nanaseの世界

このブログは週間少年ジャンプで連載していた、冨樫義博先生の原作漫画の幽✩遊☆白書の続編小説を中心に、映画のレビューや日々の出来事をメインにしています。

小説更新!!最新話公開中 幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #108「二回戦最終試合・凍矢vs戸熊(大会編)」

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #075「樹の暗躍(大会編)」

――選手達の休憩所

 

牛頭との試合を終えた桑原が休憩所に戻って来た。


桑原、ニヤリ。

「浦飯ィィ!!見たかよ!俺様の強さ」

 

桑原は満面の笑みでVサイン。

 

「見てたぜ!桑原があんな一撃必殺の技を使うなんて、スゲーじゃねーか!」

 

「だろ!実際は時雨の技のパクリだけどな。この技は時雨に死ぬほど鍛えられたお陰で出来たようなもんだ。それでどうだった?俺の剣技はよー」

 

スッ

 

飛影が二人の側にやって来た。

「まだまだ踏み込みが甘い上に無駄な動きが多いぞ。とても俺と同じ男を師事したとは思えんな」

 

ピクッ

 

「飛影……てめーはいつもいつも」

 

「次の相手は牛頭とは比べものにならない相手だ。勝ちを喜んでばかりいないで次の試合で死にたくなければ少しでも剣の腕をあげたらどうなんだ」

 

それは実際に武威と戦い、その強さを知る飛影なりの

アドバイスであった。

 

「わーてるよ!少しぐらい勝利の余韻に浸らせろや」

 

「フン、しかしこの短い期間でこれだけの力を身につけたのは貴様にしては大したものだがな」

 

(!?)

 

幽助と桑原は飛影の意外な誉め言葉に驚いた。

 

「おっ!珍しいことがあるもんだな。あの飛影が誉めるなんてよー」

 

「確かにあの飛影が誉め言葉を言うなんてマジで驚いた。富士山噴火の前触れじゃないのか?俺を誉めるなんて思わず自分の耳を疑ったぜ」

 

(……こいつら一度殺すか)

 

「あれっ?そういえば蔵馬は?」

 

「さっきまで一緒にいたんだけどな」

桑原は辺りを見回した。

 

「おっ!いたいた」

 

蔵馬はスクリーンの近くで恐い顔をして映像を見ていた。

桑原は気になって蔵馬の側に行って見る。

 

「おーい蔵馬ァァ」

 

近くから声をかけたのに蔵馬はよっぽど何かに気を取られているのか、桑原の声に気付いていない。

 

(蔵馬、どうしたんだ?)

 

桑原が蔵馬の後ろから肩を軽く叩いた。

 

(!!!)

 

蔵馬は珍しく驚いて身体がビクッと反応した。

 

「あ、悪い。驚かしちまったか……」

 

「いや、すまない桑原君。大丈夫だ」

蔵馬の額から汗が滴り落ちた。

 

「珍しいな、おめーが俺が後ろに来た事に全く気付かないなんて。俺の試合は見てたか?」

 

蔵馬は笑顔で頷く。

「もちろんですよ。見事な勝利でしたね」

 

「だろ。しかしなんかえらいスクリーンを見入っていたみたいだけどなんかあったんか?」

 

「いや、別に大したことではないですよ」

 

「そっか、大したことないなら別にいいんだけどよー」

 

桑原は次の対戦の組み合わせを見た。

「おっ!次のDブロックの第四試合に鈴木が出るじゃねーか。あいつを応援してやらねーとな」

 

「そうだね」

 

「っとその前に観客席にいる雪菜さんに俺の勝利を報告してくるぜ」

 

「ハハハ、相変わらずだね。雪菜ちゃんに宜しく言っといてくださいね。それと桑原君は狙われているということをくれぐれも忘れないでくださいよ」

 

「分かっているって」

 

桑原は蔵馬に手を振るとメイン会場の方に走っていった。

桑原の後ろ姿を見ながら蔵馬は苦笑いを浮かべた。

 

「俺としたことが桑原君が後ろに来た事に気付かないぐらいスクリーンを見入っているとはな」

 

フゥ~っと蔵馬は軽く息を吐いた。

 

(俺の考え過ぎだ。鴉は暗黒武術会の決勝で俺が確実に殺した。生きているはずがない。あれは別人だ)

 

桑原が立ち去って暫くするとスクリーンに鈴木と対戦相手の駒形の姿が映し出された。

 

「どうやら鈴木の対戦相手はあの女性か」

 

鈴木の対戦相手の駒形は美しい女性の妖怪であった。

着物をイメージした武闘着を着て鈴木の前に立っている。

 

「見た感じだとあの女性はA級の中位クラス。鈴木の相手ではないな」

 

その時、背後から蔵馬を見つめる何者かの強い視線を感じた。

 

(!!)

 

蔵馬は素早く振り向いた。


蔵馬の背後に立つ者がいた。

Dブロックの第三試合を終えて戻って来た梟である。

 

「か、鴉……」

 

蔵馬は梟の姿を見て思わず鴉と呟いた。

それほど梟と鴉の姿は似ていたのだ。

梟は長身で細身の身体つき、そして美しく長い髪。

顔を目から下をマスクで隠していた。

蔵馬が以前戦った鴉とまさに瓜二つの姿である。

そして蔵馬と梟の目が合う。

 

(スクリーンで見るより実際に見ると梟は鴉にあまりにも似ている)

 

(……)

 

梟は蔵馬に背を向けるとゆっくりと歩いていった。

 

(梟は間違いなく俺を見ていた……。何故だ?梟、お前はやはりあの鴉なのか?)

 

立ち去る梟の後ろ姿から蔵馬は目を離せなかった。

そして梟の姿を見つめる男が蔵馬以外にもう一人いた。

武威である。

 

(鴉……)

 

武威は兜を被っている為にその表情を伺い知ることが出来ないが、暗黒武術会の時に戸愚呂チームで同じチームメイトだった鴉をよく知るだけに死んだ鴉にそっくりな梟に対して強い視線で彼を見つめていたのだった。

 

――霊界

 

コエンマの机の上に別室から持って来た大量の資料が置いてあった。

コエンマはその資料を調べていた。 


「う~ん、う~ん」

 

コエンマは資料を見ながら腕を組んで何か考え事をしていた。

一緒に手伝いしているぼたんがやって来る。

 

「コエンマ様、便秘ですか?」

 

「たわけ!違うわ」

 

コエンマたちが調べている事は、幽助が魔界に旅立つ直前に桑原を狙う比羅たちが何者であるか調べて欲しいと頼んだ件についてである。

霊界には大量の膨大な資料と情報網がありそれを見込んだ上での頼みであった。

 

「何か分かりました?」

 

「全くわからん。幽助の言っていた者たちの事が載る資料が必ずあると思うのだが中々見つからないな」

 

「まあ膨大な資料ですからね」

 

「失礼します」

 

