、

雪菜が声をかけてきた。

 

雪菜の方を向こうとしたらピキッと激痛が走る。

 

桑原(痛てて)

 

痛みを我慢しつつ、精一杯の笑顔を作って、雪菜の方を振り向く。

 

桑原「そうっすよ。ちょっと皿屋敷中学校の裏山に行ってきます」

 

雪菜「裏山ですか??」

 

桑原「そうです」

 

雪菜(?)

 

行き先が裏山と聞いて、不思議そうな顔をする雪菜を置いて桑原は自宅を出た。

 

家を出た桑原の姿を見つめる比羅たち。

 

駁「比羅、今日もずっと監視するのか?」

 

比羅「いや、今日はこれまでだ。さっき国から伝令があった。黎明もこちらに来たらしい。私は黎明と合流する」

 

駁「黎明までも人間界に来たのか?たかが人間一人を監視して捕らえるだけなのによ。本来なら俺一人でもいいぐらいだぜ」

 

比羅「王の指示だから仕方あるまい。私たちはただ任務を忠実にこなすのみだ」

 

駁「へっ、あの人一倍責任感の強い黎明の事だ。王が黎明に人間界に行くように命令したっていうよりは、自ら王に掛け合って人間界に来る事を志願したんだろうぜ」

 

比羅「そうだろうな」

 

駁「まあ、俺は別にいいけどよ。じゃあ俺は一旦戻るぜ」

 

駁の姿が比羅の目の前から消え去った。

 

比羅は桑原に視線を移す。


「桑原、お前は私達に必要な存在。必ず手に入れる」

 

そう言うと比羅の姿もその場から消え去った。

 

もしこの時、比羅たちが桑原を捕らえようとしていたら、霊気痛でろくに動けない桑原は、彼等に容易に捕えられてしまっていただろう。

運が良かったと言える。

 

――その頃。桑原は裏山に向かいながら、

これまでの出来事について考えていた。

 

桑原(雪菜さんといつも一緒にいることが多いから、あの視線が俺なのか雪菜さんなのか、一体どっちに向けられたものかわからねー…。雪菜さんの涙は宝石になるからな。垂金みてーにそれを狙う奴かも知れね…)

 

ブツブツと呟きながら歩く桑原。

すれ違うオバチャンたちに、ヒソヒソ言われても気付かない。

 

桑原の後ろから、若い男性の三人組が一緒に並んで歩いてきた。

 

それは桑原の中学時代からの友人である、

桐島・大久保・沢村の三人だった。

 

桐島・大久保・沢村(!)

 

三人は目の前を歩く桑原に気付いた。

 

桐島・大久保・沢村「おお~い、桑原さ~ん!!」

 

三人は走って桑原のところまで駆け寄って来た。

 

桑原(やっぱ霊剣だけじゃあ駄目だぜ。自分の身や雪菜さんを守るには次元刀は必要だ…。なんとか出せるようにならねーと)

 

しかし考え事に夢中で、三人の呼びかけには全く気付かずにそのまま通り過ぎてどんどん歩いていく。


大久保「あれれ…。桑原さん、俺たちに気付かずに行っちゃったぞ」

 

沢村「何か考え事に夢中だったみてーだな」

 

桐島「待ってくださいよ~桑原さ~ん!!」 

 

桐島が大きな声で桑原を呼びながら走ってきた。

 

桑原「うん?」

 

自分の名前を誰かが呼んでいる事にここでようやく気付いた。

そして桐島にも気付く。

 

桑原「おう!桐島、久しぶりじゃあねーか!!何やってんだ?」

 

桐島は地元の普通の高校を卒業した後、大学には進学せず、そのルックスを活かしてホストになった。
今では、お店の人気ベスト3に入るまでの人気ホストにまでのぼりつめていた。

 

桐島「久しぶりに皆が揃いそうだったから、カラオケにでも行こうかって話しになったんですよ。桑原さんとこにも寄ったんですよ」

 

桑原「そうなのか?悪いな。丁度入れ違いだったみてーだ」

 

沢村と大久保も歩いて桑原の側までやってきた。

 

沢村「久しぶりっす。桑原さん」

 

桑原「よう!沢村。お前もこっちに帰って来てたんか」

 

沢村は、中学や高校の時の坊主頭を止めて、今は長髪になっていた。地元の工業高校を卒業後、メガリカに憧れて就職先の大阪でバンドを結成して、地道に活動しながらインディーズデビューを目指している。 