ガチャッ

 

コエンマの部屋の扉が開くとあやめが何かの資料を持ってやって来た。

 

「あやめ、何かあった?」

 

「ええ。かなり古い霊界の書物が見つかったからこっちに持ってきたの」

 

あやめの手には、古びた分厚い本が数冊あった。

 

「どれどれ見せて見ろ」

 

「あっ、はい」

 

ドスン

 

あやめはコエンマの机に書物を置いた。


モワーンっと本から大量の埃が辺りに飛散。

 

「ゴホゴホ。これはかなり古い本だな」

 

「例の資料室で見つけて参りました」

 

「あの資料室からか。どれどれ早速調べて見るとするか」

 

パサパサパサ

 

コエンマはあやめが持って来た本を調べ始めた。

 

「しかし本当に古い本だね。あやめ、こんな本をどこで見つけたのかい?」 

 

「コエンマ様が以前、閻魔大王様の事件の事を調べ上げたあの資料室の奥に隠れるように置いてあったのよ」

 

「あの資料室か。でもよく見つけてきたね」

 

あやめ、ニコリ。

「まあね」

 

(あやめは相変わらずコエンマ様の事になると頑張るのよね)

 

コエンマが本を調べ始めて30分が過ぎようとした時、

コエンマが突然声を上げた。

 

「むっ!これは……」

 

コエンマは本のある一ページの記述を見て驚いていた。

ぼたんとあやめがコエンマの側に駆け寄る。

 

「コエンマ様、何か見つかったんですか?」 


「うむ、この本を読んで分かったぞ。桑原を狙う連中が霊気でも妖気でもない気を持つ理由とそしてその正体もな」

 

「何者なのですか?」

 

「奴らの正体はだな……」

 

そしてコエンマは比羅たちの事についてぼたんとあやめに語った。

 

「なるほど……。それが彼らの正体だったのですね」

 

「じゃあ、あいつらは桑原君を使って何をするつもりなんだろう?」

 

コエンマは椅子に深く座り、腕を組む。

「幽助たちもそれを知りたがっておったが、肝心の桑原が次元刀以外の能力に恐らくまだ目覚めておらんのだろうから分からんのだ」

 

「桑原君の能力は何なのでしょうね?」

 

「桑原は次元刀という非常にレアな能力を持つ男だ。恐らくあいつにはまだ奴らが求めるほどの眠っている能力があるのだろう」


「でも桑原君がまだその能力に目覚めているわけではないのならそんな能力を本当に持っているっていうのも奴らに分からないのではないですか?」

 

「確かにな。桑原を狙う連中には分からないだろう。幽助たちが言っていた奴らの協力者が相手の隠れた潜在能力が分かる能力者だとしたらどうだ?」

 

「あ……そっか。確か幽助たちと面識がある者って言っていましたよね。コエンマ様はそれが誰だかわかったのですか?」

 

頷くコエンマ。

「うむ。幽助たちから話しを聞いてからずっと考えておったのだが、相手の潜在能力を探る能力を持ち、幽助たちと面識を持つ者は一人だけ思い当たる男がおる」

 

「一体それは誰です?」

 

コエンマは机の上に両手の肘を置いて、手を組む。

「闇撫の樹だ」

 

――亜空間

 

樹は一匹の妖怪の肉体を見つめている。

「素晴らしい肉体だ。死んで三年も経過しているというのにな」

 

樹の目の前には幽助の遺伝上の父親である雷禅の遺体が横たわっている。

その姿は死んだ三年前と変わっていない。

 

「これで器が手に入った。ここまでは俺の計画が順調に進んでいる」

 

樹は雷禅の隣に寝かしてある仙水の肉体を見た。

樹は仙水の側に行くと仙水の髪の毛を優しく触る。

 

「忍よ、俺が今からやろうとしていることをお前が知ればお前は一体俺をどう思うのだろうな……」

 

――霊界

 

ぼたんがコエンマに詰め寄る。

「魔界の穴事件の後に死んだ仙水の魂と身体と共に行方不明になっているあの男ですか?」

 

「そ、そうだ。あいつは忍が霊界探偵をしていた頃に敵として出会い、その後は忍のパートナーとして行動を共にしていたので奴の事はワシも良く知っておる」 

 

あやめが話しに加わる。

「彼は相手の隠れた潜在能力を見抜く力を持ち合わせていたのですか?」


「樹は一目見れば分かっておった。その者が持つ才能と隠れた潜在能力をな」

 

「じゃあ、魔界の穴事件の仙水たちに協力していた人間たちはまさか?」

 

「恐らく忍が魔界の穴の事件で集めた、天沼や御手洗たち能力者は、樹がその才能を見つけだし、忍が持つ絶大的なカリスマ性で味方につけていたのだろう」

 

「才能を見抜く樹に、相手を取り込むカリスマ性を持つ仙水。見事な連携プレイだね」

 

「魔界で最後に話をした時、樹は忍と静かに時を過ごすと言っておったが……。ワシが考えられる協力者は樹しかいない。もし本当に樹なら何を企むか分からないぞ」

 

コエンマは静かに目を瞑り何かを考え始めた。

 

「コエンマ様?」

 

コエンマの目を開けると椅子から立ち上がった。

 

「ぼたん!あやめ!万が一に備えて舜潤ら特防隊に伝えてくれ。いつでも出動出来る準備をしておくようにとな。それと幽助に現段階の情報を伝えるのだ」

 

ぼたんとあやめは頷く。

「分かりました」

 

「何か大きな胸騒ぎがする」

 

――亜空間

 

樹は桑原の次元刀で斬られた顔の傷を触った。

 

「桑原、俺はお前に目を斬られた時に俺は感じ取った。さらなる上の能力がお前に隠れているということをな」

 

樹の目の前に桑原が雪菜と楽しく話している姿が映し出されている。

 

「一目で全ての能力を見抜けなかったのはお前が初めてだ。お前のその能力は危険過ぎる。使い方次第では、全ての世界を掌握出来るほどのな」

 

――魔界

 

ピッピッピ

 

幽助が魔界に持って来ていた霊界との通信機が鳴り始めた。

 

しかし幽助は煙鬼の大統領府で借りていた部屋にそれを忘れていた。

 

続く

 

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幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #074「桑原の初戦(大会編)」

――魔界統一トーナメントのAブロックの一回戦の第四試合が始まろうとしていた。

 

――メイン会場の観客席

 

「いよいよ和真さんの出番……」

 

巨大スクリーンにアップで映る桑原を雪菜が心配そうな顔で見ていた。

 

――Aブロック

 

牛頭(ごず)
×
桑原(くわばら)

 

桑原と牛頭が対峙している。

 

牛頭は2mを越す巨体と、鍛えあげられた鋼のような筋肉が自慢の妖怪である。

その名の通り頭が牛だった。

上空から審判が様子を見ている。

 

「始め!」

 

審判の声が闘場に響き渡った。

 

「よっしゃあぁぁぁ!!!行くぜ牛野郎」

 

ジジジ……

 

「霊剣!」

 

ギュンンン!!