 

沢村「一昨日の夜に久しぶりに帰ってきましたよ」

 

桑原は長髪になって派手なかっこうをしている沢村を見て笑う。

 

桑原「この四人の中では、やっぱりおめーが一番変わったな沢村」

 

沢村「ははは。やっぱりそうっすよね」

 

沢村は長い髪を触りながら苦笑い。

 

大久保「桑原さんも一緒に今からカラオケ行きましょうよ」

 


大久保は沢村と一緒の地元の工業高校を卒業した。
その後、家が母子家庭である為、家の苦しい家計を助けるべく、そのまま地元の工場に就職。兄弟たちの面倒を見ながら日々真面目に働いている。

 

桑原「すまねー…。今からちょっとどうしても外せない用事があるんだわ」

 

大久保の誘いに桑原は申し訳なさそうな顔で断る。

 

大久保「そうなんっすか。残念です。桑原さんの歌うメガリカの曲を久しぶりに聴きたかったですよ」

 

桑原「悪いな。この埋め合わせは必ずするからよ」

 

桐島「桑原さん、実はカラオケの後、夜に飲み会もやるんですけど、そっちの方にも来れないっすか?」

 

桑原「おう。そっちの方なら行けるぜ」

 

桐島「じゃあいつも俺たちが集まっているあのお店に19時集合です」

 

桑原「分かったぜ」

 

大久保「俺たちはこのままカラオケに行きますんで」

 

沢村「じゃあ桑原さん、また後で!」

 

桑原「おう!後でな」

 

桐島・大久保・沢村と別れた桑原は、皿屋敷中学の裏山に向かった。

 

気合いを胸に。

 

――皿屋敷中学校の裏山

 


桑原「よし。まずは、昨日出した霊剣から行くぜ」

 

ジジジ…

 

桑原は右手に霊気を集中。霊剣を作り出した。

 

桑原「でゃあぁぁ!!」

 

シュッ!シュッ!シュッ!

 

その場で霊剣を使って素振りを始めた。

 

桑原(鈍った身体を鍛え直さねーとな)

 

激痛に耐えながらひたすら剣を振る。

 

1時間、剣を振り続けた桑原の身体は汗でビショビショ。

下を向いて肩で息しながら膝をつく。

 

顔を上げて上を見上げると大きな巨木がある。

 

桑原の目がキラリと光る。

 

目の前にあった巨木に向かって高くジャンプした。


桑原「おりゃぁぁぁ!!」


シュパ!シュパ!シュパ!


霊剣で木の枝を次々に斬っていく。

 

桑原が地面に着地すると霊剣で切り裂いた木の枝が地面に次から次へと落ちてきた。

 

フゥ~っと一息つくとピキッと激痛が走る。

 

桑原(あっ、痛てて…)

 

素振りをやってみて、全盛期の時にはまだまだ及ばないが、だいぶん昔の勘を取り戻した感じがした。

 

桑原「ふ~う。次は身体に負担が結構かかる霊剣手裏剣だ」

 

目を瞑って両手を握り締めると霊気を集中した。

 

桑原(この身体が痛いのは、この霊剣手裏剣によるものだからな)

 

握っている手の中に霊剣手裏剣が作り出された。

目を開けると同時に、握っていた手を開いて巨木に向かって手裏剣を飛ばした。

 

桑原「オラァァァ!!」

 

一直線に巨木に向かっていく霊剣手裏剣。

 

巨木に次から次へと霊剣手裏剣が突き刺さる。

 

桑原(うっ…)

 

消耗の激しい霊剣手裏剣を使ったせいで、一瞬だが、

眩暈が生じた。

 

桑原(やっぱこの技は結構霊気を使っちまうようだな…。使うときは気をつけねーと)

 

桑原はここで顔を思いっきり叩いて気合いを入れた。

そして真剣な目に変わる。

 

桑原「さてと次が一番の難題の次元刀だぜ」

 

右手に霊気を集中し始めた。

 

桑原「行くぜ!次元刀」 


ジジジ…!!

 

桑原(!?)

 

右手から出て来たのは、次元刀ではなくいつもの霊剣だった。

 

桑原「チクショー!やっぱ簡単には出来ねーよな」

 

ジジジジ…!!

 

ジジジジ…!!

 

ジジジジ…!!

 

桑原はその後、およそ2時間近く、何度も何度も次元刀を出そうと試みたが、出て来るのはやはり霊剣ばかりであった。次元刀をどうしても作り出す事が出来なかった。

 

桑原「ハァハァハァ…」

 

バタッと桑原は地面に大の字になって倒れた。

 

ボーっと森林に囲まれた空を眺めていると、次元刀を出す事の出来ない悔しさが顔に滲み出てくる。

 

桑原(クソッ。俺にはもう次元刀は出すことは出来ねーのかよ!!)

 

《和真さん…》

 

桑原(ハッ!?)

 

桑原の脳裏に昨日、目の前で看板が落ちてきて、雪菜が危険な目にあった時の出来事がよぎる。

 

桑原(雪菜さん…)

 

ガバッと起き上がるとニヤリと笑う。

 

桑原「へへっ。諦めてたまるかってんだ。何かあった時に雪菜さんを守らねーといけねーのはこの俺なんだからな」

 

桑原は再び右手に霊気を集中し始めた。

 

桑原「負けねーぞぉ!!出てきゃがれーー!!!次元刀ォォォォ!!!!」

 

右手に集中し蓄積された霊気が剣を作り出す。

そして徐々に今までの霊剣とは違う姿に変化していく。

 

桑原「見ててくれよ!!雪菜さーーーん!!!」

 

ピキーン!!

 

桑原の右手にはなんと次元刀が輝いていた。

 

桑原(!!)

 

相手の防御力を無視して相手を切り裂く事も、また霊界が張った強力な結界すら容易く切り裂く次元刀。

 

最強の剣が再び桑原の手に蘇ったのだ。

 

桑原「よ、よっしゃァァァァ!!!出来た!!出来たぞォォォ!!」

 

右手に光輝く次元刀を空高く掲げた。

 

桑原(俺はこの次元刀で雪菜さんを守るぜ!!)

 

ボトッ

 

桑原のズボンのポケットから、以前鈴木から暗黒武術会の決勝前にもらった試しの剣が落ちた。

 

桑原「あ、これも一応持ってきていたんだっけな…」

 

次元刀を消すと落ちた試しの剣を拾った。

 

桑原「そういえば、こいつは暗黒武術会で戸愚呂(兄)と戦ってから使ってねーな」

 

手に持つ試しの剣を見つめる。

 

桑原(あの時は、この試しの剣がめちゃくちゃ役に立ったんだったな)

 

思い出される戸愚呂(兄)との死闘。

桑原の脳裏に試しの剣の特性が頭に浮かぶ。

使う者の気によってその姿を変える試しの剣。

 

ここで桑原にはある一つの疑問が浮かんだ。

 

桑原(まてよ…。この試しの剣を使って次元刀を出して見たら一体どうなるんだ??)

 

ちょっと危険なのかもしれないが、好奇心で試してみたくなった。


桑原「この剣は、確か鈴木が使う者によって変わるって言っていたよな。いっちょやってみるかーー!!!」

 

試しの剣をガシッと強く握り締めると、霊気を試しの剣に伝え始めた。

 

桑原「もういっちょ行くぜェェェ!!次元刀ォォォォ!!!」

 

試しの剣に桑原の霊気が完全に伝わり、輝き出した。

 

桑原の身体に無数の霊気が稲妻のように走る。 

 

ピカーー!!

 

桑原「ぐぉぉぉっ!!」

 

あまりの輝きに桑原は思わず目を瞑った。

 

そして暫くすると輝きが消えた。

恐る恐る目を開けて右手を見てみる。

 

桑原(!?)

 

右手を見た桑原は驚いた。

 

桑原「こ、これは…次元刀じゃねー…。全く別の新しい剣だ…」

 

霊気のあまりの使用にクラッと倒れそうになる。

 

桑原「なんかスゲー剣みてーだが、今の俺にはかなりきついぜ…」

 

その場にバタリと倒れると完全に意識を失った。

 

--桑原が目覚めたのは、桐島たちと約束した19時前だった。

 

桑原「ヤベー!寝過ごしちまった!!」

 

慌てて飲み会に走って向かった。

 

※それでも行く前に可愛いがっている猫たちの餌をあげに自宅に戻った。

 

桑原が生み出した新しい剣。この剣が後に、世界を変える戦いのきっかけになるとは、桑原はまだ知る由がなかった。

 

そしてこの日の翌日、
桑原に最大の危険が迫る。

 

続く

 

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