 

桑原は右手に霊剣を作りだした。

 

牛頭、ニヤリ。

「やれやれ人間か、楽勝だな」

 

牛頭は桑原が人間ということで桑原を戦う前から甘く見ていた。

 

――選手たちの休憩所

 

時雨がスクリーンで桑原の試合を見ている。

 

「次元刀ではなく霊剣か……。まあ様子見といったところか」

 

躯が時雨の隣にやって来る。

 

「躯様」

 

「あの人間がいよいよ戦うようだな」

 

「ええ。この試合はおそらく桑原が勝つでしょう。あの牛頭はA級の上位クラスの力を持っていますが、今の桑原なら倒せる相手です」

 

「お前が教えた剣術をどれだけ奴が身につけているか楽しみだ」

 

「拙者もそれを実践で見るのが楽しみです」

 

――Aブロック

 

「捻り潰してくれるわ」

 

牛頭は桑原めがけて突進してきた。

2mを超える巨体。

それはまるでダンプカーのようだ。

 

「来やがれ」

 

桑原は霊剣を構えた。

 

「おらぁぁぁ!!」

 

ビューン!!

 

牛頭が桑原に向かってその巨体を活かした強烈な一撃を放った。

 

バッ

 

桑原、その場で上にジャンプ。

 

ズガァァァン!!

 

牛頭の攻撃をかわした。

狙いを外した牛頭の腕が地中にめり込む。

そして牛頭の背後に桑原は着地した。

 

「チッ!よけられたか」

 

ズボッ

 

地中にめり込んだ腕を引き抜くと再び桑原に向かって突進してくる。

 

「フン」

 

ビューーン!!

 

さっきよりさらに速い牛頭の一撃。

 

バッ!

 

またも桑原は上にジャンプ。

ジャンプすることで、牛頭の攻撃をかわした桑原は、牛頭の右肩を軽く踏んで、さらに高くジャンプした。

そして牛頭と遠く離れた位置に着地した。

 

「またかわしやがったか」

牛頭は人間に攻撃をかわされている事でイライラしてきていた。

 

「あの金髪野郎の動きに比べたら屁でもねーぜ。今度は俺の番だ」

 

フッ

 

(消えた!)

 

桑原の姿が牛頭の目の前から消えた。

 

「チッ、どこだ」

 

牛頭はキョロキョロと顔を動かして消えた桑原の姿を探す。

 

「俺はここだ」

 

フッ

 

桑原が牛頭の頭上に姿を現した。

これには牛頭も驚いた。

 

「なっ!?上か!!」


「でゃぁぁぁ!!!」


ビューン!!

 

桑原は霊剣で斬りつける。


「くそっ!」

 

ズバッ!

 

桑原の霊剣が牛頭の左肩を切り裂く。

 

「ぬうぅ!」

 

ズズズ……

 

牛頭は斬られた左肩を右手でおさえて少し後ずさる。

桑原は着地すると再び霊剣を構えた。

 

「スゲー筋肉をしてるな。流石に今の一撃では倒せねーか」

 

「チッ、人間だと思って甘く見過ぎていたようだ」

今まで桑原を侮っていた牛頭の顔が真剣な顔になる。


「本気で行くぞ」

 

グッ

 

牛頭は右手に力を強く込め始めた。

 

「うぉぉぉぉ!!!」


ボンッ!

 

牛頭の右手が大きく膨らんだ。

 

「な、何だ?」

 

「覚悟しろ。もう容赦しねー」

 

ジジジ……

 

「牛野郎の腕にめちゃめちゃ妖気が集まっている」

 

「くだばれェェェェ!!!」

 

ドーーーン!!!

 

(!)

 

牛頭の右手から巨大なエネルギー波が放たれた。

 

「これをくらったら流石にやべーかもな」

 

シュゥゥゥゥ……

 

桑原の右手から霊剣が消えた。

 

「あの手で行くか」

 

スッ

 

ジジジ……

 

「次元刀ォォォ!!」


ピキーン

 

桑原の右手に次元刀が出現。

 

そしてその瞬間、桑原に牛頭の放ったエネルギー波が直撃する。

 

ドガァァァァァァーーン!!!!!!

 

桑原の立っていた場所が大爆発を起こした。

 

――メイン会場

 

小兎がマイクを手に持って叫ぶ。

「あーーっと!桑原選手に牛頭選手の放った巨大なエネルギー波が桑原選手に直撃いたしましたァァァァ!!!」

 

爆発の映像を見て、雪菜は顔を青くする。

「和真さん!?」

 

――Aブロック

 

爆発後の桑原の立っていた場所に激しい砂煙が舞う。


牛頭、ニヤリ。

「へへへ、やったぜ」


牛頭は勝利を確信し笑みを浮かべた。

 

シュゥゥゥ……

 

砂煙が徐々に消えて、桑原の立っていた場所の状況が見えてきた。

 

「フフフ、奴のボロボロになった姿をじっくりと見てやるか」

 

だが、牛頭の期待通りには行かなかった。

砂煙の先にいるはずの桑原の姿が完全に消え去っていたからだ。

 

「な、何だと!?」

桑原が立っていた場所に急いで駆け寄る。

何処を見ても桑原の姿はない。

 

「い、いない。あのタイミングではよけようがないはずだぜ。一体どうなっている……」

 

「悪いな、それでは俺を倒せねーぜ」

 

突如、桑原の声が牛頭の耳に聞こえてきた。

 

「な、一体何処から!?」

 

ザシュッ!!

 

桑原は牛頭の右の胸部から左の脇腹にかけて次元刀で切り裂いた。

 

「がはァァ!!」

 

ズズズ……

 

牛頭は斬られた衝撃で後ずさる。

 

「馬鹿な!!」

 

牛頭は目の前の光景に驚く。

 

「く、空間が斬れている!!?」

 

「へっ、驚いたかよ」


牛頭の目の前の空間が斬れていた。

そしてそこから桑原の次元刀だけがその姿を見せている。

 

キーーー

 

そして静かにゆっくりと空間が円状に斬られていく。


シュパーン!!

 

空間が円の形に斬れた。

そして円の形に斬れた空間の中から桑原が飛び出してきた。

 

桑原、ニヤリ。

「桑原和真様の登場だ」

 

ピキーン

 

その手には次元刀。

 

シュッ!

 

(!)

 

次元刀で牛頭を突く。

 

「ヒッ!?」

恐怖で牛頭は怯えていた。

 

ピタッ

 

桑原は次元刀を牛頭の喉元で止めた。

 

「どうだ牛野郎?」

 

「な、何だこの剣は!?」

 

「次元刀ってやつだ」


「次元刀……」

 

「てめーの放ったエネルギー波が俺に当る瞬間、俺は目の前の空間をこの次元刀で素早く斬って、空間の中に飛び込んだんだ。だがらてめーのエネルギー波をかわせたんだぜ」

 

(まさか、そんな事が可能なのか……)

 

「そして空間の中を移動して空間の中からお前を斬ったってわけだ」

 

「まさか空間を斬り裂くような真似を人間が出来るとは

……」

 

「俺の自慢の技だ。それでどうすんだ?この状況でもまだ勝負を続けるのか?」

 

桑原は牛頭の喉元に突きつけている自らの次元刀を見ながら話す。 

 

「この状況では勝ち目がない。俺の敗北を認めるぜ……」

 

「負けを認めるなら俺の勝ちでいいんだな?」

 

「ああ。だからこの剣を下げてくれ」

 

「おうよ」

 

スッ

 

桑原は牛頭の喉元に突きつけていた次元刀を下に降ろした。

 

シュゥゥゥ……

 

そして桑原の右手から次元刀が消える。


牛頭、ニヤリ。

「ありがとよ」

 

ビッ!

 

牛頭は腹部から流れていた血を手につけると桑原の目に向かって投げつけた。

 

ベチャッ

 

「あっ!?」

 

ガバッ!

 

牛頭の血が桑原の目に入り、桑原はたまらず目をおさえた。

 

「ち、畜生ォォ!何をするんだ!きたねーぞ!!」

 

「ケッ、甘いぜ人間!勝負に汚いもくそもあるかよ」

 

グッ

 

牛頭は右手に力を込めた。


「この傷のお返しだ」


ビューン!!

 

牛頭は強烈なパンチを桑原の腹部を狙って放つ。

 

ドゴォォォ!!!

 

「うっ!!」

 

「もう一発だ」

 

ビューン!!

 

バキッ!

 

腹部に続いて桑原の顔面にも強烈な一撃が入った。

 

「うゎぁぁぁ!!」

 

牛頭の一撃を受けた桑原は、近くの岩壁に向かって吹き飛ばされた。

 

ドガァァァ!!!!

 

ガラガラガラ

 

岩壁に桑原が突っ込んだ。

 

「痛てーな、クソったれが」

崩れた岩の中から桑原が出てくる。

 

ズン

 

(!)

 

桑原の目の前に牛頭が立っていた。

 

「死ねや!!」

 

ビューーン!

 

牛頭は桑原にパンチを放つ。

 

「やべーっ!」

 

桑原は素早く左に動き、間一髪攻撃をかわした。

 

ドガァァァン!!

 

ガラガラガラ

 

牛頭の腕が岩壁にめり込む。

桑原は牛頭の攻撃をかわすと同時に、地面を蹴って飛び上がると、両足で牛頭にジャンプキックをくらわせる。

 

「ぬおっ」

 

ドガッ!!

 

桑原のジャンプキックをくらった牛頭は10m先まで飛ばされた。

 

騙し討ちした牛頭に桑原の怒りはMAXに。
「よくも騙してやってくれやがったな!覚悟しやがれ!!」

 

ジジジ……

 

「霊剣!」

 

ギュンンン!!

 

桑原は次元刀ではなく再び霊剣を作りだした。

 

スッ

 

桑原は身体を少ししゃがみ加減にして霊剣を構えた。

 

――選手たちの休憩所

 

躯が桑原の構えが何か気付く。

「時雨、あれはお前の最強の技ではないのか?」

 

「ええ、そうです」

 

「桑原にあの技までこの短期間で教えたのか?」

 

「いえ、拙者が修行の時に、桑原に一度は見せはしましたが、教えるまでには到達していないです」

 

「ならば奴は一度見た時雨の技を自力で体得したというのか」

 

「おそらくは」

 

――Aブロック

 

「行くぜ!」

 

桑原が仕掛ける。

 

ジリジリ

 

ドーン!!

 

(は、速い!!!)

 

シャキーン!

 

ズバァァァ!!!

 

時雨が鵤を倒したあの同じ技で、牛頭の腹部を横一直線に深く切り裂いた。

 

「がっ……」

 

ドスン!!

 

牛頭は膝をつき、そしてその場に仰向けに倒れた。

 

桑原、ニコリ。

「フ~、上手くいったぜ」

 

上空から審判が桑原と牛頭の試合の様子を見つめている。

倒れた牛頭の状態を審判が確認した。

 

「Aブロック一回戦・第四試合の牛頭選手対桑原選手の試合は桑原選手の勝利です!!」

 

審判が桑原の勝利を宣言した。

 

桑原は勝利宣言を聞いて霊剣を高く掲げた。

「よっしゃあァァァァ!!!初戦突破ァァ!!」


――メイン会場の観客席

 

スクリーンに笑顔の桑原が映し出された

雪菜、ニコリ。

「和真さんが勝った……良かった……」 

 

雪菜は桑原の無事と勝利に胸を撫で下ろした。

 

――選手たちの休憩所

 

「フッ、俺たちの想像以上に、奴はお前の剣術を体得していたな」 

 

時雨、ニコリ。

「桑原め、いつの間に……。本当に大した男だ」

 

武威は休憩所の壁際で桑原の試合を静かに見ていた。

(……面白い。相手にとって不足はなさそうだ)

 

こうして牛頭を下した桑原は、月畑を倒した武威と二回戦でぶつかることとなった。 

 

他のブロックのBブロック第三試合では、鉄山が勝利。Cブロックでは第二試合を九浄が、第三試合を酎が、それぞれ勝利し、二回戦への進出を決めていた。

 

一方、蔵馬は桑原の試合後に見ていた、Dブロック第三試合の梟対眉墨の試合で、勝利した梟に目を奪われていた。 

 

「あの梟とかいう男、奴に似ている……」

 

スクリーンに梟と眉墨の試合後の光景が映し出されている。

倒れている眉墨の身体はところどころ爆発して吹き飛んでいた。

その眉墨の姿と梟の姿をもう一度見て、蔵馬は静かに呟く。

 

「そう、死んだあの鴉に」

 

続く

 

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謙遜(けんそん)

謙遜(けんそん)

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~オリジナルキャラクター。

A級妖怪。

頭にシルクハットを被り、黒いマントを纏って顔に白い仮面をつけた男。

蔵馬の魔界統一トーナメントの一回戦の相手。

見えないカードを武器に蔵馬を苦しめる。

 

※名前の由来はオリジナルのlivedoor版を書いていた時によくコメントをくれたブログの読者のHNけんそんさんから拝借しました。

幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ 073「武威(大会編)」

――魔界統一トーナメント一回戦・Aブロックの第二試合

 


時雨(しぐれ)
×
鵤(いかる)

 

ズバッ!!

 

「ぐわっ!!」

 

時雨の手を離れ、回転した燐火円磔刀が鵤の背中を切り裂く。

 

パシッ

 

そしてブーメランのように時雨の手元に燐火円磔刀が戻っ。

 

「ハァハァハァ……」

 

鵤はかなり苦しそうに肩で息をしている。

 

「悪いがそろそろ決めさせてもらうぞ」

 

カチャッ

 

時雨は燐火円磔刀を握り締めて、少ししゃがんだ形で構えた。

 

ドーン!!

 

(き、消えた)

 

閃光が走る。

 

シャキーン

 

ズバッ!!!

 

「がっ!!」

 

燐火円磔刀が鵤の腹部を横一直線に切り裂いた。

 

ガクッ

 

鵤は腹部を両手でおさえると地面に膝をついた。

 

ドサッ

 

鵤はその場に倒れて動かなくなった。

 

スッ

 

しゃがんだ態勢だった時雨が立ち上がる。

 

「他愛のない相手だ」

 

時雨は上空の審判を見上げた。

審判は鵤の状態を確認。

 

「Aブロックの第二試合目の時雨選手対鵤選手の試合は時雨選手の勝利です!」

 

ーメイン会場

 

「時雨選手が圧倒的な強さで鵤選手を下しました。彼の愛刀である燐火円磔刀の威力は本当に凄いです!!」 

 

――選手たちの休憩所

 

「いよいよ出番だな」


時雨の試合を見終えた月畑が次の試合の準備を始めた。

月畑の右手には自慢の武器である魔剣グラスが握られている。

桑原が月畑の隣にやってくる。

「月畑、やっぱり時雨は流石に強いな」

 

  「桑原か」

 

「次はおめーの番だな。勝てよ!」

 

月畑、ニコリ。
「もちろんだ」

 

「そういえばお前の相棒の酒王の奴は予選で負けちまったんだってな」

 

「ああ。酒王の奴は本来なら本選に残れるぐらいの力があるんだけどな」 


「だよな。森で酒王に追いかけられた時に感じたあいつの妖気はA級妖怪クラスだったし」

 

「観客として見に来ている奴に詳細を聞いたんだが、あいつが負けたのは……」

 

酒王が敗れた経緯を月畑が語り始めた。

 

――予選第1ブロック

 

「フフフ。見渡した限り俺の敵になりそうな奴はあいつぐらいだな」

 

酒王は目の前にいるツンツン頭の人間の姿をした妖怪を見た。

確か仙道師という名前だ。

 

そして上空の審判から予選開始の合図の声が響き渡る。

 

「さあ、行こーか」

仙道師は酒王を見ると直ぐに構える。

 

スッ

 

右手の手の平を広げる。

 

ジジジ……

 

ボンッ!

 

妖気で作られた鋼鉄の球が現れた。

 

酒王は鋼鉄の球を警戒する。

(鋼鉄の球……。あれに当たると痛そうだ)

 

グッ

 

酒王は構えて戦闘態勢。

仙道師も同様に球を右手で掴み攻撃態勢に入った。

 

ドドドドドドッ!

 

「あれっ?」

 

仙道師以外の他の第一ブロックの予選出場者全員が仙道師の横を通り過ぎていった。

みんな酒王を目指して。


「へっ??」

 

予選出場者たちが一斉に酒王に向かって襲いかかっていったのだった。

 

「うぉぉぉぉ!!!」

 

流石にこの予想外の出来事に酒王は困惑した。

「な、なんで??」

 

バキッ!

 

ドガッ!

 

バゴッ!

 

酒王は予選出場者たちにその実力を発揮するまもなく、一斉によってたかって全力でボコボコにされた。

 

――選手たちの休憩所

 

「というわけであいつは予選で消えた。あの不気味過ぎる顔を誰もが許せなかったらしい」

 

それには桑原も同意した。

「……分かる気がする」

 

「話はこれまでだ。闘場にいってくる」

 

「俺も勝つからよ!二回戦でおめーと勝負だ」 


月畑、ニコリ。

「ああ」

 

月畑はAブロックの自然式円闘場に繋がる階段に向かって歩いていった。

 

「そういえば月畑の対戦相手は誰だっけ?」

桑原は対戦表の組み合わせを見た。

 

(3)
月畑(つきはた)
×
武威(ぶい)

 

(武威?どっかで聞いたことのある名前だな)

桑原は両腕を組んで考え込む。

 

幽助と蔵馬がスクリーンで試合の様子を見ていた。

 

「流石は電鳳だな。一撃だ」

 

「やっぱり親父の仲間は強いぜ」

 

Dブロックの第二試合目に登場の電鳳が一撃で戦いを終わらせた様子がスクリーンに映し出されていた。

 

「蔵馬、おめーの二回戦の相手がこれで電鳳に決まっちまったが、大丈夫か?」

 

「さあね。恐ろしく強い相手だからどうなるか分からないけどベストは尽くすよ」

 

「そっか。あ~早く俺の出番がこねーかな。陣と早く戦いてーぜ」

 

「ハハッ、本当に嬉しそうだね。まだ幽助の試合の前には桑原君の試合と鈴駒と修羅の試合がありますよ。彼等も同じブロックだから彼等と戦う可能性もあるのだからしっかり見ておいた方がいいと思いますよ」

 

「ああ、もちろんだ」


桑原が腕を組んでブツブツと呟きながら幽助たちの側にやって来た。

 

「何をブツブツ言ってんだ、桑原?」

 

「おう浦飯、それがよー、Aブロックに俺の知り合いの月畑って奴が試合に出るんだが、対戦相手の名前がどこかで聞いたことがあるような名前なんで、誰だったかなーって思ってな」

 

「俺も知ってる奴か?」

 

「多分……」

 

その時、Aブロックの審判の女性の声が聞こえてきた。

 

「これよりAブロック一回戦の第三試合、月畑選手対武威選手の試合を開始します」

 

「おっ、始まるようだぜ」

 

幽助たちはスクリーンを見つめた。

 

スクリーンに映し出されたAブロックの武威の姿を見て三人は驚く。

 

「お、思い出したぜ、あいつは……」

 

飛影も幽助たちから少し離れた位置でスクリーンを見ている。

 

(御堂の子となった武威か……)

 

――Aブロック

 

月畑と武威が間合いを取りながら試合開始の合図を待っている。

 

武威は無言で月畑を見ている。

 

(こいつ、こんなに分厚い鎧を着て動けるのか?)


上空の女性審判が様子を見ている。

 

「始め!」

 

審判の試合開始の声が闘場内に響き渡る。

 

カチャッ

 

月畑は魔剣グラスを握り締めて構えた。

魔力を帯びた強力な剣。

 

(こいつスキがない。かなり出来るぞ)

 

月畑はじわじわと武威との間合いをつめていく。

 

スッ

 

武威は右手を横に伸ばした。

 

ジジジ……

 

ズンッ

 

(あれは!)

 

武威の右手に妖気で作られた巨大な斧が出てきた。

 

ガシッ

 

武威は巨大な斧を握り締めると右肩にのせた。

 

「な、なんて馬鹿デカい斧なんだ!」

(とりあえずこちらから仕掛けて奴の様子を見てみるか)

 

カチャッ

 

月畑は魔剣をもう一度強く握り締めると、武威に向かって一気に駆け出した。

刀身が赤く光る。

 

「ハァァ!!!」

 

ビューーン!!!

 

月畑は武威の左肩を狙って素早く斬りつける。

 

ガキーン!!

 

武威の巨大な斧が月畑の剣を受け止める。

 

ググググ……

 

月畑はそのまま押し込むつもりのようだ。

だが……。

 

「なんて力だ!!ピクリとも動かない」

 

スッ

 

武威がゆっくりと右の肩にのせていた斧を上に持ち上げた。

 

「死ね」

 

ブーン!!!

 

(速い!!)

 

スパッ!!

 

武威が振り下ろした斧がもの凄いスピードで月畑を切り裂く。

あっという間に月畑の身体を横一直線に真っ二つにした。

 

ガンッ!

 

グシャッ

 

切断された月畑の上半身が近くの岩壁にぶつかりそのまま地面に落ちた。

月畑はそのまま絶命した。

 

プシュゥゥゥ!!!

 

武威の目の前では、上半身を失った月畑の下半身から、血が噴水のように吹き出している。

 

ピクピクピク

 

ドサッ

 

月畑の下半身は僅かに痙攣するとその場に倒れた。

 

「あ、あ……」

 

上空から試合を見守っていた女性審判はあまりの衝撃に声が中々出てこない。

 

(……)

 

ガシッ

 

ズン!ズン!ズン!

 

武威は再び肩に斧をのせるとそのまま闘場を後にした。

 

シーン

 

メイン会場も衝撃の光景に静まりかえる。

そんな中で小兎が喋れない審判の代わりに、武威の勝利を宣言した。

 

「Aブロック第三試合の月畑選手対武威選手の試合は武威選手の勝利です!」

 

小兎の武威の勝利宣言で静まり返っていたメイン会場は一気に大きな歓声へと変わる。

 

「すげーぜ!!」

 

「あんな重い鎧を着ているのにあの巨大な斧をなんてスピードで振り下ろすんだ」

 

「つ、月畑ァァァァ!!」

 

相棒の死を目の当たりにした酒王は目に涙を浮かべて観客席で叫んだ。

 

――選手たちの休憩所

 

「月畑ァァァァ!!」


桑原も酒王と同じく月畑の敗北と死をスクリーンで見て大きな声を上げた。

 

蔵馬は厳しい目でスクリーンに映る武威を見ている。

 

「今の武威の妖気は暗黒武術会の時と比べ物にならない」

 

飛影が静かに蔵馬の横に来た。

 

「ああ、あのデカブツの妖気は間違いなくS級クラスの上位に到達しているぜ」

 

幽助も少々驚いている。

「とんでもなく強くなってやがるな」

 

桑原は床を思いっきり殴った。

「ち、畜生ォォ!!よくも月畑を!!俺が奴をぶっ倒してやる!!」

 

怒りが桑原の潜在能力をさらに引き出す。

桑原の身体から巨大な霊気が溢れ出ていた。

 

(す、凄い!!桑原君の霊気が急激に上がっている)

 

暫くして武威が選手たちの休憩所に戻って来た。

そして武威と幽助たちが遭遇した。

 

スッ

 

飛影が一歩前に出て武威に話しかける。

 

「御堂から得た力はどうだ?お前に制御出来ているのか」

 

武威は静かに口を開いた。

「ああ。あの洞窟の戦いでお前と決着をつけたいところだが、俺と戦うまでお前は勝ち残れるのか?」

 

「それはこちらの台詞だぜ」

 

「飛影、ちょっとどいてくれ」

桑原が飛影を押し退けて武威の前に出て来た。

 

「よくも月畑を殺しやがったな!許さねーぜ!!俺が次の試合に勝てば二回戦でてめーと当たる。ぜってーぶっ倒してやるから覚悟しとけ」

 

「フッ、桑原か……。相変わらず威勢がいいな」

 

「何だと!コラァ!!」

 

その時会場にアナウンスが流れる。

 

「桑原選手、試合が始まります。至急Aブロックの闘場に来てください」

 

「チッ、まだてめーに言いたい事があるが仕方ねー、俺の試合をじっくり見とけよ」

 

桑原はAブロックの闘場に向かって走り出した。

 

「桑原ァァァァ!!」

 

幽助が桑原を呼び止めた。


「浦飯、何だ?」

 

幽助、ニヤリ。

「勝てよ!」

 

幽助は親指を立てた。

 

「おうよ!」

桑原も幽助のエールに親指を立てて応えた。

 

Aブロック第四試合

桑原(くわばら)
×
牛頭(ごず)

 

桑原和真の魔界統一トーナメント初戦が今始まる。


続く

 

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幽☆遊☆白書~2ND STAGE~ #072「蔵馬の初戦(大会編)」

――魔界統一トーナメントの一回戦は各ブロック毎に分かれて上段から順次行われていく。 

 

本選は巨大な自然式円闘場で行われる。

A~Dブロックにそれぞれ円闘場があり、それぞれが選手たちの休憩所と長い階段で繋がっている。

 

自然式円闘場には高山・湖・砂漠・ジャングル・草原が設置されており、各選手がそれぞれの能力を生かせる場所を選びながら闘いが出来る為、駆け引きの要素も重要となってくる。

中央に小型の円闘場も設置されており選手間の同意があればここだけに限定して戦うことも出来る。

選手たちにはそれぞれ虫型追跡カメラが配備され、戦いの様子を漏らさずにTVモニターに送られる。

次の王が一体誰になるのか、魔界全土が固唾をのみ大会の行方を注目していた。

A~Dブロックそれぞれの自然式円闘場に、第一試合に出場する選手たちが互いに距離をとって試合開始の合図を待っている。

 

Aブロック

乙夜(いつや)
×
境内(けいだい)

 

Bブロック

棗(なつめ)
×
達磨(だるま)

 

Cブロック

木阿弥(もくあみ)
×
卒都婆(そとば)

 

Dブロック

謙遜(けんそん)
×
蔵馬(くらま)

 

ーーメイン会場

 

実況の小兎が試合開始の合図をするように審判に指示した。

「では各ブロックの一回戦の第一試合を始めます」

 

各ブロックの上空から審判の女性たちが見守っている。 

 

「始め!」

 

四人の審判の口から、試合開始の合図の声が、マイクを通して四つの会場に響き渡った。

 

――Aブロック

 

乙夜と境内が開始の合図と同時に駆け出した。

 

「おらぁぁぁ!」

 

いきなり真っ向勝負。

 

バキッ!!

 

バゴッ!!

 

鳥と熊の顔をした両者。

激しい殴り合いを始めた。

 

――Cブロック

 

木阿弥は試合開始の合図と同時にその場で高くジャンプ。

 

「行くぜ卒都婆!!」

 

妖気を込めた手裏剣を卒都婆に放つ。

 

ガガガッ!!

 

卒都婆の纏う甲冑に直撃。

「ちっ!」

 

躯の77人の直属戦士対決となった木阿弥と卒都婆。

お互いの技を駆使して激しい戦いを始めた。

 

――Bブロック

 

こちらのブロックの達磨も躯の直属の戦士。

 

ドゴォッ!!

 

試合開始の合図と共に棗の必殺の一撃が達磨の腹部を直撃。

 

「あっ……」

 

ドスン!!

 

棗の一撃で達磨の巨体が簡単に崩れ落ちた。

倒れている達磨は白目をむいている。

 

(そういえば前の大会も確か第一試合からだったわね)

 

棗は上空の審判を見上げた。

 

「Bブロック第一試合棗選手対達磨選手の試合は棗選手の勝利です!」

 

ーーメイン会場

 

Bブロックが一瞬で決着がついた為、観客から大きな歓声が上がった。

 

「おおっと!Bブロックの第一試合は一瞬で決着がつきました」

 

 

――選手達の休憩所

 

躯、ニヤリ。

「流石だ。三年前より技のキレがいい」

 

――Dブロック

 

試合開始の合図と共に、蔵馬と謙遜が激しい戦いを繰り広げていた。

 

「薔薇棘鞭刃!!」

 

妖気を帯びた薔薇の鞭が謙遜を襲う。

 

「むっ!」

 

バッ

 

謙遜は素早くジャンプして蔵馬の攻撃をかわした。

攻撃を外した蔵馬の鞭が地面を叩く。

蔵馬から少し離れた位置に謙遜は着地した。

謙遜はマジシャン風のマントとシルクハットを被り、顔を白い仮面で隠していた。 

妖しく、巨大な妖気を放出している。

 

「ハッ」

 

謙遜は両手のそれぞれの指の間に挟んだ四枚のカードを身体を半回転することにより勢いをつけて蔵馬に向かって投げる。

蔵馬に向かってもの凄いスピードでカードが飛ぶ。

 

「ハァッ!」

 

ピシッ

 

蔵馬は謙遜のカードを鞭で弾いた。

弾かれたカードが地面に突き刺さる。

弾かれて地面に刺さったカードを見る謙遜。

 

「やるな」

 

「悪いがそのカード攻撃はもう俺には通用しない」

 

「そうかい」 

謙遜が再び右手の指の間にカードを挟んだ。

 

「フン!」

 

ピュー!!!

 

さっきと同じようにカードを謙遜が投げた。

 

「カード攻撃は無駄だと今言ったはずだが」

 

ビュー!!

 

ビシッ!

 

蔵馬はさっきと同様に鞭でカードを弾き飛ばした。

 

「だから言っ……

 

ピュー!!

 

(何!?)

 

突然カードの飛んで来る音が蔵馬の耳に聞こえて来た。しかしその姿は見えない。

 

謙遜、ニヤリ。

「最初に投げたカードはあくまで囮さ」

 

バッ!

 

蔵馬の身体が瞬間的に危険を察知してジャンプした。

 

ドスッ!

 

「うっ!」

 

だが蔵馬の肩に謙遜の投げた見えないカードの一枚が突き刺さっていた。

そして謙遜から少し離れた位置に蔵馬は着地した。

蔵馬は肩に刺さったカードを見る。

肩に刺さった見えないカードに蔵馬の血が伝わり、地面に滴り落ちる。

 

ズボッ

 

蔵馬は肩に突き刺さっていたカードを引き抜いた。

それを目で確認する。

 

「見えないカードか。恐ろしい技だな」

 

スチャッ

 

謙遜は見えないカードを両手の指の間に挟んだ。

 

「お前はこの見えないカードによって私に倒される」

 

バッ

 

謙遜はその場から上に向かって高くジャンプした。

 

「ハッ!」

 

ピュー!

 

蔵馬に向かって見えないカードが放たれた。

 

バッ!

 

蔵馬はジャンプしてそれをかわす。

 

ドスドスドスドス

 

地面に突き刺さるカード。

着地した謙遜が既に左手の指の間にカードを挟んでいた。

そして見えないカードを空中にいる蔵馬に向かって放った。

 

(何!?)

 

予想外の攻撃。

これはかわせない。

蔵馬はすかさず両手をクロスさせて防御した。


ドスドス

 

謙遜が投げた四枚の見えないカードが、蔵馬の両腕に二枚突き刺さる。

残りの二枚は蔵馬の身体を擦っていた。

 

蔵馬、ニヤリ。

「さすがに本選に残るだけあって強いな」 

 

ーーメイン会場

 

小兎が実況。

「Dブロックの蔵馬選手が謙遜選手を相手にまさかの苦戦を強いられています!!!」

 

「蔵馬、やばいぜ。負けるんじゃないのか」

 

「あの見えないカードは凄いな」

 

観客たちも蔵馬より、謙遜が勝つのではという声が既に上がっている。

 

――選手たちの休憩所

 

桑原が苦戦する蔵馬を心配している。

「大丈夫か!?いきなり蔵馬が苦戦しているぞ。あのマジシャンみたいな変な野郎、結構強いぜ」


飛影が静かに桑原の横に現れた。

「貴様も蔵馬との付き合いが結構長いのに分からないのか?あいつが苦戦している顔をしているかどうか奴の顔をよく見てみるのだな」

 

「何?」

 

桑原はスクリーンに映し出されている蔵馬の顔を見た。

蔵馬は涼しい顔で謙遜を見つめていた。

「いつもと変わらない顔だ」

 

「蔵馬の奴が妖狐化すればあの程度の相手なら一撃で倒せるはずだ」


「そ、そうなのか!?」

 

「あの謙遜とかいう野郎もS級クラスの力をもっているが蔵馬の相手ではない」

 

「だったらなんで直ぐに妖狐になって倒してしまわないんだ?」

 

「さあな」

 

その時解説の小兎の声が休憩所内に響き渡る。

 

「Aブロックは激しい殴り合いの結果、乙夜選手が勝利しました」

 

桑原は直ぐにスクリーンを見た。

「おっ!Aブロックの第一試合が終わった」

 

カチャッ

 

「さて次は拙者の出番だな」

 

第二試合目に出場する時雨は燐火円磔刀を手に取ると、Aブロックの闘場に向かって歩いていった。

 

――Dブロック

 

「カードが見えない限り、お前に防ぎようがないぞ」

 

「見えないカード。確かに恐ろしい技だが、攻略は出来た。俺にはもう通用しない」

 

「強がりをいうな」

 

「だったらその見えないカードをまた投げてみたらどうだ?」

 

「いいだろう」

 

謙遜は指の間に見えないカードを挟む。

 

「ハッ!」

 

カードが蔵馬目掛けて飛んでいく。

 

「風華円舞陣」

 

研ぎ澄まされた大量の花びらが一斉に蔵馬を守り始めた。

 

ガッ

 

大量の花びらに見えないカードが当たり弾かれた。

 

「馬鹿な!?」

 

カードを防がれた謙遜は驚く。

そのせいでスキが生じる。

それを蔵馬は見逃さなかった。

 

ピュー!

 

蔵馬が自分の身体に刺さっていた謙遜の見えないカードを投げた。

 

(何!?)

 

ドス

 

謙遜の左足に見えないカードが突き刺さる。

 

「クソが!」

 

謙遜は直ぐに自分の足に刺さったカードを抜いた。

 

「お前に刺さっていた私のカードを投げるとはなんの真似だ。これで私を倒すつもりだったのか?」

 

「ああ。そのつもりだ」

 

「何?」

 

ピキッ

 

「私のか、身体が動かない!!!?」

 

「お前に投げたカードに即効性の身体の自由を奪う透明の植物の液を塗っておいた。お前の身体は暫くの間、身動き一つ出来ないはずだ」

 

グググ……

 

身体を動かそうと謙遜は足掻く。

 

「くそっ!全く動かない」

 

ビュー

 

ぐるぐるぐる

 

「うおっ!?」

 

蔵馬の鞭が謙遜の身体に巻付いた。

 

「この鞭は俺の好きな薔薇の花を妖気で鞭化したもの」 

 

「私の見えないカードに植物の液を塗っていたとは……」

 

「見えないカードが逆に仇となったようだな」

 

悔しさで顔が歪む。

「畜生ォォォ!!」

 

蔵馬は謙遜に背を向けた。

「終わりだ」

 

ギュゥゥゥ!!!

 

蔵馬が言葉を発すると謙遜の身体に巻き付いた鞭が一気に謙遜の身体を締め付けた。

 

「ギャァァ!!!!」


鞭の棘が謙遜の身体に突き刺さり、全身から血が溢れだした。

 

ドサッ

 

謙遜は痛みのあまりに意識を失い、その場に倒れた。

 

シュルルル

 

パシッ

 

蔵馬は謙遜の身体に巻き付いていた鞭を解いた。

そして上空にいる審判の女性を見た。

 

審判は倒れている謙遜の状態を確認する。

「Dブロック第一試合謙遜選手対蔵馬選手の試合は蔵馬選手の勝利です!」

 

ーーメイン会場

 

「驚きました。苦戦しているかと思われた蔵馬選手が謙遜選手を一気に撃破。凄いです」

 

「凄い、あっという間に逆転勝利」

 

「やっぱり蔵馬は強いぜ」

 

観客たちも蔵馬の勝利を称えた。

 

ーーDブロック

 

倒れている謙遜を蔵馬は見ている。

(南野秀一の肉体でも勝てたな)

 

――選手たちの休憩所

 

試合を終えた蔵馬が戻って来た。

直ぐに桑原が駆け寄ってくる。

 

「やったな蔵馬。最初はどうなるかと結構ヒヤヒヤしたぜ。カードでやられた傷は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫。傷は大したことないですよ」

 

「飛影がさっき言っていたが、妖狐化したら一撃で倒せる相手だったんだろ?何で妖狐に戻らなかったんだよ」

 

蔵馬、ニコリ。

「大した理由ではないですよ。人間界で桑原君を狙う者の一人と南野秀一の肉体で戦ってかなり危ない経験をしたから、現在の南野秀一の身体でどこまで戦う事が出来るか、自分の強さの水準を見たくなってね」


「なるほどそういう事だったんだ」 

 

「ええ。二回戦からの相手は最初から妖狐化しないといけない相手ばかりだからチャンスは初戦だけでしたからね」

 

そう言うと蔵馬は闘技場に向かっている、おそらく二回戦の相手となるかもしれない巨体の男の姿を見た。

 

(電鳳か……。雷禅の昔の仲間の一人。かなりの強敵だ)

 

小兎の解説が聞こえてきた。

「Cブロックは木阿弥選手が激戦の末に勝ちました」

 

桑原と蔵馬はスクリーンを確認。

「これで一試合目の試合は全部終わったな」

 

「他のブロックは既に何試合か始まっていますね」

 

スクリーンで時雨の戦う様子を見つめる妖怪がいた。
次の三試合目で戦う月畑である。

 

「やっぱり時雨様は強いな。次はいよいよ私の番だ」 

 

月畑は自分の対戦相手である武威という男の姿を見た。

武威は全身に厚い鎧を見に纏い腕を組んで壁越しに立っている。

 

「あの鎧の男が武威か」

 

武威は静かに自分の出番を待っていた。

 

続く

 

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対戦表(Dブロック)

魔界統一トーナメント
【Dブロック】

(1)
謙遜(けんそん)
×
蔵馬(くらま)

(2)
斗歩(とほ)
×
電鳳(でんぽう)

(3)
梟(ふくろう)
×
眉墨(びぼく)

(4)
鈴木(すずき)
×
駒形(こまがた)

(5)
恐面(こわもて)
×
鷹松(たかまつ)

(6)
駄間(だま)
×
仙道師(せんどうし)

(7)
箭内(やない)
×
鍬形(くわがた)

(8)
犬玉(けんだま)
×
黄泉(よみ)

 

(9)
八千草(やちぐさ)
×
兀咄骨(ごつとつこつ)

(10)
躯(むくろ)
×
幻夢(げんむ)

(11)
塩海(あんばい)
×
照星(しようせい)

(12)
原鶴(はらづる)
×
刹那(せつな)

(13)
矢治(やじ)
×
川神(せんしん)

(14)
暗礁(あんしよう)
×
妻帯(さいたい)

(15)
那阿(なあ)
×
駒津(こまつ)

(16)
乾打碑(かんだひ)
×
痩傑(そうけつ)

対戦表(Cブロック)

魔界統一トーナメント
【Cブロック】

(1)
木阿弥(もくあみ)
×
卒都婆(そとば)

(2)
九浄(くじよう)
×
火影(ほかげ)

(3)
酎(ちゆう)
×
鳩(はと)

(4)
神楽(かぐら)
×
東王(とうおう)

(5)
闇闇(あんあん)
×
耶麻(やま)

(6)
媒体(ばいたい)
×
倉皇(そうこう)

(7)
慟哭(どうこく)
×
楽越(らくえつ)

(8)
一弦琴(いちげんきん)
×
御霊屋(おたまや)

 

(9)
野呂(のろ)
×
改廃(かいはい)

(10)
燕(つばめ)
×
奢(はし)

(11)
才蔵(さいぞう)
×
南海(なんかい)

(12)
諸星(もろぼし)
×
九曜(くよう)

(13)
左奈(さな)
×
蓮台(れんだい)

(14)
孔雀(くじやく)
×
典偉(てんい)

(15)
戸熊(とぐま)
×
茶畑(ちやばたけ)

(16)
凍矢(とうや)
×
久遠(くおん)